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「ブランディング」とは、派手な広告を打ち、自社の名前を広めることではありません。「ブランディング」とは、顧客に提供する価値を約束し、その「約束事」を果たすためにおこなう、企業の「あらゆる活動」を指します。

→ダウンロード: 効果的なブランドガイドラインの作り方

そして、ブランディングとセットにして語られる「ブランド」という概念は、約束事そのものであり、その「約束事の想起につながるあらゆるもの」を指します。
たとえば、企業の製品やサービスの名称、ロゴやキャッチフレーズ、さらにはストーリー、または顧客とのコミュニケーションに至るまで、約束事を想起させるすべての要素がブランドを支えます。

ロゴやストーリーなど複数の要素によってブランディングが構築されることを示した図

世の中の商品・サービスが増え、あらゆる市場が複雑化する昨今、多くの企業はいかにして「選ばれる存在」になるかを目指し、さまざまなマーケティング活動をおこなっています。

そんな中、ブランディングという概念が大きく注目されるようになりました。
なぜなら、ブランディングを意識しながら行動することで、その企業は顧客から安心して選ばれる存在になるからです。

商品やサービスの選択肢が多様化する中、顧客は摩擦のないラクな購買体験を求めています。
「この会社の商品なら、高品質で信頼できる」「この会社の商品なら、自分たちの期待に応えてくれるはずだ」、そういった商品を顧客は求めています。

顧客は商品が手元に届くまではその商品の価値を享受することができません。
よって、顧客が何かを購入するとき、そこには「期待値」の存在が大きく影響します。
期待値が高ければ高いほど、顧客は安心してその商品を購入できるでしょう。
そして、その期待値を担保するものこそが、企業が顧客に向けて発信するメッセージ、すなわち「約束事」なのです。

「私たちはこの商品を通じて、あなたに●●という体験を提供します」
「私たちの商品を使っていただければ、あなたに●●という価値を感じていただけるはずです」

これらの約束事を顧客に信頼してもらうためには、それらの約束事があらゆる場面で果たされてきたという実績が必要です。

たとえば、当社HubSpotもブランディングを重視している企業のひとつです。
HubSpotが提唱する、顧客の利益を第一に考える「インバウンド」の思想を自らが体現するために、たとえば自分たちの都合で一方的に顧客にDMを送るようなマーケティングはおこなっていません。

顧客は、その企業が約束事をきちんと果たしているかどうかを、あらゆる場面、タッチポイントで見ています。
問い合わせやサポートでの対応、企業が発信するブログの内容、社員同士のコミュニケーション、ロゴやキャッチフレーズに込められた思い、さらにはオフィスの内装に至るまで、顧客はその企業をあらゆる面からウォッチしています。

そうして、その企業が約束事を果たしていると感じ始めたとき、顧客はその企業を信頼するようになり、顧客の中にその企業の印象すなわち「ブランドイメージ」が創られていきます。
そのブランドイメージは、顧客が安心してその企業の商品を買うために欠かせない要因となるでしょう。

ブランディングとはまさに、顧客の中に自社のブランドイメージをつくるための行動でもあるのです。

顧客がアパレルブランドに信頼を寄せているイメージ画像

たとえば、本記事内で紹介する「スターバックス」や「ダイキン工業」、そして「今治タオル工業組合」などは、ブランディングを大切にすることによって、大きな成功を遂げています。

「第三の場所」というブランドを築くために、店舗内の設備からWifi環境まで整えた「スターバックス」は、顧客との良好な関係を維持し続け、国内の店舗数を1,600店(※)まで伸ばしています。(※2021年3月末時点)
また、「ダイキン工業」はコロナ禍において、「空気で答えを出す会社」というブランドメッセージとともに、コロナ禍で人々が求めていた情報をいち早く発信し、多くのメディアから注目される存在となりました。
さらには、愛媛県今治市生まれのタオルである「今治タオル」は、2007年より「使い心地のよさ」をブランドとして掲げ、2006年時点ではわずか6200枚だった生産数を、2013年には5442万枚まで増やしました。

あなたの企業はブランディングに力を入れていますか?
顧客に対して、どんな「約束事」を果たしていますか?

市場が複雑化し、顧客が主導権を握る時代となりました。
そんな時代において選ばれる存在になるためにはブランディングの概念が欠かせません。

この記事では、ブランディングに関心のある方へ向けて、ブランディングの意味や国内外の成功事例、ブランディングを重視するメリットや実際ブランディングをどう進めればいいのかを解説します。

効果的なブランドガイドラインの作り方

1.「ブランド」と「ブランディング」とは?

1-1.「ブランド」と「ブランディング」の言葉の意味

まずあらためて、「ブランド」と「ブランディング」という2つの言葉について、定義しておきしょう。


■ブランド
顧客との関係性の中で生まれる、顧客にどんな価値を提供するのかの「約束事」そのものであり、その約束事の想起につながるメッセージやデザイン、体験などあらゆるもの。
(ちなみに、「ブランド(brand)」という言葉の語源は、古ノルド語で"焼印をつける"という意味を表す「brandr(ブランドル)」が語源だといわれています)
■ブランディング
顧客との「約束事」を果たすための、あらゆるプロセス。

