世界の広告代理店のユニークなブランドポジション戦略:注力すべき点を見つけて成功した13企業をご紹介

ダウンロード: 営業計画の 無料テンプレート
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

最終更新日:

公開日:

 

「ポジショニング」という用語は、業界の流行語になりました。しかし、ポジションニングは、一時期流行って廃れてしまう手法ではありません。

世の中には何千という広告エージェンシーが存在します。そのほとんどは同じようなサービスを提供し、同じような成果を約束し、同じようなポジショニングを行っています。

他社と同じようなことをしている限り、見込み顧客を惹きつけることはできません。

どの業界にも言えることですが、同じような製品やサービスを提供する同じような種類のビジネスが多数存在する場合、他社との差別化が必要となります。

そのためには「フォーカス」を見つけることが非常に重要です。そしてフォーカスを見つけ成功するのに役立つのが、ポジショニングなのです。

Tim Williams氏は、著書『Positioning for Professionals(プロフェッショナルのためのポジショニング)』の中で、「何でもできるからという理由で製品やサービスを買う人はない。何かができるから買うのだ」と述べています。

商談を勝ち取る提案書作成の仕方無料ガイド

本記事では、ポジションニングを考える際に役立つ4つの質問を、13のエージェンシーの成功事例とともに紹介します。

1.他社との差別化ができる専門的技術、知識、ノウハウは何か?

MMGY Global

Screen Shot 2017-07-07 at 9.27.58 am.png1981年に設立されたMMGY Globalは、旅行、ホスピタリティ、エンターテインメントに特化した大手マーケティング&コミュニケーションエージェンシーです。米国オハイオ州クリーブランドのイメージアップ、トランプホテルのブランディング、ルフトハンザ航空USAの実験的なマーケティングキャンペーンなど、その実績は数えきれません。

ミズーリ州カンザスシティの本社を筆頭に、ニューヨーク、オーランド、フォートマイヤーズ、デンバーにも拠点を構えています。専門分野に特化しているとはいえ、その分野の経験だけにあぐらをかいているわけではありません。

「旅行業界を専門としているということで、依頼の声がかかることは多いですね」と語るのは、同社の代表取締役兼CEOのClayton Reid氏。「とはいえ、新たに競争の激しいビジネス環境に取り組む際には、旅行業界におけるソートリーダーシップを、具体的なブランド&マーケティングソリューションに落とし込んでいかなければなりません。どのような場合においても、リレーションシップの構築は必要です」

同社は、リサーチとソートリーダーシップにフォーカスしており、旅行産業におけるコンテンツマーケティングに関するホワイトペーパーやFacebookマーケティングに関するガイドを発行して、その分野のエキスパートという立ち位置を確立しています。さらに年次カンファレンス「MMGYサミット」を開催し、旅行観光産業における新しい動向に関するディスカッションも推進しています。

Cargo

Screen Shot 2017-07-07 at 9.30.23 am.png

米国サウスカロライナ州グリーンビルを拠点とするCargoは、自ら「B2SBマーケティング」と呼ぶ分野にフォーカスしています。B2SBマーケティングとは、大手ブランドとスモールビジネスをつなげることです。2006年に設立、30名の従業員を擁する同社の顧客リストには、メルセデス・ベンツ、ダイムラー、マイクロソフト、Healthstatといった大手企業の名が並びます。

広範なサービスを提供していますが、どのサービスも、「スモール ビジネス オーナーの成功」と「大手企業がスモールビジネスとつながることで得られるチャンス」という視点に基づいています。また同社は、スモール ビジネス マーケティングにおけるディスカッションを促進するため、LinkedInでBusiness-to-Small Business Marketing group(B2SBマーケティンググループ)を運営しています。

Cambridge BioMarketing

Screen Shot 2017-07-07 at 9.31.53 am.png

ヘルスケアおよび製薬業界を専門とするエージェンシーは少なくありませんが、Cambridge BioMarketingは、その中でも希用薬(発作性夜間血色素尿症、モルキオ症候群A型、ゴーシェ病など希少疾病に用いられる医薬品)のマーケティングと広告に特化しています。

同社の臨床戦略責任者が、分子医学の博士号の持ち主であることからも、その高度な専門性がうかがえます。一般的なマーケティングエージェンシーでは必要のない資格かもしれませんが、細胞代謝を専門とする企業を顧客に持つような場合には、専門的な視点が欠かせません。

2.オーディエンスの好みや優先事項に対する深い理解を、顧客企業の成功にどう役立てられるか?

