ECサイト構築プラットフォームとして世界トップシェアのShopify(ショッピファイ)には、実店舗とECサイトの在庫・販売管理ができるPOS機能「Shopify POS」を追加できます。
Shopify POSを追加することで販売データを集計し、ECサイトと実店舗の在庫や販売状況を一括で管理できるようになります。
本記事では、Shopify POSの概要や導入メリットと、機能・料金体系・設定方法などを分かりやすく解説します。Shopify POS利用時の注意点もご紹介しているので、導入を検討している方は参考にしてください。
POS(ポス)とは、「Point of Sales(販売時点情報管理)」の略称で、どの商品が・いつ・どこで・何個・いくらで売れたかといった、物品販売のデータを集計するシステムです。POSによって売上実績のデータを蓄積することで、在庫管理・商品開発・マーケティングなどに活用できます。
Shopify POSとは、Shopifyが提供しているPOSシステムのことで、アプリをインストールして設定するだけで利用可能です。実店舗とECサイトのデータを連動させて、自動で分析を行う機能が備わっているため、在庫状況や販売状況を一括で管理する手助けとなります。
Shopify POSは実際に多くのブランドやストアで導入されており、アメリカ発のスニーカーブランド「Allbirds」や、静岡県のクラフトビール専門店「Beer OWLE」などの導入事例があります。(出典:Shopify公式ブログ)
Shopify POSを導入するメリットは大きく分けて3つあります。
Shopifyの基本機能として、ECサイト上の販売・在庫・顧客に関するデータを自動で集計する機能がありますが、Shopify POSではECサイトのデータに加えて、実店舗での販売情報なども集計されます。それにより、ECサイトと実店舗のデータを一括で管理できるようになります。
実店舗とECサイトのどちらかで商品が売れると在庫状況に反映されるため、在庫切れの防止や追加発注の予測などに役立ちます。
ECサイトと実店舗の顧客データを一括で管理することで、オンラインで購入した商品を実店舗で受け取れるサービスの展開や、実店舗にて商品のQRコードを読み込み、商品情報やオンライン在庫を確認するといった、オンライン・オフラインを越えた集客のためのアプローチができます。
また、実店舗に来店した方へカート付きメールを送信することでオンラインでの購入を促し、予約販売や取り置き注文につなげるといった、新たなショッピング体験の提案としても活用できます。
Shopify POSはアプリをインストールして設定するだけで簡単に導入できる点もメリットの一つです。Shopifyのプランに加入している方であれば、初期費用や月額料金なしで利用できます。
設定方法については、「Shopify POSアプリを設定するための6ステップ」で解説しています。
Shopify POSの基本プランで利用できる、代表的な8つの機能について解説します。
Shopifyで作成したオンライン上の商品ページでは、ECサイト上の在庫だけでなく、実店舗の在庫状況や店頭受取の可否も表示可能です。反対に実店舗では、商品についているQRコードを読み取るだけで、商品の詳細情報やオンライン購入できるかどうかを確認できます。
顧客が直近の来店時に気になっていた商品の情報を、カート付きメールとして送信することで、オンライン購入のきっかけ作りにもなります。
Shopify POSと外部決済サービスと連携させることで、クレジットカード決済などの情報をPOSアプリ上で追跡可能です。複数の決済方法の組み合わせや、予約販売などの際の一部決済にも対応しています。
決済時に利用できるギフトカードの販売も、Shopify独自の機能の一つです。ECサイトと実店舗で利用できるギフトカードをデジタルデータとして、または用紙に印刷して発行できます。
Shopify POSにはチェックアウト時の割引表示や、領収書をカスタマイズする機能があります。クーポンコードの発行やデジタル領収書などの送信は、Shopify POSアプリから設定できます。
なお、印刷用の領収書のカスタマイズや、顧客のカート情報の保存・復元といった機能を利用するためには、プランのアップグレードが必要です。
Shopify POSへの商品登録数は無制限で、商品はシーズン別・タイプ別・価格別などでカテゴリー分類できます。スマートコレクション(自動分類)と、カスタムコレクション(手動分類)のいずれかで仕分けを行いましょう。
また、商品の入庫・発送・転送といった物流の一連の流れを、ワンストップで追跡・管理できます。実店舗と倉庫など、複数の在庫保管場所の登録が可能です。
顧客プロフィールの自動作成機能では、連絡先情報はもちろん、顧客ごとのショッピングの傾向などの詳細を登録・管理できます。POSアプリから直接、メールやSMSメールの送信を行うことも可能です。
この他にも、注文指示などがあった場合の配送状況の追跡や、ロイヤルカスタマー向けの特別なイベントや割引といったマーケティングの提案をPOS上で行えます。
Shopifyのダッシュボード(管理画面)から、売上や注文の確認ができます。POS売上レポートでは顧客別やロケーション別の販売レポートを、表示・出力可能です。
