代理店のビジネス開発担当者に求められる9つの資質

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伊佐 裕也(いさ ひろや)
伊佐 裕也(いさ ひろや)

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代理店のビジネス開発担当という職種は、在職期間の短さとストレスの大きさ、そして業務上の責任の範囲があいまいさから、「代理店の中で最も危険な仕事」と言われています。

Skills Every Business Development Pro Should Have-1

それでも、ビジネス開発担当は代理店の中で特に重要な職種の1つです。ビジネス開発担当者が成果を上げられるかどうかは、今後のビジネスの成長や安定に大きく影響します。

採用の決め手となるのは、リーダーシップスキル、組織全体を俯瞰する視点、創造的思考力といったプロフェッショナルとしての能力の高さであり、これらの資質を持つ人が、大きな重圧を切り抜けられる有望な候補者と見なされます。

しかし、これらの資質だけではビジネス開発担当の職は務まりません。代理店の経営陣は、ビジネス開発の職務を担う人に過度な期待を寄せてしまいがちですが、その人が優れた担当者に必要な資質を備えているとは限りません。

代理店の経営陣がビジネス開発担当者に期待しているのは、幅広い人脈を持ち、大きな苦もなくクライアントを獲得できることです。もちろん、提案書の作成、自社の売り込み、新規案件の獲得、必要に応じたアカウント管理の能力や、チームの信頼を獲得する人望も求められています。経営者側がこのような非現実的な理想を抱いていると、その代理店にビジネス開発職として勤務しようとしている人の理想像とのずれが生まれ、両者の関係は終わってしまいます。

マーケティング代理店の成長に関するレポートの2018年版(英語)によると、ビジネス開発担当者にふさわしい従業員を探すのに苦労している代理店の割合は35%におよび、自社の大きな課題の1つは従業員の定着率の低さにあると感じている代理店の割合は12%に達しています。ビジネス開発担当者の離職率を低減し、新しく採用した担当者の成果達成を後押しするには、候補者の選考を正しく進めることが必要です。この記事では、候補者の選考の参考となるよう、ビジネス開発担当者に求められる主なスキルについて説明します。

 

1)消費者の購入行動のパターンや傾向を理解している

マーケターであればだれもが知っているように、企業に初めて問い合わせる時点で、顧客の意思決定プロセスの最大57%が完了しているという統計があります。ブランドやその競合他社、またはブランドの既存顧客を通じてオンラインで入手できる情報が増えてきたことで、顧客はこれまでにないほど知識が増えています。

ところが、こうした変化が意味していることについて、営業担当者が正しい認識と理解を持っているとは言えません。かつて情報をコントロールしていたのは売る側でしたが、今では売る側は1人のアドバイザーとして、個々の顧客の課題に合わせた解決策を提案する必要があります。

ビジネス開発担当者は、顧客との信頼関係を築き、情報提供や確度評価を通じてセールスサイクル内の顧客を後押しするための戦略をマスターしていることが必要です。

広告代理店や企業のマーケティング部門向けにコンサルティングサービスを提供している米国の企業ReCourses, Inc.のDavid C. Baker氏は、こうしたコンサルティング型営業のアプローチを理解している人材の重要性について、次のように力説しています。

「売り込み型の営業で成果を収めてきた営業担当者が、コンサルティング型の営業手法への転換に成功するケースはめったにありません。その理由は、営業のプロセスも、セールスポイントも、担当者の立ち位置もまったく異なることにあります。たとえば、売り込み型の営業では、多少の収益を犠牲にしてでも取引の成立に向けてプロセスを進めていくのに対し、コンサルティング型営業はより忍耐強く行うものであり、年間の新規クライアントは実質3~5社に限られる場合もあります。それでも担当者が成約を急ぐことはありません」

2)インバウンドマーケティングの効果を信じている

多くの代理店では、有望なリードを獲得するために、コールドコールやEメール、紹介や人脈作りといった手法に今でも依存しています。こうした手法が功を奏して新しい取引先を獲得できる場合もありますが、優秀な営業担当者は、特に有望なプロスペクトを惹き付け、選別し、育成するうえでマーケティングが果たす役割を認識しており、インバウンドマーケティングの考え方を心得ています。そして、CMOや経営陣が代理店からのアプローチを、ただじっと待っているわけがないということを理解しています。

