画像認識や自動翻訳、チャットボットなど、さまざまな領域でAIの活用が進んでいます。
すでにAIを取り入れている企業は、どのような方法でAIを活用しているのでしょうか。複数のAI技術を組み合わせて活用している企業もあるため、体系的に事例を理解することで、AIの導入イメージが深まるでしょう。
本記事では、製造業・サービス業・金融業などの業種別に13社の活用事例を紹介します。
機械制御や異常検知を得意とするAIは、製造業との相性が良く、さまざまな場面で活用が進んでいます。ここでは、AIを積極的に取り入れている製造業の事例を紹介します。
出典:ダイキン工業株式会社
ダイキン工業株式会社は、大阪市に本社を構える空調機・化学製品メーカーです。主に家庭用・業務用エアコンや圧縮機、商業用冷凍ケースなどを取り扱っています。
同社は、事業展開国数が173か国、海外売上比率が83%を占めるグローバルメーカーです。グローバル市場における空調事業の売上高は、3兆9,816億円(2021年実績)を記録しています。
ダイキン工業株式会社は、異常検知やデータ解析が可能なAIの仕組みを商品開発に活かしています。エアコンをはじめとする空調機にAIを搭載することで、ユーザーに対する新たな体験価値を生み出しています。
代表的な取り組みは次の通りです。
出典:株式会社クボタ
株式会社クボタは、農業機械や建設機械の開発を得意とする産業機械メーカーです。そのほかにも建築材料や鉄管、産業用ディーゼルエンジンなど、幅広い事業を展開しています。
2022年12月期の売上高は2兆6,788億円。そのうち、海外の売上比率は78%を占めています。農業機械メーカーとしては世界有数の企業であり、特に稲作主体のアジアでは、2019年にアジアのコンバインシェアがナンバーワンになるなどの実績があります。
株式会社クボタの特徴は、単に商品の一部にAI技術を組み入れるだけでなく、AIそのものを新たなサービスへと発展させている点です。次の例の通り、「KSAS」と呼ばれる独自の支援システムを展開しているのは、特筆すべきポイントだといえるでしょう。
出典:株式会社IHI
株式会社IHIは、東京都江東区豊洲に本社を構える、創業170年の老舗重工メーカーです。
1兆円を超える売上高(2022年実績)の約3割を資源・エネルギー関連が占めています。産業システムや航空・宇宙関連の売上高もそれぞれ約3割を占め、多角的な事業を展開しています。
株式会社IHIでは、AIの認識技術をうまく取り入れ、製造現場での業務効率化に結び付けています。代表的な活用事例は次の通りです。
コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス傘下で、全国でコカ・コーラ社製品の製造・販売を行っている企業です。国内のコカ・コーラ社製品の9割近くの販売量を担い、コカ・コーラボトラーとしては国内最大規模を誇ります。
コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社の活用事例は次の通りです。
また、米コカ・コーラ社では、AIが画像や動画などのコンテンツを生み出せる、生成AIの採用が進んでいます。
続いて、サービス業におけるAIの活用事例を紹介します。
出典:株式会社しまむら
株式会社しまむらは、郊外を中心にアパレルチェーン店を展開する企業です。最先端の流行を迅速に商品企画へと取り入れ、低価格帯で販売するファストファッションブランドのひとつです。国内外で2,000以上の店舗を展開しています。
しまむらのほかにアベイル(Avail)や、バースデイ(Birthday)などのブランドを展開しているのも特徴です。2023年2月期の売上高は、6,161億円を記録しています。
株式会社しまむらは、小売業を中心に活用が進むAIのレコメンドシステムを採用し、商品選びの段階における体験価値の向上を図っています。特にオンラインストアには、AI技術を積極的に採用しています。
出典:イオン株式会社
イオン株式会社は、大手流通グループであるイオングループを統括する純粋持株会社です。グループ全体の売上高は9兆1,168億円(2023年2月期)と、国内最大級の規模を誇ります。
2001年にジャスコ株式会社から社名変更し、小売事業はイオンリテール株式会社に承継しました。イオン株式会社は、主にグループ会社の事業活動を統合的に管理しています。
イオン株式会社は、2023年7月から展開中の次世代ネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」を中心に、数多くのAI技術を事業へと取り入れ始めています。特に次のような取り組みは、バックヤードや商品開発の業務効率化に大きく寄与しています。
出典:島村楽器株式会社
島村楽器株式会社は、東京都江戸川区に本社を構える楽器小売店です。全国各地で音楽教室を展開しているほか、音楽関連イベントの企画・制作や音響工事の設計なども手がけています。2023年2月期の売上高は432億円です。
島村楽器株式会社では、AIの需要予測や自然言語処理の技術を積極的に活用しています。代表的な活用事例は次の通りです。
パナソニック コネクト株式会社は、サプライチェーンの課題解決につながるソリューションや、公共サービス支援などを手がける企業です。既存のハードウェアにAIやIoTなどの最先端テクノロジーを組み合わせることで、さらなる付加価値の向上を目指しています。
パナソニック コネクト株式会社は、OpenAI社の大規模言語モデルにもとづいたAIアシスタントサービス「ConnectAI」を独自開発しました。従業員がConnectAIにアクセスすることで、生成AI技術によって業務をサポートする仕組みです。
