私はデータを分析するのが大好きです。マーケティングキャンペーンは常にデータを駆使し、分析を重ねながら展開してきました。
ですから、少し前にHubSpotに入ることが決まったとき、HubSpotマーケティングブログにおける「勝利の方程式」は何か、つまり、どうすればソーシャル共有、インバウンドリンク、そしてオーガニックトラフィックを大量に獲得できるのかを、自分のデータへの愛着を生かして解明しようと決心し、調査を始めました。その結果、伏せておくのはもったいないほど面白いデータが得られましたので、ここでお見せしたいと思います。
得られたデータについて説明する前に、私が何を調査したかについて少し詳しく書いておきます。
あらかじめ断っておきますが、今回はデータの相関関係に注目して行った調査の結果を伝えることが目的ですので、トラフィックやインバウンドリンク、ソーシャル共有の数を増やすためのアドバイスと言えるものはありません。また、ブログ記事はXX文字だからよい、ということはありません。重要なことはあくまで、ペルソナに対して適切なチャネルを通じて適切なコンテンツの形(ブログであればブログで)届けることです。相関関係を調べることによって、たとえ因果関係がわからなくても、どの要素がどう作用するのかが分かってきますので、それをお見せしたいと思っています。
では、始めましょう。
次のグラフはオーガニック検索によるトラフィックの平均値(Average Organic Traffic)を、ブログ記事のワード数ごとに分けて示しています。このデータから、2,250ワード(日本語の4,050文字相当)を超えるあたりまでは、記事のワード数が大きくなるほどオーガニックトラフィックの数も増えることがわかります。また、ワード数が2,250から2,500(4,500文字相当)までの記事で最も増加しています。
注: 250(4,50文字相当)ワード未満とは、インフォグラフィックまたは多数の画像を配置した、テキストの少ない記事と思われます。
ワード数が2,250から2,500までの記事が、オーガニックトラフィックを
最も多く獲得(クリックしてツィート)
続けて、ワード数がソーシャル共有(Social Share)にどのように影響するかを、各記事の共有数の平均値で考えてみました。ここで言う「共有数」とは、主要な5つのソーシャルメディア、つまりTwitter、Facebook、Google+、LinkedIn、Pinterestで共有された回数の合計を意味します。
ご覧のように、グラフの形はオーガニックトラフィックの場合とよく似ており、記事のワード数が大きくなるほどソーシャルの共有数も増えています。ただし、250ワード未満の記事が、1000ワード(日本語の1,800文字相当)未満までのなかで最もソーシャル共有数が多くなっています。ソーシャル共有数とオーガニックトラフィックの関係についても興味深いですが、別のテーマになりますのでまた後ほど。
ワード数が2,500を超える記事が、ソーシャルメディアで共有を
最も多く獲得(クリックしてツィート)
ワード数に関連してもうひとつ、外部のウェブサイトからのリンクの数について調べてみました。やはり、こちらもワード数が大きくなるにつれて増加していることがわかります。
ワード数が2,500を超える記事が、インバウンドリンクを
最も多く獲得 (クリックしてツィート)
以上、記事のワード数に注目してデータを調べました。この結果から、記事の長さをどれくらいにすれば、より多くのインバウンドリンクやソーシャル共有、オーガニックトラフィックが得られるかの目安が明確になりました。
ここまでの調査をさらに進めて、インバウンドリンクやソーシャル共有の数がオーガニックトラフィックにどう影響するかについても調べました。すると、特にインバウンドリンクに関して興味深い結果が出ましたのでのちほどご紹介します。
次のグラフは、ブログのタイトルがTwitterとFacebookでの共有数にどのように影響するかを示しています。
HubSpotのマーケティングブログの各投稿についてタイトルを調べたところ、タイトルのワード数が8から12(日本語の14から22文字に相当)の場合に、Twitterで最も多く共有されることがわかりました。一方、Facebookでは12または14ワード(25文字相当)で最も多くの共有を獲得しています。
タイトルのワード数が11(22文字相当)または14の場合に、
ソーシャル共有を最も多く獲得(クリックしてツィート)
このデータは私が想像したのとはまったく違っており、非常に興味深い結果となりました。ブログではなくTwitterやFacebookに投稿した記事でも、タイトルのワード数による影響について調べてみたいと思いますが、それだけで新しくブログ記事が書けそうですので、しばらくお待ちください。
