3月11日、世界保健機関(WHO)によって新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが宣言されました。宣言から丸1四半期以上もの間、企業はCOVID-19の経済的影響を鑑みながらの経営を迫られています。

刻一刻と変化する状況に対応する企業の皆様に有用なベンチマークを提供するべく、HubSpotではこの数か月間、主要パフォーマンス指標データを週単位で発表してきました。2020年4月〜6月期が終了しましたので、今回はこの数ヶ月ほどの動きを振り返り、状況を共有したいと思います。

3月時点と比較したビジネスの状況の変化、新しい社会状況の中でのマーケティングと営業の変化、成功した取り組みと上手くいかなかった取り組み、定着した変化などについて見ていきましょう。

本レポートでは買い手の関心、マーケティングチームと営業チームによる顧客とのコミュニケーションの状況、総合的な営業活動の成果を詳しく振り返ります(先に結論を言うと、関心の高い見込み客は数多く存在しますが、その見込み客と信頼関係を築くためには営業チームの工夫が必要です)。また、現状で企業が最も注力すべきと思われる取り組みをご紹介します。

今後何が起きるか、HubSpotが正確に予測することはできませんし、この先どうなるかはだれにもわかりませんが、HubSpotの顧客データを元に作成した本レポートが少しでもお役に立てば幸いです。なお、ここでご紹介しているデータは、HubSpotのインタラクティブマイクロサイト(英語)からもご確認いただけます。

本ブログ内には2種類のデータが含まれます。まず、四半期間の比較データは、2020年4月〜6月期の週次データ平均値から算出した基準値と、2020年1月〜3月期の週次データ平均値から算出した基準値を比較したものです。

2つ目は「COVID-19以前のベンチマーク」に対する各週の水準データです。「COVID-19以前のベンチマーク」は2020年1月13週から3月2週の週次データの平均値です。

データはHubSpotのお客様の状況を集計したものであり、HubSpotを含め、個々の企業の実際のパフォーマンスは、市場、顧客基盤、業界、地域、規模その他の要因に応じて異なる可能性があります。また、業界別のデータが含まれていますが、HubSpotはすべての業界の動向を調査しているわけではなく、HubSpotによる業界の分類が一般的な分類に対応していない可能性がありますのでご留意ください。ご紹介するデータは、明示がない限りグローバル全体の傾向を示しています。

現況:2020年4月〜6月期の概略

2020年1月〜3月期(以下「Q1」)に、COVID-19により経済活動の停止を余儀なくされた時点で既にオンラインプレゼンスを確立していた企業は、明らかに有利な立場にありました。それは、着実に高まり続ける買い手のエンゲージメントに対応し、オンラインで買い手の関心を高めることができたからです。

しかし、実際に買い手と企業のコミュニケーションが始まると、さまざまな問題が生じてきます。マーケティングチームは未曾有の危機における混乱と混沌の只中でも見込み客の関心を維持しなければならない状況下に置かれ、突然の自粛生活で1日中コンピューターにかじりつくことになった買い手への対応にも追われることになりました。結果、Eメールの送信数は、大幅に増大しています。多くのEメールを送信することは開封率を維持するうえで通常は禁じ手ですが、今回に関しては開封率も向上しています。これは、提供しているコンテンツが買い手のニーズに沿っており、内容も有益であることを示しています。

一方で、営業チームはあまり好ましい成果を上げられていません。世界中の営業担当者の皆様が確実な売上を上げることが難しくなり、強いストレスの下で営業活動を強いられている事態をHubSpotは痛いほど理解しています。こうした状況下で、見込み客へ向けたコミュニケーションの量は大幅に増加しています。営業チームのEメールの送信数は、COVID-19以前のベンチマークと比較して最も大きな週には70%増加していますが、返信率に関しては厳しい結果が続いています。つまり、マーケティングチームは見込み客とつながることができているものの、営業チームはそれができていないということです。COVID-19との共存を余儀なくされた次の四半期では、この点を改善することで大きなビジネスチャンスが見込めるでしょう。

2020年4月〜6月期にCOVID-19が企業に与えた影響

1. 買い手の関心

ウェブサイトトラフィック

ウェブサイトトラフィックは、直近3か月で最も高いパフォーマンスを達成したマーケティング指標の1つです。買い手は購買までの行動をオンラインに移行せざるをえなくなったため、デジタルプレゼンスを確立していた企業がその恩恵を受けています

