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AIの活用事例13選|業界別に取り組み内容の詳細を解説

作成者: 伊佐 裕也(いさ ひろや)|Apr 15, 2022 3:24:26 AM

画像認識や自動翻訳、チャットボットなど、さまざまな領域でAIの活用が進んでいます。

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すでにAIを取り入れている企業は、どのような方法でAIを活用しているのでしょうか。複数のAI技術を組み合わせて活用している企業もあるため、体系的に事例を理解することで、AIの導入イメージが深まるでしょう。

本記事では、製造業・サービス業・金融業などの業種別に13社の活用事例を紹介します。

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AIの活用事例(製造業)

機械制御や異常検知を得意とするAIは、製造業との相性が良く、さまざまな場面で活用が進んでいます。ここでは、AIを積極的に取り入れている製造業の事例を紹介します。
 

1. ダイキン工業株式会社

出典:ダイキン工業株式会社
 

企業の概要

ダイキン工業株式会社は、大阪市に本社を構える空調機・化学製品メーカーです。主に家庭用・業務用エアコンや圧縮機、商業用冷凍ケースなどを取り扱っています。

同社は、事業展開国数が173か国、海外売上比率が83%を占めるグローバルメーカーです。グローバル市場における空調事業の売上高は、3兆9,816億円(2021年実績)を記録しています。
 

AIの活用事例

ダイキン工業株式会社は、異常検知やデータ解析が可能なAIの仕組みを商品開発に活かしています。エアコンをはじめとする空調機にAIを搭載することで、ユーザーに対する新たな体験価値を生み出しています。

代表的な取り組みは次の通りです。

  • 株式会社JDSCと共同開発した不具合監視AIによる、エアコンの不具合・交換必要か所の特定や、運転異常の予兆検知
  • インターネット対応のエアコンから送信される運転データや利用状況をAIが解析
  • もともと人手を介して行っていた需要予測をAIで代替
  • 月間3,700件以上の問い合わせをAIチャットボットで自動化
     

2. 株式会社クボタ

出典:株式会社クボタ
 

企業の概要

株式会社クボタは、農業機械や建設機械の開発を得意とする産業機械メーカーです。そのほかにも建築材料や鉄管、産業用ディーゼルエンジンなど、幅広い事業を展開しています。

2022年12月期の売上高は2兆6,788億円。そのうち、海外の売上比率は78%を占めています。農業機械メーカーとしては世界有数の企業であり、特に稲作主体のアジアでは、2019年にアジアのコンバインシェアがナンバーワンになるなどの実績があります。
 

AIの活用事例

株式会社クボタの特徴は、単に商品の一部にAI技術を組み入れるだけでなく、AIそのものを新たなサービスへと発展させている点です。次の例の通り、「KSAS」と呼ばれる独自の支援システムを展開しているのは、特筆すべきポイントだといえるでしょう。

  • 戦略的パートナーシップを結ぶ米国のNVIDIA社が開発した「エンドツーエンドAIプラットフォーム」を導入し、完全無人化が可能なトラクター・コンバイン・田植機の開発
  • AIによる高度営農支援システム「KSAS(Kubota Smart Agri System)」の提供
  • 水道管路データと漏水データをAI技術で解析し、老朽度評価モデルを構築
  • 300項目近くにわたる焼却炉データを、AI解析支援ツールを用いて検証
     

3. 株式会社IHI

出典:株式会社IHI
 

企業の概要

株式会社IHIは、東京都江東区豊洲に本社を構える、創業170年の老舗重工メーカーです。

1兆円を超える売上高(2022年実績)の約3割を資源・エネルギー関連が占めています。産業システムや航空・宇宙関連の売上高もそれぞれ約3割を占め、多角的な事業を展開しています。
 

AIの活用事例

株式会社IHIでは、AIの認識技術をうまく取り入れ、製造現場での業務効率化に結び付けています。代表的な活用事例は次の通りです。

  • AIの画像認識により、現場での作業時間や作業内容を可視化する「みまもりAI」の開発
  • AIによるコンテナ船到着の予測データ活用と、電子通関サービスを組み合わせた、サプライチェーンの可視化・追跡情報提供の事業を展開
  • オタフクソース株式会社と共同で、AIを用いたソースのレシピ検索システムを開発
  • AIを活用した社内データ分析コンペ(AIコンテスト)の開催
     

4. コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社

出典: コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
 

企業の概要

コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス傘下で、全国でコカ・コーラ社製品の製造・販売を行っている企業です。国内のコカ・コーラ社製品の9割近くの販売量を担い、コカ・コーラボトラーとしては国内最大規模を誇ります。
 

AIの活用事例

コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社の活用事例は次の通りです。

  • 約70万台の自動販売機から取得した販売データをAIによって分析し、補充本数や品揃え、在庫数などを最適化
  • 上記の販売データから予測モデルを構築し、自動販売機の新規設置場所の候補地を特定

また、米コカ・コーラ社では、AIが画像や動画などのコンテンツを生み出せる、生成AIの採用が進んでいます

  • 期間限定商品「コカ・コーラ Y3000」の風味をAIによって考案
  • OpenAI社のGPT-4とDALL-Eの技術を組み合わせ、キャラクターを使った生成AIのアート作品を生み出せるプラットフォーム「Create Real Magic」を開発
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AIの活用事例(サービス業)

続いて、サービス業におけるAIの活用事例を紹介します。
 

1. 株式会社しまむら

出典:株式会社しまむら
 

企業の概要

株式会社しまむらは、郊外を中心にアパレルチェーン店を展開する企業です。最先端の流行を迅速に商品企画へと取り入れ、低価格帯で販売するファストファッションブランドのひとつです。国内外で2,000以上の店舗を展開しています。

しまむらのほかにアベイル(Avail)や、バースデイ(Birthday)などのブランドを展開しているのも特徴です。2023年2月期の売上高は、6,161億円を記録しています。
 

AIの活用事例

株式会社しまむらは、小売業を中心に活用が進むAIのレコメンドシステムを採用し、商品選びの段階における体験価値の向上を図っています。特にオンラインストアには、AI技術を積極的に採用しています。

  • 顧客一人ひとりのニーズに合った商品を提案するAIレコメンド技術をオンラインストアに導入
  • オンラインストアにAI搭載型のMA(マーケティングオートメーション)プラットフォームを導入。ハッシュタグを自動的に抽出・表示して、キーワードに関する商品一覧ページを自動生成
  • 商品データと気象データをAIで分析し、店舗ごとの商品配分を最適化
     

2. イオン株式会社

出典:イオン株式会社
 

企業の概要

イオン株式会社は、大手流通グループであるイオングループを統括する純粋持株会社です。グループ全体の売上高は9兆1,168億円(2023年2月期)と、国内最大級の規模を誇ります。

2001年にジャスコ株式会社から社名変更し、小売事業はイオンリテール株式会社に承継しました。イオン株式会社は、主にグループ会社の事業活動を統合的に管理しています。
 

AIの活用事例

イオン株式会社は、2023年7月から展開中の次世代ネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」を中心に、数多くのAI技術を事業へと取り入れ始めています。特に次のような取り組みは、バックヤードや商品開発の業務効率化に大きく寄与しています。

  • 英Ocado Group PLC社と提携し、50点の商品を約6分でピッキングできるAI搭載型のロボットを、CFC(顧客フルフィルメントセンター)型の次世代ネットスーパーに導入
  • 販売実績や気温などの情報をもとに商品発注を最適化する、AIの需要予測システムを開発
  • AIスケジュール管理システムの導入により、勤務計画の作成時間を約7割削減
     

3. 島村楽器株式会社

出典:島村楽器株式会社
 

企業の概要

島村楽器株式会社は、東京都江戸川区に本社を構える楽器小売店です。全国各地で音楽教室を展開しているほか、音楽関連イベントの企画・制作や音響工事の設計なども手がけています。2023年2月期の売上高は432億円です。
 

AIの活用事例

島村楽器株式会社では、AIの需要予測や自然言語処理の技術を積極的に活用しています。代表的な活用事例は次の通りです。

  • Amazon Forecastを活用して独自のAI需要予測システムを開発。発注数を最適化し、欠品率を2%から1.3%まで削減することに成功
  • AIチャットボットを導入してメールによる問い合わせ件数を削減
  • 株式会社NTTドコモが提供する楽器演奏コーチングサービス「AIピアノコーチ」に、50年以上の実績にもとづいたレッスンノウハウを提供
     

4. パナソニック コネクト株式会社

出典:パナソニック コネクト株式会社
 

企業の概要

パナソニック コネクト株式会社は、サプライチェーンの課題解決につながるソリューションや、公共サービス支援などを手がける企業です。既存のハードウェアにAIやIoTなどの最先端テクノロジーを組み合わせることで、さらなる付加価値の向上を目指しています。

