報酬付きでレビュー記事を作成。レビューの集め方とその仕組みとは

ダウンロード: 営業計画の 無料テンプレート
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

最終更新日:

公開日:

 

去年のクリスマスプレゼントは、いろいろな意味で大成功でした。心のこもったプレゼントを全員に贈れたばかりか、ほとんど自腹を切らずに済んだからです。

そのとき使ったのが、レビューの執筆で報酬を得る、という方法でした。

私は、過去4年ほどのクリスマスは、懐があたたかかったこともあり、平均500ドルほどの予算をかけて、ガールフレンド、両親、きょうだい、親族、同僚、上司、友人など、全員にプレゼントを贈りました。親しい人たちにぴったり合う贈り物を探すのは楽しいものです。ユニークなプレゼントのためなら、大金を投じることも気になりませんでした。

しかし去年は様子が違いました。予期せぬ状況によって、家族や友人にぴったりのプレゼントを買えるだけの予算が確保できそうになかったのです。しかし幸いなことに、別の方法を使って、予算の大半を補うことができました。その方法というのが、ソフトウェアのレビュー執筆でした。

ネット利用を含めたデジタルマーケティングを徹底解説した無料eBook(小冊子)はこちらから無料ダウンロードできます。

米国では、この1~2年の間に、G2 CrowdTrustRadiusCapterraCloudswaveGetAppといったレビューサイトの利用が広まりました。企業も消費者も、各種ソフトウェアの情報を知りたいときには、この手のサイトをまず開きます。

こうしたサイトでは、Amazonと同じように、アカウントを作成したユーザー(あるいは自らのLinkedInアカウントと紐付けたユーザー)が、製品やサービスについてレビューを投稿し、さまざまな角度から評価できます。投稿したレビューは、サイト運営元のチェック担当チームの承認をへて、該当する製品やサービスのページに掲載されます。消費者からすれば、こうしたサイトでは、導入を検討中の製品やサービスについて、役に立つ公平な情報が得られそうな気がしますし、何の問題もなさそうです。しかし、実は1つだけ問題があります。

その問題とは、投稿の見返りに報酬を得ているレビューが、一定の割合で存在することです。(その割合の具体的な数字は不明です)。

ただし「報酬」と言っても、どこかの国の人々が、使ったこともない製品を絶賛するレビューを時給2ドルで書いている、といった話ではありません。先ほど挙げたサイトのレビューはどれも、対象の製品について何らかの知識と経験を持つ、本物の利用者が執筆しています。私が言う「報酬」とは、レビューを書いてくれたお礼にギフト券を進呈する慣習のことです。こうした慣習は、今ではよく見られるようになりました。

レビュー記事の仕組み

レビュー執筆と引き換えにギフト券を進呈するという慣習には、働きかけの主体に応じて2つのケースがあり、「グレーさ」の度合いがそれぞれ違う気がします。

ケース1:レビューサイトからの働きかける場合

CloudswaveGetAppなど、後発のレビューサイトは、先行して既に足場を固めている大手レビューサイトを相手にして、検索ランクの上位獲得競争を繰り広げるために、競合サイトに投稿しているユーザーに接触を図り、率直で有益なレビューを投稿してくれたらギフト券を進呈する、という提案を行うようになりました。(その際、レビューの詳しさを確保するために、単語数や文字数に下限を設けることがよくあります)。

謝礼の額は、サイトによっても、本人がレビュー可能な製品の数によっても変わりますが、レビュー1件につき10~25ドル分ものギフト券がもらえる場合もあります(たいていはAmazonのギフト券です)。働きかけを受けた後の手順としては、どの製品のレビューを書くかをサイト側に連絡し、先方からの承認や、どのレビューが支払い対象になるかという通知を待ちます。あとは、レビューを書いて投稿し、サイト側のチェックでOKが出れば、ギフト券がもらえるという流れです。

