日本国内でもマーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)の需要が本格化し、導入・活用できている企業が増えてきています。需要の高まりとともに提供するベンダーも増え、機能の多様化が進んだことから、「導入したいが、どれを選べばいいか分からない」など悩む声も多く聞かれます。

いまだによく誤解されがちなのですが、MAツール自体は、は何でも自動化してくれる魔法のツールではありません。目的はなにか、自社に必要な機能はなにか、ベンダー側のサポート体制は充実しているかなど、ツールを活用するためには様々な条件を確認し、検討する必要があります。
本記事では、現在国内で利用されている主なMAツールを10個ご紹介。導入前に考慮したいポイントも合わせてお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
MAツールで、より良い顧客体験の実現を
オンライン上の潜在顧客は膨大なため、一人ひとりに合ったマーケティングを実施することは困難です。
そこで、まず顧客のニーズに沿ったコンテンツを提供して良い体験を提供した後に、自社のソリューションの有用性を伝え、顧客になってもらう新しい時代のマーケティングアプローチが登場しています。それが、当社HubSpotが提唱する「インバウンド」の思想に基づいたマーケティング戦略です。
そのようなインバウンドマーケティングを実現するために、MAツールでできることは何でしょうか?

MAツール導入のメリット
実際にMAツールを活用しインバウンドマーケティングを実践することで、企業側にはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。主要なポイントを3つご紹介します。
- 売上アップが期待できる
- セールス部門との連携強化
- 生産性の向上
1. 売上アップが期待できる
ただ一方的な営業やアプローチは、顧客にとって迷惑になるだけでなく、せっかく築いた信頼関係を損なう恐れがあります。しかし、ただ何もせず待っていても良い結果にはつながりません。
MAツールは、顧客がサイト上で何を見たか?どう行動したか?といったアクションを可視化でき、「顧客のニーズをよく知る、理解する」できます。顧客ニーズを正確に把握できれば、最適なタイミングで、効果的にアプローチできるため、Win-Winな関係が構築できます。そして見込み客を取りこぼすことなく、購買意欲を高めて、顧客創出までつなげられるのです。
2. セールス部門との連携強化
潜在顧客や見込み客が増えるほど、情報管理にかかる負担も増します。ExcelやGoogleスプレッドシートのような方法では、せっかくの貴重な財産も活用されないまま埋もれてしまう恐れがあります。
MAツールでは、こうした顧客を「企業名」「役職」「流入経路」「セミナー参加状況」などあらゆる属性で細かく一元管理できます。マーケティング担当だけでなく営業担当と情報共有することもできるので、これまで個人に依存していた顧客情報に、誰でもアクセスできます。さらにセグメンテーションや分析機能を使えば、今すぐアプローチしたい顧客を可視化し、営業力がより一層高まるでしょう。
3. 生産性の向上
旧来型の営業スタイルは飛び込みや、購買意欲が高くない顧客にアプローチしてしまうなど、無駄が多いものでした。
しかし、企業でマーケティングオートメーションの仕組みを導入すれば、商談の可能性が高い見込み客を発見して、そこに営業リソースを集中することができます。
また現段階で購買意欲が低い顧客に対しても、メルマガ配信やキャンペーンなど継続的なコミュニケーションのシナリオを設計し、自動化することで効率的に行えます。、また見込み客のセグメンテーションごとに、異なるアプローチをとることも可能です。自動化によって生産性を向上させ、プロモーションを効率化しましょう。
MAツール選定のポイント
ここではツール選定の見極めとなるポイントを7つご紹介します。
- 目指したいゴールは明確か?
- 必要な機能は何か?
- 拡張の可能性はあるか?
- どのチャネルと連携可能か?(そもそもどのチャネルを活用するのか)
- 導入実績は?得意とする業種は?
- サポート体制は充実しているか?
- BtoB向けか?BtoC向けか?
1. 目指したいゴールは明確か?
MAツール選定の際によくある失敗は、チェックリストを使って機能の有無を〇、×などで評価し、〇が多いツールを選んでしまうパターンです。
インバウンドマーケティングのどこに問題があるのか?といった課題があいまいなままでは、必要な機能は見えてきません。まずは目指したいゴールを明確にして、課題解決に必要な機能を備えるツールを検討しましょう。
2. 必要な機能は何か?
見込み客との関係性に応じた4つのステップのうち、解決したい課題がどこにあるかよって、必要な機能は変わってきます。
リードを数多く集めたい場合は、リードジェネレーション機能が充実しているツールを選んで、潜在顧客との接点を増やすのが有効です。またリードがたくさんあっても、効果的にアプローチできていない場合は、リードナーチャリング機能を使ってコンテンツを発信すると購買意欲を高められます。
すべての機能が揃っているのが理想ですが、その分、高価格になるうえ、機能を持て余してしまう恐れがあります。まずは、見込み客とどんな関係性を築きたいのかをイメージして機能を選びましょう。