2020年4月〜6月期(以下「Q2」)の世界のウェブサイトトラフィックは、Q2に前四半期比(QoQ)で16%増加しています(日本のQ2におけるウェブサイトトラフィックは同13%増)。トラフィックは3月9日の週に増加し始め、4月20日の週にはCOVID-19以前のベンチマークを24%上回りピークを迎えました。その後5月から6月にかけては15~20%で推移し、6月末時点ではCOVID-19以前のベンチマークを20%上回るトラフィックに着地しています。同様の低下はQ1期末にも確認されているため、7月には再びウェブサイトトラフィックが回復することを期待しています。

顧客によるチャットでの問い合わせ

ビジネスの場が突如リモート環境へと移行してから、チャットでのコミュニケーション件数は急増しています。営業チームはチャットを中心にパイプラインを拡大させ、カスタマーサービスチームは増加する問い合わせにチャットで対応しています。

チャット件数は、2つの週を除き3月上旬から一貫して前週比増が続き、ピークに達した6月22日週にはCOVID-19以前のベンチマークを54%上回りました。Q2のチャット件数は、Q1と比較してQoQで31%増となっています。世界中で企業に対する制約が解除され続けている中、今後もチャット件数の堅調な拡大が続くかどうか注目されます。

2. 買い手のエンゲージメント

Eメールマーケティング

世界のマーケティングEメール送信数は3月9日の週に大幅に増加し、Q2を通じて高い水準を維持しています。マーケティング担当者は、Q1に比べて21%多くEメールを送信しています。送信数がピークを迎えたのは6月15日の週で、COVID-19以前のベンチマークを36%上回りました。本レポートの中でも特に驚くべき発見は、開封率も送信数の増加に伴って上昇していることです。COVID-19により通常業務が停止して以来、世界は混乱の一途をたどっています。この調査結果は、マーケティングチームがこうした状況下でストレスを抱えながらも見込み客のニーズに合った情報を発信し、存在感を発揮し続けられていることを物語っています。

Eメール開封率は、Q2を通じてCOVID-19以前のベンチマークを10~20%程度上回っています。パンデミックに際して、マーケティングEメールが非常に有効なアプローチになっていることは明らかです。このチャンスを活かせるかどうかは、営業チームにかかっています。

COVID-19の影響で、さまざまな規模の企業がEメールマーケティングに比重を置くようになった点も見逃せません。たとえば従業員数が200人以下の企業では、直近の数か月間、マーケティングEメールの送信数が最も増加しました。Q2のEメール送信数は、前四半期比で従業員数25人以下の企業が31%増加、26~200人の企業が21%増加、201人以上の企業は14%増加しました。

営業Eメール

自社に関心のある買い手を探し当てることがマーケティングチームの仕事なら、その中から見込み客を絞り込み、顧客へと成長させることが営業チームの仕事です。営業活動の成果は向上しているものの(後述)、見込み客との信頼関係構築においては明るい兆しが見られていません。

営業チームのEメール送信数は、パンデミック宣言後に爆発的に増加しました。パイプライン構築の攻勢を強めたことで、3月上旬から4月下旬にかけて送信数は増加し、Q2では前四半期比で44%増加しました。

問題は、営業Eメールに対する顧客の反応がマーケティングEメールほど芳しくないことです。マーケティングチームと同様、営業チームはパンデミック宣言後にEメールの送信頻度を上げていますが、それに対する見込み客からの返信率はマーケティングチームのようにはいかず、3月16日の週に大幅に低下して以来、COVID-19以前のベンチマークを25~30%下回って推移しています。

Q2中にはEメール送信数の変動はあったものの、返信率は前四半期比で24%低下しています。この状況から考えて、営業Eメール送信数の増加が続くと、返信率はそれに反して低下していくことが予想されます。

こうした傾向から導き出される結論は、Eメールによる見込み客とのコミュニケーションでも限度をわきまえる必要があるということです。わずか数クリックで何千通ものEメールを簡単に送信できるため、この混沌とした時期に営業チームがそれに走ってしまうのも無理はありません。

しかし、量が増えれば質を維持することが困難になります。Eメールを大量送信することで営業チームの時間は節約できても、パーソナライズしてニーズに沿った有益な内容を提供できなければ目を通してもらうことも叶わず、その活動は無駄に終わってしまいます。こうした行き違いが、実際のデータにも明確に表れています。現時点で営業チームに求められるのは、マーケティングチームと緊密に連携してEメールのエンゲージメント率の改善方法を吸収し、Eメールの送信数を大幅に削減することです。

