世界的な企業が活用するNPS®とは?持続的な成長力の原動力を徹底解剖

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向井 拓真(Takuma Mukai)
向井 拓真(Takuma Mukai)

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コストコやリッツカールトン、Amazon、Apple、Netflix…これらの企業の共通点がわかりますか?

世界的な企業が活用するNPS®とは?持続的な成長力の原動力を徹底解剖

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いずれもネットプロモータースコア(NPS®:Net Promoter Score *顧客ロイヤルティー指標)が高い企業です。

顧客の「親しい人にもおすすめしたい」という気持ちを数字に表したNPS®は、一般的な「顧客満足度調査」よりも、企業の業績や成長と密接に関わっています。

NPS®が有効なのは有名企業だけではありません。

既存の顧客を大切にして、継続して購入・利用してもらうことが死活的に重要なスモールビジネスにとって、信頼関係を構築していくべき顧客を教えてくれるNPS®はきわめて重要な指標です。

NPS®を計測して問題点を洗い出し、数値改善を通じて、ロイヤリティの高い顧客基盤が形成され、持続的なビジネス成長が期待できます。

本稿では「NPS®の意味」「顧客満足度との違い」「NPS®スコアの活用方法」「NPS®計測ツール」についてご紹介します。

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NPS®とは何か?なぜNPS®の計測が必要なのか?

トヨタや京セラなど「お客様第一主義」を掲げる企業は数多くあります。

顧客を大切にし、信頼関係を築いていくことは、昔から日本の商取引の伝統として培われてきた遺産でもありました。

しかし、社会が高度化・複雑化するにともなって「お客様」の解決すべき問題もより高度に、そして複雑になり、単一の処方箋で解決できるケースは稀です。

その結果、企業が掲げる「お客様第一主義」は、単なる理念に留まっていたり、現場の営業担当者や販売員の対応に任されたりしているのが実情ではないでしょうか。

顧客の求めるものに応えて問題を解決するために、企業はまず顧客の意識を知らなければなりません。

しかし、曖昧でとらえどころのない意識を、いかに数値に落とし込むことができるのでしょうか。

そこで活用していただきたい指標が、顧客の意識を数値化するNPS®です。

NPS®(ネットプロモータースコア)とは何か?

NPS®とは「顧客が取引相手の企業をどのように感じているか?」「今後も取引を続けるつもりかどうか?」を示すベンチマーク(指標)です。

具体的には「X社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問をし、その回答を0~10までの11段階で評価してもらいます。

←可能性が低い 可能性が高い→
10


この質問に対する回答によって、顧客を3つのセグメントに分類します。

顧客が付けた点数 顧客のセグメント 顧客の属性
9点または10点 推奨者 再購入率がきわめて高いだけでなく、実際に商品を友人や同僚に紹介してくれる。
7点または8点 中立者 受身で満足している顧客で、再購入率が推奨者に比べてかなり低い。再購入してもロイヤリティや熱意ではなく、惰性であることが多い。
0点~6点 批判者 否定的な口コミの80%はこの層から発信される。発信された批判や否定的な態度は、新規顧客を遠ざけ、社員のやる気を失わせる。


NPS®は推奨者と批判者の割合から算出します。

推奨者の割合から批判者の割合を引いたものがNPS®になります。

NPS® = 推奨者の割合 - 批判者の割合

たとえば100人に回答してもらい、30人が推奨者で、批判者が25人いたとします。その場合は、推奨者が30%、批判者が25%でNPS®の数値は「30 - 15 = 5pt(ポイント)」ということになります。

同様に推奨者が10%、批判者が20%であれば、NPS®は「10 - 20 = -10pt」になります。

NPS®とは、この「推奨者の正味比率(Net Promoter Score)」の頭文字を取った略字です。

なぜ「友人や同僚に薦める可能性」なのか?