Sonnhalter

Screen Shot 2017-07-07 at 9.34.11 am.png

脱工業化地帯の中心部、オハイオ州を拠点とするSonnhalterは、建設、工業、MRO(メンテナンス、修理、オペレーション)市場の職人に対するマーケティングを専門としています。同社はこれをB2T(Business-To-Tradesman)マーケティングと呼んでいます。非常にニッチな分野ですが、同社の成長が衰えることはありません。収益の半分以上は、オハイオ州外に拠点を置くブランドとの取引によるものです。

「ニッチな分野に絞ると、機会を損失してしまうと考えるエージェンシーが多いようです」と語るのは、1976年に先代が設立した同社を引き継いだ代表取締役のMatt Sonnhalter氏。しかし実際には、「自社でやりたい仕事のタイプと合ったさまざまな機会が現れてくるものです」

一例として、工業製品メーカーWD-40およびEnergizerとの取引が上げられるでしょう。2社とも工業市場で製品をローンチしたいと考えていたものの、一般的な販売促進方法では上手くいかないことが分かっていました。そこでSonnhalterの力を借りたのです。

また、関連市場への参入を希望している新規顧客および既存顧客向けに発行している『Market Overview(市場概要)』ガイドと『Tradesmen Insights(職人インサイト)』ブログは、同社のポジショニングとマーケティングに大きな役割を果たしています。

Commonground

Screen Shot 2017-07-07 at 9.35.18 am.png

Commongroundは、「一般市場と多文化に関する従来の定義はもはや古い」と考えています。一方で、クアーズ、コカ・コーラ、American Family Insuranceなど、従来、多文化マーケティングと定義されてきた(そして一般市場にアピールする)仕事も多く行ってきました。均質なマーケティング業界において多様なスタッフを擁し、ステレオタイプ化することなく消費者にアピールするアプローチは、どちらも非常に斬新です。

BoomAgers

Screen Shot 2017-07-07 at 9.36.59 am.png

2017年までに、米国の人口の50%は、50歳以上の人たちで占められます。そして現在米国に存在するベビーブーマーの数は7600万人以上です。これは非常に大きな消費者市場であるにも関わらず、多くの企業がこの市場を重要視していません。

2011年に、Saatchi & Saatchiの元上級副社長Peter Hubbell氏によって設立されたBoomAgersは、賢明にもベビーブーマー世代に目を向けた企業に対して、主要インサイトとマーケティングサポートを提供することにフォーカスしています。このフォーカスと専門的知識により、同社はWWD、WSJ.com、The Internationalistなどにコメントを掲載されるほどです。

 

Tribe

Screen Shot 2017-07-07 at 9.38.46 am.png

米国ジョージア州アトランタを拠点とするTribeがフォーカスしているのは、社内のコミュニケーションと従業員のエンゲージメントで、顧客リストにはポルシェ、コカ・コーラ、Target、UPSなどの名前が並びます。同社は、「企業にとって最も重要なオーディエンスは従業員である。

なぜなら彼らこそが、顧客や消費者にブランドが約束したものを提供するのだから」という信念を掲げています。また『The Tribe Report』という雑誌を発行しており、社内コミュニケーションのベストプラクティス、人材のリテンション、従業員のエンゲージメントなどに関する情報を提供しています。

Barkley

Screen Shot 2017-07-07 at 9.45.09 am.png

Barkleyは包括的なサービスを提供しているエージェンシーで、 米国ミズーリ州カンザスシティを拠点としています。従業員数は約300名。Bunny Blue Ice Cream、Dairy Queen、Quiznosなどが顧客です。

2009年、Jeff Fromm氏はセールス責任者として同社に入社しました。同氏は、マーケティングの将来は「コンテンツ・エクセレンス」にあると考えていました。つまり、ユーザーは特定のトピックに関する専門的知識や情報を求めてGoogleを使用するようになるはずだ考えていたわけです。今では広く浸透している考え方ですね。

