SaaS企業が成長していくためには、マーケティング指標を明確に定義し、詳細に調査を続けることが不可欠です。そうすれば、マーケティングキャンペーンの成果を正しく測定でき、リスクの診断にも、あるいは成長を加速させるチャンスをいち早く見つけるためにも役に立ちます。

無料

マーケティングの基礎と実践を解説!

無料ガイド&テンプレート

・マーケティング施策の種類

・戦略を立てるためのフレームワーク

・目標の設定と主な指標

・ユーザー分析とは

・テンプレートのご紹介

マーケティング戦略と効果測定 ダウンロードする→

私がそう考えるようになったのには理由があります。私はこの6年間というもの、マーケターとしてSaaS企業の指標リストの追跡をひたすら細かく、ほとんどがむしゃらに続けてきました。

そうするうちに、私は指標を追跡することが、まるで得点を表に記録しているように思えてきました。特定のタスクやイニシアチブのパフォーマンスを指標として記録し続けるあいだに、予算のアップ、成長の加速、チャンスの拡大など、マーケターの誰もが目指すことへの重要な手掛かりが見えてくるようになったのです。

この記事では、私がこれまで何年ものあいだ注目してきた最も重要な12の指標について詳しく説明します。これらの指標は、私がマーケティングを行ってきたSaaS企業では確かに有益なものでした。しかし、すべての会社でこれが同じとは限りません。それぞれの要件に合わせて、適切と思われる指標を考えて利用するようにしてください。

SaaS企業が注目すべき12のマーケティング指標

1)ユニークな訪問者数

ユニークな訪問者(ユニークビジター)は、単純にウェブサイトを訪れた個人を重複なしで数えます。正直なところ、これが今回ご紹介する指標の中で最もヴァニティ(追うべきでない)かもしれません。ウェブサイト訪問者の見込みの度合いを、この指標から感じ取ることはできないからです(参照記事はこちら:Dont' Be Fooled By Vanity Metrics)。

ですが、自社のウェブサイトがアクセスを集めるポイントをきちんと押さえているか調べるには便利な指標ですので、オーガニック検索で、ダイレクトで、あるいは有料広告でサイトにアクセスした人の数をすべてまとめて記録しておくとよいでしょう。

2)リードの数

まず、社内で「リード」と「クオリファイド(有望な)リード」の違いについて、セールスとマーケティングとで徹底的に話し合って、明確にしておくことが重要だと思います。

私の場合は、ファネルのトップあたりにいる人を「リード」と呼ぶようにしています。言い換えると、製品について書かれたブログを読んで興味を示したけれども、その製品そのものにはまだ興味がない人をリードと考えています。

有望でないリードを除外する方法について理解したい方はこちらの記事をご覧ください(関連記事はこちら:It's Not You, It's Them : 7 Signs your Lead Is a Terrible Fit)。

3)クオリファイドリード(有望なリード)の数

私は、ファネルの中間に位置する人、つまり製品のデモや無料のトライアルを試した人を、クオリファイドリードとして通常は分類しています。

リードがデモをリクエストすれば、製品の機能を見たいと考えていることがわかり、無料のトライアルをリクエストすれば、さらに進んで、自分のビジネスにその製品がどのように役立つか知りたいと考えていることがわかります。

これらのリードは、一般にMQLMarketing Qualified Lead)と呼ばれます。これは記録するべき価値の高い指標だと思います。

4)新規顧客数

これほどわかりやすい指標はありません。新規顧客数は、製品にサインアップした新規顧客の数を、月ごと、四半期ごと、あるいは年ごとに記録します。

このあと説明する収益の方が重要さでは勝るかもしれませんが、どのくらいの頻度で顧客を獲得しているか知るために、あるいはどれくらいの市場規模を持っているか知るために有効です。

5)収益

会計簿の金額を見れば、会社がうまくいっているかどうか一目瞭然でわかります。MRR(月次経常収益)、ARR(年次経常収益)、ARPA(アカウント当たりの平均収益)を追跡することで、どのくらいの収益を実際に得ているかが理解できます。

6)クオリファイドリードから顧客への転換率

いわゆる「グロースハッカー」になりたいという人は、まずクオリファイドリードが顧客にコンバートする割合を調べて改善することから始めましょう。

この指標では、トライアルを申し込んだ人やデモをリクエストした人が製品を実際に購入した割合を調べます。

7)ユニークな訪問者からクオリファイドリードへの転換率

たとえウェブサイトに毎月何千という一意の訪問者がいたとしても、訪問者が何のアクションも起こしていなければあまり意味がありません。したがって、訪問者がクオリファイドリードに変換した割合を調べることも重要です。

この割合を測定したのちA/Bテストを実施して、転換率を上げるための実験を行いましょう。A/Bテストを効果的に行うためのガイドラインをこちらからダウンロードできます

8)チャーン率

チャーン率は収益の額、または顧客の数を使って計算します。一定の期間内に企業が失ったものを調べるための指標で、SaaS企業においては間違いなく最も重要な一つと言えます。

チャーン率は製品またはカスタマーサービス部門のための指標と言われることも多いのですが、私はそうではなく、マーケティングを含むすべての部門が利用すべき指標だと思っています。チャーン率が上がれば、マーケティングに問題があり、本来はその製品を必要としない人にそれを売ろうとしている事実が明らかになるからです。