米国のコンサルティング企業Fuel Linesの創業者であるMichael Gass氏は、CMOに関するある調査結果をよく引き合いに出します。それは、調査対象者の80%は、自分からベンダーを見つけたのであって、その反対ではないというものです。

Gass氏は次のように述べています。「景気後退とソーシャルメディアの台頭、そして技術革新によってビジネス開発の手法は激変しました。1960年代のニューヨークの広告業界を描いたドラマ『マッドメン』に登場する、やり手のマーケターの時代は終わりを告げたのです。そのため、代理店で新しいビジネス開発の担当者を採用する際は、新規ビジネスの開発に関する従来型の専門知識だけでなく、ソーシャルメディアやコンテンツマーケティング、インバウンドリードの獲得方法について実際にどの程度の知識を持っているのかを確認するべきです」

新しく採用するビジネス開発担当者には、代理店のマーケティング活動を支援し、ときには自分で推進していくこと、そして自分以外の担当者が獲得したリードに対しても、同じように価値を置いて判断することが求められます。  

(現代の消費者の特徴や、バイヤージャーニーで営業担当者が果たす役割について理解を深めたい方は、ハブスポットのインバウドマーケティングの方法論をご覧になるか、ハブスポットアカデミーでインバウンドセールスの認定資格コースをご受講ください)

3)優れた質問をして、相手の話に耳を傾けることができる

米国のマーケティング企業The Listの社長を務めるDave Currie氏は、次のように述べています。「ビジネス開発担当者として大きな成功を収められるのは、優れた質問ができる人物です。ビジネス開発に対する好奇心を基に優れた質問をし、その質問に対するプロスペクトの回答に熱心に耳を傾けることで、課題を特定して深く理解すると共に、その課題がプロスペクトの組織に与える影響を定量的に把握し、その課題を先送りせずに今すぐ解決することがプロスペクトにとってのどのような意味を持つかを正しく認識できます」

プロスペクトは自社の代理店とそのサービス、そして競合他社に関する情報を既に把握しています。したがって、ビジネス開発担当者に必要なのは、見込み顧客が既に知っている情報を振り返るだけでなく、プロスペクトとの対話から価値を引き出す能力です。

こうしたスキルを持つ人材を採用するために、Currie氏のチームでは、心の知能指数(EQ)と対話能力テストという2つの客観的な指標を面接で使用しています。

4)目標の設定とアクションプランの策定ができる

優秀な営業担当者なら知っているとおり、有意義で役に立つ目標の設定と、その目標の達成に向けた計画の策定は重要なプロセスです。そしてそれは、代理店のビジネス開発担当者が直面する別の問題を解決するうえでも役に立ちます。

というのも、計画が策定されていれば、担当者の役割や責任の範囲、業務の優先順位が明確になるからです。計画が策定されていなければ、チームの他のメンバーが営業計画を受け入れたり、支援してくれたりすることもありません。

代理店の従業員の大半にとって、営業チームの役割はわかりにくい(そして信用できない)ものです。新しく採用されたビジネス開発担当者が周りからサポートを受けられないようであれば、チームの一員としての実感を持てず、自分の役割を果たすことは困難になるでしょう。

米国のマーケティングコンサルティング企業RSW/USのLee McKnight氏は次のように述べています。「ビジネス開発担当者は、たとえリーダー陣からの期待があったとしても、自分が必要とするサポートを受けられるとは限りません。ビジネス開発担当者は、受け身になったり言い訳をしたりすることなく、自分の手元にあるものが何であろうと、代理店という船の舵取りを進められなくてはなりません」

さらにMcKnight氏は、代理店のCEOや経営陣が新しい担当者を採用する前にすべきこととして、以下の3つを提案しています。

  1. 期待値の設定:1人の担当者がどれだけのことを達成できるか、そしてその担当者がリーダー陣からどの程度の支援を必要とするかについて、現実的な視点に立って考えます。
  2. ビジネス開発部門の構造の再検討:新規ビジネスを推進していくのはその担当者だけなのか、その担当者を中心としてチームを結成するのかを決定します。
  3. 候補者のこれまでの経歴の確認:新しい担当者が独力で業務を進められるのか、これまで担当していた業務はどんな内容か、リードの獲得や初回の打ち合わせの設定、顧客への売り込みができそうかどうかを確かめます。

