📋 この記事の要点
- 既存のSEO記事は、AEO(回答エンジン最適化)のコンテンツへのリライトが可能
- SEOが「検索順位の獲得」を目的とするのに対し、AEOは「AIが情報を抜き出す引用元になること」や「AIに自社サービスを推奨してもらうこと」が目的。入口が根本的に異なる
- HubSpotは「トラフィック重視の網羅性」から「AIに引用・推奨されるための明瞭さと専門性」へ戦略を転換。ビジネス成長に直結しない一般トピックの記事を大規模に削減した
- リライトの優先順位付けは「バイヤージャーニー適合度」と「製品・注力トピックとの整合性」の2軸でスコアリングし、Green/Yellow/Redの3段階に分類して進める
- AEO対応では、検索ボリュームの大きいTOFU(認知層)より、「製造業向け無料CRMは?」のような具体的なロングテールクエリに深く答えるBOFU(購買意欲層)向け記事を優先する
- AI検索で自社が実際に引用されているかの確認も優先順位付けの重要な判断材料。HubSpot提供の無料ツール「AEO Grader」で手軽にチェックできる
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AEO(回答エンジン最適化)は、ChatGPTやGoogle のAI OverviewsなどのAI検索で、自社コンテンツが回答の引用元として選ばれるように、または自社名や自社サービスが回答の中で言及されるように、最適化する施策です。
オウンドメディアを運営中の多くの企業では、すでに大量の記事を資産として持っています。AEO対応の必要に迫られて、「これまで作成したSEO記事は破棄するしかないのか?」とお悩みの担当者も多いでしょう。
結論として、AEO記事は、SEO記事のリライトで対応可能です。新規記事を増やすより費用対効果も高いので、ぜひ取り組んでみましょう。
本記事では、SEO時代の資産をAEO対応にアップデートするために、HubSpotが実際に行った優先順位付けの方法と結果をロードマップとして詳しく紹介します。「記事数が多く、どこから着手すべきかわからない」という方に向けた実践的な内容になっているので、ぜひ参考にしてください。
SEOとAEOの決定的な違いは何か?
SEOとAEOの最大の違いは「ユーザーとの接点」です。SEOは検索結果からサイトへ直接誘導するのに対し、AEOはAIを経由して自社が認知・推奨される形を目指します。 具体的なリライト手法を解説する前に、この違いを押さえておきましょう。
| 比較軸 | SEO | AEO |
|---|---|---|
|
目的 |
検索順位の上位獲得・サイトへの流入獲得 |
AIの回答に引用・推奨される |
|
評価主体 |
検索エンジン |
AIモデル |
|
重視する要素 |
キーワード・被リンク・網羅性 |
明確な定義・構造・専門性 |
|
ユーザーとの接点 |
検索結果からサイトへ直接誘導 |
AIを経由して認知・推奨される |
SEOとAEOは、読者を直接記事へ誘導するか、AIを接点にするかという「入口」が大きく異なります。SEOで意識すべきなのは、特定のキーワードで検索結果の上位を獲得している記事ですが、AEOではAIが理解しやすい情報の出し方をすることが重要になってきます。
両者は対立的な考え方ではなく、「ユーザーファーストで記事を書き、価値のある情報を提供する」というSEOの基本は、AEOにおいても同じです。そのうえで、AIの特徴を踏まえて情報の出し方を工夫することがAEOのポイントです。
