ゼロクリック時代のマーケティング戦略|AI検索とサイトの役割分担で成果を最大化

HubSpotのAEO(Answer Engine Optimization)実践ガイド
伊佐 裕也(いさ ひろや)
伊佐 裕也(いさ ひろや)

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Google 検索の約60%がサイトへのクリックを伴わずに終了する――これが現代の検索環境です。AI検索やゼロクリック検索の台頭により、検索順位を維持しても流入数が減少する事例が増えています。しかし、この変化は必ずしもマーケティングの失敗を意味しません。むしろ「誰をサイトに招き、何を体験させるか」を明確にすることで、少ない流入でも高い事業成果を実現できる時代になっています。

ゼロクリック時代のマーケティング戦略|AI検索とサイトの役割分担で成果を最大化

HubSpotのAEO(Answer Engine Optimization)実践ガイド

このガイドでは、HubSpotが実践するAI対応戦略と、AIエンジンに最適化されたコンテンツ作成の具体的手法をご紹介します。

  • AIエンジンがコンテンツを評価・選択する仕組み
  • AIトラフィックの27%をリードに転換するAEO戦略
  • 全てのページで使える実用テンプレート・チェックリスト
  • HubSpotのAEO実施の実例

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    本記事では、ゼロクリック時代における検索行動の変化と、AI検索における露出度向上とサイト体験設計を両輪とした戦略的アプローチを解説します。

    Q.ゼロクリック検索とは?

    検索結果ページ上で回答が完結し、ユーザーがWebサイトをクリックせずに情報収集を終えることです。検索結果画面に表示される、強調スニペット・ナレッジパネル・AI Overviewsなどから基本情報を得て検索行動が完了します。

    Q.ゼロクリック検索によりサイトの流入数はどれくらい減少していますか?

    Google 検索全体の約60%がゼロクリックで終了し、モバイルでは77.2%に達しているといわれています。

    Q.検索順位が維持されているのに流入が減るのは失敗ですか?

    いいえ、必ずしも失敗とは限りません。ゼロクリック検索で完結するユーザーはコンバージョン期待値が低い可能性があります。重要なのは流入数ではなく、CVRや商談貢献度です。

    Q.ゼロクリック時代に、本当に追うべき成果指標は何ですか?

    PVやセッション数から質的指標への転換が必要です。AI検索での言及数(Share of Model)、指名検索の増加率、エンゲージメント指標(滞在時間、スクロール深度)、そしてCVR、商談貢献度、LTVといった、事業成果に直結する指標を追うと良いでしょう。

    「ゼロクリック」時代における検索行動の変化

    検索結果とクリック数の乖離が進む現在、ユーザーの検索行動は大きく変化しています。AI Overviewsの表示率増加に伴い、情報収集だけでなく、指名検索や購買意欲の高い検索においてもゼロクリックが標準化しつつあります。
     

    現在の検索環境では、約60%がゼロクリックで終了している

    現代の検索環境は、検索回数が増える一方で、サイトへのクリックが伴わない「グレート・デカップリング(検索結果の表示回数とクリック数の乖離現象)」の局面にあります。Google 検索は、約60%がWebサイトへのクリックを伴わずに終了しているといわれており、モバイルデバイスでは77.2%がゼロクリックに至っているといった調査データもあります。

    参考:2025 Organic Traffic Crisis: Zero-Click & AI Impact Analysis Report(英語)

    また、Semrush (英語)の調査データによると、2025年11月時点の最新データでは、Google 検索結果の15.69%にAI Overviewsが表示されており、ピーク時の7月(24.61%)からは落ち着いたものの、年初の6.49%から比較するとその影響力は確実に増しているといえます。

    Semrush の調査データ

    出典:Semrush AI Overviews Study: What 2025 SEO Data Tells Us About Google's Search Shift (英語)

    注目すべきは、ユーザーの「検索意図」の変化です。当初、AIは情報収集(インフォメーショナル)が中心でしたが、現在は商用や指名検索(ブランド名での検索)への表示も増えつつあります。

    • 指名検索(ナビゲーショナル)へのAI表示:年初の0.84%から10.33%に増加
    • 購買意欲の高い検索(トランザクショナル):1.98%から13.94%に増加

    これは、単に「情報」の要約だけでなく、「ブランドの公式サイトへの入り口」までもがAIに置き換わりつつあることを意味しているといえます。

    これからの接点設計において、企業は「検索順位の獲得」という従来のゴールから、「AIの回答を構成する信頼できるソース(引用元)として、いかにブランドを表示させるか」という「存在感」の確立へと戦略をシフトさせる必要があります
     

