進むAI(人工知能)の実用化|産業別AIの活用事例13選

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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経済産業省は、中小企業がAI導入によって得られる経済的効果を2025年までに11兆円と試算し、積極的にAI導入を支援しています。

進むAI(人工知能)の実用化|産業別AIの活用事例13選

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反面、現状の中小企業のAI導入率は、2019年時点で5.6%に留まっており、導入した企業の中でも思うような成果を出せていないところもあります。

AIには機械学習やディープラーニング、予測分析、自然言語処理など、さまざまな形態があり、多くの業界で今後、不可欠の存在となっていくでしょう。しかし、AIの導入自体が目的となってしまっては、成果にはつながりません。

本記事ではAIを導入し、成果を上げている組織の事例を紹介します。自社のどの部分にAIを導入すれば、顧客提供価値が向上するのか、ぜひ参考にしてください。

AI導入ガイド - AI (Artificial Intelligence) でマーケティングを強化

身近にあるAI技術の実用例

身近にあるAI技術の実用例

AIはさまざまな分野で導入されていますが、実際に業務のどの部分でAIが使えるか、端的に示すのは難しいものです。まずは身近な分野で活用されているAIを見てみましょう。
 

無人(AI)レジ

無人(AI)レジは、AIの画像認識を活用して、あらかじめ登録してあるバーコードや画像・文字によって商品を認識し、精算を行うシステムです。

現在、多く使われているのは、消費者が商品のバーコードをスキャンさせるセルフレジですが、ブレインの画像識別AIとレジ業務を組み合わせた BakeryScan は、トレイ上のパンを自動的に識別し、レジ精算まで行います。
 

自動音声翻訳

案内窓口や道案内などで、多様な言語を用いたコミュニケーションが求められる場で活用されるのが、自動音声翻訳です。

自動音声翻訳は、音声認識を行い、聞き取った音声をテキストへ変換します。そのテキストを機械翻訳にかけ、翻訳されたテキストを再び音声として出力するというシステムです。

自動音声翻訳を行うアプリは数多くありますが、自治体を中心に導入が進んでいるのが Voice Traです。Voice TraはNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が開発した多言語音声翻訳を行うスマートフォン用アプリで、31言語に対応し、無料でダウンロードできます。
 

チャットボット

チャットボットとは、LINEなどのようなチャット形式で問いかけられた短文に、自動で返答するプログラムやアプリケーションを指します。

AIを活用したチャットボットは、想定外の返答やあいまいな返答にも、データを蓄積し機械学習によって、対応できるようになります。問い合わせの自動応答や有人対応連携など、さまざまな使われ方をしています。

東芝デジタルソリューションズが提供する シナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ」 は、FAQ集を投入するだけで重要キーワードを学習し、問い合わせへの対応が可能になります。

チャットボットについては以下の記事でも詳しく説明しています。興味のある方はぜひ参考にしてください。

スマートスピーカー(AIスピーカー)

スマートスピーカーは、ユーザーの命令を音声認識した後にテキスト変換、AIが自然言語処理してから、返答を音声で出力します。コールセンターでの応答や、医療現場でのカルテの作成、議事録作成などで利用されるほか、一般家庭への導入も進んでいます。

ビジネスの現場では Alexa for Business を導入し、会議室の予約・利用状況の確認など、生産性向上に役立てられています。
 

自動運転

自動運転は、運転プロセスでの「認知」「判断」「制御」をAIが行います。各種センサーがさまざまな情報を認知し、AIが判断、電気信号で車両に制御命令を下しています。

自動運転には、限定的な運転支援から完全自動化までの5段階のレベルがあります。2020年11月には ホンダレジェンド が、高速道路の渋滞時などの条件付きで自動運転が可能な自動運転レベル3の車両として、世界で初めて認可されました。また、中国の長安汽車なども自動運転車の量産化に進んでいます。
 

産業用ロボット

製造業では人手不足の解決策として、産業用ロボットの導入が期待されています。産業用ロボットは、求められる用途に応じて追加機能を搭載すればさまざまな工程に対応できるという汎用性の高さが魅力となっています。

しかし、産業用ロボットの導入でネックになるのがティーチングでした。ティーチングとは、専門のエンジニアがロボットに複雑なプログラムを記憶させ、ロボットを正確に動作させるプロセスです。ティーチングを担当するエンジニアの育成には時間がかかるため、ロボットを導入したくてもできない状況がありました。

このエンジニア育成の課題を解決したのが、AIを搭載した産業用ロボットです。産業用ロボットのAIは、機械学習の一種である強化学習によって、学習期間やコストの削減を達成しました。

MUJIN が提供する「汎用的知能ロボットコントローラ」は、ティーチングレスを実現し産業用ロボットの普及を促進しています。
 

産業別にみるAI(人工知能)の活用13選

産業別にみるAI(人工知能)の活用13選

ここでは各企業が顧客にどのような価値を提供するためにAIを活用しているかに焦点を当て、事例を紹介しています。
 

事例1.製造業| ブリヂストン「AI診断サービス」

ブリヂストンでは1990年代後半からタイヤ生産システムにICTやAIを導入し、品質向上を図ってきました。

2021年3月からは、消費者向けにAIを用いた診断サービス「見つかる 100人のちゃんと買い」を開始しています。

AI診断サービスのページで、車種、使用目的、運転する距離や頻度などの7つの質問に回答を入力。その診断結果をもとに14種類のタイヤの中から最適なタイヤが表示され、店舗で購入できる仕組みです。