これらの定義において、念頭に置いておくべきことがあります。
それは、ブランドは「企業のもの」ではなく、企業と顧客の「相互の関係性の中でつくられていくもの」だということです。
ブランドは、顧客がその企業にどんな価値を期待するかが前提となって生まれるもの、すなわち企業と顧客、相互の関係性の中でつくられていくものです。
そのため、ブランドは企業の独りよがりなものではいけないのです。

場合によっては、自社が考えてもいなかった商品価値が、自社のブランドにつながるケースもあります。
たとえば、ある宿泊施設は「部屋の設備の快適さ」を価値だと考えていたが、多くの顧客はその部屋の設備の快適さ以上に、その宿泊施設で働く従業員の「接客」にこそ価値を感じていた。
気持ちの良い挨拶や、食事の際のちょっとした気遣い、宿泊後に届く心のこもったメール。
その温かい接客にこそ価値があり、その施設を訪れるリピーターもその接客の品質を求めていることに気付いた宿泊施設は、あらためて「心の通ったおもてなし」を自社のブランドとして顧客に約束することにした・・・といったケースです。

ブランドは、顧客がその企業の商品・サービスの価値を体験し、その価値の体験を重ねることによって生まれる「認知」と「連想」で決まるといっても過言ではないでしょう。

そして、その価値の体験を重ねてもらうためには、一貫性があり、持続可能性のあるブランドでなければいけません。

1-2.ブランディングとマーケティングの違い

ブランディングと対になって語られる言葉に「マーケティング」があります。
この2つの言葉はしばしば混同されるため、ブランディングとマーケティング、それぞれの言葉の定義を先に明確にしておきます。


■ブランディング
顧客との「約束事」を果たすためのあらゆるプロセス。
このプロセスの中には、「自社のブランドとはどういうものか?」という、ブランドのアイデンティティを考えるプロセスも含まれる。
■マーケティング
ブランドのもとで提供される商品やサービスの価値を市場で広める、もしくは市場で消費者に見つけてもらうための一連のプロセス。
顧客との良好な関係を紡ぐための、一連のコミュニケーションも含まれる。

この定義をもとに考えれば、「ブランディングはマーケティングを含有する」という図式が生まれます。

ブランディングがマーケティングを内包している図

ブランディングを狭義で考えた場合、「マーケティングのプロセスの中で、ブランド認知を進めるための一連の施策」と見なすこともできます。
しかし、ブランディングの本質的な意味に立ち返ると、ブランディングとは、商品やサービス開発につながるブランドの本質的な意味、つまりブランドアイデンティティそのものと向き合うプロセスでもあります。
よって、この記事では、「ブランディングはマーケティングを含有する」という図式のもと、ブランディングについて解説していきます。

ではここからは、ブランディングの成功事例を紹介しながら、ブランディングが生み出すメリットについて見ていきましょう。

2.「ブランディング」の成功事例とメリット

2-1.ブランディングの成功事例 4選

ここからは、ブランディングがもたらすメリットを具体的にイメージしていただくために、4つの企業の成功事例を紹介します。
それぞれの企業がどのようにブランディングと向き合い、どんな成功を収めたのかをご覧ください。

1.「第三の場所」を実現するために、店舗内の設備からWifi環境まで整えた「スターバックス」

落ち着いたカフェ空間を演出し、国内のカフェ業界でも高いシェアを誇る「スターバックス」。
2013年に国内の店舗数が1,000店を超えたあと、47都道府県での出店を果たし、2021年3月末時点での出店数も1,600店超えと、店舗数を伸ばし続けています。
優れたブランディングの取り組みをおこなった企業が評価される「Japan Branding Awards 2019」においても、スターバックスはブランディングによって著しい成長を残した企業として評価されました。


スターバックスが進めてきたブランディングは、「The Third Place(第三の場所)」を実現するというもの。
日常の閉塞感から解き放たれることでリラックスできたり、発想の転換ができたりと、まさに「生活の中で大切にしたい場所」となるよう、スターバックスは空間づくりにこだわってきました。


新鮮なコーヒーの香りや落ち着く内装、そして適度な照明の明るさ、耳に優しいBGMなど、その空間づくりのこだわりは随所に現れています。
まさにスターバックスは「The Third Place(第三の場所)を提供する」という顧客への約束事をずっと守り続け、今日の大きな成長を遂げたのです。

スターバックスの公式ホームページのキャプチャ画像
Culture and Values: Starbucks Coffee Company

■スターバックスのブランディングの特長

  • 家や学校、職場でもなく、自分らしさを取り戻せるような第三の居場所としての「The Third Place(第三の場所)」を実現している
  • ゆったりと過ごせる空間になるよう、店舗面積あたりの座席数をできるだけ少なくしている
  • 顧客が自分に合ったリラックスできる方法を選べるよう、異なるタイプのイスを用意
  • カップとソーサーが触れ合う音が出ないように、ソーサー(お皿)をつけずに飲み物を提供
  • WiFiを全店にいち早く導入
  • 店舗はすべて直営で管理し、従業員の教育を徹底し、ブランドを大切にした行動を社内に浸透させている
  • ほとんど広告キャンペーンをおこなわず、店舗そのものを広告として捉え、空間を体験してもらうことが何よりものマーケティングだと考えた(それにより、家具、什器、用具、音楽、パッケージに至るまで、ブランドを大切にしている)

