上達のコツは模倣にあり:有能な人たちが模倣する理由

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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,私たちは、飽くことなく新しいものを渇望しています。

ビジネスで言えば、新しいプロダクト、新しいキャンペーン、消費者にリーチするための新しい手法を常に求め続けています。

この傾向は「シャイニーオブジェクト症候群(新しく魅力的なものにすぐ飛びつくこと)」と呼ばれていますが、何も気が散りやすいことだけが原因ではありません。「新しいもの、かつ独創的に見えるものは、より優れている」という考え方にも起因しています。

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今日、短期間に新しいアイデアを出すことへの需要は高まる一方です。私たちはそれにどのように対応すればよいのでしょう?

マーク・アールズ氏は「我々は不完全な模倣ができるようになる必要がある」と言っています。

さらに同氏は、2015年に刊行した著書「Copy, Copy, Copy: How to Do Smarter Marketing by Using Other People's Ideas」の中で、「創造性の核心は模倣にある」とも述べています。

模倣に心理的抵抗を感じる理由

同氏は元々プランニング畑の出身です。クリエイティブエージェンシーのSt.Luke’sで活躍した他、ロンドンのOgilvy & MatherではEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)地域のエグゼクティブプランニングディレクターを務めました。

また前述した著書の他に「Herd: How to Change Mass Behaviour by Harnessing Our True Nature」、「I'll Have What She's Having: Mapping Social Behavior」を含む3冊の著書を刊行しています。

以前の著書は、「人間がいかに社会的な存在であるか、そしてその特性が消費者行動にどのように結びついているか」を洞察した内容でしたが、最新作の「Copy, Copy, Copy」では、そうした洞察を、新しいアイデアの創出に応用しています。

そしてその新しいアイデアを生み出す方法というのが、他者の成功を模倣することをベースにしているのです。

この「模倣する」という考えに、心理的抵抗を感じる人は多いでしょう。特に、自分たちが生み出すアイデアによってクライアント価値を提供しているエージェンシーであればなおさらです。

これについて、同氏はこのように書いています。

「我々の文化には非常に強い個人主義の要素がある。我々は集団よりも個人に価値を置き、『自分自身であること』『強い自己意識』『自分の意志』『自己実現』『自分の声で話す』など、自己啓発書でよく目にするような人物像に当てはまらない人に不信を抱くのだ」

私たちは、自分のアイデア、考え方、表現が独創的であることに誇りを持っています。そのため、誰かのアイデアを模倣するということは、自分が明敏さや創造性、独自のアイデアを生み出す創意に欠けることを意味します。

私たちはオリジナリティを崇拝していますが、しかし実を言えば、模倣は人間の生まれ持った、生き延びるためのスキルなのです。私たちは学び、理解するために模倣し、他者を真似ることで社会的地位を獲得しています。

さらに言うと、個人主義に重きを置くのは、北米および欧州文化から生まれた考え方にすぎません。

同氏によれば「欧米文化は例外的」なのだそうです。「欧米文化では、人間の行動のほとんどすべてが個人、および個人と他者との間で起きていることで説明がつくと考えている。しかし他のすべての文化においては、人間は何にもましてまず社会的な生物であり、人間の行動の大部分は個人ではなく社会的な関わりにより形成されると考えられている」と。

そして同著の中で、南アフリカの「Ubuntu」(他者への思いやり)という概念を取り上げ、それについて「人間を『常に衝突を避けることのできない個々の存在の集合』としてではなく、根本的に社会的な存在として見る考え方だ」と説明しています。

多くのマーケターが消費者のことを、「私」を重視した存在だと考えていますが、実は世界の大部分は「私たち」という考えで動いています。そして人々はその中で意思決定を行っています。

「人々が互いに模倣し合うことがなければ、物事が急速に広く普及するということはありえない」「猿まねならぬ人まねなのである」と同氏は指摘します。

なぜ不完全な模倣をすべきなのか

模倣には2種類あります。1つ目は複製、機械的なコピーです。これには「新しく、より優れたものを作り出すために他者が投じた知的労力と経済的負担を不当に利用する」という意図があります。この種類の模倣のせいで、あらゆる「模倣」が悪評を買うことになってしまっていると同氏は言います。

2つ目は、人間的な模倣です。人間的な模倣には自然とエラーや不完全性が含まれます。これこそが、私たちが身につけるべき模倣なのです。

不完全(あるいは大まか)な模倣とはつまり、バリエーションのある模倣、また既知の問題を克服する模倣です。あるいは「遠くからの」模倣というのもあるでしょう。別の業界から学び、自分の業界に応用するやり方です。

同氏は「遠くからの」模倣の例として、このような例を挙げています。1800年代初頭、ジョゼフ・マリー・ジャカールがジャカード織機を発明しました。この織機は木製の穴開きカードを使うことにより、複雑なテキスタイルデザインを簡単に作れるようにした織機です。

これにより非常に細かい入り組んだ織模様を素早く正確に織ることが可能になりました。そして、この織機にヒントを得て開発されたのが、データ処理の操作にパンチカードを使うという初期のコンピューター技術なのです。

