2019年総務省通信動向調査によると、自社サイトを開設している企業は約9割 にものぼります。

しかし企業サイトの運用状況を調査した2014年の統計では、定期的に情報提供を行っている(情報を更新している)企業は4割 を下回っています。つまり過半数の企業は、Webサイトの利点である「更新性」を活用できていない可能性があるのです。
定期的に更新されないと、検索エンジンでの露出が減り、結果閲覧してもらえる機会を逃してしまいます。Webサイトを定期的に更新し、新着情報や有益なコンテンツが豊富になれば、検索エンジンは「検索ユーザーにとって有益なWebサイト」と判断し検索順位も上がりやすくなります。
更新を外部企業に依頼するのも1つの手段ですが、自社内で更新できる体制を構築しておくと、ちょっとした更新や修正をスピーディに実施できます。外注しなくなる分コストを抑えられるというメリットもあります。
CMS(コンテンツ管理システム)の登場によって、Webサイトの更新性は大きく飛躍しました。プログラミングの知識がなくても、誰でもコンテンツが作成できるようになり、外注しなくても社内で運用できるようになったのです。現在では種類も増え、自社の目的や社内状況に合ったCMSを選ぶことによって、無理なく定期的な更新ができるようになります。
現在は多種多様なCMSが存在します。機能、費用、使いやすさなど様々な条件を精査した上で、自社に最適なCMSを選ばなければいけません。
本記事では、無料、有料に分類しておすすめのCMSをご紹介します。
どのCMSがよく利用されているのか?
最初に、市場占有率の高いCMSを知っておきましょう。代表的なCMSのシェアや特徴を知っておくことで、自社のWebサイトを運用する目的と一致するCMSを選ぶ助けになります。
CMSと非CMSの導入数推移
Internet Live Statの推定によると、現在全世界には約18億ものWebサイトが存在しており、そのうちアクティブなWebサイトは1億7,000万だと推測されています。

※このグラフは、アメリカのWebテクノロジーを調査している W3Techsの統計 をもとに作成したものです。
2011年から2020年の9年間に、Webサイト全体のなかで、CMSを導入していないサイトと、CMSを導入しているサイトの割合がどのように推移したかを示しています。紺色の線がCMSではないWebサイト、他の線はWordPressやShopifyなどシェアトップ5を占めるCMSです。
2011年にはCMSを使わないで構築されたWebサイトは、総Webサイトの3/4以上、76.4%を占めていました。ところがそこから9年後の2020年には38.7%にまで減少し、CMSのひとつであるWordPressの39.1%に逆転されています。ここから、Webサイトの主流が徐々にCMSに移り変わってきていることが読み取れます。
CMSの市場シェアは?
Zion Market Research の調査 によると、世界中のCMS市場は年率16.7%の割合で成長を続けており、2026年までに1,235億ドルの市場規模に到達することが見込まれています。CMS市場の内訳について詳しく見ていきましょう。
WordPressの市場シェアは6割超え
このグラフはW3Techsの2020年12月の統計をもとに作成したものです。世界中のCMSのトップ5のシェアは以下のようになっています。

CMSにおいては、WordPressの1強の状態が続いていますが、WordPressに続くCMSのシェアには、近年大きな変化が起こっています。 長らくWordPressに次ぐシェアを持っていたJoomla!とDrupal がシェアを落とし、新しく登場したShopifyやWixが成長を続けているのです。
W3Techsの統計 をもとに作成した2011年から2019の推移のグラフの中で、WordPressを除いた2位~5位のシェアの推移を抜き出してグラフにしました。WordPressが含まれるとわかりづらいのですが、2位~5位に焦点を当てると、CMSのトレンドの移り変わりがはっきりと表れています。

