90年代半ばから終わりにかけてのインターネットマーケティングの実情を言い表すとしたら?
一言でいえば、ただの”推測”です。
当時、業務で利用できるマーケティング分析技術はまだ世の中に出回っていなかったので、マーケティング担当者は、オンラインキャンペーンを策定し、それがうまくいくように祈るのみだったのです。
しかし、今日、そうした状況を見かけることはありません。もし、アナリティクス(解析)や測定やテクノロジーといったもの抜きでマーケティングを行っていたら、その担当者は即解雇されるに違いありません。
アナリティクスやマーケティングテクノロジーの登場によって、もっぱら感性に頼っていたインターネットマーケティングは、もっぱら科学に基づくものへと変化を遂げました。
マーケティング担当者は、何が成果につながるか(また、つながらないか)を簡単に測定できるようになり、さまざまな面にわたって継続的にキャンペーンを改善し、コンバージョン率や顧客獲得数、あるいはROIの向上につなげることが可能になりました。
インターネットマーケティングは、ビジネス界でも特に最適化された分野の一つとなっています。
しかし、営業分野は違います。営業部門の担当者やマネージャーや責任者は、アナリティクスが登場する以前、インターネットマーケティング担当者が悩まされていたのと同様の手探り状態にあります。
きっと営業に役立つだろうと自身が信じるやり方に従うほかなく、独自のセオリーや直観、過去の経験といったものに基づいて仕事をしています。
そこでは、何が実際の成果につながったのかを評価するうえで必要なテクノロジーやデータやアナリティクスは(最近まで)活用されてきませんでした。
25,537件の営業電話を分析して明らかになったこと:7つの重要なポイント
私たちは、Gongの営業会話インテリジェンス用のSaaSプラットフォーム(英語)を利用している17社のお客様から匿名の会話データを収集し、2016年前半に半年間をかけて分析を行いました。
この記事でご紹介するデータや知見を得るために、どのような調査を行ったのか、以下に詳しくご説明します。
- 17社のお客様企業から25,537件のB2B営業会話を収集し、分析を行いました。会話は、GoToMeeting、join.me、Zoomなどの電話会議用プラットフォーム上でなされた営業電話を対象としています。つまり、SDRによる電話ではなく、アカウントエグゼクティブによるものだということです(ちなみに、平均の通話時間は43分でした)。
- 各通話は、Gongで録音し、話者ごとに分解され、クリーニングを行ったのち、テキスト化されました。
- 次に、それぞれの通話を該当するCRMレコードに対応付けました。こうすることで、成約率や収益、営業サイクル期間など、営業上の成果と照らし合わせて分析できるようになります。
- 最後に、この膨大なデータをGongの人工知能エンジンンにかけました。高度なAIアルゴリズムを用いて、会話のトピック、重要な瞬間、営業行動を自動で分類します。
その結果、効果的なB2B営業電話に共通する7つの特徴的な傾向が見つかりました。
1)「話す」と「聞く」の割合が成約率に影響を及ぼす
営業のプロとして、こちらは極力聞き役に徹し、プロスペクト(潜在見込み客)に多く語らせるようにすることがベストだというのはだれもがわかっているはずです。
ですが、ほとんどの営業担当者は、自分が思っているよりもはるかにたくさんしゃべっています。
平均的なB2B営業担当者の場合、会話全体の65~75%は自分がしゃべっています。これでは、プロスペクトが口をはさむ隙がほとんどありません。
お恥ずかしい話ですが、私自身、Gongを使い始めた当初、「話す」と「聞く」の割合は平均して72:28でした。幸い、最近はこれが52:48くらいになりつつあります。
営業電話で大きな成果を上げるためには、「話す」と「聞く」の割合が43:57になるのが理想的です。
ですが、ぴったりその割合でなくても大丈夫なので、ご安心ください。仮にこちらが話す時間が長くても、わずかでもプロスペクトが話す時間を増やせれば、容易に成果が得られます。
通話時間のうち、プロスペクトが話す時間を22%から33%に増やすことで、成約率が大幅に向上します。
2)価格に関するやり取りが成約率に影響を及ぼす
1度の通話で価格に関する話が3~4回出た場合は、見通しが明るいと言えそうです。ただし、相関関係があるからといって因果関係があるとは限らないという点は、心に留めておきましょう。
今回のデータによれば、特定の通話で価格についてのやり取りが3回未満または5回以上あった場合、成約率が低くなっています。
1度の通話で価格の話題が3~4回出た場合は、成約の見込みありと考えて話を進めるとよいでしょう。ただし、価格については、これ以外にも明らかになったことがあります。
3)「価格を提示」するには適したタイミングがある
成績が上位の営業担当者は、営業電話を開始して40~49分くらいのタイミングで「価格を提示」しています。
成績が平均かそれ未満の営業担当者の場合は、価格の話を持ち出すタイミングが、通話時間全体にわたってより分散する傾向にあります。
このことから言えるのは、まず、メリットを理解していただいてから、価格を提示すべきだということです。