全体としては、この手法でレビューサイト側が意識を向けているのは、個々のレビューへの心配よりも、多種多様なカテゴリーに関して、率直かつ綿密な本物のレビューを集め、サイトの認知度と影響力を確立するという部分での心配です。レビューを書く際には、製品を褒めるにせよ酷評するにせよ、正直に書くよう促されます。また、たいていは、レビューする各製品を本当に使用したことを証明する必要があります(ログイン画面やダッシュボードのスクリーンショットを示す方法が主です)。

ケース2:ソフトウェア会社からの働きかける場合

ネット上で製品やサービスを提供する企業の中には、こうした新興のレビューサイトが影響力を高めつつあることを認識し、自社がレビューサイトで好印象を与えられるように、手っ取り早い策を講じるところが増えています。

こちらのケースも、レビュー投稿者がギフト券をもらえる点は先ほどと同じです。異なるのは、ソフトウェア会社が、自社製品を利用している既存顧客に接触を図り、高評価のレビューを投稿してくれたらギフト券を進呈する、と提案していることです。

たいていの場合、このような接触を受けるのは、パワーユーザーやエバンジェリストに限られます(誰が該当するかは、ソフトウェア企業が社内のCRMを使って割り出します)。そして、5つ星や90点以上など、最高位の評価でのレビューにのみギフト券を進呈するという条件が付くことが多々あります。

レビューを書いて投稿し、サイト側のチェックをへて掲載されたら、投稿者はそのページのリンクをソフトウェア会社に連絡します。そして、先方のOKが出たらギフト券がもらえます。このケースの場合、1人につき1件のレビューしか投稿できないことから、賞賛のレビューに対して20~50ドル程度のギフト券(たいていはAmazonギフト券)というのが相場です。

こちらのケースは、先ほどのケース1とは違い、高評価のレビューにのみギフト券を与えるという条件を、たいていのソフトウェア会社が付けています(そうではない会社もあります)。この点は、道義的な面でいくつかの疑問があり、増えつつあるこの新たな慣習を巡って、包括的な議論につながります。

私の体験談に話を戻しましょう。

私の場合は、11月初めから12月15日までの1か月半で、4つのレビューサイト向けに25件ほどのレビューを執筆し、約250ドル分のAmazonギフト券をゲットしました。これで、クリスマスプレゼントの予算はほぼ全額をカバーできました。

私自身、レビューサイト側から接触を受けたケースと、ソフトウェア会社から接触を受けたケースの両方があります。最終的には、週末の約6時間を費やして、率直かつ詳細なレビューをまとめ上げました。レビューしたソフトウェアの中には、隅々まで知りつくしている製品もあれば、1年以上前に1回使ったきりの製品もあります。機能や特長についていくらでも書き続けられそうな製品もあれば、所定の文字数に達するのに苦労した製品もありました。

ギフト券の進呈で消費者の信頼に傷

Nielsonが2015年9月に発表した、広告の信用度に関する調査結果によると、インターネット上に投稿されている消費者の意見を信用するネットユーザーは66%にとどまり、2013年より2%下がりました。今回取り上げたようなB2Bソフトウェア レビュー サイトに関しては、現在も信用を持ち続けている利用者が多いとは思いますが、B2Cのレビューに関して最近見られた事例を踏まえると、B2Bの信用も果たしていつまで続くのか、疑問が湧いてきます。

トリップアドバイザーやYelpなど、B2Cのレビューサイトや口コミサイトは、この10年の間に、人々から反感を買いました。理由の一端は、競合他社によるレビューや、報酬付きレビューを巡るスキャンダルです。こうしたスキャンダルが明るみに出始めると、世間一般からも、利用者からも、企業からも、レビューに対して一様に厳しい視線が注がれるようになり、消費者からの信頼が失われる結果となりました。

あるいは、数年前に米国の出版界を揺るがせた事例もあります。書籍の著者の中に、Amazonで「正規購入者による率直なレビュー」を得る目的で金を払っている人が大勢いることが明るみに出たというものです。こうした著者は、レビューを投稿してくれるよう促すために報奨金を出したにすぎない、と主張したものの、こうして著者が足を踏み入れたグレーゾーンについて、世間は理解を示しませんでした。

現時点では、「レビュー投稿の見返りにギフト券」というモデルによって、新興のソフトウェア レビュー サイトに対する利用者の信用が損なわれつつあるのかどうかは、はっきりしません。しかし、過去の例から言えば、レビューサイトや業界が大きくなればなるほど、その投稿や商慣習に対する厳しい目も増えていきます。

結局のところ、道義的に正しいの?