AIの活用事例

パナソニック コネクト株式会社は、OpenAI社の大規模言語モデルにもとづいたAIアシスタントサービス「ConnectAI」を独自開発しました。従業員がConnectAIにアクセスすることで、生成AI技術によって業務をサポートする仕組みです。

例えば、情報収集・整理・ドラフト作成・仕上げの4つの工程を経る資料作成業務では、3段階目のドラフト作成までAIが自動的に実行できます。そのほか、テクニカルな質問に対するアドバイスやプログラミング、文書生成、翻訳など、1つのプラットフォームだけで幅広いサポートを得られるのが特徴です。

ConnectAIは、すでに国内の13,000名を超える全社員に展開されています。今後はさらに機能を拡大し、カスタマーサポート領域での活用も視野に入れています。
 

AIの活用事例(金融・保険業)

金融・保険業では、主に審査業務や顧客分析でAI技術が活用されています。ここでは、代表的な3社の取り組みを紹介します。
 

1. 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

出典:株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
 

企業の概要

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループは、三菱グループの金融持株会社です。グループ会社には、株式会社三菱UFJ銀行や三菱UFJ証券ホールディングス株式会社、三菱総研DCS株式会社などが含まれています。

2005年に株式会社三菱東京フィナンシャル・グループと、株式会社UFJホールディングスが合併して誕生しました。
 

AIの活用事例

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループは、他社が持つAIのノウハウをうまく自社に吸収しているのが特徴です。また、社内にもノウハウを蓄積できるよう、AI技術の開発や社員教育を担うプラットフォーム開発も進めています。

  • イスラエルのLiquidity Capital社のAI技術を活用し、スタートアップ企業への融資判断を自動化
  • 株式会社AVILENとのAIデータ分析ツールの共同開発
  • AIモデルの開発・研究者の養成や、AI活用の仮説検証を行う「MUFG AI Studio(M-AIS)」の設立
  • 従業員向けの生成AIプラットフォームを導入し、行内の事務手続き照会や通達添削などの業務を効率化
     

2. ブルームバーグ

出典:ブルームバーグ
 

企業の概要

ブルームバーグは、米国に拠点を置く金融テクノロジー企業です。

30万台以上の利用実績がある金融情報端末(ブルームバーグターミナル)を提供しています。また、金融分野に強みを持つ情報誌「Bloomberg」や、世界で4億5,000万人の視聴者を擁する「ブルームバーグテレビ」など、メディア事業を世界的に展開しているのも特徴的です。
 

AIの活用事例

ブルームバーグでは、生成AI技術を用いた「ブルームバーグGPT」を独自開発しました。

ブルームバーグGPTは、同社のデータアナリストが保管してきた、40年以上にわたる膨大な量の金融データをAI学習させた、金融業界に特化したテキスト生成AIサービスです。

同サービスを利用すると、投資銘柄に関する情報を取得できます。そのほか、金融情報に関する質問を行うことで、AIによる回答が得られます。
 

3. 株式会社かんぽ生命保険

出典:株式会社かんぽ生命保険
 

企業の概要

株式会社かんぽ生命保険は、東京都千代田区に本社を置く生命保険会社です。

顧客数は1,938万人(2023年3月時点)。全国80か所を超える支店と、20,000以上の郵便局窓口で商品・サービスを提供しており、幅広いチャネルを持っています。提供している商品は、医療特約付きの養老保険・終身保険を中心とするシンプルな構成です。
 

AIの活用事例

株式会社かんぽ生命保険は、幅広い領域でAI技術を採用しているのが特徴です。次の事例のように、対応領域は審査業務や顧客分析など多岐にわたります

  • 「IBM Watson Explorer」の活用。査定担当者がシステムに問い合わせることで、学習結果にもとづく査定の推定結果を提示
  • 株式会社Godotが提供する「ナッジAI」を活用し、顧客の行動データをもとに適切なタイミングでの情報やコンテンツを提供
  • VOC(Voice Of Customer/顧客の声)を自動解析するAI分析ツールの導入。顧客の声を、経営や商品・サービスへと早期に活かせるほか、業務効率化を実現
     

AIの活用事例(不動産・建設業)