ビジネス開発担当者は、顧客層の拡大に伴うビジネス開発上のニーズを明らかにするビジネスの年間計画を作成する必要があります。これはビジネス開発担当者が陥りがちな、「売上が上向き始めると、アカウントの管理に手が取られ、新たな業務に対応せざるを得なくなる」という問題の回避にも有効です。年間計画では、毎日欠かさず(閑散期以外の時期も)ビジネス開発に取り組むことの重要性や業務の優先順位を明らかにする必要があります。また、人材の採用や業務の処理量の予測と合致していることが必要です。

5)ビジネス開発担当としてふさわしいタイプの人物である

米国の広告コンサルティング企業The Sutter CompanyのJody Sutter氏によると、「営業職とビジネス開発職は、どちらの職種も収益の向上と大きな関係があるものの、それぞれに必要とされるスキルはあまりにも異なる」そうです。同氏は次のように述べています。「最近のビジネス開発部門の責任者は、売り込みの進捗管理を役割としており、細やかな目配りやプロジェクト管理能力の高さなどのスキルが求められています。優秀なビジネス開発担当者は、人を喜ばせるのがうまく、チームが最高の成果を達成できるようサポートすることに満足を感じる傾向が見られます」

その対極にいるのが営業重視タイプの人物です。マーケティングのトレーニングプログラムなどのサービスを提供する米国の企業Mirrenの業務執行取締役であるBrent Hodgins氏は、このタイプの人物を、新規案件の獲得を積極的にねらう「ハンター」と表現しています。

同氏は次のように述べています。「ハンターは意欲的な営業担当者であり、細部や過程よりも結果を重視します。その証拠に、見た目はあまり几帳面には見えなくても、新規リードの獲得で優れた成果を残すことができます。その一方で、競合分析や提案依頼書の管理に取り組む担当者は、細部を重視して定型的な方法を選択する傾向があり、プロスペクトに電話をかけて話をすることにはあまり興味を持ちません。それどころか、売り込みの進捗管理の担当者が、自分でも気付かないまま、新規案件の獲得を避けたがることも珍しくありません。これはアカウント担当者の大半も同様です」

Hodgins氏はさらに次のように説明します。「代理店では、どちらか片方のタイプの人に両方の役割を担わせようとしてしまいがちです。そして失敗した結果、その責任をビジネス開発部門の責任者が真っ向から引き受けることになります。ハンタータイプの担当者が解雇されるのは、社内の雰囲気に合わないことや几帳面でないことが原因であり、売り込みの管理を担当する従業員が解雇されるのは、代理店の新規リードの獲得積極的でないからです」

以上を踏まえて検討しなければならないのは、「自社で採用したいのは、経営陣やCEOが取引を成約させられるように、新規顧客の獲得と選別、そして打ち合わせのスケジュールの設定を担当するだけの人物なのか、それともチームの中心人物として、新規ビジネス開発の戦略やプロセスを作成し、経営陣の重要なメンバーになれるような人物なのか」という点です。

Sutter氏は次のように述べています。「ほとんどの広告代理店では、ビジネス開発担当者がどちらの役割についても優れた能力を持っていることをCEOが期待し、たいていはその期待が満たされずに失望することになります」

 

6)好奇心が旺盛である

パーソナリティー心理学やリーダーシップ開発の分野で知られるTomas Chamorro-Premuzic氏がHarvard Business Reviewに寄稿した記事(英語)によると、好奇心が旺盛な人は、複雑な事柄やあいまいな事柄の対処に長けており、「複雑な問題に対するシンプルな解決策」を作り出すスキルに優れているそうです。

こうしたスキルについて、広告代理店のビジネス開発の支援を手がけるPeter Levitan氏は、マーケティングや代理店を取り巻く環境がますます複雑になり、競争が激化している現状で、すべてのビジネス開発担当者が持つべきものであると考えています。