HubSpotが実践したトピックの絞り込み戦略
HubSpotのトピック絞り込み戦略の核心は、ビジネス成長に直結しないトピックを切り捨て、専門領域に資源を集中させることです。 「トラフィックを稼ぐための網羅性」から「AIに引用されるための明瞭さと専門性(Clarity Over Volume)」へ、ブログ戦略を大きく転換しました。
この移行を実現するための核となったのが、大規模なトピック絞り込みによるコンテンツの剪定プロジェクトです。プロジェクトは、次のような流れで実施しました。
1. トピックガードレール(トピック選定の基準)の設定
まず、記事の選定にあたって、「扱うべきではないトピック」と「注力すべきトピック」のガードレール(基準)を明確に定義しました。
【除外対象の基準】
トラフィックに貢献しているものの、HubSpotのビジネス成長につながらない一般トピックはすべて切り捨てました。トラフィック規模が競争優位性だった時代は終わり、現在は「専門外の広範な記事がブログ全体の専門性(E-E-A-T)評価を下げる」と判断したためです。
例:
- 一般的なExcelやPowerPointの使い方
- 会計・財務(請求書の書き方など)
- 一般的な人事やキャリア開発(履歴書の書き方など)
- 一般的な自己啓発やワークライフバランス
- サイバーセキュリティ
【注力対象の基準】
CRM(顧客関係管理)ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールなど、HubSpotのビジネス成長に直結するトピックにリソースを集中させました。
例:
- MA戦略
- セールス戦略とCRMの最適化
- カスタマーサービス戦略
- データ分析とレポート
- リードジェネレーション
2. 戦略的かつ機械的なトピック選定
基準が決まったら、Claudeを活用した評価プロジェクトを作成し、既存の全記事および新規トピックを次の2つの軸で、機械的かつ戦略的にスコアリングしました。
- バイヤージャーニー:ターゲットペルソナの購買プロセスや課題に合致しているか
- 製品や注力トピックとの整合性:前のステップで設定した注力トピックやHubSpotのコア製品(CRM、Marketing Hubなど)の機能や提供価値にどれだけ直結しているか
この2軸の掛け合わせにより、トピックをGreen(維持・強化)、Yellow(要精査)、Red(非公開)の3段階に分類し、データ主導で選定を実施しました。
3. トピック選定に基づく記事の削減
各国で運営中のHubSpotブログにおいて、過去のトラフィック資産を捨てる大規模な削減を実行しました。ドイツ・スペイン・フランスなど、非英語圏の各ブログでは、約30~60%の記事数を削減しました。日本のブログでは、注力領域を再定義し、数百記事単位で削除することでブログの権威性向上を図っています。
4. 個別記事のリライトの優先順位付け
トピック選定が完了したら、個別記事の優先順位付けに移ります。そこで意識したのが、TOFU(認知層)からBOFU(購買意欲層)への優先度シフトです。
従来のSEOでは、検索ボリュームの大きいTOFUが戦略の中心でしたが、AEOでは「製造業におすすめの無料CRMは?」のような、具体的でニッチなロングテールクエリに対する深い回答の構築を優先しました。
【HubSpotメソッドをご紹介】AEO入門:AI検索時代のコンテンツマーケティング再設計〜本稿で紹介したHubSpot JapanのリアルなAEO対応をご紹介!