優れたアイデアを素早く生み出すために模倣する方法

「Copy, Copy, Copy」で推奨しているのは、新しいアイデアの基盤として他者のアイデアを利用することではありません。ましてや模倣広告や露骨な盗用を黙認しようというのでもありません(参照記事はこちら:20 copycat ads)。

代わりに同氏は、以前に使用され成功した戦略を模倣するための「パターンブック」を提供しています。パターンブックとは元々建築で使用されていた用語で、いろいろなパターンを集めた図面集のことです。

「我々はテンポの速い時代に生きている」と同氏は言います。「これまでにない速度で物事をこなさなければならないが、従来の戦略やクリエイティブ戦略思考はこの状況に対応できていない。そこそこオリジナルで漠然としたアイデアを出すのに6カ月もかかるのには呆然とするばかりだ。それでは今の時代に十分とは言えない。今まで以上にがむしゃらに働かなければならなくなる」

それではどうすればよいのでしょう? 問題解決に対するアプローチを模倣すればよいのです。アプローチを模倣することでブランドの課題に対する独創的な洞察を得ることができます。「Copy, Copy, Copy」から3つほど例を抜粋してみましょう。

ドラマティックなオーバーエンジニアリング:これは現代のマーケティングにおける最も顕著なトレンドの一つである。例えば20年前、SUVは少数派の自動車に過ぎなかった。しかし今やパリ・ダカールラリーに出場・完走できるようなモデルをもたないメーカーはほとんどない。

腕時計にも同じことが言える。洗練されたシンプルな腕時計や安価でシンプルな腕時計もいまだに存在するが、一方で何千ドルもする(自動車よりも高いことも多い)ダイバーズウォッチやパイロットウォッチの爆発的な普及には目を見張るものがある。

さらに、スポーツウェアから探検用装備までレジャーウェアのオーバーエンジニアリングもあちこちで見られる。ノースフェース、アンナプルナ、パタゴニアなどの「エクストリーム」なアウトドア服ブランドは、例えばロンドン北部のバス停などでもよく目にする。山登りや水中を歩くのに十分なスペックの服は、29番のバスや253番のバスで遭遇するかもしれないいかなる困難にも完璧に対応できるというわけだ」

「ユニークで関係のない機能のプロモート:メインストリームのビール市場でしばらく前からこの傾向が見られる。米国では、アパラチア山脈のナチュラルウォーターを使って醸造するのが「売り」となっていた時期があったし、英国ではドラフトビールの品質を再現するために、缶ビールに「ウィジェット」を入れたりしている」

アイデンティティのあるパッケージング:社会的なアイデンティティを確立しているパッケージングというのはめったにない。そのめったにないものの一つがコカ・コーラのクラシックボトルの形状である。

マーティン・リンストローム氏が指摘したように、あの形状は、たとえ割れていたとしても間違えようがなく、プロダクトの品質と真正性を象徴している。さらに重要なのはコカ・コーラ愛飲者の共有するアイデンティティを象徴している点だ。ゲートウェイコンピューターは、ホルスタイン柄の箱を使い、一味違う種類のコンピューターを違いの分かるユーザーへ届けていることをアピールした。セルフリッジズやブルーミングデールズといったデパートは、非常に目立つ(そして高価な)買い物袋を作り、ファッショナブルな買い物客たちがそのデパートを支持していることが一目で分かるようにし、歩く広告として利用している」


同氏は、関連性を見つけアイデアを思いつくための方法として、絵や図に描くことを提案しています。

人々、特に私たちの業界にいる人々は、専門用語や、同氏が言うところの「言葉の砲撃」に頼りがちです。しかし描くという手段により、物事を明確にしてステップや繋がりを現実的に表すことを余儀なくされます。

これについて同氏はこう書いています。

「仕事において再三再四、我々はこの真理に戻ってくる。すなわち、思考を補足するものや後からの付け足しとしてではなく、思考する方法そのものとしての描くことの重要性である。描くことと考えることは密接に関連している。実際、多くの重要な意味において、描くことイコール考えること、と言って差し支えない」

さらに、同氏が提供している戦略フレームワークやマッピングツールを使えば、チーム内の誰もが観念化に関与することができます。心理学の学位や神経科学の知識は必要ありません。

「私は、そこにいる人材が貢献するのを阻むようなことは、どのようなことであれ止めるべきだと考えている」と同氏は言います。「このアプローチをとることで、普段声を上げることが許されていないメンバーを戦略に関わらせることができる」と。

出発点の問題を模倣して、よりクリエイティブな結果を出す

科学者からアスリート、アーティストからミュージシャンまで、最も革新的で独創的な人たちにとって、模倣することは、昔から重要なツールでした。

ほとんどの問題は、別の問題に類似しています。つまり、多くのソリューションに似たようなアプローチが必要だということです。そして、新たに問題に取り組む人の手によるエラーや小さなバリエーションこそが、そこに真の創造性を形成します。

同氏が書いているように「お互いから学びあったもの、つまり模倣したものにより、新しい創造が可能になる」のです。

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編集メモ:この記事は、 2015年12月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Jami Oettingによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

トピック: 効率化

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