マーケティングの仕事に携わっていて、毎日マーケティングという言葉を目にしたり使ったりしていても、その意味を簡潔に説明することは難しいことでしょう。マーケティングという言葉は大きな意味の広がりを含んでおり、簡潔な定義を決めることができません。
深く掘り下げてみると、実はマーケティングの範囲が広告宣伝や営業と大きく重なっていることに気付きました。マーケティングは、ビジネスの始めから終わりまで、あらゆる段階にかかわる活動なのです。
では、マーケティングが商品の開発や売り込み、流通の過程で不可欠な要素となるのはなぜなのでしょうか? それは、よく考えればわかるように、マーケティング担当者こそが消費者のペルソナの実状にもっとも詳しい存在だからです。マーケティング担当者は、フォーカス グループ インタビューの実施、アンケート調査、オンラインでの購買行動の研究などを通じて、「消費者にとって、自社とのやり取りに望ましい場面、タイミング、方法とは?」という根本的な問いについて考えています。つまり、常に消費者の研究や分析を行っているのです。
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マーケティングとは?
マーケティングとは、自社の商品やサービスに対して消費者に興味を持ってもらうためのプロセスです。このプロセスには、市場調査や分析の実施、および顧客のもつ興味への理解が必要です。商品開発、流通、営業、広告宣伝など、ビジネスのあらゆる面に関与する重要な施策です。
マーケティングの定義
オンライン英英辞典のDictionary.comによると、マーケティングという単語は、「the action or business of promoting and selling products or services, including market research and advertising(市場調査や広告宣伝を含む、商品またはサービスを宣伝および販売する行為または事業)」と定義されています。
また、日本マーケティング協会は「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」と定義しています。
対してアメリカマーケティング協会は「Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.(マーケティングとは、顧客やクライアント、パートナー、社会にとっての価値ある提供物を創造・伝達・提供・交換するという活動であり、制度であり、そしてプロセスである)」と定義しています。
これらの定義からも、マーケティングは企業活動において大変広い範囲に関係していることがわかるでしょう。
マーケティング業務をより効果的にするため、おさえておくべき用語をこちらの記事にまとめました。ぜひあわせてご覧ください。
マーケティングの価値
マーケティング(英語)がその産声をあげた1950年代は、商品の宣伝に活字以外のメディアが使われ始めた時代でした。一般家庭にテレビが普及し、そのすぐ後にインターネットの利用が広がるにつれ、マーケティング担当者は複数のプラットフォームにまたがる大々的なキャンペーンを展開できるようになりました。
そして、ご存じのとおり、企業が消費者に商品を販売して最大の成果を得るための戦略を細かく調整するうえで、マーケティング担当者の存在はその重要性を増してきました。
デジタル時代のマーケティング
この時代においてのマーケティングは、大衆に向けたアプローチがほとんどでした。しかし、デジタル技術の向上に伴い、社会はパーソナライズの方向へ急速に成長を遂げました。
インターネットをはじめとしたデジタル技術を活用すれば、顧客は興味のある情報だけを受け取り、自分用にカスタマイズしたメディアを楽しむことができるようになりました。このような流れを受け、マーケティングの手法も変化を求められています。
つまり、大衆に向けたマーケティングではなく、1人ひとりの顧客、個に向けたマーケティング施策が重要性を増しました。そのような変化に伴い、コンテンツマーケティングやコミュニティマーケティングの重要性も向上しています。
マーケティングの種類
マーケティングキャンペーンを実施するチャネルは、顧客がどのチャネルを頻繁に利用しているかによってまったく変わってきます。市場調査を実施して、ブランド構築に最適なマーケティングのタイプや、各タイプにおける最適なツールの組み合わせを判断するのがマーケティング担当者の役割です。
現代で効果的なマーケティングには、主に次のような種類があります。
オンラインマーケティング
Webベースの販路を活用して自社の製品やサービス、ブランドを潜在顧客に広めていく手法です。メールや検索エンジン、Webサイトなど、多くの手段や技術を併用して行います。
取り組み方次第では、予算が限られている中小企業でも大規模ビジネスに対抗することが可能です。人件費を抑えながら利益率を改善できるツールやプログラムも登場しています。
印刷物やテレビ、ラジオなどのメディアを利用したマーケティングには、「リーチできる範囲が広すぎる」という欠点があります。しかし、オンラインマーケティングなら特定のチャネルに絞った戦略や効果の測定も容易です。
また、オンラインマーケティングを活用すれば各メディアに適した広告配信ができるため、情報収集手段の多様化にも対応できます。
オフラインマーケティング
オンラインが普及する前から使われているマーケティング手法です。旧態依然というイメージを持つ方もいますが、現代でも通用する手法は少なくありません。
特に、高額な商材の販売では、対面で多くの情報を提供できる「セミナー」に強みがあります。オンラインであれば多くの情報を不特定多数に向けて提供できますが、求めている情報と商品に対する理解度はユーザーによって差があります。しかし、対面サポートができるセミナーでは、ユーザーに応じたきめ細かい情報の提供が可能です。
不特定多数に電話をかけて営業をする「電話営業」も、オーソドックスですが現在でも使われる手法です。なお、電話営業は主に「メールでは情報を伝えきれないが、対面する段階ではないユーザー」に対する足かがりとして使われます。
マスメディア