電話による見込み客とのコミュニケーション

マーケティングと営業のEメール送信数が世界的に増加したことに反して、見込み客とのコミュニケーションのために利用する電話件数は急激に落ち込み、4月6日の週にはベンチマークを27%下回るまでになりました。以降は上昇傾向が続いており、6月中旬には電話件数はCOVID-19以前のベンチマークを9%下回る水準にまで回復しています。しかし、見込み客とのコミュニケーション件数は、Eメールと電話をあわせた合計として見ると増加しています。営業コミュニケーション手段に占める電話とEメールの比率には変化が起きており、Q1ではほぼ1:1だったものが、Q2では電話の2倍以上のEメールが送信され、Eメールに比率が偏っていることが伺えます。営業チームがこの比率をCOVID-19以前の水準に戻せば、Eメールの返信率は改善されるでしょう。

 

3. 営業活動の成果

取引の作成数

新規取引(商談)の作成数は、3月に急降下しました。これは、あらゆる企業が通常業務を停止し、パンデミックを乗り切るために業務の削減や支出配分の再検討を行う動きがあったためと推測できます。世界的には4月6日の週、新規取引の作成数はCOVID-19以前の水準と比べて30%減少し、最低水準となりました。Q2に作成された取引数は前四半期比8%減となっており、この傾向は地域と規模を問わず、あらゆる企業に共通しています。

成約数

世界的に成約数は回復傾向にあり、6月22日の週はCOVID-19以前のベンチマークを8%上回りました。4月6日の週はCOVID-19以前のベンチマークを36%下回っていましたが、それ以降の13週のうち11週は前週比増を達成しています。

Q2の成約数をQ1と比べると、取引作成数がCOVID-19以前の水準に戻るペースよりもわずかに遅れています。Q2の成約数はQ1から11%減少しています。取引作成数が成約数につながる基本指標であることを考えると、これは自然な流れです。

地域別に見ていくと最も回復が早いのはアジア太平洋地域で、Q2の成約数は前四半期比6%減です。ベンチマークを最も大きく下回っているのはEMEAの17%減で、中南米と北米はそれぞれ13%減、9%減の減少となっています。

企業規模で見ると、従業員数25人以下の企業ではQ2の成約数は前四半期比5%減に抑えられています。従業員数26~200人の企業では17%減、201人以上の企業では前四半期比16%減となっています。

取引作成数と同様、成約数のばらつきは業種別で見ると最も大きくなります。2つの業界で成約数がCOVID-19以前のベンチマークよりも増えている一方で、5つの業界では以前とはほど遠い低水準が続いています。HubSpotが調査している各業界の状況は次のとおりです。

6/29週にCOVID-19以前のベンチマークを上回っている業界と対ベンチマーク比増加率

  • コンピューターソフトウェア:174%増
  • 建設:10%増

6/29週にCOVID-19以前のベンチマークを下回っている業界と減少率

  • 消費財:1%減
  • 製造:2%減
  • 人材:7%減
  • エンターテイメント:31%減
  • 旅行:32%減

 

取引作成数と成約数の2つを長期にわたって堅調に維持できるかどうかは、今後COVID-19の生物学的事実の研究がどの程度進むかに左右されます。この事実解明が2つの指標に及ぼす影響は、本レポートで紹介したどの指標よりも大きいと思われます。

また、本レポートのすべてのデータは経済活動全体の健全性を示すものではなく、現時点での企業動向に対する概略であることをご留意ください。なお、本データはHubSpotのお客様から収集したものであり、経済全体を反映したり、個人やHubSpotのビジネスの経済状況を記録したりしたデータではありません。

 

これからのマーケティング・営業活動において企業が注力すべき3つの領域

1.オンラインプレゼンスの向上と、「見つけてもらった」後のフォローアップの仕組みの改善

オンラインでビジネスの成長を支援するソフトウェアを販売している特性から、HubSpotはこの業界ならではの瞬間を目の当たりにしています。膨大な数の企業と買い手が必要に迫られてオンラインに移行しましたが、多くのケースでは今回が初めての取り組みでした。本レポートはHubSpotの顧客、つまり既にオンライン戦略への投資を選択している企業のデータで構成されています。