友人や同僚に薦める可能性を尋ねることで「一体何がわかるのだろうか?」「もっと適切な質問があるのではないか?」と疑問に思う人も多いかもしれません。

事実、NPS®を生み出したライクヘルド自身が、このような質問になるとは予想していなかったのです。質問が見出された背景を見ながら、なぜ「薦める可能性」なのかの理由を見ていきます。

膨大なデータの中から見出された「究極の質問」

世界有数のコンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニーのディレクターだったライクヘルドは、多くの企業を研究する中で顧客維持率を5%増やせば25%~100%の増益が期待できることを知りました。

同時に顧客ロイヤリティがきわめて高い企業の売上高成長率は、競合企業の2倍以上に達していることもわかりました。

企業にとって顧客ロイヤリティを測る指標がどうしても必要でした。

顧客離反率は計測できても「なぜ離反するのか?」はわかりません。

顧客満足度と実際の購買行動の間には乖離が見られます。

ライクヘルドは多岐にわたる業種から得た膨大なデータをもとに、顧客の行動を正確に予測し、その結果として企業の成長を予測可能な質問を見つけようとしました。

その結果、ほぼすべての業種で「X社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問の回答が、顧客の今後の行動と大きな相関を持つことがわかったのです。

大切な友人に薦めるのはどんな時?

ある企業やその企業の製品やサービスが心から気に入っている人は、親しい人に自分が気に入っていることや、どんなところが気に入っているかを話すはずです。

しかもその企業が価格や品質、機能やサービスなどの面で明確な価値を提供してくれていると感じられれば、自分だけでなく親しい人にも同じ体験をしてほしいと考えることでしょう。

しかし、実際に推薦し、紹介するとなると、自分にも責任が伴います。「この企業は自分を大切に扱ってくれている」と感じられ、信頼できる企業だと確信できなければ、大切な友人に薦めることはできません。

友人が「期待外れだった」と感じたとしたら、その企業だけでなく、紹介した自分に対する信頼も揺らいでしまいかねないからです。

その意味で「薦めますか?」という質問は、顧客の感情を聞くと同時に、理性的な考察と判断の結果を聞く質問にもなっているのです。

だからこそ、この質問が顧客の行動と企業の成長を予測する「究極の質問」になるのです。

NPS®で何がわかるのか?

NPS®はアメリカではすでに多くの企業で導入されており、計測結果が活用されています。実例を見ながら、NPS®を通じて得られる情報を確認していきましょう。

問題がどこにあるかがわかる

企業や製品について「友人や同僚に薦める可能性」を尋ねることで、その企業が「顧客を大切にする企業かどうか?」、その製品が「愛着を持って受けとめられているかどうか?」がわかります。

また、最初の質問とともに回答した理由を尋ねることによって「改善するためにどうすればよいか?」が見えてきます。

また、「サポート部門」「個人向け部門」など、主要部門ごとにNPS®を測定することによって、どの部門に問題があるかが明確になります。

併せて「改善してほしいことはありますか?」と尋ね、たとえば「コールセンターがつながりにくい」や「説明がわかりにくい」などと改良点をいくつか挙げ、その中から選択してもらうことで、優先順位がわかります。

NPS®を軸にいくつかの質問を組み合わせることで、問題の所在や改善・改良すべき点を明らかにできます。

誰がどれだけの価値(損失)をもたらしているかがわかる

推奨者と批判者を比較すると、両者がどれだけ事業に大きな経済効果を及ぼしているかがわかります。ここではベイン・アンド・カンパニーやライクヘルドとともにNPS®の計測を行っているSatmetrix社の調査を見ていきましょう。

Satmetrix社はNPS®の手法を用いて、金融やテクノロジー、インターネットビジネス、通信事業の4つの業界で、顧客を推奨者・中立者・批判者に分類したのち、それぞれの購買額を比較しました。

ほぼすべての業界で、推奨者の購買額は、批判者の購買額を大きく上回っていたのですが、通信事業の1分野である無線通信業界のみが、下図のグラフのような結果となったのです。