オンラインマーケティングが出現する以前からマーケティングの中心に位置しているのが、マスメディアを活用したマーケティングです。TVやラジオでのCMなど、不特定多数の視聴者に向けて情報を発信する手法です。
最近では地上デジタル放送による双方向的なやりとりが可能となったことで、マスメディアにおけるマーケティング手法にも広がりが見られています。
ブログマーケティング
ブログを活用して認知拡大や見込み客の購買意欲醸成などを目的とする手法です。最終的には「ブログに訪れたユーザーに商品を購入してもらうこと」がゴールとなります。そのため、自社商品の顧客になりそうな方がどのようなニーズを持っているのかを把握し、それに対応するブログコンテンツを提供する必要があります。
ブログマーケティングにおける見込み顧客の分析については、こちらの記事に詳しくまとめています。ぜひあわせてご覧ください。
ソーシャルメディア (SNS) マーケティング
Facebook、Instagram、Twitter、LinkedInなどのソーシャルネットワークを利用して、自社に対するユーザーのイメージを時間をかけて構築する方法です。各プラットフォームの広告を利用するパターンと、アカウント運用を通じてファンを醸成し、コミュニケーションを深めていくパターンの2つに分類されます。広告利用の場合は短期間で見込み客を獲得しやすい傾向にあります。アカウントを運用する場合は、長期的にファンとの関係性を構築し、ブランドへのエンゲージメントを深めて売上やLTV向上に繋げていくことが主軸となります。
SNSマーケティングにおいておさえておくべき用語をこちらの記事にまとめました。SNSの活用を考えているマーケターの方は、ぜひあわせてご覧ください。
【マーケティング担当者向け】SNS(ソーシャルメディア)用語集
検索エンジンマーケティング(Web広告)
検索エンジンの検索結果ページに有料広告を掲載してユーザーにアピールする方法です。
ユーザーが広告をクリックするごとに課金されるため、「クリック報酬型広告(PPC)」と呼ばれています。
SEOよりも効果が出るのが早い一方、成果を出し続けるためには相応のコストがかかります。長期的な視点で見れば、ランニングコストがかからない手法であるSEOと並行してすすめると良いでしょう。
動画マーケティング
動画を活用したマーケティング手法です。「動画制作は予算がかかる」と思うかもしれませんが、必ずしも多くの費用がかかるわけではありません。YouTubeなどを利用すれば、運用コストも安く抑えられます。
動画マーケティングのメリットは主に以下の4つです。
- 訴求力が高い
動画では実際に商品を使っている映像を流せるため、テキストや画像では伝えられない詳細な情報を提供できます。 - 配信先が多彩
ひとつの動画をさまざまな配信先で使ったり、配信先に合わせて動画を変えたりするといった柔軟なマーケティングも実現します。 - 拡散されやすい
視聴者が面白いと感じた動画は拡散されて、予想以上の広告効果を生み出します。 - コンバージョン率がアップする
動画つきのWebサイトは、動画を使わないサイトに比べると顧客の滞在時間が長くなる傾向にあります。そのため、コンバージョン率が上昇する可能性を秘めています。
マーケティングデータの活用法
マーケティングデータを活用する方法はいくつかあります。ここでは、主な活用法を3つご紹介します。
データマーケティング
購買履歴や個人情報といったデータを収集・分析してニーズを把握し、顧客にアプローチする方法です。
CRM
顧客情報や購買履歴をもとに、顧客に対するアプローチを考えていく方法です。データマーケティングと似ていますが、「蓄積したデータから顧客に最適なマーケティング手法を見つける」という特徴があります。
たとえば、「26歳の男性Aさんは、夏が近くなると体を鍛えるための商品を購入する」というデータを元に、トレーニング用品をAさんに提案するのがCRMです。
一方、このようなデータを蓄積して「20代後半の男性は5~6月に体を鍛えるための商品を購入する確率が高まる」という分析結果を導き出し、販促活動に繋げていくのがデータマーケティングになります。
マーケティングオートメーション(MA)
顧客データや行動トランザクションデータを元に、興味や関心度の高い顧客(ホットリード)を抽出するツールです。「顧客の育成」や「リードの管理」といった機能も搭載されているので、データ管理の自動化を検討しているならMAの導入は欠かせません。
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マーケティングと広告宣伝の関係性
マーケティングは、商品開発、市場調査、商品の流通、営業戦略、広報活動、カスタマーサポートに関与しており、商品販売プロセスのあらゆる段階で欠かせない要素です。有効なマーケティングのためには、オーディエンスを特定してコミュニケーションを取り、ブランドのメッセージを広く発信する必要があります。それらのプロセスはブランドロイヤルティーを構築することにつながります。そのためには、多数のプラットフォームやソーシャル メディア チャネルを利用し、組織内のチームが連携する場合があります。
一方、広告宣伝はマーケティングを構成する要素の1つに過ぎず、上で説明した包括的な目標の一環として、商品やサービスの認知度を高めるために行う戦略的な取り組みのひとつです。広告宣伝活動においては、通常は出費を伴います。しかし、広告宣伝活動が商品を販売するためにマーケティング担当者が使用する唯一の方法というわけではありません。
たとえば、以下のような例を考えてみましょう(最後にクイズがあります)。
ある企業が、新商品の発売にあたり、その商品を顧客層に宣伝するキャンペーンの実施を検討しているとします。この企業が選んだチャネルは、Facebook、Instagram、Google、そして自社のウェブサイトです。これらをすべて利用して、四半期ごとにさまざまなキャンペーンを展開し、リード獲得につなげます。
新商品の発売を宣伝するにあたり、ダウンロードできる形式の商品ガイドを自社のウェブサイトで公開し、Instagramに新商品のデモ動画を投稿すると共に、自社のウェブサイトにある新商品のページにトラフィックを誘導するGoogleの検索連動型広告を有料で利用します。
さて、以上のプロセスの中で、どれがマーケティングで、どれが広告宣伝に該当するでしょうか?