2.「空気で答えを出す会社」として明確にブランドコンセプトを定め、コロナ禍で人々が求めていた情報をいち早く発信した「ダイキン工業」

一般消費者向けにエアコンを販売するほか、法人向けにも換気設備などを提供する「ダイキン工業」。
このダイキン工業は「Japan Branding Awards 2020」で、優れたブランディング活動をおこなった企業として評価されています。
消費者の間で「エアコンの会社」というイメージが築かれていた中、「英知と情熱を結集し空気と環境の新たな価値を協創する」というビジョンを実現するため、2017年に自社が目指す姿を「空気で答えを出す会社」と定め、ブランディングを強化。


そのブランディングにおいて、ダイキン工業は自らを「空気に可能性があると信じる企業」そして「空気であらゆる社会課題を解決する企業」であると定義しました。
そして、そのメッセージをテレビCMやオウンドメディアなどを用いて発信し始めます。


2020年からのコロナ禍においても、「このコロナ禍で、空気で答えを出すべきことは何か?」を徹底的にディスカッション。
コロナ禍においては、「正しい換気の方法」に関する情報が求められていると考え、最初の緊急事態宣言が発令された数日後には、換気に関する詳しい情報をオウンドメディア上で公開。
エアコンだけでは換気ができないという警鐘を鳴らしたり、職場での換気のコツを取り上げたりしました。

ダイキン工業のオウンドメディアのキャプチャ画像
上手な換気の方法 | 空気とくらし | 空気で答えを出す会社 | ダイキン工業株式会社

そして、それらの情報はオウンドメディアだけでなくSNSや各種広告媒体を通して発信され、その結果ダイキン工業は、テレビやWebメディアをはじめ、100件を超える場所で紹介され注目を集めることとなったのです。
空気と真摯に向き合うその姿勢が、エアコンという製品とも真摯に向き合っているという印象をより高めることになったことは言うまでもないでしょう。

■ダイキン工業のブランディングの特長

  • 自らを「空気に可能性があると信じる企業」そして「空気であらゆる社会課題を解決する企業」であると定義
  • 自社のブランドメッセージをテレビCMやオウンドメディアなどを用いて継続的に発信
  • コロナ禍において、自社が解決できる社会課題と真摯に向き合い、「正しい換気の方法」に関する情報を積極的に発信

3.起死回生のブランディングによって、世界に通じるブランドとなった「今治タオル」

愛媛県今治市生まれのタオルである「今治タオル」の生産メーカーで構成される「今治タオル工業組合(旧:四国タオル工業組合)」。
今でこそ高品質なタオルギフトとして有名になった今治タオルですが、2006年あたりは生産数がピーク時の5分の1ほどに激減。
中国やインドからの安価な輸入タオルの増加による煽りを受け、存亡の危機にありました。


そんな今治タオルを救ったのが、クリエイティブディレクターで有名な佐藤可士和さんを中心に進められたブランディングプロジェクトでした。
そのプロジェクトを進める中で、メーカー側が消費者に提供したかった価値と、消費者が求めていた価値との「ズレ」が見えてきたのです。
当時、各メーカーはそれぞれ「染色技術」や「織る技術」の高さを消費者にアピールしたいと考えていました。


しかし、消費者が求めていたのは、職人の高い技術ではなく、あくまでも「使い心地のよさ」だったのです。
そこで、「今治タオル=使い心地のよいタオル」という認知・連想を消費者にもってもらうために、さまざまな施策が実施されていきました。

今治タオル公式ブランドサイトのキャプチャ画像
今治タオル公式ブランドサイト | JAPANブランド 今治タオルプロジェクト

たとえば、今治タオルのブランドを想起させるロゴづくり、そして、そのロゴを使うためには厳しい品質基準をクリアしなければならないとしたルールづくり、さらには、顧客にあったベストな今治タオルをオススメできるよう、タオルに関する深い知見をもったスタッフを育成するための「タオルソムリエ制度」の新設など、まさに今治タオルというブランドを築き上げるためにあらゆる施策が実施されていきました。
それらの施策は、今治タオルに大きなV字回復をもたらします。
今治タオルのロゴが縫い付けられたタオルは、2006年にはわずか6,200枚だったところ、2013年には5442万枚と生産数が急増し(約1万倍)、国内シェアが大幅に増加。


やがて、今治タオルのブランディングへの取り組みが「地方再生の成功例」として多くのメディアで取り上げられるようにもなり、今治タオルブランドはますます大きな認知を得ることとなります。
2007年に第一回の試験がおこなわれた「タオルソムリエ制度」の合格者も、2014年には今治市在住の合格者数を東京の合格者数が上回るなどし、今も全国で多くのタオル専門アドバイザーが生まれています。
まさにブランディングによって、ひとつの文化が守り抜かれた事例だといえるでしょう。

■今治タオルのブランディングの特長

  • 「今治タオル=使い心地のよいタオル」という認知・連想を消費者にもってもらうために、さまざまな施策が実施されていった
  • ブランドを想起させるロゴがつくられた。そのロゴでは今治タオルが日本産であることがわかりやすいよう日の丸のマークが使われた
  • 消費者が求める安心・安全・高品質な「使い心地」のよさを伝えるために、模様のない「真っ白なタオル」が今治タオルのイメージとして打ち出された
  • 今治タオルというブランドを守るために、厳しい品質評価テストを合格したタオルにのみ、今治タオルのロゴのタグを付けられるようにした(もともと今治タオルは、品質維持のために厳しい基準が設けられていた)
  • 海外の展示会で今治タオルの展示ブースを設ける際は、日本の木を代表するヒノキを用いることで「JAPANブランド」として認知を広げた。また、海外の人に認知してもらいやすくするために「imabari towel」とブランド名をアルファベット表記にした
  • 顧客にあったベストな今治タオルをオススメできるよう、タオルに関する深い知見をスタッフを育成するための「タオルソムリエ制度」をつくった