レビュー投稿の見返りにギフト券を進呈するという慣習が正しいことなのかどうかを検討するとしたら、4つの観点から吟味しなくてはなりません。レビューサイト、レビュー投稿者、ソフトウェア会社、レビューサイト利用者(エンドユーザー)の観点です。

レビューサイト

レビューサイトの観点で言うと、「抑制と均衡」という面で一定数の要素が働いている限りにおいては、レビュー投稿の見返りにギフト券を進呈する行為に関して、疑問視すべき点はほとんどありません(抑制と均衡については、ほぼすべてのレビューサイトが取り入れています)。多くのレビューサイトは、サイト利用者の製品購入の意思決定を支援する最善の情報を提供できるように、件数の面でも詳しさの面でも、レビューを充実させることを必要としています。

一般論として、レビューサイトや口コミサイトの類いでは、自発的にレビューを書こうとするのは、よほど満足した人かよほど失望した人がほとんどです。それ以外の大多数のユーザーからは、有益な情報がほとんど上がってきません。問題は、そうした中間部に位置する大多数のソフトウェアユーザーは、多忙な毎日を送っており、レビューを書く時間を捻出してもらうにはインセンティブが必要だということです。

つまり、レビューサイトとしては、比較的少額の報酬を支払うと申し出れば、人々がレビューを欲している製品に関して、経験と知識を持つユーザーの参加を促すことができます。そして、内部チェックのプロセスを生かして、質の高いアドバイスや情報を残してもらうことができます。

この慣習は、正しく実施された場合には、いわば「三方良し」の結果になります。レビューサイトは目的の分野で質の高いレビューが得られますし、レビュー投稿者はギフト券が得られますし、レビューサイト利用者は購入の意思決定を支える有益なレビューが得られます。一方、実施の仕方が不適切で、内部チェックの監督も不行き届きだった場合には、質の低いレビューやコピペのレビューが紛れ込んでしまい、最終的には、エンドユーザーへの有益性が損なわれます。

ソフトウェア会社

ソフトウェア会社の観点で言うと、高評価のレビューと引き換えにギフト券を与えるやり方は、道義的にはグレーゾーンにあたります。ソフトウェア会社は、今の時代にカスタマーレビューが極めて重要な意味を持つことを理解していますし、大手レビューサイトでレビューを書いてと頼んだら快く引き受けてくれそうな人が既存顧客の中に大勢いそうなことも理解しています。そして、多忙なユーザーたちにわざわざレビューを書いてもらうには、インセンティブが必要(かつ妥当)だという認識でいます。

レビューを引き受けてくれそうな既存顧客の数や、謝礼で支払う額にもよりますが、ソフトウェア企業としては、数百ドル~数万ドルを投じることにより、レビューサイトで露出度を高められるのみならず、率直な(はずの)レビューを集め、今後の製品やサービスの全般を改良するために生かすことができます。

ソフトウェア会社としては、最終的にレビューサイト上で圧倒的に高評価のレビューが並ばなければ、この作戦への投資効果は得られないと認識しています。そこで、高評価のレビューのみを投稿するよう求めるケースが大半です(あるいは、その要望が言外ににじみ出た形で依頼をするかです)。

結局のところ、各当事者が得る恩恵はこうです。レビューサイトは、その会社のソフトウェアのレビューが増えます。レビュー投稿者は、詳細で率直な(はずの)レビューの執筆に対して報酬が得られます。レビューサイト利用者は、もしかしたら有益な情報が得られるかもしれません。そしてソフトウェア会社は、レビューサイトで存在感を高められる高評価のレビューが得られます。

