営業は、売上げの数字で明確な評価が下されるシビアな職種です。

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営業成績は客観的にわかってしまうため、成績不振の営業パーソンはやる気を失いやすいでしょう。一度モチベーションが下がってしまうと、自分自身の力で達成ベースに持ち直すのは至難の業です。成績が振るわない営業担当者には、改めて教育を行うなど営業チーム全体で協力しなければいけません。鍵は、従来は「センス」という言葉で語られることの多かったトップ営業のスキルを可視化することです。

本記事ではトップ営業が持つ特徴とスキルを明らかにし、新人や成績不振の営業担当者が何を学び、何を身につけるべきかを紹介します。

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営業担当者の役割

営業担当者の役割

自社の製品に価値を感じてもらえるであろう見込み客にアプローチし、関係性を構築した上で成約に導くのが営業担当者の役割です。より端的にいうと、「顧客と対話し、課題解決策を提案する」ために存在している、と言っていいでしょう。

では、営業担当者の役割を3つの要素に分解してみましょう。

  1. 見込み客を顧客に転換する
  2. 顧客と継続した関係を築く
  3. ビジネスを成長させる
     

見込み客を顧客に転換する

営業パーソンの業務の中心は、自社の商品やサービスに興味を持っている見込み客を、顧客へと転換することにあります。

特に自社商品やサービスを Webサイトなどを通じて積極的に情報提供している企業であれば、見込み客の側も商品やサービスの基本的な情報は理解しているはずです。そこで営業担当者に求められるのは、商品やサービスを1から説明することよりも、見込み客を支援するという姿勢です。

見込み客の抱える課題や問題を「自社が提供する商品やサービスを活用すればこのように解決できる」と提案し、最終的に契約を結んで見込み客を顧客に転換することが、最も重要な役割です。

商談を進めるコツについては、当HubSpotブログの別記事で紹介している 「商談の基本とは?準備方法や気をつけたいポイントを解説」 を参考にしてみてください。
 

顧客と継続した関係を築く

営業パーソンの役割は、顧客と一度契約を交わしたからといっておしまいではありません。契約後のフォローアップやフィードバックなどを通じて、顧客と長期的な関係を築く必要があります。

実際、新規顧客を獲得するために必要なコストよりも、既存顧客から継続的に購入してもらうために必要なコストの方が、企業にとっては費用対効果が高い ことがわかっています。顧客維持率を高め、顧客ロイヤリティ(企業への信頼や愛着)を育成するためにも、営業パーソンによる定期的なフォローアップは、企業にとって大きな意味を持ちます。
 

ビジネスを成長させる役割

営業パーソンと顧客との間に信頼関係を構築できると、顧客は継続して商品やサービスを購入するだけでなく、他社に推薦したり、取引先を紹介してくれたりする場合があります。顧客にとっても信頼のおける商品やサービスを提供する企業を紹介することは、自社の信頼性を高めることにつながるからです。

地道なフォローアップを続けることが、ブランディングの向上にもつながり、紹介を通じてビジネスを成長させることにもつながります。

優秀な営業担当者は、営業部門に求められる上記3つの役割を安定して果たしています。そこからトップ営業として抜きん出るには、さらにどのようなスキルが必要となるのでしょうか。
 

トップ営業に求められる能力

営業担当者の多くが「営業先でうまく話せなかった」「商談をうまく進めることができなかった」という経験をしたことがあるはずです。営業の手ごたえが得られなかったとき「自分は営業に向いてないな?」と感じたことがあるのではないでしょうか。一般的に「巧みなトークスキルを持つこと」が営業に求められる能力と考えられていますよね。

ただ、必ずしもそうとは言えないのです。営業出身の現京セラ会長・山口悟郎氏は、営業時代「口下手で話すのが苦手だった」と語っています。

また、営業戦略家スティーブ・マーティンがBtoBビジネスに関わるトップ営業1,000人を対象に行った調査の結果によると、トップ営業に求められる能力は以下の4点だと報告しています。

  1. 専門知識を持ち、顧客にわかりやすく伝える能力
  2. 自分の経験や知識、データを新しい場面で活かせる能力
  3. 顧客企業内で意思決定に影響力を持つ人や、将来的な人事を見分ける政治的洞察力
  4. 営業として学び続ける能力
     

努力によってトップ営業になった人が身につけた能力とは?