以上、3つの成功事例を紹介しましたが、もうひとつ追加で紹介したい成功事例があります。
手前味噌ではありますが、私たちHubSpotのインナーブランディングの事例です。

4.インナーブランディングに力を入れ、インバウンドの思想を社内から浸透させていった「HubSpot」

手前味噌ではありますが、私たちHubSpotのインナーブランディング(社内向けのブランディング)の事例も紹介させてください。

HubSpotでは、「インバウンド」の思想を大事にしています。
「インバウンド」とは、顧客を第一に考えつつ、自社やその他すべての関係者が利益を享受し、成長していくことを目指す考え方です。

多くの社員は、インバウンドの思想に共感してHubSpotに入社します。
その場合、社員がHubSpotに期待するのは「本当にインバウンドを前提にした業務を遂行できる環境」であり、それはHubSpotが絶対に守らなければいけない「約束事」なのです。

私もインバウンドの思想に共感し入社した社員の一人ですが、たとえば、顧客の利益を優先した施策を実施しようとしているのに、上司が「電話帳の上から順にテレアポしろ」「とにかくDMを送れ」と指示を出してくると一瞬で失望してしまうと思います。
そして何より、そのような施策を実行してしまうと、社員だけでなく顧客のHubSpotに対する心象も悪くなり「インバウンドの思想を提唱しているけど、口だけだな」と思われ、今後選ばれなくなるでしょう。

そこで、そのような事態が起こるのを防ぎ、全ての社員が常にインバウンドの思想を意識した行動を取れるように、当社では社員の行動指針を示した「カスタマーコード」をつくりました。

HubSpotのカスタマーコード

  1. 無理やり関心を引こうとせず、顧客を惹きつける魅力を創造すること
  2. 理想の顧客像としてではなく、ひとりの人間として対応すること
  3. 自社のためではなく、顧客の成功のために課題を解決すること
  4. 顧客情報は顧客の利益のために活用し、自社の利益のために悪用しないこと
  5. 顧客からのフィードバックを求め、受け止め、行動に移すこと
  6. 素直に非を認めること
  7. 顧客自身で解決し成功できるように支援すること
  8. 価値や料金は曖昧にせず、簡潔明瞭に伝えること
  9. 去るものは引き止めないこと
  10. 困難なときでも、正しい行いを心がけること

(参考:HubSpotの「カスタマーコード」について

このカスタマーコードは、HubSpot全社のメンバーが守るべき指針、すなわち社内に向けたブランディングガイドラインといえます。

また、カスタマーコードだけでなく、企業文化を明文化した「カルチャーコード」も構築しています。
このカルチャーコードは、全社員で同じ価値観を共有するためのものです。
インバウンドを体現する存在となるために、どのような思考を持つべきなのを明確に定めることで、「HubSpotらしさ」をさらに醸成できるのです。

カルチャーコードのなかでも、HubSpotは「Solve for the customer(SFTC)」、つまり「顧客の利益を最優先に考えること」を最も大事にしています。
全社員が「SFTC」を実行することで、HubSpotの「ビジネス成長を目指す人たちを支援する存在になる」というミッションを達成し続けられるからです。

たとえば今ご覧いただいているこのブログも「SFTC」の一環です。
「顧客にとって有益な情報を提供し、顧客の課題解決を助けたい」という思いのもとで運用しています。

HubSpotブログは、何かしらの課題を持たれている方に対して解決の糸口となるような情報を提供するために更新しています。
記事を読んでいただいた方に対し、より良い解決策を提供するため、記事内容に合わせた無料のeBookをダウンロードできる導線を設置したり、場合によってはHubSpotの無料で利用できるツールへのリンクをつけたりします。
ブログは自社製品を売り込むのではなく、あくまでも、有益な情報を提供するために存在していると私たちは考えています。


こちらからできる限り役に立つ情報を提供し、HubSpotに興味を持っていただいた方と接点を持って、少しずつ良好な関係を構築していく。
そのきっかけづくりとなるのがHubSpotのブログなのです。
ですので、ブログ上で脈絡なく製品カタログを提示したり、リードを増やすことだけを考えたような小手先のコンバージョン施策は実施しません。

多くの企業では、「リードを獲得できるブログを構築するべき」という考え方が根強くあるかもしれません。
HubSpotの場合は、カルチャーコードを明確に定め、価値観を明文化したからこそ、このようなブログ運用が可能となっています。

その他、HubSpotが大事にしている価値観については、以下のスライドにまとめていますので、よろしければご覧ください。

このように、インナーブランディングをおこなうことで、社員一人ひとりの意識や行動が変わり、それが顧客とのコミュニケーションにも反映されます。

また、インナーブランディングは、採用面においても素晴らしい成果を発揮します。
たとえばHubSpotでは、インバウンドの思想を体現するためにはどのような思考を持つべきなのかを定義した「HEART(ハート)」が存在します。
「HEART(ハート)」とは、「HUMBLE(謙虚)」「EMPATHETIC(共感性)」「ADAPTABLE(柔軟性)」「REMARKABLE(卓越した長所)」「TRANSPARENT(透明性)」という5つの要素の略語です。

