広告代理店がスコープクリープを防ぐためのクライアントとの交渉術

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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新しくプロジェクトを開始するのは気分の良いものです。チーム全員が一丸となって、自分たちが誇る質の高いサービスをクライアントに提供しようと張り切ります。ですがそれでも、クライアントから試練を突きつけられることがあります。

それはプロジェクトを開始して間もない頃に依頼される、わずかな調整から始まります。この時点では皆、「大した話ではない」と思っています。

しかし、プロジェクトも終盤に近付く頃になって、クライアント側の担当者に「戦略の立て直しが必要だ」と言われることもあります。クライアントにしてみれば、これらすべての調整や見直しは、当初のプロジェクトの、そして予算の範囲内でしかありません。

そして恐ろしいのは、このクライアントの主張がたいていの場合、まかり通ってしまうことです。これは企業の収益を直撃します。Deltekによる、広告代理店のワークフローに関する調査によると、広告代理店の38%は、スコープクリープによって支出が予算を超過することがあると回答しています。

また、スコープクリープの防止は収益の確保における最重要課題と回答した広告代理店は、全体の63%に上ります。

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この記事では、スコープクリープにお悩みの広告代理店の方に向けて、プロジェクトの範囲が当初の予定から拡大した場合に、スケジュールの変更と予算の追加をクライアントに認めてもらう方法について説明したいと思います。

1)スコープの変更に必要な手続きを作成する

クライアントとのあいだでプロジェクトのスコープについて交渉する際に、決定したスコープを変更する場合の手続きについても決めておきましょう。これによって、プロジェクトおよびその予算を、クライアントが際限なく拡大できるわけではないことを、関係者全員に理解してもらうことができます。

また、プロジェクトの進行中に新しい要件が発生したり、優先順位が変わって、スケジュールや予算に影響する場合にどうするかを、クライアントと一緒に話し合う良い機会も得られます。

SOW(Statement Of Work:作業範囲記述書)に変更の手続きについて記述しておくと、実際に変更が発生したとき、そのSOWを見せるだけで納得してもらえるため、クライアントの気分を害することなく、簡単に承認を得ることができます。

たとえば、無料の画像素材集を使用するとSOWに記載されているにもかかわらず、Gettyの画像を購入するとクライアントが言い始めたとしても問題ありません。SOWにある変更手続きに従い、Gettyの画像を購入することを認める旨と、その予算額を記載したEメールを送信するよう、クライアントにお願いすればよいのです。

そして、クライアントが決めた予算内で購入できる画像をいくつか送って選んでもらうとよいと思います。

このように、些細な変更ではあるけれども追加の予算が発生する場合、どう対処するべきかクライアントに毎回相談する必要はありません。予算やスケジュールに変更が出る場合に取るべき手続きをSOWに記載し、それをクライアントに提示して処理してもらえばよいのです。

ただし、変更の手続きをSOWに記載しておくというやり方は、変更の規模が小さい場合は問題なく機能しますが、戦略が変更になるほど規模が大きい場合は十分でないかもしれません。

ですから、戦略を立て直す場合や、プロジェクトに大規模な変更を加える場合に備えて、その変更を提案する権限を持つ人を決めておくなどし、スコープを大幅に変更する際の高度な手続きにも対応できるよう、検討する必要があると思います。

2)スコープをチェックするポイントを決めておく

キャンペーンに必要な制作物がすべて完成する頃になってから、クライアントに変更の承認をお願いしたのでは遅すぎます。変更をチェックするポイントを計画しておくことで、変更による影響が肥大化し、クライアントにネガティブな印象を与えてしまう前に、承認を依頼するようにしましょう。

たとえばウェブサイトを新しく構築するのであれば、そのドラフト版が完成したときにチェックするとよいと思います。そうすれば、「オンラインストアの機能を追加したいと伝えるのを忘れていた」とクライアントに後から言われたとしても、大問題にならずに済みます。

チェックポイントを計画しただけでは、スコープクリープを回避することはできません。ですが、プロジェクトを納期までに終えることがほぼ不可能になってしまう前に、スケジュールについてクライアントと再度交渉することができるはずです。

オンラインストアの機能を追加するほど変更の規模が大きい場合、SOWに記載した手続きだけでは不十分ですので、より重大な変更のための手続きに従う必要があると思います。

この例の場合であれば、広告代理店としての専門性を発揮し、オンライン決済やショッピングカートなどの機能を追加することが、プロジェクトの当初の予定にどれほど大きな影響を与えるかを詳しく説明する必要がありますので、チェックポイントを決めて早めに確認することが重要だと思います。

3)重要なタスクをSOWに記述し、クライアントに理解してもらう

もう1つ例を挙げます。クライアントの顧客層について、要件や興味の対象を時間をかけて調査およびテストを実施し、プロモーションする製品を決定したのち、そのランディングページの概要をクライアントに説明したところ、その製品ではなく新製品をプロモーションするよう予定を変更したいと言われたとします。

このような場合、プロジェクトの実施に必要なタスクおよびそのタイムラインをSOWに最初に記述しておくことで、計画を変更する時点ですでに完了している作業量と、その作業が計画の変更によってすべて無駄になってしまうことを、クライアントに理解してもらうのにかなり役立ちます。

そうすれば、完了している作業に対して費用を支払ってもらうための交渉や、プロモーションする製品を変更するための予算の追加、およびスケジュールの変更のための交渉を、優位に進めることができるはずです。

スコープクリープはどの企業でも普通に起こり得ることです。クライアントの方から広告代理店に気を遣ってくれることはありません。広告代理店の方が不利益を被ることがほとんどです。予定外の作業を依頼したり、プロジェクトが半分近くまで終わった時点で予定を変更したりしても、それを自分たちの問題とは思っていないかもしれません。

ですから、広告代理店の方からクライアントに理解してもらえるよう働きかけなければ、収益を守ることは難しいと思います。

ウェブ制作会社とマーケティング代理店の組織作りガイド
編集メモ:この記事は、2016年6月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Jami Oettingによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

トピック: 代理店ビジネス

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