レビュー投稿者

レビュー投稿者の観点では、最終的にどのような意識になるかは、必ずしも定かではありません。誰から接触を受けたかや、どの程度役に立てたと自覚できるかによります。

数多くの製品を日常的に使い、知識が豊富にあったとしても、大多数の人は、自らの経験を世間に伝える時間も意欲もないことでしょう。しかし、ソフトウェア会社やレビューサイトから話を持ちかけた場合なら、レビュー投稿と引き換えに何らかの報酬を得られる可能性が大いにあります。そして、所定の要件を満たして報酬を得るために、相応の時間を投じることになります。

サイト側のチェックでOKが出たレビューであれば、質としては一定の水準にあるはずです。しかし、そこに書かれた情報が、完全に本人の声と言えるのかどうかは、無理やり見つけ出したネタの有無や、所定の要件を満たすために何らかの点で本音と違う評価をせざるを得なかったのかどうかによって変わってきます。

最終的には、レビューサイトとソフトウェア会社はレビューが得られ、レビュー投稿者は報酬が得られますが、レビューサイト利用者が得るものが、本当に有益なレビューなのか、それとも退屈な投稿なのかは、定かではありません。

レビューサイト利用者

エンドユーザーの観点では、中身がどうであれ、レビューは一応レビューです。特定の企業や製品のレビューを見るにせよ、さまざまな製品の機能やレビューを比較するにせよ、訪問したレビューサイトにそもそもレビューがなければ話は始まりません。レビューが豊富にあるのは結構なことです。しかし、そうは言っても、投稿されているレビューの質次第で、全体の使用感や、どれだけ有益な情報を得られるかは変わります。

率直で有益なレビューかどうかを、1件1件について見分けることは、必ずしも簡単ではありません。特に、レビュー投稿者に与えられている報酬の存在を知ったらなおさらです。似たようなレビューと評価が山のように並んでいるのは、レビューが一切ないのと同じくらい無意味です。そのサイトの一字一句が、眉唾ものに感じられてくるかもしれません。

結局のところ、ユーザーとしては、このレビューサイトに出会ったのは、最初のネット検索で上位に表示されたというだけの理由です。ソフトウェア企業は、そのサイトでの露出が増えます。一部のレビュー投稿者は、率直なレビューに対して報酬を得られます。しかし、エンドユーザーが目的の情報を見つけられるのかどうかや、見つかった情報が本当に信頼できるのかどうかは、定かではありません。

まとめ

以上、レビューの見返りにギフト券を進呈する慣習について考えてきました。こうして見てみると、プラス面がマイナス面を上回るのは、レビューサイトが適切な策を取り入れ、すべてのレビューを1件残らずチェックしている場合に限られると私は考えます。

適切かつ徹底的なチェックがなければ、質の低いレビューがひそかに紛れ込んできて、最終的には、サイトに対するエンドユーザーからの評判に傷が付くおそれがあります。また、レビューの謝礼にギフト券を贈る慣習を取り入れているソフトウェア企業は、高評価のレビューにのみ報酬を出すという条件を付けることなく、率直なレビューを依頼することが肝要です。

レビューサイトにせよソフトウェア会社にせよ、レビューの見返りにギフト券を贈る慣習は、自らの評判を落とすことにつながりかねないという面で、大きなリスクがあります。消費者からの信頼は、一度失ったら簡単には取り戻せません。レビューサイトは、中立性をうたう情報源として、エンドユーザーの役に立つレビューを確保できるような慣習と手順だけを推進していかなくてはなりません。

インターネットマーケティングの基礎

編集メモ:この記事は、2016年1月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Marc Herschbergerによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

関連記事

HubSpotはお客さまのプライバシー保護に全力で取り組んでおります。お客さまからご提供いただいたご情報は、お客さまにとって価値あるコンテンツ、製品、サービスの情報をお送りするために使用させていただきます。なお、当社からのEメール配信はいつでも停止できます。詳しくは、HubSpotのプライバシーポリシーをご覧ください。

HubSpotとAircallが共同制作したテンプレートを使って、貴社の営業戦略を一貫した分かりやすい計画書にまとめましょう。

Marketing software that helps you drive revenue, save time and resources, and measure and optimize your investments — all on one easy-to-use platform

START FREE OR GET A DEMO