参考(9ページ目):NET PROMOTER ECONOMICS: THE IMPACT OF WORD OF MOUTH

棒グラフは左から推奨者(Promoter)の購買額、顧客全体(Average)の平均購買額、批判者(Detractor)の購買額です。

推奨者と比較して批判者の方が購買額が高くなっているのは、無線通信業界では定額サービスが設定されており、それを超えたサービスを利用する際に、追加料金がかかる仕組みになっていることに起因すると考えられます。

追加料金の発生が、顧客の不満を引き起こし、批判者となっていると推定できます。

次に、上図の購買額に口コミによる価値を上乗せしたものが、下図のグラフです。

参考(13ページ目):NET PROMOTER ECONOMICS: THE IMPACT OF WORD OF MOUTH

棒グラフの薄い青の部分がそれぞれ肯定的な口コミと否定的な口コミがもたらした効果を換金したものです。

推奨者の発信した肯定的な口コミが、新規顧客の獲得を通して639ドルの価値を創出しているのに対し、批判者による否定的な口コミは本来ならば獲得できたはずの顧客を逃し、1,459ドルの損失をもたらしていることがわかります。

つまり、批判者は購買額と相殺しても304ドルの損害を企業に与えているのです。

誰にどのように働きかけたら良いかがわかる

ソーシャルメディアおよびWeb監視ツールを提供するMention(メンション)社は、NPS®の調査を活用して、わずか2か月のうちに解約率を半減させることに成功しました。その手順は以下のものです。

【手順】

  1. 無料お試し期間が終了した翌日に、顧客に使用感を10段階で評価してもらう
  2. 回答を基に、推奨者・中立者・批判者に顧客をセグメント化する
  3. それぞれのセグメントに対して、以下のような異なるアプローチを実施する

推奨者…製品のアップグレード版の割引価格を提案
中立者…無料トライアル期間の延長を提案し、その後のアップグレードを狙う
批判者…誠実に回答してくれたことのお礼を述べた後、どうやったら改善できるかを尋ねる

参考:The Ultimate Guide to Your Net Promoter Score (NPS®)

その結果、解約率はわずか2か月で半減しただけでなく、アップグレードする人は1か月後には2倍に、2か月後には3倍に…と、月を追うごとに累積していきました。

Mention社の事例は、顧客を推奨者・中立者・批判者にセグメント化し、最適なアプローチを行うことを通じて、顧客ロイヤリティの育成にNPS®を活用できることを証明しています。

企業の成長がわかる

NPS®の数値は、企業の成長に直接関わっています。下図は2004年のイギリスにおける車の販売データの統計です。

参考:Advocacy Drives Growth Customer Advocacy Drives UK Business Growth

横軸がNPS®の数値を表し、縦軸は各メーカーの販売台数の伸び率を表しています。

NPS®と販売台数の伸び率の間に、正の相関があることが見て取れます。

NPS®と成長率の正の相関を示す統計結果は、さまざまな業界で提示されています。

「薦めたい」という回答が、実際の顧客の行動を裏付けるものであり、同時に企業の成長につながっていることがわかります。

※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

NPS®と顧客満足度スコア(CSAT)の違いとメリット・デメリット

消費者として私たちが出会う機会が多いのは、顧客満足度を尋ねるアンケートです。レストランで食事をした後やカスタマーサポートに連絡した後に、多くの人が食事や窓口対応について「どのくらい満足していますか?」と質問を受けたことがあるでしょう。

ここからは顧客満足度調査の中でももっとも一般的な顧客満足度スコア(CSAT)とNPS®を比較し、それぞれの特色を見ていきます。

NPS®とCSAT(顧客満足度)は何が違うのか?