Levitan氏は次のように述べています。「ビジネス開発担当者に、営業のテクニックを教え込んだり、代理店の得意分野や潜在顧客のニーズと課題を理解してもらったりすることはできても、好奇心を持つように訓練することはできません。この好奇心とは、自社の従業員や文化、自社が属する業界、顧客のペルソナや種類、そして何より重要な営業提案の真の価値に対して積極的な興味を持つということです。要するに、好奇心の強い人は強固な関係を築くことができ、それこそが優れた営業担当者に求められるものなのです」

7)ブランド構築に取り組む能力がある

代理店は、ブランドを構築し、競合他社とは異なる重要な立ち位置を市場の中で確立すること、そしてブランドの認知度を向上させ、顧客にとってのブランドの価値を高めることの重要性は理解していても、それらを実行していることはほとんどありません。つまり、ほとんどの代理店は他と大差ないということであり、提供するサービスも自社の説明の仕方も同じで、販売する顧客も限定せず、結果として自社の価値をアピールすることに失敗しています。

英国のコンサルティング企業The Art of New BusinessのKarla Morales-Lee氏は、プロスペクトを惹き付けて製品を販売するには、ブランド構築の重要性を理解している人を採用することが不可欠であると考えています。

Morales-Lee氏は次のように話しています。「私の経験から言うと、ビジネス開発担当者を採用しようとしている代理店は、無意味なことばかりに注目しています。もはやコールドコールがうまくいくような時代ではなく、今の時代に新規ビジネスの開発で最も成果を上げられるのは、マーケティングの知識に精通したブランドアンバサダーです。日々の業務だけでなく、社外ではブランドイメージをアピールし、社内では企業文化を刷新できる人を採用する必要があります」

ビジネス開発担当者は、ブランドイメージを構築するだけでなく、社内のマーケティングや営業の実践を改革できることが必要です。そのためには、理想的なクライアントの人物像を定義し、その人物像と一致するクライアント(とそうでないクライアント)を選別し、自社を売り込み、さまざまな実践を取り入れ、さらに価格設定を通じて自社の価値を決定できることが求められます。

8)クライアントに現実的な期待値を持たせられる

ビジネス開発担当者は、プロスペクトに適度な期待を持たせず、その期待をうまく調整することで、自社がプロスペクトの期待を超えられるようにできる人が望ましいと言えます。たとえば提案書を提出する場合、通常なら提案書の作成に3日かかるにもかかわらず、翌日の提出を約束するようなことは避けるべきであり、自社との取引がどのように進んでいくのかを正確に理解してもらうことが重要です。見込み顧客が自社との取引の進め方を理解し、互いの考え方が一致しているかどうかを判断できるようにするために、自社の価値、個性、文化を正しく伝えられる人物でなければなりません。 

9)自社のビジネスに関して深い知識を持っている

中にはそうは思わない人もいるかもしれませんが、多くの人が考えているように、自社の売り込みやいわゆる「顔合わせ」のミーティングに自社を代表して出席する担当者は、自社のビジネスや販売するサービスについて理解しているべきです。ただし、取引の成約を代理店のオーナーが引き継ぎ、営業担当者の役割は新規案件の獲得と選別だけという場合、自社のビジネスへの理解はさほど重要なことではありません。また、新しい担当者の教育に時間と予算を投入し、育成に長い時間をかけるつもりがある場合も不要かもしれません。

ビジネス開発担当者は、クライアントのマーケティング戦略だけでなく、事業全体についての意思決定を支援することになるので、一般的なビジネス戦略、経営陣の懸念や課題、顧客の獲得と維持、経営陣が重視する財務指標についても深く理解しておく必要があります。自社が提供するサービスを通じて、クライアントが抱えるビジネス上の課題を解決する能力を備えたビジネスアドバイザーとして認めてもらうことが必要です。

マーケティングの仕事についてさらにご興味のある方は、ハブスポットの英語版ブログのWhat the Best Social Media Community Managers Actually Do in Their Jobs(優れたソーシャル メディア コミュニティー マネージャーはどのような業務を行っているのか)」もご覧ください。

ウェブ制作会社とマーケティング代理店の組織作りガイド

トピック: 代理店ビジネス

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