コンテンツマーケティングによる効果の一つとして、一般的に真っ先に挙げられるのが集客です。しかしその具体的な実践方法に関する情報はまだまだ多くないように思います。

集客の難しいところは、単に読者が求めるコンテンツを作れば済むわけではないという点です。見込み客を効果的に集められるチャネルはどこか?そのチャネルに合ったコンテンツは何か?といった視点で、整合性のある集客施策を設計する必要があります。
コンテンツマーケティングの成功例としてよく紹介されるような企業は、どのように取り組んでいるのでしょうか?

今回は、アメリカのRiver Pools and Spas社(RPS)という会社による取り組みを紹介します。バージニア州を中心に住宅用プールの施工を手掛ける小さな会社ですが、コンテンツマーケティング業界ではおそらく知らない人はいないと言えるほど有名です。

RPSはリーマンショックの影響で倒産しかけたものの、コンテンツマーケティングに取り組んだことで見事に業績を立て直しました。

同じくリーマンショックによって競合他社が売り上げを減らす中(不況の中で新たにプールを家に設置しようする人は多くない)、RPSは年間売上高を施策前の400万ドルから500万ドルに増やしただけでなく、25万ドルだったマーケティング費用を4万ドルに削減したといいます。

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さらに経営者のマーカス・シェリダン氏は、その後コンテンツマーケティングのコンサルティング会社を立ち上げ、業界で知らぬ人はいないほどのインフルエンサーまで上り詰めました。まさにシンデレラストーリーを地で行く事例です。

同社の集客施策を分析してみました。

有力な集客チャネルを絞ったRPS

住宅の庭に設置するプールの設計やデザイン、設置作業などを手掛けるRPS。同社によるコンテンツマーケティング施策の目的は、販売増です。プール設置に関する一般的な疑問に答えたブログコンテンツを発信することで、見込み客によるサイト訪問と問い合わせを狙っています。

特に見込み客が気にしがちな「費用」「製品の問題点」「比較」「レビュー」「重点製品」の5つに関するコンテンツには力を入れているようです(同社のコンテンツ内容については、我々のブログでも紹介しています)。

RPSによる記事の一例。

海外コンテンツマーケティングの一例
ただいくら質が高いコンテンツを作っても、読まれなければ意味がありません。そこで検索やSNSといったネットコンテンツの主な集客チャネルを開拓し、訪問者を集める必要があります。

SimilarWebによると、RPSの場合は集客数の約9割を検索流入が占めています。「fiberglass pool cost」や「pool installation」といったプール施工検討者による検討キーワード経由で、ウェブサイトに集客しているようです。

一方でこれだけコンテンツ発信に力を入れているにもかかわらず、SNSにはほとんど注力していません。

RPSによるFacebookのファン数は900人超(2017年1月13日時点)にとどまりますし、Twitterは社長のシェリダン氏によるアカウントと兼用。フォロワー数は約1500人程度です(同)。コンテンツへの「いいね」やシェアもほとんど付いていません。

同社はSNS経由の集客を強化する必要はないのでしょうか?たとえばFacebookやTwitterでシェアされやすいバズコンテンツを出してさらなる集客を狙う、というやり方もあるかもしれません。

しかし筆者は、検索流入にだけ注力しているRPSの集客施策は非常に妥当だと考えます。SNSにまで手を広げなくても、検索コンテンツだけで十分成果をあげられる状況だからです。

別の言葉でいうと、自発的に検索するようなニーズ顕在者、つまり購買熟度の高い見込み客だけを狙えば十分販売につなげられる状況だからです。そのためSNSでシェアされたコンテンツによって接触するようなニーズ潜在者、つまり購買熟度の比較的低い見込み客を時間をかけて顕在客にしていくという戦略を、敢えて捨てているのではないかと考えます。

成果につながる検索集客を実現するには?


検索コンテンツだけで十分だと考える理由は、以下の2つです。

  1. 購買につながり得る検索キーワードが多数存在する
  2. 上記のキーワードについて、RPSがコンテンツ発信を始めた2010年当時、競合の検索コンテンツはほぼ存在しなかった

まず「1」を事前に確認することは重要です。そもそも見込み客が検索していなかったら、検索コンテンツを作っても意味がないからです。

RPSの場合は問題なさそうです。たとえば同社製品のジャンルである地中に埋めるタイプのプール(Inground pool)関連のキーワードを以下の手順で確認してみました。

  • ツールを使ってGoogleで主に検索されている「inground pool」関連のキーワードを抽出
  • キーワードプランナーを使って、それぞれの月間検索数を抽出
  • 同社に関連すると思われるキーワードを目視で絞り込み

その結果が以下になります(検索回数上位20個)。トップの「inground pools」をはじめ、それぞれの検索回数が比較的多いため、検索上位に表示できれば一定の集客数を期待できそうです。