NPS®が企業や製品、サービスを「友人や同僚に薦める可能性」を問うのに対し、シンプルに「満足しているかどうか?」を問うのがCSATです。

製品やサービスを購入した顧客に対して「どのくらい満足したか?」などの質問を行い、3~10段階で答えてもらいます。

回答総数の中で「満足」と答えてくれた人の割合を求めることで、CSATが明らかになります。

CSATは以下の計算式で求めることができます。

顧客満足度(%) = (「満足」と回答した顧客数 ÷ 回答総数) × 100

CSATのメリットとデメリット

CSATの最大の強みはシンプルである点です。顧客が満足度を簡単に把握できて、満足のいくものでなくても理由の特定は容易です。

さらに、オンボーディングプログラムの終了時や初回購入が完了したときなど、顧客ライフサイクルに合わせて満足度を調査し、それぞれのステージの顧客体験を改善できます。

また、契約の終了直前に調査を行い、継続的にフィードバックを得ることによって、次の購入をうながす機会にもなります。

また、質問が少なくて答えやすいので、高い回答率が期待できるというメリットもあります。

反面「満足」という指標があいまいなものであるため、人によってはかなり満足できる体験をしていても、事前の期待値がそれ以上に高ければ「普通」と答えている可能性もあります。

また、直近の体験の影響を受けやすいというデメリットもあります。

さらに本当に不満を抱いた顧客は、あえてアンケートに答えることもなく、黙って離れることも多いのに対し、好意的な顧客が積極的に答えてくれる傾向が高くなります。

その結果、CSATの数値は顧客の実感より、スコアが高く出やすい傾向にあります。

特に長期契約者の場合は満足度が高いからこそ継続しているため、数値が高く出やすく、逆に問題点があっても見つかりにくいこともあります。

過去には2005年の顧客満足度調査の数値が高くて数々の賞を受賞したにも関わらず、市場シェアを低下させて、数年後に破産手続きに至ったゼネラル・モーターズのような事例があり、顧客満足度と企業の成長の間には相関があまりないことも指摘されています。

NPS®のメリットとデメリット

「親しい人に薦めるかどうか?」を尋ねるNPS®は、CSATと比較すると冷静な判断が要求されます。

一時的な感情に左右されにくく、顧客のロイヤリティを正確に示す数値であるといえます。

そのため、ロイヤリティの高い推奨者と、企業にとって危険な口コミを拡散する可能性のある批判者、どちらにも転換しうる中立者をハッキリと分割できます。

また、質問に対して0点から10点までの数値をつけた理由を明確化し、製品やサービスの問題点、企業としての問題点なども浮き彫りになります。

同時に顧客の行動は、顧客が選んだ数値によって予測できるため、企業にとって中長期的な成長の予想を立てられます。

反面「薦める可能性」という質問は主観的な満足度と比べると答えにくい質問で、回答が集まりにくい可能性もあります。

また、NPS®を計測し、改善すべき点や顧客が不満に感じている点が明らかになり、その改善点・問題点に対処しても、具体的な結果がすぐに表れにくい場合も多く、定期的に行うモチベーションが維持しにくいというデメリットもあります。

以上のことから、CSATとNPS®はそれぞれ異なるメリット・デメリットを持つため、ケースバイケースで使い分けると良いでしょう。

NPS®の国内ランキング

NPS®は自社の顧客ロイヤリティを測定する指標ですが、競合他社と比較することで見えてくるものがあります。それは、NPS®で優位に立っていれば、成長率においても競合他社より優位に立てるという点です。

アメリカではフォーチュン500の企業のうち、35%が経営指標としてNPS®を導入しているといわれています。

日本でNPS®導入の実態調査を行っているIJM社の報告では、NPS®を導入している企業は2018年の段階で約10.1%に留まっています。

国内で未だ導入している企業は少ないNPS®ですが、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが日本企業のNPS®を調査した結果が明らかになっていますので、自社のNPS®を測定した際のベンチマークとしてください。