スティーブ・マーティンはトップ営業に対する調査結果を「トップ営業は生まれつきか後天的なものか(原文”Are Top Salespeople Born or Made”)」(ハーバードビジネスレビュー 2011年)にまとめました。調査の中で明らかになったのは、「トップ営業の70%以上は生まれながらに資質を持っている人で、残る30%弱は後天的な努力による」ということでした。。

また、営業全体で見た場合でも、努力をすれば20%の営業担当者がトップ営業になれるとの調査結果も。生まれつき営業向きかどうかは関係なく、先に挙げた4つの能力を身につければトップ営業になれる余地があるのです。

では、トップ営業に求められる能力は、どうすれば獲得できるのでしょうか。
 

専門知識を持ち、顧客にわかりやすく伝えることのできる能力

HubSpotが2016年、買い手と営業担当者の双方に対して行った「営業担当者と見込み客が話したいことのずれに関するアンケート調査」によると、両者には大きなずれがあることがわかりました。

専門知識を持ち、顧客にわかりやすく伝えることのできる能力

特に注目したいのは、上から2番目の「この商品が実際にどのように作動するか(デモ)」の箇所です。見込み客の54%は、実際にデモを動かすなどして商品の動作をくわしく知りたいと思っています。しかし、提供する商品やサービスの動作について話したい営業担当者の割合は23%に留まっています。

営業担当者が商品を実際に動かしながら説明することにあまり熱心でない背景には、技術面の知識に対する不安があると考えられます。

説得力のある提案を行うためにも、営業担当者は自社商品やサービスの専門的な知識を備えておく必要があります。 理解できないことや分からないことがある場合は、開発担当者や社内の専門家からレクチャーを受けるようにしてください。またデモ中に起きるトラブルへの対処法も知っておく必要があります。技術面に強い営業担当者であれば、見込み客も安心して提案を受けることができます。
 

自分の経験や知識、データを新しい場面で活かすことのできる能力

営業として社内の開発者や専門家から学んで十分な経験や知識を備えたとします。しかし、経験や知識を持っているだけでは十分とは言えません。

以下のグラフを見てください。こちらもHubSpotが2016年に買い手と営業担当者に対して行った「商談が成立しなかった場合の接客状況に関するアンケート調査」の結果です。

自分の経験や知識、データを新しい場面で活かすことのできる能力

半数の営業担当者が「押しつけがましくないようにした」と答えているのに対し、契約に至らなかった見込み客は84%が「押しつけがましい」と感じています。また、営業担当者の83%が「見込み客にニーズをしっかり聞いた」と答えているのに対し、62%の見込み客は「ニーズをしっかり聞かれていない」と感じています。このように契約が成立しない商談では「見込み客の意識」と「営業担当者の意識」に大きなずれがあることがわかります。

例えば営業側が、自分の経験や専門的な知識をどれだけ説明しようとしたとしても、見込み客にとっては「押しつけがましい」価値を提供していない」と感じるかもしれません。

見込み客の状況や抱えている課題に即応した形での説明でなければ、どんなくわしい説明であっても耳を傾けてはもらえません。経験や知識やデータは、見込み客の状況に合わせて提供する必要があります。

見込み客の状況を前もってリサーチし、準備をするだけでなく、新しく判明した状況に合わせながら、説明や提案を行いましょう。この能力は、「傾聴」と「営業ロープレ」の2つのトレーニングを通して身につけることができます。

傾聴とは、自分の意見を差し挟むことなく相手の言葉に耳を傾けて「それはどういうことですか?」「どのようにお感じですか?」などのオープン・クエスチョンを通じて、相手の話を引き出すトレーニングです。

また、相手の状況に応じて説明や提案のやり方を変える能力は、営業ロープレを通じて養うことができます。

ロープレについては本メディアの別記事で紹介している「営業力向上に効果的な営業ロープレについて解説」を参考にしてください。
 

顧客企業内で意思決定に影響力を持つ人や、将来的な人事を見分ける政治的洞察力

営業パーソン は「誰が意思決定者なのか」「購入を最終的に決めるのは誰なのか」をあらかじめ知っておく必要があります。意思決定者でない人とどれほど話を進めていたとしても、最終的に購入するかどうかの責任を別の人が負っているのであれば、クロージングから稟議に進めるための手続きは、意思決定者と改めてしなければなりません。

しかし、先に挙げた「営業担当者と見込み客が話したいことのずれ」のグラフにもあるように、「意思決定者が誰なのか」や「予算の策定者や策定責任者が誰なのか」は営業担当者が話題にしたくても、買い手にとっては話題にしたい内容ではありません。