Joomla!もGrupalも、WordPressと同じくオープンソースのCMSです 。オープンソースとは、ソフトウェアのソース(設計図)を公開し、再編や再配布を可能にしたソフトウェアということです。
基礎的なプログラミングの知識は必要ですが、自社の目的に合わせ、CMSを自由にカスタマイズできるという面で、オープンソースのCMSは大きなメリットがありました。以下、それぞれの特徴を見ていきます。
大型サイト構築に強いJoomla!
そのなかでもJoomla!は、運用がWordPressに比べて複雑で上級者向けだったため占有率こそ低かったものの、10,000ページ以上の大型サイトに強いと評価されてきました。運用に知識やスキルが必要な分、高いカスタマイズ性があり、大企業を中心に、今日でも根強い人気のあるCMSです。
セキュリティに強いDrupal
Drupalは、多言語対応・セキュリティの強さから政府サイトなどでも利用されていました。会員サイトの構築ができるなど、多くの機能を持ち、さらにマーケティングツールなど外部の機能と連携することもできる、拡張性に優れたCMSです。反面WordPressやJoomla!よりもさらに高いスキルが求められます。
ECサイト向けのCMS Shopify
古くからあるオープンソースCMSがシェアを落とし、急激に伸びているのがShopifyです。
Shopifyは、世界最大のEコマースプラットフォームであるShopify社が提供する、Eコマース向けのCMSです。
Shopifyの大きな特徴は、SaaS型のプラットフォームだということです。SaaS型とは、ユーザーがソフトウェアをダウンロードするのではなく、クラウドサーバーにアクセスして利用するものです。セキュリティやWebサイトの管理などを心配することなく、月額29ドル~299ドルを支払って利用するスタイルです。
現在は英語圏の利用が中心で、日本ではまだあまり知られていませんが、今後伸びていくことが予想されます。
経験ゼロでも簡単に利用できるWix
Wixも成長を続けているSaaS型の有料CMSです 。まったくの初心者であっても心配せずにサイト作成ができるように設計されていて、月額13ドル~39ドルを支払うとあらゆる技術的な問題をWixに任せることができます。日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは個人起業家や中小企業を中心に、利用者が急増しています。
日本国内のCMSシェア
次に、日本国内でのCMSのシェアを見ていきましょう。
データ管理を行う DataSignの2020年9月の統計 によると、日本取引所の上場銘柄一覧に含まれる企業のうち3,680社でCMSが利用されており、その内訳は以下のようになっています。

8割強に当たる3,003社がWordPressを利用していますが、特徴的なのはWordPressを除く上位に ShareWithとMovable Typeという2つの国産CMSが利用されていることです 。くわしくはのちほど紹介しますが、共にオープンソースではなく有料のCMSです。国産CMSのため、サポートや管理を安心して任せられることから選ばれていると考えられます。
CMS市場のトレンドは?
CMS各種の市場シェアと9年間の推移から、CMSの現状は以下の4点にまとめられます。CMSを選択する上での参考にしてください。
- CMSはあらゆるWebサイトで活用されるようになっており、CMSを使わないWebサイトは、今後ますます減っていくと予想される
- CMSの中では一貫してWordPressのシェアが圧倒的に高く、CMS利用者の増加と共に増え続けている
- SaaS型のサービスとして提供される有料CMSが急速に伸びている
- 日本国内の上場企業では、WordPressのシェアは海外よりもさらに高いが、WordPress以外の選択肢として有料国産CMSを選ぶ企業もある
WordPressは基本的には無料利用が可能です。さらに、プラグインが豊富に揃っているため、多言語対応や決済機能などあらゆる機能を実装できる点が特徴です。
一方で、日本企業で導入が進む国産CMSは、管理のしやすさや日本語でのサポート体制など、WordPressにはない強みがあります。CMSを選ぶ場合は、「無料だから」「有名だから」ではなく、自社の目的に沿っているか、運用にのせられるかどうかを重視しましょう。
導入コストを抑えられる無料CMS

CMSには有料のものと無料のものがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。最初に無料CMSを見ていきましょう。
なぜ、無料でCMSを利用できるのか?
無料と聞くと「なぜ無料なのか?」「無料である分、質が良くないのではないか?」「最低限の機能しかついていないのではないか?」と不安を抱く人がいるかもしれません。しかしそのような心配は必要ありません。基本的に、オープンソースのCMSだから無料で利用できるのです。
オープンソースとは、ソフトウェアの設計図であるソースが公開され、再編集や再配布が許可されたものです。オープンソースCMSの代表的なものであるWordPressは、2003年に開発者のマット・マレンウェッグによって公開された後、今日に至るまで世界中の有志の開発者がプロジェクトに参加し、修正と改良を続けています。
無料CMSを導入するメリット
無料CMSを利用するメリットは、大きく分けて3つあります。
- コストをかけずに導入できる
- プラグインなどの追加機能の導入によって、自社に合う形でカスタマイズできる
無料CMSのデメリット
フリーCMSを利用する場合のデメリットも押さえておきましょう。
- インストールやサーバーレンタル、Webサイトの保守・管理など、すべて自社内で行わなければならない。
- CMS自体が無料であってもサーバーをレンタルしたり、ドメインを取得したりするのにお金がかかる
- 更新やカスタマイズには、ある程度のITリテラシーが必要となる
おすすめの無料CMS4選
無料CMSの中から、人気のあるものや国産で使いやすいものを中心に4つ紹介します。