次の調査結果には驚きました。知らないと損をすると思います。記事のタイトルによく見られる語について、Twitterでの共有数への影響を調べてみました。
グラフの一番上に、HubSpotマーケティングブログの記事が獲得したTwitter共有数の平均値(Marketing Blog Average)を追加し、他の平均値と比較できるようにしました。
タイトルに何らかの数字(Any Number)を含めると、共有の回数が18.62%増加します(例:「データをマーケティングに利用する効果的な25の方法」)。また、Ebookをタイトルに含めると、共有の回数が8.08%増加し、"How(方法)"だと9.1%増加します。大きいものでは、"Infographic(インフォグラフィック)"で100.05%、また"Template(テンプレート)"で114.60%の増加が見られました。
記事のタイトルに「テンプレート」を含めると、
Twitterでの共有が114%増加する(クリックしてツィート)
断っておきますが、これらは平均値を示しただけです。URLをツィートする人は、タイトルに含まれる語だけを見て記事を選ぶわけではありません。ですから、これら5つの語を全部タイトルに含めてブログ記事を書いたとしても、すべての人からURLをツィートしてもらえることは絶対にありません。
次に、ブログ記事の主なトピックに注目してデータを集めました。次のグラフは、各トピックに関して書かれた記事が、他のウェブサイトから獲得したインバウンドリンクの数を平均値で示しています。
この調査は、どのトピックの記事がより多くのリンクを獲得するかを知る目的で行ったものです。ただし、データの信頼度を高めるため、ブログ記事の数が10に満たないトピックは省きました。
この結果から、「A/Bテスト」について書かれた記事が最も多くリンクを得たことが分かります。なお、この「A/Bテスト」では標準偏差もかなり高い値が出ており、どの記事も安定して多くのリンクを得ています。「A/Bテスト」に続いて「Call-To-Action」、「コンテンツマーケティング」、「電子メールマーケティング」、「デザイン」について書かれた記事も、比較的多くのリンクを獲得しています。
HubSpotのマーケティングブログで最も多くのリンクを獲得したトピックは「A/Bテスト」。続いて「CTA」、「コンテンツマーケティング」、
「電子メールマーケティング」、「デザイン」(クリックしてツィート)
最後に、私のようなデータ好きにはたまらない調査結果について説明します。SEOにおけるアンカーテキストの重要性については、これまで何年ものあいだ多くの人に議論されてきました。では、アンカーテキストと外部のリンクが、ブログ記事の検索ランキングにどう影響するのでしょうか。私が調査したデータを見ながら考えてみたいと思います。
今回、どうしても強調したかったのがリンクの重要性です(関連記事はこちら:効果的なインバウンドリンクを構築する32の堅実な方法)。リンクとそのアンカーテキストがランキングプロセスにおいて重要な役割を果たすと、この数年間しつこいほど言い続けてきました。以降の調査結果を正しく理解すれば、競争の激しいキーワードでコンテンツがランキングの上位を得るための最も理想的なインバウンドリンクの数、つまり「スィートスポット」を知ることができます。
以下の2点について解明する目的で調査を行いました。
この調査で検索ランキングを上げる方法が解明されるわけではありませんが、目標とすべきものは分かるはずです。
これらを調べるために、前回の調査からさらにデータを集める必要がありました。具体的には以下の作業を行いました。
外部のリンク: HubSpot以外のウェブページから貼られたハイパーリンクです。つまり、外部の人が外部のウェブサイトからHubSpotに対して貼ったインバウンドリンクを言います。
アンカーテキスト: HubSpotに対して貼ったリンクのテキストです。たとえば、この文章の中でアンカーテキストは「文章」になります。
完全一致のアンカーテキスト: 先ほどの準備作業(2.)で抽出した最重要キーワードと、アンカーテキストが完全に一致することを言います。たとえば、「この記事の棒グラフの表示がまったくつまらない理由」というタイトルの記事があり、その最重要キーワードが「棒グラフ」だとします。このとき、外部からHubSpotへのリンクに「棒グラフ」とだけ書かれていれば、それが完全一致のアンカーテキストです。たとえば、「棒グラフは手を抜いているかもしれないけど、説明する内容は凝ったものになっています。」のリンクがそうです。