業界別NPS®スコアランキング1位企業と業界平均値

業界(部門) 企業名 NPS® 業界平均
総合型旅行会社 ジャルパック -3.4 pt -14.2 pt
ネット専業型旅行会社 Booking.com -14.5 pt -18.7 pt
対面証券 大和証券 -56.1 pt -56.7 pt
ネット証券 SBI証券 -18.3 pt -29.8 pt
転職関連サイト Indeed(インディード) -20.1 pt -44.0 pt
転職エージェント ジェイ エイ シー リクルートメント -28.7 pt -35.5 pt
動画配信サービス Netflix 3.3 pt -24.7 pt
銀行 住信SBIネット銀行 -25.2 pt -46.2 pt
大手携帯キャリア NTTドコモ -55.4 pt -59.3 pt
MVNO・サブブランド mineo(マイネオ) -15.6 pt -29.3 pt
ダイレクト型自動車保険 セゾン自動車火災保険 -19.0 pt -25.5 pt
代理店型自動車保険 東京海上日動火災保険 -43.0 pt -51.8 pt
クレジットカード 楽天カード -19.9 pt -42.8 pt
生命保険 プルデンシャル生命 -39.3 pt -51.9 pt

NPS®のスコアが業界トップ企業でもマイナスになっているのは、回答者の日本人の傾向による影響が大きいと思われます。

日本人の意識からすれば、5~6点の評価は、決して低いものではなく、「中程度」と感じた場合に、選びがちな数値です。しかし、NPS®では6点以下が批判者になってしまいます。

また、良いと感じていても、人に薦める習慣が日本ではあまりないので、9点や10点ではなく、7点や8点を選ぶことで「中立者」になってしまうケースもあると思われます。

そのため、日本での評価はどうしても低くなりがちで、マイナスになってしまうのもやむを得ないことではあります。

そのため、それぞれの数値に着目するのではなく、自社でNPS®を計測した際のベンチマークとして、相対的にとらえる必要があります。

アメリカのトップ企業はどれほどのスコアを獲得している?

参考までに、35%の企業がNPS®を導入しているアメリカでは、各業界のトップ企業がどのくらいの数値を出しているかを見てみましょう。

スコアの高い順に、そのスコアを出した企業と、その業界の平均をSatmetrics社の調査を元に一覧表にしています。

業界 企業名 NPS® 業界平均
デパート・専門店 コストコ 74 pt 52 pt
自動車保険 USAA 73 pt 39 pt
航空 サウスウエスト航空 71 pt 39 pt
ホテル リッツカールトン 68 pt 36 pt
コンピューター Apple 68 pt 36 pt
証券・投資 ヴァンガード 65 pt 46 pt
食料品・スーパーマーケット H-E-B 64 pt 32 pt
オンライン・ショッピング ザッポス 58 pt 43 pt
クレジットカード アメリカンエクスプレス 55 pt 37 pt
携帯電話サービス クリケット 55 pt 32 pt

2位のUSAAは、アメリカの軍人・軍属およびその家族を対象とした保険業・金融業の企業です。

特筆すべきは、この表では最高位の自動車保険部門しかリストアップしていませんが、住宅家財保険では69pt、銀行では68ptと、業界平均値に比べて著しく高い数値を示しています。

USAAは遠隔地で軍務に就いている軍人でも利用しやすいよう、早くからモバイルバンキングや音声対応など、先進的な技術の導入を行うだけでなく、競合他社にはない特典や機能を提供し、差別化を図っていることが、高いNPS®の数値にも表れていると考えられます。

NPS®を計測してみよう~質問を決定する

ここからいよいよ実際にNPS®を計測する準備を始めていきます。手始めに具体的な質問内容を決めていきます。重要なのは質問の数を絞ることです。

質問数が少なければ少ないほど、顧客に回答してもらえる確率は高くなります。質問は5~7問が適当です。

顧客が回答しやすく、顧客との信頼関係が構築できる質問を作成する

作成する質問は、顧客と直接的に接点のある従業員が原因を究明できて、そこから学び、行動を起こせるものにする必要があります。

「薦める可能性」を軸に、顧客に何を聞くかを決めていきます。

最初の質問で「薦める可能性」を聞き、2番目の質問でその理由を聞く

顧客を推奨者・中立者・批判者に分類するために、何よりも重要な質問が「わが社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」です。