自社ならではのフォーカスを見つけるため、同氏はGoogle検索で「欠落している」情報を探しました。つまり、顧客に関連し価値がある分野で、専門的知識や情報がほとんど共有されてない分野を探したのです。

最終的に行きついたのは、ジェネレーションY(ミレニアル世代)の消費者トレンドでした。重要なトピックにも関わらず、ほとんど情報が存在しないことに気付いたのです。そこで、The Boston Consulting GroupおよびService Management Group(SMG)と提携し、『American Millennials: Deciphering the Enigma Generation(アメリカのミレニアル世代:謎の世代を解き明かす)』というレポートを作成しました。また最近は、FutureCastというミレニアム世代トレンドのコンサルティング会社も立ち上げています。

同氏は、自社を特定分野のエキスパートとしてポジショニングするだけでなく、実際にその専門知識を確実に提供できることが重要だと言います。

「明確な視点を持っていなければなりません。何の実績や根拠もなく、『うちはこの分野のエキスパートです』と名乗ることはできませんよ」

最近は、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、NPRなどで、ミレニアム世代のトレンドに関する同氏のコメントが掲載されています。

同氏は言います。「ポジショニングで勝ちたければ、他に類のない独自の強みと、意図したターゲットとの高い関連性を持つ必要がある。顧客に対して何ができるのかが大事なのだ」

3.価格で差別化できているか?

Anomaly

Screen Shot 2017-07-07 at 9.47.10 am.png

ニューヨークを拠点とするAnomalyは、2007年にヴァージン・アメリカ航空を顧客として獲得したことで一躍有名になりました。しかしその時手がけたのは広告ではありません。A320型機のインテリアデザインでした。また同社は他の数々のブランドに対して、売上高比率、持分取得、知的財産権などを取り入れた独自の料金設定を行っています。

同社自身の知的財産としては、リップクリームのEosがあり、2013年には米国で、老舗ブランドChapStickの売り上げを上回りました。さらに、Eric Ripert氏をホストとする料理番組「Avec Eric」も同社の知的財産で、2011年にはエミー賞と料理界のアカデミー賞と言われるジェームズ・ビアード賞を受賞しています。

独特なエージェンシー料金モデルと、自社プロダクトの立ち上げおよび成功により、Anomalyは他社と一線を画しています。

 

PR 20/20

Screen Shot 2017-07-07 at 9.48.30 am.png

Paul Roetzer氏は、2005年にオハイオ州クリーブランドでPR 20/20を設立しました。PR&マーケティング会社としてスタートし、後に、インバウンド&コンテンツマーケティングへと進化していきます。

Roetzer氏は、請求可能時間モデルに頼った昔ながらのエージェンシーの出身でしたが、そのやり方に甘んじることはありませんでした。

「請求可能時間の価値をどうしても理解できませんでした」と同氏は話します。「非常に非効率的ですし、エージェントばかりが得をして、顧客に利点がありません。このモデルだと、時間がかかればかかるほど、エージェントに入る金額が多くなってしまいます。結果としてスタッフは、顧客企業が成果を上げるために必要なレベルのサービスや品質を提供することよりも、割り当てられた時間数を厳守したり、月額上限に収めるようにすることに気を取られてしまいます」

依然としてこのモデルを採用しているエージェンシーに関して同氏は、「顧客にとって請求可能時間モデルがベストな料金モデルだという論理的な根拠はどこにもありません。エージェンシーにとって一番やりやすい料金モデルだというだけです」

2014年8月、 PR 20/20は、Point Pricing(ポイント料金)モデルを発表しました。昨年秋よりこの料金体系が使用されています。詳細は同社のウェブサイトに詳しく記載されています。このような料金の透明性は業界では非常に珍しいと言えるでしょう。

このモデルの基本は、各キャンペーンに対して、作業にかかった時間ではなく、価値に基づいて請求ポイントが算出されることです。各キャンペーンは、エージェンシーがキャンペーン全体の目標が達成しやすいように、プロジェクトやタスクに分けられます。

エージェンシーが作成したサンプル ゲーム プランをベースに、顧客は例えば月100ポイントのカスタムプランを購入することができます。eBook作成にかかるのは36ポイント、キャンペーン管理には10ポイントといった具合に、ポイントが割り当てられます。ゲームプランのポイント割り当ては、進捗フィールドと紐づけられており、毎月最終ゴールに照らし合わせてプロジェクトやタスクが見直されます。それにより、機会を最大限に活用するために、ポイントの再割り当てが必要かどうかを判断します。

「すべては目指す結果を出すために設計されているのです」とRoetzer氏は説明します。「多くのエージェンシーはこの点でつまづいています。結果ではなく提供するサービスの内容にフォーカスしてしまっているからです」

4.顧客企業とうまく仕事できる組織編成になっているか?