WordPressは大企業から個人事業者まで、世界中で運用されているCMSです。
WordPressの導入は、以下のような企業に向いています。
- プラグインを活用して細かいカスタマイズを行いながら運用したい
- SEOを強化してサイトの検索上位を狙いたい
- HTMLやCSS、PHPについて、運用しながら勉強したいと考えている社員が多い
- Webサイトの構築を制作会社に外注したいが、できるだけコストを押さえたい


DrupalはNASAやオーストラリア政府、大学や大規模なサイトに使われているCMSです。導入の際には、ネット上で公開されている日本語の技術情報が少ないことに留意してください。
Drupalが向いているのは、以下のような企業です。
- 1,000ページ以上の大量のページ数を持つWebサイトを運用している
- 現在運用しているサイトのコンテンツが膨れ上がり、全体の整理を検討している
- セキュリティのしっかりしたサイトを希望している
- ITスキルと語学力を持つメンバーがいる

SOY CMSは国産汎用型CMSです。テンプレートを変えるだけでスマートフォンやECサイトにも対応する初心者でも使いやすいCMSです。また問い合わせやサポート(有償)を受けることが可能です。
SOY CMSが向いているのは、以下のような企業です。
- ITスキルに不安があるので、いざという時相談できるところがほしい
- メール一括配信やフォーム作成など、基本的な機能は最初からほしい
- 簡単にカスタマイズしたい

baser CMSも国産CMSです。日本の企業サイトに必要な機能を厳選しており、管理画面がわかりやすいという特徴があります。
baser CMSが向いているのは、以下のような企業です。
- カスタマイズ性が高く使いやすいCMSがほしい
- 多機能があっても迷うだけなので、自社に必要な機能だけを搭載したCMSがほしい
無料版にはない機能・サービスが豊富な有料CMS

フリーのCMSのデメリットは、インストールやサーバーレンタル、ドメイン取得の手続きなど、あらゆることを自社でやらなければならないことです。トラブルが起こっても、自力で対処法を探すしかありません。
WordPressのように利用者の多いCMSであれば情報も入りやすいのですが、情報があっても実際に自分で考え、手を動かして解決しなければなりません。情報が少ないCMSだと、なお大変でしょう。有料のCMSであれば、問題が起こってもサポートが受けられます。
有料CMSは大きくは2種類
有料CMSにはSaaS型と、パッケージを購入して社内でサーバーを管理するパッケージ型の2種類があります。
有料CMSのメリット
有料CMSのメリットは、大きく分けて以下の3点があります。
- セキュリティやサポート面で安心できる
- サーバーの契約やドメインの取得などをサポートしてもらえる
- UI/UXが無料CMSに比べて優れたものが多く、使いやすい
有料CMSのデメリット
一方、有料CMSのデメリットには以下の2点があります。
- ある程度コストがかかる
- クラウド型はカスタマイズがしにくく、パッケージ型はカスタマイズに必要な工数によって費用がかかる
おすすめの有料CMS4選
有料CMSの中から、機能性やサポートの受けやすさなどから4つを紹介します。