人事や役員、マネージャーなど採用に関わるメンバーはHubSpotの思想に共感しているか、HEARTの特性を備えた人物かを重要な判断基準としています。

結果、「HEART(ハート)」のある人材の採用がスムーズに進み、カルチャーが通底する強い組織を実現できています。

2-2.ブランディングを実践する8つのメリット

先ほど紹介した成功事例では、ブランディングによって、さまざまなメリットやベネフィットが生まれていました。
ここで、ブランディングによるメリットをあらためて整理してみましょう。
ブランディングによるメリットは、大きく分けて8つあります。

  1. 顧客の意思決定を助け、スムーズに買い物してもらえるようになる
  2. 顧客の商品購入時の安心感が増す
  3. ロイヤルカスタマーが増える
  4. 集客コストが削減できる
  5. 市場での競争から脱却できる
  6. 付加価値を感じてもらいやすくなる
  7. 高単価で商品を展開しやすくなる
  8. 従業員やチームメンバーのモチベーションが向上する

それぞれについて解説していきます。

メリット1.顧客の意思決定を助け、スムーズに買い物してもらえるようになる

顧客は商品を購入する際、さまざまな商品と比較することで、その商品の品質を確かめようとします。
しかしその比較には、時間的コストがかかるだけでなく、商品に関する深い知識が必要です。
その結果、本当はその商品を買おうと思っていたのに(もしくはその商品が必要だったのに)、比較という行動に疲れてしまい、購入するという意思決定をあきらめてしまうケースもあります。
そのようなケースは顧客、そして商品を販売している企業側、両者にとって悲劇だといえるでしょう。
そんな顧客の意思決定の負担を減らし、快適な買い物体験を実現するためには、顧客ができるだけ短時間でその商品の価値を理解できるだけでなく、「この会社の商品ならきっと大丈夫だ」という未来の価値体験を容易に想起・連想できる必要があります。
そこで大切となってくるのが、顧客が未来の価値体験を想起・連想できるようなブランドの存在です。
ブランディングを進める上では、顧客の意思決定を助けるという意識も大切にしましょう。

Appleの創業者のひとりである故スティーブ・ジョブズ氏はこういう言葉を残しています。
「情報が完全に過多になり、人々が受け取る情報に圧倒されている世界では、ブランドがさらに重要になる。
人々には、日常生活のすべての事柄について選別している時間はない。
ブランドは、その選別を助けてくれる」

出典:林 信行『スティーブ・ジョブズ 成功を導く言葉』,青春新書INTELLIGENCE,2009

不安の広がる昨今の社会情勢では、さまざまな情報が錯綜し、人々の不安を解消しようとするさまざまな商品が市場に現れます。
そんな状況下だからこそ、安心・安全を象徴するブランドの存在が求められるのです。

メリット2.顧客の商品購入時の安心感が増す

顧客にとってブランドが明確な商品ほど、商品購入後に起こるトラブルは発生しにくくなります。
なぜなら、ブランドが明確であるということは、「この商品なら、これくらいの効能が期待できるだろう」という商品への期待値のかけ方がわかりますし、その商品もその期待に応えてくれやすいからです。


また、ブランドが明確である商品は、さまざまなプロセスを経てブランドが築かれてきたという信頼感があります。
何より、ブランドを築くためには顧客との信頼関係の構築が必要ですから、ブランドを大切にする企業の多くは、顧客からのクレームにも真摯に向き合うでしょう。
そのため、顧客にとってブランドが明確な商品を購入することは安心・安全の面でもメリットが大きいのです。


さらには、顧客は特定のブランドの商品を買い続けることで、その商品の価値についてより深く理解できます。
たとえば、使い慣れたノートPCと初めて使うノートPCとでは、その使いこなしにどうしても差が出てしまうのと同じです。
ブランドを軸に商品を選ぶ消費者の多くは、その商品の価値を十二分に享受できるようになり、さらに購買体験の満足度が高まるのです。

メリット3.ロイヤルカスタマーが増える

ロイヤルカスタマーとは、ブランドに対して長く強い支持を示してくれる顧客のことです。
上記の「1」で説明したとおり、顧客は膨大な情報の中から、どの情報を選択すべきかに大きな労力を使っています。
そのため、もし一度あなたのブランドの商品を使いその使用感に満足したならば、その商品だけでなくブランド自体のファンとなり、他の商品やサービスも購入してくれる可能性が高まります。


顧客のロイヤルティを高める方法については、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
>顧客ロイヤリティとは?5分でわかる総論と具体的な改善手順まとめ

 

また、ブランドの価値が自分以外の人にも支持されるものであると感じれば、保有している自分自身が肯定されていると感じ、ブランドメッセージを一緒に発信してくれる可能性も高まります。
このようなブランドと一体となり情報発信に熱心なファンのことを「アドボケイター(advocator)」と呼ぶこともあります。
“アドボケイト(advocate)”は翻訳すると「擁護者・支持者」、”アドボカシー(advocacy)”は「擁護・支持」という意味です。
そのため、アドボケイター(advocator)とは、自社のブランドや商品を熱狂的に支持して使ってくれるファンやファン心理のことを指します。