    流入減少=失敗ではない--指標の再定義が必要な理由

    「サイトに来ない検索」は、自社にとってコンバージョン期待値の低い「低熱量な層」である可能性が高いといえます。数だけの流入を追うと、AIが得意な領域で勝負することになり、コストパフォーマンスが悪化します。たとえ流入数が減ったとしても、CVRや商談貢献度が向上していれば、マーケティングとしては成功といえるでしょう。

    「誰をサイトに招き、何を体験させるか」。これが明確になることで、少ない流入でも事業成果につながる設計が可能です。量的指標から質的指標への転換が、AI検索時代の成果測定の鍵となります。

    なお、HubSpotでは、2024年以降、ブログ(blog.hubspot.com)におけるオーガニックトラフィックが「80%減少した」というデータが話題となりました。しかし、私たちはPVやセッション数といったバニティメトリクス(虚栄の指標:数値としての見栄えは良いものの、実際のビジネス改善や意思決定には直結しにくい指標)を追い続けることが、必ずしも事業成果につながるわけではない、と考えていたのです。

    そこで、検索流入の「量」を最大化するSEOに依存せず、YouTube、ポッドキャスト、AI検索での引用を重視したAEOなど、複数のチャネルを横断してユーザーとの接点を設計する戦略へと進化させてきました。実際、ChatGPTなどのLLM経由でHubSpotのコンテンツが参照されるケースも増えており、直接的なクリック数だけでは捉えきれない形で、商談創出やLTVに寄与する接点が生まれています

    AI検索

    HubSpotが重視しているのは、「どれだけ多くの人がサイトを訪れたか」ではなく、「誰に、どの文脈で想起され、どのように事業成果へつながったか」です。この取り組みは、AI検索・ゼロクリック時代において、可視性の意味そのものが変化していることを示していると考えています。
     

    ゼロクリック時代における今後の対策

    ゼロクリック検索が主流となる中、企業は二つの軸で戦略を構築する必要があります。

    • クリック無し:AI検索で自社が引用・言及される「存在感の確立」(AEO)
    • クリック有り:サイト訪問者に深い関与と判断支援を提供する「体験設計」

    この両輪を回すことで、少ない流入でも高い事業成果を実現できます。
     

    自社の発信した情報がAIに正しく認識されるよう設計する(AEO)

    AI検索で自社が言及されるためには、AEO(Answer Engine Optimization:回答エンジン最適化)が欠かせません。構造化データ、メタ情報、明確な記述などを通じて、AIが理解しやすい形式で情報を発信することが重要です。また、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を強化し、AIが参照する情報源としての価値を高める必要があります。

     

    「深い関与」を生むサイト設計①:誰に何を届けるかを明確にする

    AI検索で基本情報を得たユーザーが「次に何を求めてサイトに来るのか」を明確にすることが、サイト設計の起点となります。
     

    訪問者のペルソナを「課題が具体化した見込み客」として再定義する

    ゼロクリック時代のサイト訪問者は、「〇〇とは?」を知りたい層ではなく、「自社に当てはまるか」「実践するとどう変わるか」「信頼できる根拠があるか」といった判断材料を求めています。この層はすでに基本理解を終えており、比較検討・意思決定フェーズにいるため、サイトで提供すべきコンテンツも変わります。
     

    コンテンツの重点を「理解」から「判断支援」へシフトする

    ゼロクリック時代のサイトコンテンツは、「理解」ではなく「判断支援」を意識して設計すると良いでしょう。

    判断を支援するコンテンツの一例としては、以下などが挙げられます。

    【例】

    • 比較検討を後押しするコンテンツ:業界別・課題別の導入事例、ROI試算ツール、失敗事例と対策
    • 信頼性を示すコンテンツ:専門家の解説、第三者評価、データに基づく実績
    • 次のアクションを促すコンテンツ:無料診断、ホワイトペーパー、ウェビナーなど、関係構築の入り口
       

    「深い関与」を生むサイト設計②:判断・行動を促す導線と体験を設計する

    コンテンツが充実していても、ユーザーが「次に何をすれば良いか」が不明瞭では、関与は深まりません。訪問者の検討段階に合わせてCTAの設置や導線設計を行い、判断から行動へとスムーズに導くことが重要です。サイト訪問を「単発の情報取得」ではなく「継続的な関係構築の起点」として位置づけましょう。
     

    明確なCTA(Call to Action)と導線設計

    サイト訪問後の次のアクションを明確に提示します。例えば、資料ダウンロード、無料トライアル、ウェビナー申し込み、商談予約、診断ツールなどです。

    CTAは「ユーザーの検討段階」に応じて複数用意すると効果的です。

    • 情報収集段階:ホワイトペーパー、事例集
    • 比較検討段階:無料デモ、ROI試算
    • 意思決定段階:商談予約、トライアル申し込み
       

    サイト滞在中の体験によって理解の深化を生み出す

    内部リンクの戦略的配置で関心に沿った情報の深掘りができるようにします。また、ポップアップやレコメンドで次に最適な情報を提示したり、チャットボットや問い合わせフォームで疑問をすぐに解消できる仕組みを提供したりすることが重要です。
     

