「Webデザインの歴史はいつ始まり、どのように変わってきたのだろう?」
Webデザインについて考える上で、このように思ったことはありませんか。
1991年に世界初のWebサイトが公開されてから、Webデザインは大きく進化してきました。Webデザインには年代ごとに特徴があり、その進化の歴史を知ることで理解が深まり、新しい発見につながります。
本記事では、Webデザインの過去30年間の歴史を振り返りながら、その進歩やトレンドについて検証していきます。2022年のトレンド予測を反映した最新のデザインもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
現代の生活では身近なものになっているWebデザインですが、その歴史はまだ浅く、ここ30年で急速に進化を遂げています。本章では、1990年代から現在までのWebデザインの歴史を振り返ります。
【1990年代初期のWebデザインの特徴】
世界初のWebサイトは、1991年にイギリスの計算機科学者のティム・バーナーズ=リー氏によって公開された、World Wide Web(WWW)というシステムのページです。
Webの起源とも呼べるサイトですが、当時のコンテンツはほぼテキストのみで構成され、現代では当たり前の「デザインレイアウト」も存在していませんでした。
1990年代初期は、インターネットの接続に「高速」という言葉は存在せず、ダイヤルアップモデムが主流だった時代です。遅い通信速度に対応するため、Webサイトは軽量でなければならなかったこの時代は、Webデザインの「古代」と呼ぶのがふさわしいでしょう。
タイポグラフィや画像、ナビゲーションといった視覚的要素はまだ発明されておらず、タグやヘッダー・段落・リンクを中心とした非常に基本的なものに限られていたため、見た目は非常にシンプルなものでした。
【1990年代中期のWebデザインの特徴】
Webデザインの「中世」にあたる1990年代中期は、構造と外観という点でWebデザインに進化が見られた時代でした。デザイナーたちは表形式のレイアウトを使ってコンテンツを整理するようになり、柔軟性と創造性が向上しました。
この時代のWebサイトもまだテキストが中心でしたが、テキストを段や列に分ける、ナビゲーション機能を持たせるなどの技術が浸透し始めます。
また、90年代中期はグラフィックデザインの人気が高まり、ページへのアクセスを記録するヒット数カウンターやアニメーションテキスト、ダンスのGIFといったグラフィック要素が数多く生まれました。
【1990年代後期のWebデザインの特徴】
1990年代後期は、Flashが市場に導入され、Webデザイン業界の再生・復興とも呼べる「ルネッサンス」の時代です。FlashはAdobe社(旧Macromedia社)によって開発された、コンテンツを音・グラフィックといったアニメーションと組み合わせて作成するためのソフトです。
1996年に開発され、その数年後に人気に火がついたFlash は、基本的なHTMLでは不可能だったデザインの選択肢を大きく広げました。それまでのデザイン要素は、ナビゲーションやタイル型の背景画像・ネオンカラー・3Dボタン・スプラッシュページなどに改良され、ビジター中心主義のデザインの幕開けとなりました。
【2000年代初期のWebデザインの特徴】
2000年代初期には、CSSへの対応が進みました。従来のようにHTMLだけで表現するやり方から、コンテンツとデザインを分けた開発が可能になり、Webデザイナーとコンテンツ開発者が創造的自由を手に入れた「啓蒙時代」と言えます。
CSSでスタイルを指定することで、コンテンツをデザインから開発することも、その逆もできるようになりました。コードが減ってよりシンプルになった上に、divタグが普及したため、Webサイトはメンテナンスのしやすさと読み込み時間の短縮が可能になりました。
また、この時代には色に対する理解が深まったことで空白スペースが増え、ネオンのような派手な配色はあまり使われなくなりました。解像度やピクシレーションの重要度が増し、コンテンツの配置に対する関心も高まっていきました。
【2000年代中期のWebデザインの特徴】
2000年代中期はWeb 2.0という言葉が誕生し、大きな技術革新が起きた時代です。Webデザインの歴史における「産業革命」とも呼べるでしょう。Web 2.0とは、Webサイトを通して情報を受け取るだけでなく、誰もが自由に情報の発信ができるようになった状態を指します。
複数の情報を扱うマルチメディアアプリケーションの成長と、簡単で正確な操作ができるコンテンツや、SNSなどのソーシャルメディアの登場が、この時代の特徴です。デザイン面では、色分布の改善やアイコンのさらなる普及、そしてタイポグラフィに対する意識が高まりました。
コンテンツはSEO重視に変化し、ユーザー重視のデザインが中心となり、製品を売り込むことや、少なくともそれを前面に押し出すことは、Webサイトの二次的機能へと降格されました。
【現在のWebデザインの特徴】
世界初のWebサイトが公開されてから約30年が経った今、Webデザインは優れたマーケティング戦略に欠かせない存在として確固とした地位を築いています。
現在のデザインの傾向として、ミニマリズムやフラットなグラフィックス・背景に溶け込むタイポグラフィ・大きな背景画像などが挙げられます。UX(ユーザー体験)が重要視されるようになり、無限スクロール・シングルページといったデザインも台頭しています。
また、スマートフォンの爆発的な普及もWebサイト開発において考慮しなければならない重要な要素となりました。デジタル革命によってレスポンシブデザインの人気が高まり、Webサイトの構造を見直す必要性が出てきたのです。
モバイルファーストのWebデザインを叶えるため、今後はアクセシビリティ・適応性・ユーザビリティの3つの要素がより重要視されるでしょう。
各時代のデザインの特徴についてご理解いただけたところで、次はWebデザインの歴史から分かるトレンドの変遷を紹介します。