メリット4.集客コストが削減できる

顧客の心に残るようなブランド体験を提供していれば、何かの商品の購入を検討している顧客にとって想起される存在になれます。
想起される存在とはすなわち、記憶される存在でもあります。
そうなれば、認知のための広告コストが削減できるだけでなく、集客のためのコストも削減できます。
また、先ほどの3つ目のメリットで解説したように、ロイヤルカスタマー自身が情報発信に積極的になってくれることでも集客コストを削減できます。

メリット5.市場での競争から脱却できる

ブランディングを進める最初の段階で、ブランドとして「顧客から選ばれる理由」を明確に設計できていれば、その設計そのものが独自のポジションを得ることにつながります。
また、顧客の心に残るような良質なブランド体験を提供し続けることで、顧客は競合他社との比較をすることなく、あなたのブランドを信じて選び続けてくれるかもしれません。
さらには、市場での競争に巻き込まれないことで、広告へのコストを抑え、商品のブラッシュアップにリソースを投じることができるようになります。
そうなれば、商品の魅力はさらに高まり、ロイヤルカスタマーが増え、まさに理想的なビジネスサイクルを生み出せるでしょう。

ブランディングの科学』の著者であるバイロン・シャープが提唱した「ダブルジョパディ(Double Jeopardy)の法則」によると、市場競争が激しい業界においては、顧客へのブランド浸透率を高めることが、購入される確率だけでなく購入頻度を高めるといわれています。
市場における競争が激しい業界ほど、ブランディングとしっかり向き合うことが大切です。

メリット6.付加価値を感じてもらいやすくなる

商品やサービスは、必ずしも「機能」や「便益」だけで、その価値を評価されているわけではありません。
ブランドが発信するメッセージや浸透度によって、機能や便益以外の「付加価値」が生まれることもあります。
たとえば、価値には以下の2つの価値があるといわれています。


1.機能的価値
商品のスペックや使いやすさといった、文字どおり、機能に由来する価値
2.情緒的価値
その商品への愛着や、商品のつくり手や売り手側の「思い」や「哲学」などに共感することで生まれる心理的な価値

「長持ちする」という機能的価値の製品があった場合、顧客は長く使い続ければ使い続けるほど、その商品に愛着を抱いたり、「物持ちのよい商品を買った」という達成感をおぼえるようになります。
この心理的な価値こそが情緒的価値です。
情緒的価値は顧客の心に深く残るため、顧客のブランドに対する愛着がより深まるきっかけとなります。
情緒的価値を感じてもらうには顧客との深い関係性の構築が欠かせません。

メリット7.高単価で商品を展開しやすくなる

その商品やサービスのカテゴリにおいて、顧客がそのブランドを選ぶ理由を「価格が安いから」ということだけにしてしまうと、常に価格競争に巻き込まれる状態になります。
顧客に選ばれる理由が「安さ以外の価値」であれば、顧客は高単価であっても、そのブランドを選んでくれるはずです。


たとえば、バッグというカテゴリで考えた際、「物をよりたくさん持ち運ぶことができる」のがバッグの機能的な価値だとすると、そのバッグを持っていること自体が顧客のステータスになるといった情緒的な価値が合わさることで、ハイブランドやラグジュアリーブランドと呼ばれる高単価の商品に生まれ変わります。


ただし、必ずしも高単価で販売することがよいわけではありません。
ブランドの在り方として、より多くの人に商品を届けたいという場合、あえて低単価での販売を選ぶこともあるでしょう。
ただし、低単価での販売においても、選ばれる存在になるためにブランディングは重要です。

メリット8.従業員やチームメンバーのモチベーションが向上する

ブランドが発信するメッセージが公に認知されることで、その企業で働いている従業員やブランドに関わるチームメンバーのモチベーションが大きく向上します。
その理由は大きく分けて2つあります。

  1. ブランドが発信するメッセージ自体に従業員が強く共感することで、そのブランド価値を体現する一員となれていることへの喜びが生まれる
  2. ブランドが発信するメッセージが市場において高い浸透率を誇り、多くの人に支持されていれば、その企業の一員として働けている(関われている)自分への自己肯定感が高まる

従業員のモチベーションが高まるブランドとなれば、そのブランドの体現者となるべく、従業員のパフォーマンスも向上し、市場でのブランド価値がさらに高まるという好循環が生まれます。

3.ブランディングで目指すべきゴールについて

ここであらためて、ブランディングで目指すべきゴールについて考えましょう。
ブランディングで目指すべきゴールとは、以下の3つの言葉に集約できます。

  1. 自分たちが顧客からどう思われたいかという「ブランドアイデンティティ」を考え、実現する
  2. 顧客に想起され続けるブランドになることで、市場における「競争優位性」と「長期的な収益性」を確保できる基盤をつくり、それらを維持し続ける
  3. 自社が対象とする顧客にブランドを正しく認知してもらい、顧客のニーズと自社のブランドとのミスマッチを防ぐ

ここで大事なのが「3」のミスマッチを防ぐことです。
自社ブランドを必要としていない人に、自社ブランドの商品が必要であるかのように伝わってしまうのは、顧客の購買体験を悪化させ、クレームやネガティブな口コミへと発展する恐れがあります。
とくに「ブランディング=メディア戦略」と捉えているとミスリードを生みやすくなります。


なぜなら、顧客が自社のブランドを求めているかどうかに関わらず、メディアを通してできる限り多くの人にブランドを認知してもらおう、と考えてしまうためです。
多くの人にブランドを認知してもらうことは悪いことはではありませんが、単に認知を拡大することがブランディングのゴールではありません。
市場において、顧客がブランドを正しく「区別」し、自分にとって必要なブランドを選べる一助となることも、ブランディングの一環なのです。