このため、現時点でまったくオンラインに移行していない企業に対してこれらのデータがどのような意味を持つのか、明確には把握できていません。しかし1つだけはっきりしているのは、3月の時点でオンラインプレゼンス(オンライン上での存在感)を確立していた企業は、明らかに有利な立場にあったということです。

この時代を生き抜くほとんどの企業にとって、今やビジネスのオンラインプレゼンスは避けて通れない課題です。ウェブサイト、ランディングページ、SNSなどあらゆる手法を駆使して、企業やブランドの存在をオンラインで買い手に知ってもらう必要があるのです。

できる限り関連性の高い有益なコンテンツを提供する、SEOに投資する、従来よりも低価格となっている広告市場を活用するなど、有望な買い手に適切なタイミングで自社の存在を知らせる方法は数多く存在します。さらにウェブサイトからの問い合わせフローの改善や、営業部門への引き渡しフローの整備、ブログ読者向けのダウンロードコンテンツの作成など、自社を「見つけてくれた」方とさらに関係を深めていくための仕組み構築も重要です

オンラインプレゼンスを確立していない企業は、ウェブサイトの構築について考えるだけで気後れしてしまうかもしれません。しかし、CMSソフトウェアがこれほど普及した2020年の現在では、シンプルなウェブサイトなら半日で、しかも無料で構築することが可能です。SNSのアカウントの作成ならもっと簡単です。

企業によって適した戦略は異なります。ウェブサイトの構築はハードルが高いという場合には、SNSのアカウントを1つ作成することから始めてみてはいかがでしょうか。ビジネスを成長させるという観点で見れば、100%アナログの手法にこだわるよりも、どんな形であれオンラインに移行する方が高い価値を得られます。

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2.チャットへの投資

多数の企業が初めてオンライン環境へと移行したことにより、ウェブチャットの需要が飛躍的に高まっています。今後の数か月でパンデミックがどのように推移するかを断言できる専門家はいませんが、影響を受けた業界の仕事の進め方が大きく変化するであろうことは、想像に難くありません。多くの企業が最近オンライン環境へと移行し、その体制を今後も継続する意向です。そして、今後はそのための投資を真剣に検討するようになるでしょう。

チャットへの投資は、急増するオンライン上の買い手の関心を惹く手段として有効なのはもちろん、長期的なビジネス拡大を後押しする効果もあります。シンプルなチャットボットを導入するだけでも、自社製品やサービスが買い手のニーズに合っているかの簡単な識別、ミーティングの自動予約、見込み客の担当者振り分け、基本的なカスタマー サービス タスクなどの作業を代行させることができ、その分、高い付加価値を生み出す活動にチームの時間や労力を多く費やせるようになります。

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3.営業コミュニケーションの質をこれまで以上に向上させる

見込み客へのコミュニケーション手段として使用される電話とEメールの比率は、かつてはほぼ1:1でしたが、パンデミック以降は1:2になろうとしています。しかし、年末年始以外の時期の返信率は歴史的とも言える落ち込みを見せ、マーケティングと営業のパフォーマンスには経済活動の停滞だけでは説明できないほどの大きな差が生まれています。電話とEメールを合わせた営業担当者の見込み客へのコミュニケーション量はQ1からQ2にかけて増加しているものの、営業Eメールの開封率からも分かるように顧客から見たその質は低下しています。

顧客をセグメント化した上で各顧客それぞれに適切な方法や内容で連絡をとったり、できる限りマニュアル作業を減らして商談の質向上に注力できるようにしたりと、工夫を凝らしてみてください。また、営業チームはマーケティングチームの戦略をうまく取り入れるとよいでしょう。コンテンツによるパーソナライズ、動画による親近感の演出、販売よりも支援することを全面に出したアプローチなど、参考になる手法はいくつもあります。

電話とEメールの比率の問題からは、営業リーダーが留意すべき根本的な原則が見えてきます。営業活動においては、行動量でが重要であることは否定できません。そのため、ソフトウェアを導入して手作業で行っていた見込み客の整理を自動化すれば、時間が節約でき、営業チームがじっくりと時間をかけ、確実に見込み客との信頼関係構築に向けて取り組めるようになります。見込み客とのコミュニケーションは、担当者個人の視点と仕組み構築両方の視点を持って改善を進める必要があります。

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元記事発行日: 2020年7月28日、最終更新日: 2020年7月29日