1990年代後期のFlashの浸透と共に流行したのが、ドット絵を使用したデザインです。この頃の通信環境には主にISDNやADSLが使用されており、通信速度は最大64kbpsほどしかありませんでした。現在の光回線では、最大1Gbps(1,000,000kbps )~10Gbpsほどの速度があり、比較するとその違いは歴然です。
通信速度が限られている中で、いかに容量を使わずに表現の幅を広げるかといった工夫の中で、ドット絵が流行したと考えられます。
2000年初期には光回線の普及と共に通信速度が向上し、以前は使用できなかった写真を用いたデザインがトレンドとなりました。
表現の幅が広がったとはいえ、JavaScriptなどの動的要素はまだ一般的ではなく、CSSのレイアウトと写真を使った静的なパンフレットのようなWebデザインでした。
2006年、JavaScriptをより簡易に記述できるjQueryが発表され、以降jQueryとCSSアニメーションを使用した、動きのあるデザインが好まれるようになりました。
現在でもなお、多くのWebサイトでページ遷移時やトップページなどにアニメーションが採用されていますが、処理速度が遅いというデメリットについては、解消の余地があるでしょう。
2012年にWindows8のメトロUIとして登場し、その後の大きなトレンドを作り上げたのが「フラットデザイン」です。2013年にはiPhoneのiOS7にも搭載され、スマホユーザーにも浸透していきました。
フラットデザインは、その名のとおり平面的なパーツで作られているのが特徴です。それまでのような立体感を表現したグラデーションなどの細かい加工を施さず、対象を抽象化し、色やフォントをシンプルにすることで、UIの質を高めることを目的としたデザインです。
パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットなどマルチデバイスに対応しやすいデザインとして、一つの潮流となっています。
「マテリアルデザイン」はGoogleが2014年に発表し、その後2015年~2017年にかけて自社製品やサービスに適用されてきたデザインです。従来のフラットデザインに3Dタッチをミックスし、影や奥行きを表現しています。
これにより、ユーザーがより直感的に理解でき、「このボタンを押すとどのような動作が期待できるか」といったことが、誰が見てもすぐに分かるようになっています。つまり、利用者のストレスを軽減した、優れたUXを実現したデザインと言えます。
「レスポンシブデザイン」は、各デバイスの画面サイズに最適化したデザインのことで、スマートフォンの普及と共に定着しました。1つのURLだけで、さまざまなデバイスで表示できるため、Webサイト管理の簡易化や、SNS共有のしやすさが向上するなどメリットの多いデザインです。
Googleが、2021年までにモバイルファーストインデックスへ移行すると発表したことにより、スマートフォンでの表示を考慮したWebデザインが早急に求められています。
ここまでお伝えしてきたように、Webデザインの流行り廃りの周期は早く、数年でトレンドが大きく変わることもあります。トレンドを知ることは、「今、世の中で求められているデザインやテイスト」を知ることにつながります。
特にWebデザインに関わる仕事をされている方であれば、クライアントの要望を汲み取るためにも、トレンドの把握は大切でしょう。本章では、Webデザインの最新トレンドを5つ紹介します。
ミニマルデザインとは、過度な装飾を控えたシンプルなデザインです。最小限ですっきりとしたデザインでは邪魔になる要素が少なく、見る人の集中力を途切れさせない効果も期待できます。
ミニマルデザイン自体は、特に目新しいデザインではないかもしれませんが、シンプルで洗練されたそのデザインは、今後もブラッシュアップを重ね注目されていくでしょう。
2020年に大きなトレンドとなったダークモードは、Instagram・Twitter・Facebook・Appleなどの大手ブランドが、それぞれのプラットフォームで代替テーマを提供したことで、今後ますます主流となると考えられます。
ダークモードには、ブルーライトによる眼精疲労の軽減や、デバイスのバッテリーを節約できる効果も期待できます。
ユーザーのITリテラシーの向上と共に、情報へのアクセス方法も変化しています。音声チャットボットやAIアシスタントの台頭により、音声ユーザーインターフェース(音声UI)も普及しつつあります。
テキスト検索だけでなく、音声での検索機能を追加するWebサイトが増える可能性が高く、Webデザインも音声ユーザーインターフェースに合わせて調整する必要があるでしょう。
直接のデザイン要素とは異なりますが、今後のSEOやユーザーエクスペリエンスに欠かせない条件として、ロードタイムの高速化があげられます。Webサイトの読み込みが遅いと、訪問者の離脱につながるからです。
ロードタイムの高速化には、画像の遅延読み込みができる「Lazy Load」が役立つでしょう。通常のブラウザは、ページを読み込む際に、HTMLに記載のすべての画像ファイルを自動ロードします。そのため、画像が多いWebサイトはロードタイムが遅くなってしまいます。
Lazy Loadなら、ブラウザの画面で目に見えているページ部分の画像だけを読み込むため、ロードタイムの短縮が可能です。Lazy Loadは、Googleが推奨しているJavaScriptライブラリですので、Webデザインを考える際に組み込んでみてはいかがでしょうか。
Webデザインの一環として、ユーザーと対話型の「アンケート機能」を採用するWebサイトが増えています。
商品やサービスの説明を読み、自分にピッタリのものをユーザーに判断させるのではなく、パーソナライズされた質問形式にすることで、企業側から最適な商品やサービスを提案できます。それにより、購買率の向上が期待できます。
Webデザインの歴史を振り返ると、その時代の閲覧環境や技術革新により、さまざまなトレンドが生まれてきたことが分かります。Webデザインの歴史や各時代のトレンドを知ることで、最新のWebデザイントレンドへの理解を深められるでしょう。
「いかに効率的かつ効果的にコンテンツを見せるか」という視点で進化しているのがWebデザインだとすれば、「ユーザーが関心のある良いコンテンツとは何か」を考えることは、それ以上に重要です。