4.ブランディングの流れと具体的な進め方

それではここからは、ブランディングを具体的に進めていくためのプロセスについて説明します。


ブランディングのプロセスとは、自分たちが何者であり、どの市場でどんな価値を提供するかを考え抜くことから始まります。それは「自分たちらしさ」を見える化するプロセスでもあります。
自分たちらしさを定義することにより、競合との差別化が実現され、あらゆる行動にブランドとしての「一貫性」が生まれます。

ブランディングの具体的な流れを示した図

ステップ1:自分たちが目指す姿を決める(ブランドポジションを決める)

ブランドポジションを決めるためには、「どの市場」で「どんな価値」を提供するかを考え抜きます。

その価値は「自分たちならではの価値」でなければいけません。
競合と比較し、どんな優位性のある価値を提供できるのか、「機能的価値」「情緒的価値」両方の面から考え抜きます。
その自分たちならではの提供価値こそが、市場における「自分たちらしさ」につながります。

また、あらゆる価値は「一貫性」と「持続性」をもって提供されし続ける必要があります。
刹那的な価値提供では、顧客の記憶に残りにくく、ブランドの想起・連想につながりません。

よって、自分たちがどんな価値を「継続して」提供し続けられるのかを知るために、「自分たち」の本質とあらためて向き合うことが大切です。

●1.自分たちとあらためて向き合う

自社が掲げる「ビジョン」「ミッション」「バリュー」、さらには「パーパス」とあらためて向き合いましょう。
とくに「ミッション」や「パーパス」は、その企業が存在する本質的な目的を指します。
その本質的な目的こそが、ブランドを維持するための強力な基盤となります。

そして、組織のリーダーである経営者の思いに立ち返ることも大切です。
経営者の思いは、組織の価値観・哲学に大きく影響します。
経営者自身が自社の商品やサービス、さらには企業そのものについて、どんな意思をもっているのかをあらためて確認します。

また、従業員の思いにもしっかりと目を向けます。
顧客とのコミュニケーションの最前線に立つのは従業員です。
つまり一人ひとりの従業員はブランドの体現者であり、ブランドの伝道者(アンバサダー)でもあるのです。

従業員が自社の商品・サービスに対してどんな思いをもっているのか、また、従業員が考える自社の商品やサービスの価値とは何なのかを紐解いていきます。

●2.顧客とあらためて向き合う

究極的に、ブランドは顧客の心の中でつくられます。
ブランドは「企業だけのもの」ではありません。
なぜなら、ブランドは企業と顧客、相互の関係性の中でつくられていくものだからです。

よって、過去の顧客との取引において、顧客が自社に対してどんな印象を抱いているのかをリサーチしましょう。


定性調査、定量調査、さまざまな方法で、顧客が自社に抱いているブランドイメージを見える化します。
その過程において、自社が気付いていない、自社の思わぬ価値だけでなく、市場で求められている新たな価値が見えてくるかもしれません。

ステップ2:自分たちらしさを言語化する(ブランドコンセプトを決める)

「ブランドコンセプト」とは、ブランドの概念を言葉にしたものを指します。
また、「ブランドアイデンティティ」とは、そのブランドを印象付けるための、立ち振る舞いや見せ方といった「個別の要素」を指します。

自分たちが目指す姿である「ブランドポジション」が決まったあとは、ブランドコンセプトを明文化しましょう。
ブランドコンセプトはできるだけ簡潔で明快であることが望まれます。

ブランドコンセプトの例

  • ダイキン工業:「空気で答えを出す会社」
  • プライベートジムであるRIZAP(ライザップ):「結果にコミットする」

ステップ3:自分たちらしさを「表現」「行動」で可視化する(ブランドアイデンティティを決める)

「ブランドアイデンティティ」とは、そのブランドを印象付けるための、立ち振る舞いや見せ方といった「個別の要素」を指します。
この要素には「言葉遣い(バーバルアイデンティティ)」や「ビジュアルのルール(ビジュアルアイデンティティ)」などが含まれます。
ブランドアイデンティティが決まったタイミングで、全社で共有して活用できる「ブランドガイドライン」をつくることも検討してみてください。

ブランドアイデンティティ決定後にブランドガイドラインを作成する流れを示した図

●1.バーバルアイデンティティ

商品説明、プレスリリース、顧客とのメール、対面でのコミュニケーションなど、言葉が必要なあらゆる場面において、どんな言葉遣いをするかを決めます。
言葉は手軽に使える一方で、人々の心に残りやすく、慎重に用いる必要があります。


また、言葉には温度も宿ります。
細かいケースでは、漢字ひとつとっても「致します」を用いるのか「いたします」という平仮名にするのかによって、その企業の印象が違って見えます。
どんな言葉遣いがベストかは、そのブランド次第です。
「自分たちらしさ」を体現でき、顧客との良好なコミュニケーションが実現できる言葉遣いとは何なのかを考え抜きましょう。

●2.ビジュアルアイデンティティ

商品やサービスのデザイン、広告物や印刷物において、「自分たちらしさ」が伝わる視覚的訴求をおこないます。
ロゴマークからWebサイトに至るまで、あらゆるビジュアルに気を配りましょう。
とくに重要なのが「ブランドカラー」です。
色は顧客の印象に強く残るため、あらゆるブランドがブランドカラーを大切にしています。