この他、「財務レポート」や、プロモーションの成果を確認できる「ディスカウントレポート」、販売実績を元に月末在庫算を出した「商品レポート」も標準で利用できるようになっています。
マーケティングに役立つ機能としては、チェックアウト時に顧客のメールアドレスを取得するメールマーケティングや、SNSと連携した来店キャンペーンなどがあります。Google広告クレジットを利用して、広告を掲載することも可能です。
Shopify POSに関する疑問は、メール・ライブチャット・電話でサポートデスクへ問い合わせしましょう。Shopify POSの使用方法から、スタッフのトレーニングまであらゆる質問に対応しています。なお、日本語での対応はメールサポートのみです。
既存のECサイトからShopifyへの移行を検討している方に対しては、独自のツールを用いた一括アップロードのサポートも行っています。
続いてShopify POSの料金体系について解説します。
Shopifyの「ライト」「ベーシック」「スタンダード」「プレミアム」「プラス」の各プランに加入している場合は、無料でShopify POSが利用できます。
Shopifyを利用していない場合は、プランへの加入が必要です。最も安価なのはライトプラン($9)で、カート機能やPOS機能などの基本機能が利用できます。ただし、ライトプランはShopifyの販売機能を既存のWebサイトなどに埋め込むためのプランになっており、ECサイト構築の構築はできません。
Shopifyプランの月額料金にプラス$89を支払うことで、Shopify POS PROの機能が使えるようになります。Shopify POSの基本の機能に加えて、以下の機能が追加されます。
自動ディスカウント機能は、割引率のパーソナライズ設定を自動で行う機能です。店頭受取は、商品の準備ができた時点で顧客へ自動で通知します。このようにShopify POS PROでは、Shopify POSの基本機能をより詳細に設定し、活用できるようになっています。
ここからは、Shopify POSで商品登録や各種設定を行う方法について解説します。
商品登録はShopifyの管理画面で行います。Shopifyへログインし、「商品管理」から商品情報を入力します。
次に税金の設定を行います。Shopify管理画面の「設定」→「税金」をクリックします。
「日本」を選択します。
税率を入力します。軽減税率を適用する場合は、「日本」と表示されている右側にある「管理」→「税の優先適用を追加する」で適用したい商品をコレクションに登録しましょう。
Shopify管理画面の「設定」→「決済」から、利用する外部決済サービスを登録します。
Shopifyではデフォルトで現金決済・ギフトカード決済・Shopifyペイメントが利用できます。クレジットカード決済を行う場合は、外部のハードウェアを購入し設定する必要があります。
すべての設定が完了したら、テスト注文を行いましょう。想定される決済パターンを試し、管理画面に販売情報が反映されるかどうかを確認します。問題がなければ設定完了です。
続いて、設定したShopify POSと「Shopify POSアプリ」との連携方法について解説します。Shopify POSアプリをインストールした端末は、実店舗でレジの役割を果たします。
Shopifyの管理画面で「販売チャネル」メニューの「+」マークをクリックし、「POS」を追加します。
店舗でレジとして利用する端末(タブレットやスマートフォン)にShopify POS専用アプリをインストールしましょう。アプリの正式名称は「Shopify Point of Sale(POS)」です。
Shopifyのログイン用のメールアドレスとパスワードで、Shopify POSアプリにログインします。ログイン後、Shopify POSへアクセスするためのPINの作成を行います。
ログインとPINの作成が完了すると、Shopify POSアプリのホーム画面に遷移します。Shopify POSで設定した内容は、自動で同期されるようになっています。
現在Shopify POSのサービスとして、クレジットカード・QRコード・電子マネーの決済システムは実装されていません。Shopify POSでクレジットカードなどの決済方法を導入する際には、オンライン決済システムのSquare・Airペイ・楽天ペイなどの外部決済サービスを忘れずに用意するようにしましょう。
クレジットカード・QRコード・電子マネーなどの主要な決済方法を用意することで、顧客の利便性を高め、購買につながりやすくなります。
ここまで、Shopify POSを導入するメリットと、機能・料金体系・設定方法・導入の注意点について解説してきました。Shopify POSを導入する最大のメリットは、在庫や売上をPOSアプリで一括管理でき、顧客情報を集計してマーケティングに活かせることです。
Shopify POSアプリは6ステップで初期設定ができますが、決済システムは現時点では実装されていないため、外部決済サービスを併用する必要がある点に注意が必要です。Shopifyを利用している方であれば、管理画面で設定するだけでShopify POSを導入できるため、実店舗をお持ちの方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。