広告宣伝に該当するのは、InstagramとGoogleです。一般的にInstagramは広告チャネルではありませんが、ブランディングのために使用すると、商品をそれとなく宣伝できるフォロワーの獲得につながる場合があります。またGoogleは、今回の例では、まさに広告宣伝のために利用しています。この企業はクリック課金型広告(PPC広告)と呼ばれるGoogleの広告スペースを購入し、自社の商品の特集ページにトラフィックを集めています。これは典型的なオンライン広告です。
では、マーケティングに該当する部分はどこでしょうか? 答えは全部です。この企業では、顧客を中心とした取り組みに合わせて、InstagramやGoogleの広告、そして自社のウェブサイトを調整しながら3つのパートで構成されるマーケティングキャンペーンを実施しました。そのプロセスを通じてオーディエンスを特定し、そのオーディエンスを対象としたメッセージを作成して業界全体に配信することで最高の成果を得ることができました。
マーケティング戦略を設計する上で欠かせない「4P」分析
1960年代、米国のマーケティング研究者であるE Jerome McCarthyは、マーケティングにおける「4つのP」(英語)を提唱しました。この「4つのP」は、Product(製品)、Pricing(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)という4つの要素の頭文字を取ったもので、ビジネスの各段階にマーケティングがどのように関与しているかを示しています。
Product(製品)
たとえば、自社で販売したい商品のアイデアを思いついたとして、次にすべきことは何でしょうか? ただ商品の販売を始めてもうまくはいかないでしょう。
それよりも必要なことは、マーケティングチームで市場調査を行い、マーケティング施策を策定するための重要なポイントを明らかにさせることです。明らかにするべきポイントとして例えば、ターゲットとするオーディエンスはどのような層か、その商品に適した市場はあるか、売上を伸ばすにはどのようなメッセージをどのプラットフォームで発信すればよいのか、成功の可能性を高めるために商品開発者はどのような修正を行うべきか、フォーカス グループ インタビューの参加者が商品についてどのように感じており、どのような疑問や懸念を抱いているかなどがあります。
マーケティング担当者は以上の点を自社内で伝えることで、新商品に対する需要の理解や商品の質の向上につなげることができます。
Price(価格)
マーケティングチームは、競合他社の商品価格をチェックしたり、フォーカス グループ インタビューやアンケートを実施したりして、理想的な顧客が購入意欲を抱くような価格の設定を行います。値段が高すぎれば安定した顧客層を失うことになり、逆に値段が低すぎれば収益が悪くなります。マーケティング担当者が業界調査や消費者分析を行うことで、適切な価格帯を判断できます。
Place(流通)
マーケティング部門が、自社の顧客についての理解と分析に基づいて、商品の販売方法や販売地域を提案するのは非常に重要なことです。小売店での販売よりもeコマースの方が効果的だと考えることもあれば、その逆もあります。あるいは、国内か海外かを問わず、商品を販売するうえで最も有望な地域について提案することもあります。
Promotion(販促)
読者の皆様が最初から期待していたのはこの「P」かもしれません。販促とは、商品に対する認知度や関心を高め、最終的には売上の向上につなげるための活動です。例えば、オンライン広告や印刷物の広告、イベント、割引などを指します。この段階では、広報キャンペーンや広告、ソーシャル メディアプロモーションなどの手法が用いられます。
今回ご紹介したマーケティングの定義や「4つのP」の考え方が、皆様がマーケティング目標を理解し、それを明確化するうえでお役に立てば幸いです。マーケティングはビジネス活動のあらゆる領域と重なっています。そのため、ビジネスの効率化を促し、成果を拡大するためには、マーケティングをどのように活用すればよいのかを理解することが重要です。
マーケティング活用でビジネスを拡大させよう
マーケティングの戦略やデータの活用方法はさまざまです。また、結果が出やすい戦略は企業によって異なります。マーケティングを活用してコンバージョン率を高めるには、自社の事業内容とユーザーのニーズを判断しながら展開していくことが大切です。