例えば、情報収集・整理・ドラフト作成・仕上げの4つの工程を経る資料作成業務では、3段階目のドラフト作成までAIが自動的に実行できます。そのほか、テクニカルな質問に対するアドバイスやプログラミング、文書生成、翻訳など、1つのプラットフォームだけで幅広いサポートを得られるのが特徴です。
ConnectAIは、すでに国内の13,000名を超える全社員に展開されています。今後はさらに機能を拡大し、カスタマーサポート領域での活用も視野に入れています。
金融・保険業では、主に審査業務や顧客分析でAI技術が活用されています。ここでは、代表的な3社の取り組みを紹介します。
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループは、三菱グループの金融持株会社です。グループ会社には、株式会社三菱UFJ銀行や三菱UFJ証券ホールディングス株式会社、三菱総研DCS株式会社などが含まれています。
2005年に株式会社三菱東京フィナンシャル・グループと、株式会社UFJホールディングスが合併して誕生しました。
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループは、他社が持つAIのノウハウをうまく自社に吸収しているのが特徴です。また、社内にもノウハウを蓄積できるよう、AI技術の開発や社員教育を担うプラットフォーム開発も進めています。
出典:ブルームバーグ
ブルームバーグは、米国に拠点を置く金融テクノロジー企業です。
30万台以上の利用実績がある金融情報端末(ブルームバーグターミナル)を提供しています。また、金融分野に強みを持つ情報誌「Bloomberg」や、世界で4億5,000万人の視聴者を擁する「ブルームバーグテレビ」など、メディア事業を世界的に展開しているのも特徴的です。
ブルームバーグでは、生成AI技術を用いた「ブルームバーグGPT」を独自開発しました。
ブルームバーグGPTは、同社のデータアナリストが保管してきた、40年以上にわたる膨大な量の金融データをAI学習させた、金融業界に特化したテキスト生成AIサービスです。
同サービスを利用すると、投資銘柄に関する情報を取得できます。そのほか、金融情報に関する質問を行うことで、AIによる回答が得られます。
出典:株式会社かんぽ生命保険
株式会社かんぽ生命保険は、東京都千代田区に本社を置く生命保険会社です。
顧客数は1,938万人(2023年3月時点)。全国80か所を超える支店と、20,000以上の郵便局窓口で商品・サービスを提供しており、幅広いチャネルを持っています。提供している商品は、医療特約付きの養老保険・終身保険を中心とするシンプルな構成です。
株式会社かんぽ生命保険は、幅広い領域でAI技術を採用しているのが特徴です。次の事例のように、対応領域は審査業務や顧客分析など多岐にわたります。
最後に、不動産業や建設業におけるAIの活用事例をご紹介します。同業界では、人口動態の把握や災害事例の解析など、主にデータ分析でAI技術が活用されています。
東急不動産ホールディングス株式会社は、東急株式会社の持分法適用関連会社です。東急グループの総合不動産事業を統括する役割を持ちます。
同社は、都市開発事業や戦略投資事業、管理運営事業、不動産流通事業の4事業を展開しています。グループ運営施設数は250以上、福利厚生代行会員や商業施設アプリ・カード会員をはじめ、1,800万人以上との顧客接点を持つのが強みです。
東急リバブル株式会社や、東急リゾーツ&ステイ株式会社など、グループ会社で興味深いAIの活用事例があります。代表的な取り組みは次の通りです。
出典:鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社は、東京都港区に本社を構える大手総合建設会社です。スーパーゼネコンとも呼ばれる、国内ゼネコン大手5社のうちの一つに数えられます。
過去には恵比寿ガーデンプレイス(オフィスタワー棟)、横濱ゲートタワー、世界貿易センタービルディング(南館)などの施工実績があります。2023年3月期の売上高は2兆3,915億円です。
鹿島建設株式会社では、識別系AIと呼ばれる従来のAIのほか、生成AI技術も積極的に活用しています。ドローンなどの最先端技術にAIを組み合わせているのもポイントです。
近年では、情報の分類や検索を得意とする従来型AI(識別系AI)に加えて、「ChatGPT」や「Stable Diffusion」をはじめとする「生成AI」にも注目が集まっています。
生成AIは、プロンプトと呼ばれるテキストで指示を与えると、コンピュータが独自のテキストや画像、音声などを出力するのが基本的な仕組みです。ビジネスシーンではメールの文面作成やコピーライティング、プログラミングなどに活用できるため、大規模な事業開発から足元の業務効率化まで、幅広い領域に対応できます。
HubSpotは、生成AIを搭載した無料ツールを提供しています。まずは身近な業務に生成AIを取り入れて、徐々に活用の幅を広げてみてはいかがでしょうか。
AIや人工知能という言葉が誕生してから半世紀以上が経ち、今日では、さまざまな場面でAI技術が活用されています。
今回紹介した事例のように、現場での業務効率化に力点を置いた活用方法や、AIを活用して商品やサービスに新たな付加価値を生み出す手段もあります。このような事例を参考にすることで、自社におけるAIの活用方法を具体的にイメージすることが可能です。
まずは、自身の業務にAIを取り入れて、理解を深めるところから始めてみましょう。