また、フォントのルールや写真の選び方、さらにはデザインにおける「余白感」に至るまでルールを設定しましょう。
細部へのこだわりはブランドの印象をより強くするだけでなく、品質に対する信頼感にもつながります。

●3.コミュニケーションデザイン

ブランドは顧客の心の中でつくられます。
よって、顧客とのあらゆる接点で、どんなコミュニケーションを続けるかはとても大切です。
「自分たちらしさ」が体現された上で、顧客に快適な体験を届けるには、どのようなコミュニケーションを続ければいいかを考え抜きましょう。
問い合わせ対応、購入後のアフターフォロー、コミュニティへの貢献、イベント企画、広告の出稿、さまざまな場面でどう行動するか、その指針を定めておくことが大事です。


また、「あえてこの行動はしない」「今の段階ではこのチャネル(媒体、経路)は使わない」といった判断も必要になるかもしれません。

たとえば、HubSpotが大切にしている「カスタマーコード」は、顧客とのコミュニケーションにおいて守るべき指針を言語化しています。
>HubSpotの「カスタマーコード」について

HubSpotのカスタマーコード

  1. 無理やり関心を引こうとせず、顧客を惹きつける魅力を創造すること
  2. 理想の顧客像としてではなく、ひとりの人間として対応すること
  3. 自社のためではなく、顧客の成功のために課題を解決すること
  4. 顧客情報は顧客の利益のために活用し、自社の利益のために悪用しないこと
  5. 顧客からのフィードバックを求め、受け止め、行動に移すこと
  6. 素直に非を認めること
  7. 顧客自身で解決し成功できるように支援すること
  8. 価値や料金は曖昧にせず、簡潔明瞭に伝えること
  9. 去るものは引き止めないこと
  10. 困難なときでも、正しい行いを心がけること

ステップ4:ブランディングの成果や状況を評価する

ブランディングの指針を決め、行動に移し始めたあとは、定期的にブランディングの成果を振り返り、評価しましょう。
評価をおこなう際は、「顧客目線」と「自社目線」を意識します。

●1.顧客目線での評価

顧客目線においては、商品やサービスの売れ行きを見るだけでなく、顧客のヒアリングを定期的におこない、自社の印象をどう感じてもらえているかを調査します。
ブランディングで大事なのは、認知をとる以上に、そのブランドについて深く理解してくれている顧客を増やすことです。
よって、定量的な調査以上に定性的な調査を意識することが大切です。
また、機能的価値と情緒的価値の観点で、顧客のニーズを満たせているかも確認しましょう。

さらには、SNSなどの口コミを収集することで、自社のブランドが市場でどのように受け入れられているかをチェックします。

市場は常に変化しますし、顧客もそれに合わせて変化します。
よって、ブランドもその変化にできるだけ対応することが必要です。

定期的な振り返りを重ねることで、ブランドの微調整がしやすくなります。
独りよがりなブランドになった結果、気がついたときには市場での存在感(プレゼンス)が失われていた・・・ということがないよう、ブランディングの成果の振り返りは定期的に実施するのがよいでしょう。
(ただし、ブランドには一貫性と持続性が求められます。よって、変化を模索する際には、中長期的な観点で「本当に変化すべきかどうか」を検討しましょう)

●2.自社目線での評価

組織として、ブランドに合った行動をとれているか、ブランドコンセプトは浸透しているかを評価します。
とくに従業員へのブランド浸透度を測るのは必須です。
なぜなら、従業員は顧客とのコミュニケーションの最前線に立つポジションであり、ブランドの伝道者(アンバサダー)でもあるからです。
従業員へのブランド浸透度は、全体のブランディングの成果に大きく関わってきます。

●3.外部のビジネスパートナー目線での評価

力のあるブランドは、周囲のビジネスパートナーにもポジティブな影響を及ぼします。
たとえば、外部のビジネスパートナーがどれだけ自社のブランドを認知してくれているか、そして、どのようなポジティブな影響を受けているかを確認することもよいでしょう。

選ばれ続ける組織になるために

多くの商品やサービスが市場に存在する今、顧客に選ばれるだけでなく、顧客に「選ばれ続ける」存在になることが重要です。
そして、選ばれ続けるためには、「このカテゴリなら、あの会社の商品が一番だ」と常に想起してもらえるブランドになる必要があります。

ブランドは「無形のマーケティング資産」とも呼ばれます。

資産と聞くと、一夜にして大きな資産を築けるイメージを抱かれる方もいるかもしれませんが、ブランドという資産は、一朝一夕で築き上げられるものではありません。
顧客とのあらゆる接点において、顧客に約束した価値をしっかり提供していく。
その地道な行動こそが、顧客から愛されるブランドを育ててくれるのです。

ブランドを大切にする企業が増えれば、社会全体の心理的安全性は高まります。
なぜなら、約束をきちんと果たしてくれる企業が増えれば、安心して買い物ができる人が増え、経済活動がより安定するからです。

この記事が多くのブランド誕生のきっかけになれれば、これほどうれしいことはありません。

私たちHubSpotも自分たちのブランドを大切に育て続けます。
ぜひ、あなたのブランドストーリーも聞かせてください。

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効果的なブランドガイドラインの作り方

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元記事発行日: 2019年2月13日、最終更新日: 2023年8月23日

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