リライトの優先順位付けのチェックリスト
AEO対応リライトの優先順位付けは、以下の3ステップで進めます。
- トピックガードレールの設定
- 2軸スコアリングによる記事分類
- BOFU寄りの記事タイプの抽出
次のチェックリストを、自社でリライトを実行する際にお役立てください。
1. トピックガードレールの設定
□「扱わないトピック」の除外基準を文書化した
□「注力すべきトピック」の選定基準を文書化した
□ 基準を社内でレビューして合意を得た
2. 2軸スコアリングによるトピック選定
□ 全記事を「バイヤージャーニー適合度」でスコアリングした(1~5点)(ターゲットペルソナの課題・購買プロセスとの合致度で評価)
□ 全記事を「製品・注力トピックとの整合性」でスコアリングした(1~5点)(コア製品の機能や提供価値への直結度で評価)
□ 2軸の掛け合わせでGreen / Yellow / Redに3分類した(Green = 維持強化、Yellow = 要精査、Red = 非公開または削除候補)
□ Red判定の記事を非公開またはリダイレクト処理した
3. ロングテールクエリ(BOFU:購買意欲層)向けの記事を抽出
| 記事タイプ | 内容 | 優先度 | 理由 |
|---|---|---|---|
|
比較・選択系 |
「比較」「選び方」「vs」 |
高 |
BOFUに近く、AIで完結しづらい。CV直結。 |
|
SEOクラスターのハブ記事 |
「完全ガイド」「まとめ」 |
高 |
流入・引用・リンクの起点。修正波及効果が大きい。 |
|
How(手順)系 |
「方法」「やり方」「手順」 |
中 |
AI引用率が高く、潜在顧客リーチに有効。 |
|
What(定義)系 |
「とは」「意味」「違い」 |
中 |
TOFUだが定義文の明瞭化でAI引用を狙える。 |
優先順位付けのポイントと注意点
優先順位付けで最も注意すべきは、「テーマ整合性のスコアリング」と「SEO資産の毀損リスク」を混同しないことです。流入・被リンクが多い記事の削除判断は、スコアとは別軸で慎重に行う必要があります。 迷いやすいポイントを3点まとめました。
SEO評価の高い記事を安易に削減しない
優先順位付けの過程で、流入や被リンクが多い記事をRed(非公開または削除候補)に分類してしまうリスクに注意しましょう。スコアリングはあくまで「テーマの整合性」で行い、SEO資産の毀損は別軸で判断することが大切です。
HubSpot Japanでは、Redに分類された記事のうち、ブログのパフォーマンスを著しく下げると判断されたものの、トラフィックや被リンク数などが好調な場合はYellowに格上げしています。そのうえで簡易的なリライトを図り、記事のテーマと関連する製品ページへのCTAを新たに差し込むことで、実際にビジネス成果につながる記事へ昇華させる流れです。
ただし、この手法はブログの「権威性」を希釈することにつながるため、吟味して対応する必要があります。
顧客接点のある部門の意見を聞く
優先順位付けの過程で、バイヤージャーニー適合度をもとにしたスコアリングを実施しますが、その際にポイントとなるのが、ターゲットペルソナの購買プロセスや課題に合致しているかどうかです。
営業・CS(カスタマーサービス)など、顧客接点のある部門の視点を入れると、顧客の実態に合った適切なスコアリングが可能になります。
AIからの言及・引用もチェックする
AIからの引用・推奨は、カスタマージャーニーの入口である「認知」や「比較検討」フェーズに関わる重要な指標です。AI検索で実際に自社が引用されているかどうかを確認し、「引用負け」している主要テーマの記事があれば、優先リストに入れましょう。
HubSpotが提供するAEO Graderは、ブランド名を入力するだけでAI検索における自社の現状が簡単にチェックできる無料のツールです。ユーザー登録も不要なので、ぜひ活用してください。
自社の顧客ニーズと事業内容を掛け合わせてコンテンツ戦略を再設計しよう
SEO記事をAEO対応にアップデートするうえで重要なのは、「全部を一度に直そうとしない」という発想の転換です。HubSpotが実践したように、まずトピックガードレールを設定してビジネスに直結しないテーマを切り捨て、2軸スコアリングで優先度を決め、BOFUに近い記事から着手する、というプロセスを踏むことで、限られた編集工数であっても、成果につながる改修を積み重ねることができます。
AEOが求めるのは、AIが「答えとして抜き出せる明瞭さ」です。それは、SEOが長年培ってきた「読者にとって価値ある情報を届ける」という原則と根本的には矛盾しません。むしろ、SEO時代に積み上げた流入実績・被リンク・専門知識は、AEO対応の強力な土台になります。既存資産を活かしながら、情報の出し方を再設計する視点が、今後のコンテンツ戦略の鍵となるでしょう。
まず自社の状況を把握することが第一歩です。現状を数値で把握したうえで、本記事で紹介したロードマップを参考に、優先度の高い記事から一本ずつ改修を進めてみてください。
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