最後に、不動産業や建設業におけるAIの活用事例をご紹介します。同業界では、人口動態の把握や災害事例の解析など、主にデータ分析でAI技術が活用されています。
 

1. 東急不動産ホールディングス株式会社

出典:東急不動産ホールディングス株式会社
 

企業の概要

東急不動産ホールディングス株式会社は、東急株式会社の持分法適用関連会社です。東急グループの総合不動産事業を統括する役割を持ちます。

同社は、都市開発事業や戦略投資事業、管理運営事業、不動産流通事業の4事業を展開しています。グループ運営施設数は250以上、福利厚生代行会員や商業施設アプリ・カード会員をはじめ、1,800万人以上との顧客接点を持つのが強みです。
 

AIの活用事例

東急リバブル株式会社や、東急リゾーツ&ステイ株式会社など、グループ会社で興味深いAIの活用事例があります。代表的な取り組みは次の通りです。

  • 物件売却時の価格査定や賃料査定を自動化する独自のAIシステムを開発(東急リバブル株式会社)
  • 東日本電信電話株式会社と株式会社PALとの共同で、AI画像分析技術とローカル5G技術を組み合わせた、人の動態把握に関する実証実験を実施(東急不動産株式会社)
  • ゴルフ場やホテルで働く従業員のシフトをAIで自動作成(東急リゾーツ&ステイ株式会社)
     

2. 鹿島建設株式会社

出典:鹿島建設株式会社
 

企業の概要

鹿島建設株式会社は、東京都港区に本社を構える大手総合建設会社です。スーパーゼネコンとも呼ばれる、国内ゼネコン大手5社のうちの一つに数えられます。

過去には恵比寿ガーデンプレイス(オフィスタワー棟)、横濱ゲートタワー、世界貿易センタービルディング(南館)などの施工実績があります。2023年3月期の売上高は2兆3,915億円です。
 

AIの活用事例

鹿島建設株式会社では、識別系AIと呼ばれる従来のAIのほか、生成AI技術も積極的に活用しています。ドローンなどの最先端技術にAIを組み合わせているのもポイントです。

  • ドローンによって現場の動画を空撮し、AI画像解析で資機材の位置を3Dモデルで表現するフローを開発
  • 60,000件以上の建設現場での災害事例をAIで解析し、類似作業の災害事例を可視化する「鹿島セーフナビ(K-SAFE)」の開発
  • 従業員向けの生成AIシステム「Kajima ChatAI」の開発。現場で発生した疑問をテキスト形式でAIに質問できるほか、手描きのスケッチからパース(建物の内外観)の画像を生成することも可能
  • FastLabel株式会社を通じて、AIモデルの学習に不可欠なアノテーションデータを取得
     

まずは自身の業務効率化に生成AI活用を

近年では、情報の分類や検索を得意とする従来型AI(識別系AI)に加えて、「ChatGPT」や「Stable Diffusion」をはじめとする「生成AI」にも注目が集まっています。

生成AIは、プロンプトと呼ばれるテキストで指示を与えると、コンピュータが独自のテキストや画像、音声などを出力するのが基本的な仕組みです。ビジネスシーンではメールの文面作成やコピーライティング、プログラミングなどに活用できるため、大規模な事業開発から足元の業務効率化まで、幅広い領域に対応できます

HubSpotは、生成AIを搭載した無料ツールを提供しています。まずは身近な業務に生成AIを取り入れて、徐々に活用の幅を広げてみてはいかがでしょうか。

  • コンテンツアシスタント
    テキストによる指示でAIがコンテンツを生成するツール。メールの文面作成やブログ記事のアイデア出し、SNSの投稿文作成などに対応。
  • ChatSpot
    CRM(顧客関係管理)ツールに関連する、さまざまなタスクをAIが自動で実行。取引先をはじめとするレコードの追加や、データにもとづいたレポート作成など。
  • キャンペーンアシスタント
    マーケティングキャンペーン用のコンテンツを自動生成するツール。簡易的な指示だけで広告用のキャッチコピーを作成したり、短時間でランディングページを構築したりと、マーケティング業務の半自動化が可能。
     

さまざまな活用事例を参考にAIの導入イメージを深めよう

AIや人工知能という言葉が誕生してから半世紀以上が経ち、今日では、さまざまな場面でAI技術が活用されています。

今回紹介した事例のように、現場での業務効率化に力点を置いた活用方法や、AIを活用して商品やサービスに新たな付加価値を生み出す手段もあります。このような事例を参考にすることで、自社におけるAIの活用方法を具体的にイメージすることが可能です。

まずは、自身の業務にAIを取り入れて、理解を深めるところから始めてみましょう。

 

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