4)「おそらく」と言われたら、おそらく見通しは明るい
有能なB2B営業担当者なら、いずれかの段階でプロスペクトに「時期に関する質問」をするはずです。
- 「このプロジェクトを先に進めるのは、いつごろの予定ですか?」
- 「ご契約はいつごろをお考えでしょう?」
- 「ご購入までにどれくらいかかりそうですか?」
意外なことに、プロスペクトがどことなく「慎重に」返事をしようとしている場合は、明るい兆しととらえることができます。
時期について聞かれたプロスペクトが「おそらく」という言葉を使って返事をする場合は、購入をそれだけ真剣に考えているからこそ慎重な返事になるということが言えそうです。
この場合も、購入の見込みありとして話を進めるとよいでしょう。ただし、繰り返しになりますが、相関関係があるからと言って因果関係があるとは限らないことに注意してください。
5)「~について検討する必要がある」と言われたら、おそらく見通しは厳しい
時期に関する質問をしたときに、どういう返事が見通しが明るいと判断できるかわかったところで、次は、見通しが厳しいケースについて見てみましょう。
営業担当者から時期について聞かれた見込み客が、「~について検討する必要がある」などと答える場合は、成約率や予定の確かさという観点で負の相関関係が伺えます。
会話の中でよく耳にするのは、次のような言い回しです。
- 「だれが最終承認を出すのか、検討する必要がある」
- 「この製品を社内でどのように活用するか、検討が必要だ」
- 「ROIの正当性をいかに証明するか、検討しなければならない」
なにも、このような返事が返ってきたからと言ってあきらめる必要はありません。ただし、営業担当者なら、こうした情報をいただけるのが通常なので、上記のような答えが返ってきたとすれば、成約の見込みは先細りになりそうだと考えられます。
6)「リスクリバーサル」な言葉が心配や懸念を緩和する
先ほど、プロスペクトが話す時間を増やすことで、成約率を容易に上げられると述べました。
さらに、もう一つ、簡単で効果的な方法があります。それは、プロスペクトが負うリスクを軽くして、購入前の懸念を緩和させることです。今回の調査では、営業担当者が「リスクリバーサル」な言葉を用いることで、成約率が32%向上しています。
顧客をリスクから守るために規定されている契約条件について、先手を打って、繰り返し積極的に伝えることが重要です。
- キャンセル手続きが容易
- 長期契約ではない
- 手間なく簡単に設定できる
- 90日たったら解除可能
- 返金保証
- SLA(サービスレベル合意書)
多くの営業担当者が、こうした契約条件について意図的に隠そうとしているようです。契約解除やキャンセルといった頭の痛い作業は避けたいと考えてしまうのだと思います。
そこで、アドバイスです。たとえキャンセルや契約解除が増えたとしても、成約率が急増すれば、それを大幅に上回る成果が上げられるはずです。
7)営業担当者が会話レベルのコーチングを受けることで効果が得られる
今回、匿名データを収集させていただいたお客様企業は、Gongの会話インテリジェンスプラットフォームを利用して営業 コール コーチングを行っています。
プラットフォーム上でコーチングを最も積極的に活用しているお客様は、成約率や収益で最大の伸びを示したほか、営業サイクル期間を大幅に短縮しています。
これは当然のことだと思います。営業サイクルを最も大きく左右するのが、担当者とプロスペクトの間で交わされる会話だからです。
「てこ」となるこの部分をより効果的に進められるようになれば、大幅な改善が可能になります。
ぜひ営業業務にお役立てください
営業電話の効果について、人工知能がこれまでに明らかにしてきたポイントを、以下にまとめます。
- 「話す」と「聞く」の割合は、43:57が理想です。
- 多くの場合、営業担当者が話している時間は、通話時間の65~75%をです。
- プロスペクトが話す時間を22%から33%に増やすことで、成約率が大幅に上がります。
- 1度の通話で価格の話題が3~4回出た場合は、成約の見込みありと考えてよいでしょう。
- 成績が上位の営業担当者は、通常、電話の最後の方(話し始めて平均40~49分くらいの時点)で価格について提示しています。
- 時期について聞かれたプロスペクトが「おそらく」という言葉を使って返事をした場合、見通しは明るいととらえることができます。
- 時期について聞かれたプロスペクトが「~について検討する必要がある」という言葉を使って返事をした場合は、話を進めるうえでかなりの努力が必要です。
- リスクリバーサルな言葉でプロスペクトの心配を緩和すると、成約率が平均32%向上します。
- 会話レベルの営業コーチングで、成約率や収益が向上し、営業サイクルが短縮できます。
これで、営業の世界でも、営業会話についてデータに基づいた初の知見がもたらされたことになります。これに関する皆さんのご意見をお聞かせいただければ幸いです。
ご不明な点や意外に感じた点、あるいは、今まで知ってはいたが今回の調査結果でやはりそうかと納得できた点などがございましたら、ぜひ、chris.orlob@gong.ioまでメールをお寄せください。