顧客のチャーン率を測るには、月初めの時点での顧客数を調べ(500人いたとします)、その月のあいだに失った顧客の数を調べます(50人としましょう)。この場合、月間の顧客チャーン率は50/500 = 10%と計算されます。

9)顧客ライフタイムバリュー

顧客ライフタイムバリュー(CLTVCustomer Life Time Value)とは、平均的な顧客が企業との一連の関係(ライフタイム)を通じて支払った金額を言います。

CLTVを計算するには、最初に顧客ライフタイムの平均を出す必要があります。それには「1/顧客チャーン率(月または年)」という計算式を使います。たとえば顧客チャーン率が月次で10%の場合、顧客ライフタイムの平均は、1/0.1 = 10か月となります。

次に、顧客ライフタイムの平均にARPA(アカウント当たりの平均収益)を掛けます。ARPAは収益合計金額を顧客合計数で割って計算します。たとえば、ある企業に合計で5,000人の顧客がいて、ひと月に$5,000,000の収益を上げたとすると、その月のARPA$5,000,000/5,000 = $1,000となります。

ARPAが出たら、その値に顧客ライフタイムを掛ければ完了です。先の例であれば、顧客ライフタイムバリューは、10か月×$1,000 = $10,000となります。

10)顧客獲得コスト

顧客獲得コスト(CACCustomer Acquisition Cost)は、一定期間のセールスとマーケティングのコストの合計金額を、同じ期間に獲得した顧客の数で割ります。たとえば、セールスとマーケティングの費用にひと月$250,000かかり、その月に250人の顧客を獲得したとすると、CAC$1,000となります。

CACを計算する際には、必ずセールスとマーケティングチームの給与や福利厚生といった人件費も含めてください。

企業が拡大し、マーケティング部門で顧客獲得に直接には結びつかない(PRなどの)出費が増えてきたら、その費用は除いてCACを計算した方がよいかもしれませんが、起業して間もない会社であれば、セールスとマーケティングに関連するすべての費用を、CACの計算に含めてかまいません。

11)CLTV:CAC

SaaS企業の顧客獲得プログラムの健全性や見通しを調査するために、私は顧客ライフタイムバリュー(CLTV)と、顧客を獲得するために費やした金額(CAC)の関係を示す指標を利用します。

大まかに言うと、一般にCLTVの値がCAC3倍以上であれば、「健全な企業」であると見なすことができます。CLTVCACの割合が3:1よりも大きいほど、顧客獲得のための取り組みが効率良く機能しており、セールスとマーケティングの予算を増やしても問題ないことがわかります。(製品の特質によっては、この割合が多少上下する場合もあります。)

上手く機能している部分により多くの費用をかけることで、大きな効果を期待できます。

12)売上総利益率

売上総利益は通常、会計部門の指標と考えられていますが、私はマーケティング指標としても重要だと思います。なぜなら、売上総利益は価格設定に大きく左右されますが、その価格設定にマーケティング部門が重要な役割を担うからです。

売上総利益率は、製品やサービスの売上高から売上原価を差し引いた金額の、売上高に対する割合を計算した値です。計算式は「売上総利益率(% = (売上高 - 売上原価)/売上高」になります。

たとえば、ある企業の売上高が$10,000,000で、製品やサービスを提供するためにかかった費用が$2,000,000だったとすると、売上総利益率は($10,000,000-$2,000,000)/$10,000,000 = 0.8、すなわち80%になります。

指標を記録する際の注意点

これらの指標を細かく追跡することは、どのSaaS企業においても非常に重要であることは間違いありません。ですが、それが必ずしも簡単ではないことを、ここでお話ししておかなければならいでしょう。

データの整合性を保つのも大変ですし、使用する指標を決めるだけでもひと苦労です。事実に基づいて指標を計算し、記録するために、次の2つの点に注意してください。

  • 各指標の計算方法を宣言する。 指標の一貫性を保つために、計算方法を明確に記しておくことが重要です。それにより、毎月どこからデータを集めて計算しているかをすべての人が理解できます。利用する指標を決定する際には、それぞれをどの方法で計算するか十分に理解し、周りの人に簡単に説明できるようにしてください。

  • ビジネスインテリジェンスツールを使用して、複数のソースから一つのダッシュボードにデータを集める。 最近では、CRM、スプレッドシート、マーケティングオートメーションシステムなど、さまざまなソースからデータを取得して一つのレポジトリに集めるツールが数多く見られるようになりました。このようなツールを利用すると、複数のソースから集めたデータを使用して指標を計算する必要がある場合に便利です。

指標は注目されなければ意味がない

 この記事で取り上げた指標は、通常マーケティング部門が中心となって調査を行います。それぞれの重要性や関連性を周りの人に説明できることも重要ですが、その前に、その指標の存在や重要性をチーム全員に理解してもらう必要があります。

まずは指標のデータを全員が参照しやすい場所に置き、誰にでも簡単に理解できるようにしておく必要があります。そして、マーケティングのチーム全員に対し、ビジネスを成長させるために、この指標の一つひとつをポジティブな方向へ移行させる必要があると明確に伝えなくてはなりません。

つまり、指標に全員が注目するよう仕向けることこそが、その数値を良い方向へ導くために不可欠なのです。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

基礎理解に最適!マーケティング戦略と効果測定

編集メモ:この記事は、 2015年11月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Geoff Robertsによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

 基礎理解に最適!マーケティング戦略と効果測定

元記事発行日: 2016年2月08日、最終更新日: 2023年9月16日

トピック::

マーケティングノウハウ・手法