    訪問を「単発」で終わらせない仕掛け

    メールマガジンやSNSフォローなど、継続的な接点を持つ選択肢も提供しましょう。リターゲティング広告やメールナーチャリングを通じて、訪問後の関係を維持することも効果的です。

    Loop Marketing

    この継続的な関係構築を実現するフレームワークとして、当社HubSpotが提唱する「Loop Marketing」があります。Loop Marketingは、表現(Express)→個別化(Tailor)→増幅(Amplify)→進化(Evolve)という4つの段階を繰り返すループで、AIの効率性と人の創造性を組み合わせ、継続的な成果向上を図るという考えです。

    具体的には、訪問者の行動データ(どのコンテンツを読んだか、どこで離脱したか)を分析し、次のコンテンツ改善や個別化された提案に活かします。この「学習サイクル」を回すことで、一度きりの訪問を、継続的に関与を深め顧客理解を深める関係へと進化させられます。

    サイトを「一度きりの情報提供の場」ではなく、「継続的な関係構築と学習の場」として設計することで、AI検索時代においても事業成果に貢献するマーケティング資産となります。

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    エンゲージメント・AI検索の言及数など、新たなKPIを設定する

    ゼロクリック時代には、成果指標そのものの見直しも必要です。従来のPVやセッション数といった「量」を測る指標から、「誰に届き、どう関与されたか」という「質」を測る指標へとシフトしましょう。下記のような、AI検索での存在感や訪問者の深い関与を捉える、新たな成果指標を設定することが重要です。

    • AI検索での言及数(Share of Model):自社がAI検索結果で引用される回数をモニタリングし、AEO施策の効果を測定(専用ツールやマニュアル検索で確認)
    • 指名検索の増加率:自社名やサービス名での検索が増えているかを追跡し、ブランド認知の向上を測定
    • SNSやメディアでの言及数(Share of Voice):SNSやメディアなどにおける自社名やサービス名の言及数を測定
    • エンゲージメント:平均滞在時間、セッションあたりのページビュー、スクロール深度など、「深く読まれているか」を示す指標を重視

    AI時代における新しい指標については、こちらの記事で詳しく解説しています。
     

    ゼロクリックに関連するよくある質問

    従来のSEO施策(内部リンク、被リンク獲得など)は、もう意味がないのでしょうか?

    いいえ、従来のSEO施策も依然として重要です。良質な被リンク(信頼できるサイトからの自然なリンク)の獲得といった施策は、Google がサイトの評判や権威性を測る際のシグナルの一部になりえます。ただし、これからは施策の目的を「検索順位の向上」だけでなく、「AIに信頼される情報源になること」「質の高い訪問者を招くこと」へと拡張する考えが必要です。
     

    AI検索で自社名が引用されると、どのようなメリットがありますか?

    ユーザーが比較検討の段階に入った際、最初から「信頼できる候補」として認知された状態で接点を持てます。これにより、検討期間の短縮や指名検索の増加、ひいては受注率の向上が期待できます。
     

    中小企業やリソースが限られている企業でも、AEO対策は実施できますか?

    はい、可能です。まずは、既存コンテンツに構造化データを追加する、見出しを明確にする、執筆者情報を追加するなど、小さな改善から始めましょう。また、自社独自の実践知や顧客事例など、大手企業にはない一次情報を発信することで、AIに価値ある情報源として認識される可能性が高まります。量より質を重視する戦略は、むしろリソースが限られた企業に適しています。
     

    流入の「量」を追う時代から、事業を伸ばす「質」の時代へ

    「ゼロクリック時代」におけるユーザー行動は「基礎的な理解」と「具体的な判断」の二軸に分かれつつあり、前者はAI検索で完結、後者はサイト訪問を伴います。この行動変化を正しく理解し、それぞれに最適な接点を設計することが、これからのマーケティング戦略では欠かせません。

    具体的には、AEO対策により「サイトに来ない検索」でも自社を認知させ、サイトに訪問したユーザーには判断・検討を促す質の高い体験を提供する、のような二段構造の設計です。流入数が減少しても、CVRや商談貢献度が向上していれば、マーケティングは成功しているといえます。「量的指標」から「質的指標」への転換こそが、AI検索時代の成果測定の鍵です。

    AI検索とサイトの役割を明確に分け、それぞれで最適な価値を提供する戦略を構築しましょう。

    HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

     

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