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さらに同社の主力製品であるファイバーグラス製プール(fiberglass pool)関連のキーワードについても調べてみました。

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同じくそれなりの検索ニーズがあります。しかも「inground pool」と違い、プールの材質まで絞って検討しているため、購買意欲が相当高い人による検索だと予想できます。

上記2つのキーワード以外にも、関連キーワードがいくつかあることを考慮すると、同社が検索コンテンツによって十分な数の見込み客を集める余地はあると言えるでしょう。

しかし検索ニーズが十分だとしても、多数の競合コンテンツがひしめくジャンルであれば話は別です。後発でコンテンツ発信を始めても、検索上位達成は難しいという状況もあり得るでしょう。

その場合、当面の間は広告で集客する、もしくはより潜在層にリーチするためにSNSコンテンツに注力する、といった代替案を検討しなくてはならないかもしれません。

そこで事前に「2」の競合コンテンツの有無も考慮する必要があります。

その点でいうと、RPSがコンテンツ発信を始めた2010年当時は、コンテンツマーケティングの黎明期。しかも住宅用プールというニッチな分野だったこともあり、有力な競合コンテンツはほぼ皆無。コンテンツを検索上位に表示させることは、難しくなかったでしょう。

実際に「Inground pool」関連、「Fiberglass pool」関連のキーワードの多くで、現在でも同社のコンテンツは検索上位に表示されています。

Inground pool関連のキーワードとRPSの検索順位(2017年1月13日時点)(使用ツール:Ginzametrics)

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Fiberglass pool関連のキーワードとRPSの検索順位(同)

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関連キーワードをここまで独占できれば、「プール関連で検索すると、やたらこの会社が出てくるな」と見込み客が感じる状況にできます。

そうすると効果的に認知度を向上させられますし、コンテンツの内容が良ければ、そこから信頼を獲得して購買に導きやすくなるはずです。

ネット上にコンテンツがあふれる現在のような状況において、自社が狙う関連キーワード群の上位を独占できるかどうかは、非常に重要です。

狙うキーワード群のうち、大部分を競合に取られている状況では、十分な集客やコンバージョン達成は難しいためです。

世の中のコンテンツ量が急増する中、(検索流入を狙った)コンテンツマーケティングによって成果を上げるための施策について、コンテンツマーケティング等の分野で著名なマーク・シェーファー氏は次のように語っています。

「ニッチな分野において圧倒的な量のコンテンツを出し、競合を締め出す最初のプレイヤーになることこそが重要だ」。

逆に言えば後発になればなるほど、競合を上回る工夫、もしくは異なる土俵を探す必要性が増してくることになります。

そういう意味では、RPSによる成功要因の一つは、競争が少ない黎明期にいち早くコンテンツ発信を始めたことで、結果的にプール関連の検索上位から競合を締め出してしまったことだと言えるでしょう。

集客はあくまでコンテンツマーケ施策の一部

整理すると、検索コンテンツで集客するのであれば、まず「購買につながり得る検索キーワードの有無」「競合コンテンツの状況」の2つを把握することが必要です。

またその前段として、検索やSNSをはじめとする、どのチャネルからの集客が妥当なのか?そのチャネルで集客できるコンテンツとは何か?を突き詰めて考えることも重要となるでしょう。

さらに上記を考えるためには、自社の主な見込み客がどのような人で、購買までにどのような情報を求めているのか、といった見込み客のペルソナとカスタマージャーニーを理解することが不可欠です。

今回のお題となったコンテンツによる集客は、あくまで一連のコンテンツマーケティング戦略におけるごく一部に過ぎないと言えます。

また一つ注記しておくと、本稿は最近問題になっているようなスパム記事、つまり検索上位表示を目的に、他の記事を盗用したり信憑性の薄い情報を発信するような施策を推奨するものではもちろんありません。

この手の記事は、Google検索の仕組みを巧妙に悪用しているため、アクセスを増やして広告収益を稼ぐことはできてしまうかもしれません。しかし読者の信頼を獲得してマーケティングゴールを達成するというコンテンツマーケティング本来の目的を達することは難しい、ということは改めて認識するべきだと思います。

次回は、集客した見込み客をコンバージョンにつなげるためのコンテンツ施策について解説いたします。

ちなみにRPSの経営者であるシェリダン氏が、先日著書「They Ask You Answer」を発売しました。シェリダン氏がどのようにコンテンツ作りに取り組んだのか、詳しく説明しているのでご興味ある方はぜひご覧ください(ちなみにブログ運営に関するノウハウのほとんどは、HubSpotのブログで学んだと明かしていました)。

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元記事発行日: 2017年1月22日、最終更新日: 2019年10月30日

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