3. 拡張の可能性はあるか?
マーケティングオートメーションは顧客情報を起点にしている ため、社内システムやデータベースとの連携機能があると便利です。連携できるデータが増えれば、実現できる施策が増えます。サイト上の行動データ、店舗への来店頻度、購買・問い合わせ履歴など、資源となる社内データを確認して、マッチするMAツールを選びましょう。
4. どのチャネルと連携可能か(そもそもどのチャネルを活用するのか)
マーケティングでは、SNS、スマホアプリ、LINE、広告、DMなど、コミュニケーションチャネルが多岐に渡るケースもあります。さまざまなチャネルの中で、MAツールと連携したいものがあるかどうか押さえておきましょう。使用したいチャネルがある場合は、ツール会社に連携できるかどうか事前に確認しておく必要があります。
5. 導入実績は?得意とする業種は?
MAツール を導入している、もしくは導入を検討している担当者との情報交換は、効果的な施策を打つ際に大変参考になります。ツール会社がセミナーや情報交換会を開催しているところもあるので、なるべく自社と同じ業種または似たような用途の導入実績も確認しておきたいところです。
6. サポート体制は充実しているか?
設定・エラーに際して、ツール会社がどこまでサポートしているのかも選定ポイントとなります。
- 無償で提供してくれるサポート範囲はどこまでか?
- サポート方法はウェブのみか、または電話や対面にも対応しているか?
- 問い合わせに対する回答期限を設けているか?
- 障害発生時の連絡方法や対応は決まっているか?
これらのポイントを中心に比較してみてください。
7. BtoB向けか?BtoC向けか?
BtoB事業は商品が高額で購入までに時間がかかる場合が多いため、リードナーチャリングを重視した施策が多くなります。タイムリーに、かつ最適なコンテンツを提供するために、スコアリングなどセグメンテーション機能が充実したツールがふさわしいでしょう。
BtoC事業は多数の見込み客と複数のチャネルでコミュニケーションをとる場合が多いため、多チャネルでさまざまなアプローチを行える拡張性の高さが求められます。
自社の事業タイプに合わせて、ツールがBtoB向けか、BtoCか見極めることも重要なポイントです。
参考:MAツールはマーケティング施策の選択肢を増やしてくれるーープロが教える本質と選び方 | LISKUL
参考:マーケティングオートメーション スペシャリストになるための教科書 | 株式会社メンバーズ, 福島 信, 鶴田 純也, 村上 大典, 廣瀬 竜也, 吉田 隼, 松永 美生(株式会社新生銀行) |本 | 通販 | Amazon
4:MAツール比較10選
ここからは、代表的なMAツールをご紹介します。「自社の目的に必要な機能があるか?」「価格は?」「サポート体制は?」「導入実績は?」など、気になる各ツールの特長を比較検討してみてください。

世界15万社が導入するSFAツール「salesforce」のMAツールです。同社のSFAを導入する企業にとって「親和性の高さ」が魅力になるでしょう。高機能な分、最安でも15万円と高価格帯なので、導入前に検証をしっかり行うことをおすすめします。
参考:B2Bマーケティングを自動化で支援 - Pardot(パードット) | セールスフォース・ドットコム

大企業からスタートアップ企業を中心にあらゆる業種で5,000社が導入しています。クロスチャネルを通じた高度にパーソナライズしたプッシュ通知やチャネル配信が可能で、BtoB、BtoC両方に強いのが特徴です。販売パートナー、参加コミュニティが多く、きめ細かなサポートが期待できます。
参考:MA(マーケティングオートメーション)の市場リーダー | Adobe Marketo Engage

SHANONはもともとセミナーの運用管理サービスとしてスタートした背景があり、展示会やセミナーなどイベントマーケティングに強いのが特徴です。SFA、CRM、BIなど、さまざまなツールとも開発不要でAPI連携に対応しています。
参考:シャノン|デジタルとアナログを組み合わせるデジアナマーケティングならシャノン