部分一致のアンカーテキスト: 完全一致のアンカーテキストとよく似ていますが、テキスト内に最重要キーワードが含まれていればよいのが部分一致です。つまり、先ほどの「棒グラフ」の例で言えば、「まあ落ち着いて。棒グラフがお気に召さないなら、さらにつまらない円グラフはいかがでしょう。」のリンクが部分一致のアンカーテキストです。
さて、冗談はこのくらいにして。。。
次の円グラフはHubSpotマーケティングブログでオーガニックトラフィックについて上位100に入らなかったブログ記事へのアンカーテキストについて調べ、平均値を示したものです。
下位のグループでは、各ブログに対して外部から張られたリンクのアンカーテキストのうち、0.60%が完全一致のアンカーテキストで、11.56%が部分一致のアンカーテキスト、残り87.84%はそれ以外(「hubspot」や「ここをクリック」など)でした。
では、上位100のグループではどうでしょうか。
1.10%が完全一致のアンカーテキスト、20.86%が部分一致のアンカーテキスト、残りは78.04%と、先ほどの結果から大きな違いが見られました。
平均値を比べただけでも、特徴がはっきりとわかります。
検索で上位に表示されるHubSpotのブログ記事は、他よりも多くの完全一致、
および部分一致のアンカーテキストで外部からリンクされている
(クリックしてツィート)
断っておきますが、完全一致のアンカーテキストを自分のコンテンツに向けて数え切れないほど作りましょうと言っているのでは決してありません。ただ、HubSpotのバックリンクプロファイルを調査し、それとオーガニックトラフィックとの関係を調べて結果をお見せしただけです。外部のリンクを1万件も自作するためにアルバイトを探すようなことだけは考えないでください。
続いて、上位100のブログ記事(オレンジ)とそれ以外(ブルー)のグループについて、各ページが獲得した外部のリンクの数の平均値を次のグラフに示します。その下に、部分一致と完全一致のアンカーテキストの数の平均値も入れました。
このデータから、ブログ記事が重要なキーワードで上位に表示されるために、どのくらいの数の外部のリンク、および完全一致と部分一致のアンカーテキストが必要かという目安を知ることができます。もちろん、自分のサイトへのアンカーテキストを自分で変えることはできませんが、これを理解しておけば、SEOのためのテンプレートを利用するときにも役に立つはずです。
次のグラフは、ブログ記事へのインバウンドリンクの数と、その記事が獲得するオーガニックトラフィックの関係を示しています。外部のリンクの数でブログ記事を分類し、相関関係がひと目でわかるように表示しました。また、どのグループもおよそ同じ数のブログ記事が含まれるように分類し、比較の条件が偏らないようにしています。
簡単に言うと、インバウンドリンクの数が多ければ、オーガニックトラフィックも増えるという、一般に考えられているとおりの結果になりました。なお、インバウンドリンクの数が300を超えるブログ記事で、オーガニックトラフィックが最も多くなっています。
最後に、ブログ記事がソーシャルネットワークで共有された回数を、獲得したインバウンドリンクの数ごとに比較しました。その興味深いグラフをご覧ください。
ソーシャル共有の多いブログ記事が、より多くのインバウンドリンクを獲得しています。ソーシャル共有の数はGoogleの検索ランキングに直接影響しませんが、オーガニックトラフィックに間接的に影響を与えていることは明らかです(参照記事はこちら:Matt Cutts:Facebook, Twitter Social Signals Not Part of Google Ranking Algorithms)。
つまり、
インバウンドリンクが300を超える記事が、オーガニックトラフィックと
ソーシャル共有を最も多く獲得する(クリックしてツィート)
今回の調査から出た結果で、具体的に何かアドバイスをするわけではありません。いくつか相関関係について説明しましたが、たとえばインバウンドリンクやアンカーテキストの数がこれだけあれば、必ずGoogleの検索で上位にランキングされますとは断定できません。
けれども今回の調査から、効果的なブログ記事を作成するための目安のようなものは明確になったはずです。これ以外にも数え切れないほどの要因がブログの効果に影響しますが、その一つひとつが検索のランキング、インバウンドリンク、ソーシャル共有、そしてオーガニックトラフィックにどのように影響するのかを、確実なデータに基づいて考えるようにすれば、皆さんがインバウンドマーケティングキャンペーンを展開するための助けに必ずなります。是非、覚えておいてください。
編集メモ:この記事は、2015年9月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Matthew Barbyによる元の記事はこちらからご覧いただけます。