Movable Typeの特徴と、どのような企業に向いているかを見ていきます。
Movable Typeの特徴
- CMSには静的CMSと動的CMSがあり、現在はほとんどのCMSが動的CMSになっているなかで、Movable Typeは静的CMSにあたる
- 静的CMSはユーザーがアクセスする前の段階で、CMS上にWebページを作成し、ユーザーがアクセスした段階でブラウザに表示できるようにしたもの
- 事前にWebページが作成されているために、ブラウザへの表示が速い
- 他の有料CMSに比べると比較的安価で利用できる
Movable Typeが向いている企業
- アクセス集中が予想されるWebサイト
- できるだけ費用を抑えたい
- ITリテラシーが高くなくても使いやすく、導入後のサポートも希望している
【料金プラン】
タイプ
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料金
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特徴
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Movable Type クラウド版
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月額 5,000円~(税別)
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SaaS型で提供
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Movable Type7
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90,000円~(税別)
1サーバー・無制限ユーザー
初年度メンテナンス(1年)付属
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ソフトウェア版の汎用型
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Movable Type Workflow pack
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180,000円~(税別)
1サーバー・無制限ユーザー
Movable Type / CheckRelease 初年度メンテナンス(1年)付属
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汎用型に記事公開承認のプラグインを搭載
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Movable Type staging pack
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250,000円~(税別)
1サーバー・無制限ユーザー
Movable Type / Uploader 初年度メンテナンス(1年)付属
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CMSと公開環境を分離
クラウド/パッケージ選択可能
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ShareWithは国内の上場企業中心に、WordPressに次いで用いられている企業向けCMSです。
ShareWithの特徴
- 企業サイトに求められる機能をワンストップで提供
- 高レベルのセキュリティ&インフラ体制を構築
- マニュアルなしで、記事の編集から公開までできる
- 録画して二次利用が可能
ShareWithが向いている企業
- カスタマイズしないでそのまま使えるものが利用したい
- IRや採用に特化したページを求めている
タイプ
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料金
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特徴
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初期費用
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月額利用料
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コンパクト
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75万円~(税別)
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10万円~(税別)
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採用・プロモーションなど個別サイト向け
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スタンダード
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100万円~(税別)
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12万8,000円~(税別)
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コーポレートサイト
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非上場企業向け
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150万円~(税別)
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14万8,000円~(税別)
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上場企業向け
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レジリエンス
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280万円~(税別)
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24万8,000円~(税別)
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大規模災害対策パッケージ
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RCMSはSaaS型の有料の国産CMSです。
RCMSの特徴
- 250以上の機能が搭載されているオールインワン型のCMSで、プラグインやカスタマイズの必要がない
- オンラインマニュアルやサポートサイトなど、支援体制も充実
- 様々な外部システムと柔軟に連携可能
RCMSが向いている企業
- 会員サイトやECサイトなど、さまざまな機能を持ったWebページが作成したい
- 既に多くのシステムやツールを導入しており、それらとWebサイトを連携させたい
【料金プラン】
プラン
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料金
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特徴
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初期費用
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月額利用料
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スタンダードプラン
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40,000円(税別)
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10,000円(税別)
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SaaS型
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仮想専用サーバプラン
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80,000円(税別)
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50,000円(税別)
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50,000円(税別)
カスタマイズ可能なSaaS型
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オンプレミス提供プラン
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1,450,000円(税別)
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ー
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サーバーインストール型
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※オンプレミス提供プランにはソフトウェアサポート費250,000円/年(税別)が必要

CMS Hubは、当社HubSpotが提供しているCMSです。

CMS Hubの特徴
- 無料で利用できるHubSpot CRMとシームレスに接続可能
- CRM機能を利用してユーザーのWebサイト上での行動を追い、個別最適化したアプローチを実施できる
- Webサイトへの流入ソースやキャンペーン、リード創造につながるコンテンツなど把握できる
- Webサイトを移転する場合は、移行完了までサポートが受けられる
CMS Hubが向いている企業
- Webサイトをマーケティングに活用したい
- Webサイトに訪れたユーザーごとに最適な提案を実施したい
【料金プラン】
プラン
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料金
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機能
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CMS Hub Professional
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月額 32,400円(税別)~
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CRMと無料で接続可能
MarketingHubと有料で接続可能
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CMS Hub Enterprise
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月額 108,000円(税別)~
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Professionalプランに加えて強力なWebアプリ環境を構築
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条件を精査し、自社の目的に合ったCMSを選ぼう
本記事ではCMSの選び方について説明しました。
コンテンツマーケティングに大きな役割を果たすCMSは、Webサイトのなかでもシェアが圧倒的に多いです。WordPressだけでなく、それぞれ特徴を持ったCMSが無料・有料とも数多くあります。
さまざまな種類の中から自社に最適なCMSを選ぶ上で、以下のチェックポイントが参考になるでしょう。
- 更新に負担がないか
- 運用コストに負担がないか
- 自社サイトに必要な機能が備わっているか
- UXの面で自社サイトの内容に適合しているか
更新しやすく、またWebサイトの訪問者も利用しやすいCMSを探してください。