さらに最初の回答結果を深掘りするために「そのスコアをつけたおもな理由は何ですか?」と続けて質問します。

0~10点の11段階の数値の中から顧客が選んだ数値について、満点をつけない顧客に向けて「当社のことを推薦していただくために、◯◯を改善する上で最も重要なことは何でしょうか?」と質問し、その数値を選んだ原因を究明する上で役に立ちます。

しかし、原因を究明するための追加質問(3番目の質問)は、1つだけに押さえておくことが大切です。

質問を減らすだけで回答率が上がるだけでなく、顧客が低いスコアをつけた原因を知りたい場合には、直接聞いた方が良いからです。

現場の責任者が電話やメールで「率直なご意見をお聞かせくださってありがとうございます」とお礼を言った上で「どうしたらもっとお客様にご満足いただけますでしょうか?」と尋ねます。

そうすることで、その点数をつけた具体的な理由が把握できるだけでなく、顧客の批判的な気持ちに向き合うこともできるからです。

それが将来的な信頼関係の構築にもつながります。

4番目と5番目の問いかけは質問を行うタイミングで決まる

Appleは店舗での取引の直後に質問を行って「取引プロセスに満足したか?」を顧客に尋ねています。

アメリカン・エキスプレスでは、カード会員からサービスに関する重要な電話がかかった直後に「問い合わせの対応に満足したかどうか?」を尋ねます。

また、年に何度か、定期的に調査を行っている企業もあります。

そこで4番目の質問では顧客が直近で受けたサービスや対応に合わせた質問にします。

さらに、5番目の質問は自由記述形式で「取引プロセスで改善してほしいこと」「問い合わせで改善してほしいこと」など、「改善してほしいこと」を答えてもらいます。

ターゲットとする顧客に答えてもらおう

理想は顧客全員に回答してもらうことですが、実際には事業で特に重視したい顧客に焦点を当て、彼らからできるだけ多くの回答を得ることが大切です。

というのも、最も収益性が高く、推奨者になってもらいたい顧客の意見を聞き、彼らが望むように改善し、信頼関係を築くことが事業の改善や収益の向上につながるからです。

NPS®は単なる意識調査ではありません。顧客を分類し、推奨者・中立者・批判者がそれぞれ何人いるか、その理由はなぜか、時間の経過とともにどのような変化が起こるかを知るために計測しています。

そのために、少ないサンプルではなく、できるだけ多くの人に質問し、高い確率で回答をもらえるようにしなければなりません。

小さな単位で繰り返し質問する

全社レベルではなく、事業ごとや地域ごと、また工場、店舗など、小さな単位でNPS®を計測し、その結果を記録し、共有することが必要です。

たとえばカスタマーサポートであれば「お問合せいただいた問題は、すべて完全に解決されましたか?」「弊社をご友人や同僚の方に薦めていただけますか?」と2つのことを聞きます。

問い合わせの電話があるたびにNPS®を追跡し、そのグループの問題点や傾向を知ることができます。

自社に合ったNPS®計測ツールを探そう

実際にNPS®の計測を始めるときに役立つツールを紹介していきます。

無料でシンプルに始められるものから、有料のNPS®専用ツールまで

Survey Monkey

Survey Monley
 シンプルで無料で始めることができます。Survey Monkeyは、もともとアンケートを作成し、実施するためのツールなのですが、そのアンケート項目の中にNPS®もあります。

回答が戻ってきたら、計測、グラフ化もしてくれて、業界のベンチマークと比較できます。

Wootric

Wootric
無料で始めることができて、アンケートはメール以外にも、ブラウザにポップアップ式で表示できるようになっているため、小さな質問、たとえばこの記事がどれだけ役に立ったか、記事を親しい人に薦める可能性はどれくらいあるか、など、手軽に質問できます。