クロージングの最終プロセスで、商談相手に直接聞いて確認することが有効な場面もありますが、それ以前の段階で準備できることもあります。

トップ営業は顧客企業の購買担当者だけでなく、いろいろな人と言葉を交わし、注意深く話に耳を傾けます。ちょっとした雑談や愚痴などを通じて人間関係がつかめたり、裏情報を教えてくれたりする人を見つけられるかもしれません。

こうした能力も傾聴のトレーニングによって獲得可能です。
 

営業として学び続ける能力

営業として学び続ける能力とは、営業部内で決められたノルマを達成した後も満足するのではなく、情報を収集し、自分の能力やスキルを向上させる努力を怠らないということです。

営業のやり方やマーケティング手法、データの集め方など、情報はめまぐるしく更新されていきます。自社商品やサービスだけでなく、業界全体やデジタルマーケティングなどの情報も、常にアップデートする必要があります。

学び続ける機会を個人の意思にゆだねるのではなく、チームとして仕組み化することで、達成率は格段に上がります。

「営業担当者1人あたり売上高を50% 増やす方法(英語)」 によると、継続的に営業チームのトレーニングを行っている企業は、そうでない企業にくらべて純利益が50%も高くなっています。

営業ロープレや傾聴、また学習会やプレゼンの練習など、週に1度、15分~30分の学習の機会を仕組み化しましょう。また自分たちの営業ロープレや傾聴のトレーニングを録画し、振り返り、改善することも必要です。

この4点の能力を身につけることで、トップ営業か、それに準ずる抜きん出た成果を出し続けられる可能性が高くなります。
 

見込み客の信頼を得られる営業になるには?

見込み客の信頼を得られる営業になるには?

ここまで読んでいただくと、顧客に寄り添い、信頼を獲得することが重要だということがご理解いただけたと思います。では、実際どのようなステップを踏めば信頼獲得できる営業を実施できるのでしょうか。
 

顧客が、今どのような状態なのかを把握する

Webサイトの訪問履歴、見込み客から寄せられた問い合わせ、マーケティング担当者、インサイドセールスがテレアポを行っている場合はインサイドセールス担当者を交えて、事前にリサーチを行います。

顧客が、今どのような状態なのかを把握する

見込み客が上図のどの段階にあるのかを見極め、どのような提案が適切かを検討します。
 

カウンセラーやアドバイザーとして対話する

「売り込む」のではなく、見込み客との間に信頼関係を構築し、見込み客を支援することを第1に考えます。見込み客が抱える課題や問題に対する解決策としての商品やサービスを提案します。

専門的な知識をわかりやすく伝えるだけでなく、見込み客の関心やニーズに合わせて提案方法を工夫します。
 

顧客情報の管理を徹底する

多くの企業、特にBtoB企業における営業は1人で完結するケースは稀でしょう。 マーケティング部門がWebサイトなどを通じて価値ある情報を提供し、インサイドセールスが商談の機会を獲得し、フィールドセールスが実際に営業を行うという分業体制が敷く組織が増えています。だからこそ、チームで協力しながら営業活動を進めることが重要です。

そのようなチームプレーを前提とした場合、顧客情報はCRMなどのシステムに一箇所にまとめ、どのメンバーでも顧客の行動履歴や商談状況を確認できるようにしておくべきです。営業担当者の場合は、自身の顧客とのコミュニケーション履歴を必ず顧客情報の管理システムに記録しておきましょう。
 

見込み客への価値提供に徹すれば、自然とトップ営業になれる

各企業で活躍する多くのトップ営業の仕事法もスキルも、決して特別なものではありません。見込み客の話に耳を傾け、問題解決に誠意をもって取り組むこと、製品やサービスについて、専門的な知識を持ち、それをもわかりやすく伝えるなど、営業の本質を理解し徹底した結果として成果が出ているはずです。

自身の営業成績を伸ばしたいと思うあまり、押し売り感が強い営業スタイルになってしまう方は少なくないかもしれませんが、それでは本末転倒です。まずは自身の都合を忘れ、目の前の見込み客が抱える課題を理解し、解決策を模索しましょう。

顧客起点で考えられるようになることが、トップ営業への第一歩です。

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営業で必要なスキル & ロールプレイング ガイド

 営業で必要なスキル & ロールプレイング ガイド

元記事発行日: 2021/01/22 4:11:23、最終更新日: 2023年8月22日

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