無料サポートが充実した国産MAツールです。月額3万円台から利用できるので、スモールスタートで始められます。定期的な勉強会、シナリオ設計や分析機能がないので、リードの数が比較的少ない企業に向いています。
参考:マーケティングオートメーション List Finder(リストファインダー)

HubSpotは世界で10万社が導入し、MAツールでNo.1シェアを誇っています。サイト構築(CMS)、MA、SFA、CRMのマーケティングツールを揃えるオールインワン型が人気です。
創業者のブログが話題を呼びHubSpotが誕生した背景があるため、コンテンツを軸としたリードジェネレーション、リードナーチャリングを得意としています。Marketing Hubのスタータープランは月額6,000円から利用できるので、スモールスタートから始めたい企業にもピッタリです。

参考:HubSpot | インバウンドマーケティング&セールスソフトウェア
MAツール
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月額料金
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特徴
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Salesforce Pardot
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150,000円~
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・同社のSFAツールと連携可能
・ハイスペックだが高価格
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Marketo
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要問い合わせ
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・BtoCにも対応
・コミュニティが活発なので、ユーザー同士の情報交換が期待できる
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SHANON
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要問い合わせ
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・国産MAツール
・イベントマーケティングに強み
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List Finder
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39,800円~
※初期費用別途要
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・スモールスタートで始めやすい国産MAツール
・分析、シナリオ設計がないなど、機能が限られるので注意
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HubSpot
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6,000円~
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・スモールスタートから始められる
・リードジェネレーション、リードナーチャリングの機能が充実
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メールアドレスが分かっている実名リードだけでなく、サイトを閲覧したもののアクションを起こしていない匿名リードも管理できるのが特徴です。国産MAツールなので操作画面が見やすく、シナリオ設計やレポート機能が充実しています。
参考:マーケティングオートメーションツール SATORI | 上戸彩さんTVCM公開中

国内産MAツールの中では、レポート機能が充実するなど高機能な点が特徴です。その分、価格は月額10万円~と高めですが、オンラインサポートを無料で受けられるので安心して使用できます。
参考:マーケティングオートメーション MAJIN

デザイン性が優れた見やすいMAツールです。社内に点在するデータをすべて統合できる「Data Palette」や、各種テンプレートを用意するなど、特別な知識がなくても使える独自の工夫があります。
参考:b→dash|業界シェアNo.1 データマーケティングツール

購入履歴、アクション、アンケート結果などあらゆるデータを一人の顧客に統合するCDPから進化したMAツールです。セグメントは上限3,000個まで抽出できるので、きめ細かな分析、アプローチができます。
参考:カスタマーリングス|CRM/MAツールから進化した統合プラットフォーム

国内で3,500社が導入するLINEのマーケティングに特化したツールです。チャネルは限られていますが、セグメント、スコアリングなどMAツールとして必要な機能はほぼ揃っており、月額5,000円~始められるお手軽さが魅力です。
参考:LINEマーケティングや販促・顧客管理ならLiny
MAツール
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月額料金
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特徴
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SATORI
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148,000円~
※初期費用別途要
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・国産MAツール
・匿名リードも管理可能
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MAJIN
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100,000円~
※初期費用別途要
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・ハイスペックな国産MAツール
・オンラインサポート無料
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B→dash
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要問い合わせ
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・操作性が強み
・便利な分析テンプレートなども用意
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カスタマーリングス
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要問い合わせ
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・国産MAツール
・きめ細かな分析、アプローチに強み
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Liny
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5,000円~
※初期費用別途要
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・LINEマーケティングに特化したMAツール
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活用のコツは、顧客への価値提供を常に優先すること
MAツール の入れ替えは多大なコストがかかるため、導入前に十分な検討が必要です。仮に導入後に思うような成果を上げられず、失敗だと感じたとしても、導入したツールを中途半端に運用し続けざるを得ないでしょう。
大前提として、MAツールは顧客と良い関係を築くためのツールだということです。どのタイミングで、どんな価値を提供すれば、顧客に喜んでもらえるかイメージしながら検討を進めるといいでしょう。各社の特徴を理解しつつ、自社の価値を最大限にアピールできる機能を揃えたツールを選んでください。
また導入を有意義なものにするために、まずはスモールスタートから始めることをお勧めします。中でも、オールインワンツールの「HubSpot」は必要な機能が十分に備わっており、大企業だけでなく中小企業、スタートアップまで、企業規模を問わず向いていると言えるでしょう。無料トライアルもありますのでぜひ一度、お試しください。