Solve

Screen Shot 2017-07-07 at 9.50.25 am.png

米国ミネソタ州ミネアポリスを拠点とするSolveは、FallonおよびCarmichael Lynchの元エグゼクティブたちが設立した会社です。設立者たちは皆、包括的なサービスを提供するエージェンシーの出身でしたが、一味違ったエージェンシーを作りたいと考えました。

Carmichael Lynchの元CEOであり、SolveのCEOであるJohn Colasanti氏はこう言います。「以前の仕事の仕方は今とは全く異なりました。顧客のマーケティング予算を目いっぱい引き出すようなやり方でしたね。甘い蜜は誰にも分けたくないというわけです。」

以前は、自社の検索チーム、ソーシャルチーム、モバイルチームに仕事を創出するために、顧客に検索、ソーシャル、モバイルのアイデアを提供するというような仕事のやり方でしたが、Colasanti氏と共同経営者たちは、そうしたやり方はしたくないと考えました。

そもそも、このようなやり方で専門知識を提供するのは「最高クラス」のサービスだとは言えないからです。なぜなら各チームや提供サービスは、これまでの顧客へのサービス提供に基づいて、エージェンシーのコアフレームワークに組み込まれたものであり、今目の前にいる顧客のために考えられたものではないからです。

それぞれの顧客ならではのニーズに対応するには不十分なフレームワークだと考えました。そこで、Solveは「hub and spoke(ハブ&スポーク)」モデルを採用し、 ブランディング、ポジショニング、コミュニケーションのサービスを提供することにしました。また、顧客のニーズに合わせてフリーランサーや他のエージェンシーともコラボレーションしています。

2011年に設立された同社の顧客リストには、True Value、Organic Valley、ベントレー モーターズ、ポルシェなどが名を連ねます。

Sparks & Honey

Screen Shot 2017-07-07 at 9.51.57 am.png

Sparks & Honeyは、ニュース編集室、トレンドレポート、エージェンシーの境界を曖昧にしました。同社は、子育てから美容、フレグランスからスピリチュアルまでインフルエンサーを集めた局を構築。毎日、カルチャーブリーフィングを行い、バーチャルに集めた14か国のカルチャースカウトから情報を収集しています。2012年にニューヨークで設立。当初の顧客は2社だけでしたが、今では18社に拡大しています。そのなかには、ハイアット、Life is good、Gerber、VH1などが含まれます。

Victor & Spoils

Screen Shot 2017-07-07 at 9.57.24 am.png

Victor & Spoilsは、2009年、エージェンシー業界にクラウンドソーシングを活用しました。JCPenny、アディダス、ハーレーダビッドソンなどを顧客に抱え、野菜のブロッコリーのイメージを一新したキャンペーンでも有名です。同社はゼロからチームを構築。世界中からクリエイティブな人材を集めて、難しいマーケティングの課題にソリューションを提供しています。

ウェブ制作会社とマーケティング代理店の組織作りガイド
編集メモ:この記事は、2014年9月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Jami Oettingによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

関連記事

HubSpotはお客さまのプライバシー保護に全力で取り組んでおります。お客さまからご提供いただいたご情報は、お客さまにとって価値あるコンテンツ、製品、サービスの情報をお送りするために使用させていただきます。なお、当社からのEメール配信はいつでも停止できます。詳しくは、HubSpotのプライバシーポリシーをご覧ください。

HubSpotとAircallが共同制作したテンプレートを使って、貴社の営業戦略を一貫した分かりやすい計画書にまとめましょう。

Marketing software that helps you drive revenue, save time and resources, and measure and optimize your investments — all on one easy-to-use platform

START FREE OR GET A DEMO