回答が戻ってくると、集計、計算、分析も一通り行ってくれます。

サイトは英語表記ですが、質問などは日本語で入力できるので、英語が苦手でも苦になりません。

Promoter

Promoter
NPS®を計測するための専用ツールです。多数の顧客を長期間にわたって調査が可能です。すべての機能が活用できる無料トライアル期間が30日、その後は月額29ドルからのサブスクリプションになります。

HubSpot Service Hub

HubSpot Service Hub
HubSpotは、マーケティングオートメーションとしてのイメージが強いツールですが、実は2018年からサービスデスクの領域に事業を拡張をしました。

サービスリリース当時は、サービスデスクに特化したツールと比較した際は、少し機能的に見劣りをしていましたが、リリースから1年以上が経過した今では、数多くの顧客フィードバックを頂いたおかげ様で、大きく機能改善がされてきました。

NPS®計測の機能は、無料の範囲では使用不可能ですが、カスタマーサービス領域で独立したツールを使うのではなく、マーケティング、セールスなど顧客ライフサイクルにおける一連のデータをすべて1つのツールで管理し、改善策を実施されたい企業様などにはおすすめです。

まずはスモールスタートでNPS®を計測してみよう!

なぜアメリカではNPS®が多くの企業で採用されているのでしょうか?NPS®を計測することで、実際に何が起こるのでしょうか。

顧客から、実際にはどのような回答が寄せられるのでしょうか。

顧客の気持ちや行動は、実際にあなたの会社でNPS®を計測し、計測を継続しつつ、顧客に起こる変化を入念に観察することによって、初めてわかってくるものです。

まずはNPS®の計測を小さな1歩を踏み出して、定着させることに努めましょう。

NPS®の「X社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問と0~10点の点数を選んだ理由を最初に聞くのか。

それとも最初は「今回のカスタマーサポート(あるいは、このページの記事)は役に立ちましたか?弊社のカスタマーサポート(このページ)をあなたの親しい人に薦める可能性はどのくらいありますか?」と限定的に尋ねるのか。

それは、あなたが何を一番知りたいのか、あなたの会社が現在顧客とどのような関係を築いているか、などのさまざまな条件によって変わってきます。

確かなことは、1度の計測では何もわからないということです。

そのために、まずはGoogle Formを使ってアンケートと集計を行ってみませんか?「顧客第一主義の実践に役立つテンプレート」でテンプレートと具体的な始め方を紹介しています。

計測を繰り返し、前回の数値と比較し、それを1年、2年と続けていくことによって、顧客との関係はかならず変わっていきます。

NPS®を発見したライクヘルドは「信頼とは情報をどれだけ効率よくばらまくかではなく、情報に対してどう取り組むかによって生まれるものなのだ」と語っています。

顧客に「推薦してくれる可能性」を尋ね、NPS®を記録し、比較することに真摯に取り組んでいくあなたの努力が、間違いなく顧客との間に強固な信頼を築いていくことでしょう。

まとめ

2006年にNPS®が初めて世に出て以来、Appleやアメリカン・エキスプレスなどを始めとして、何千という企業がNPS®を取り入れてきました。

NPS®の計測は、あなたの会社(および製品やサービス)が、単に顧客に愛されているかどうかを知る方法の1つではありません。「友人や同僚に薦める可能性」を聞くことを通して、顧客を推奨者・中立者・批判者に分類して適切な対応を取ることが必要です。

たとえば推奨者にはアップグレードを提案したり、推薦文を書いてもらうことを依頼します。

また、中立者に対しては、無料サービス期間の延長を提案してもっと製品を知ってもらうことを通して、将来的なアップグレードに向けた地ならしを行います。

そして批判者の声には率直に耳を傾け、改善すべき点があれば対処して、離反が起こらないように、また否定的な口コミが発信されないように努めます。

それぞれのセグメントに応じて適切な対処を行ってNPS®の改善を図ることで、製品やサービスはより洗練されたものに変わり、企業の成長につながります。

NPS®を定期的に計測することで、ビジネスの現状や問題点がよりはっきりと浮かび上がります。NPS®の測定・分析・施策のループを定着させましょう。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

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