ブリヂストンのAI診断は、消費者に「自分に合ったタイヤを簡単に選べる」という利便性を提供しています。
 

事例2.医療| 国立がん研究センター・NEC

医療では「予防」「診断」「治療」の3つの分野でAIの導入が進んでいます。なかでも「診断」分野、特に画像診断の分野は、今後の活用が期待されています。

国立がん研究センターとNECが共同開発した内視鏡AI診断支援医療機器ソフトウェアの「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」では内視鏡画像解析AIによって早期大腸がんの発見への活用が期待されています。
 

事例3.建設業| 清水建設「多能工作業ロボット Robo-Buddy」

建設業界は次世代の担い手の確保と、生産性向上が大きな課題となっています。そこで、総合建設会社の清水建設は現場で人と一緒に作業をする、AIを搭載したロボットの導入を進めています。

清水建設ではこれまで蓄積されてきた建設のノウハウと、AIやディープラーニング、センシング技術を組み合わせて、自分で判断し作業できる「自律型ロボット」を開発しました。
 

事例4.金融業| WealthNavi

WealthNaviは、2021年時点で30万人が運用しているAIによる資産運用アドバイザーです。

従来、AIは銘柄の選択や値動きの予測に活用されてきましたが、WealthNaviは長期投資のためのアドバイス機能に焦点が置かれているのが特徴です。

AIによって資産運用がすべて自動化されることで、投資初心者でも資産運用が可能になりました。
 

事例5.エンタメ業| YAMAHA「AI美空ひばり(VOCALOID:AI )」

YAMAHAは音楽の創造性の観点からAIの開発にも取り組んできました。

その成果のひとつが2019年の紅白歌合戦に登場した「AI美空ひばり」です。AI美空ひばりは、故美空ひばり氏の歌声や歌い方、話し声をディープラーニングで学習したVOCALOID:AI です。紅白歌合戦では、再現した合成音声で新曲を歌唱しました。VOCALOID:AI の取り組みは、音楽の新しい可能性を広げています。
 

事例6.物流業| Hitachi AI Technology/業務改革サービス

オンラインショッピングが消費者に浸透するにつれ、物流の需要が高まるなか、人手不足は大きな課題となっており、この課題の解消にAIが期待されています。

Hitachi AI Technology/業務改革サービスは、日立製作所が提供するAIを活用した倉庫業務効率化サービスです。集品作業は、物流の倉庫管理の中でも作業コストの大きい工程です。日立物流ではこの工程にAIを導入し、過去の集品作業の結果を読み込ませて作業効率の最適化を繰り返しました。その結果、集品作業時間の平均8%短縮に成功しています。
 

事例7.インフラ業| 大成建設「コンクリートひび割れ画像解析技術でのAI自動検出

国内ではトンネルや道路橋など、コンクリート製インフラの経年劣化によるひび割れは、耐久性の低下などの問題を引き起こしています。コンクリートのひび割れを検出するには、従来、点検員による目視しかありませんでしたが、大成建設では先進的なデジタル画像処理技術やドローン撮影などを組み合わせ、ひび割れ点検作業の時短・コスト削減を達成していました。

さらに2021年よりコンクリートひび割れ画像解析にAIが導入されました。従来は人が画像

を見ながら検出・トレースを行っていた工程が、AIによる自動化に置き換えられたのです。ひび割れ検出のトレースに要する時間が90%低減し、点検費用も人力での点検に比べて50%の削減が可能になりました。
 

事例8.食品業| キユーピー 「AIを活用した原料検査装置」

キユーピーの惣菜の製造販売部門では2019年1月から、自社で開発したAIをカット野菜の検査に導入しています。ディープラーニングを活用した画像解析によって、変色したニンジンや異物がないかの検出が可能になりました。
 

事例9.農業| Skymatics「葉色解析サービスいろは」

Skymaticsはドローンとセンシング技術を組み合わせ、上空から撮影したデータを提供する企業です。Skymaticsの「葉色解析サービスいろは」は、ドローンや衛星などのリモートセンシング技術とGIS技術(地理空間情報システム)を組み合わせ、農地を図面として提供しています。作物の状態や雑草の種類まで確認できるため、広大な農地も一目で全体把握ができます。
 

事例10.水産業| KDDI ドローン・AI技術

KDDIは日本各地の自治体と協力して地方創生を目指す取り組みを行っています。その事業のひとつが長崎県五島市のマグロ養殖漁業者とのプロジェクトです。

赤潮の影響を受けやすいクロマグロの養殖では、赤潮の早期検知が重要な課題でした。ドローンが海域全体の着色具合からリスクを検知し、海水を採取します。その後、機械学習で有害プランクトンの自動判別を行い、リアルタイムで赤潮発生の危険性を漁業者に通知します。その結果、赤潮リスク通知に要する時間が98%短縮されました。
 

事例11.林業| 九州電力自治体向け「森林資源の見える化サービス」

九州電力は自治体向けにドローンを使って3D測量データを収集し、AIで分析、森林資源を可視化するサービスを提供しています。従来は人が対象の山に入り、樹木の本数や種類、高さ、直径などを調べて回っていましたが、このサービスによって大きく省力化できるようになります。
 

事例12.飲食業| New Innovations「root C」

「root C」はNew Innovationsが提供する需要予測AIを搭載したAIカフェロボットです。アプリから注文し、淹れ立てをロッカーで提供します。AIで需要予測を行うため、ユーザーはいれたてのコーヒーを待たずに受け取ることができます。2020年の実証実験では最大同時受け取り可能人数が20人までで、将来的には個人の嗜好に合わせたブレンドまで行う予定です。
 

事例13.アパレル業| ZOZO「WEAR」

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運用するZOZOでは、ファッションコーディネートアプリ「ZOZOWEAR」を提供しています。

「ZOZOWEAR」では、ユーザーの閲覧するコーディネートから、AIがファッションアイテムのバーコードを検出し、保存したりそのまま「ZOZOTOWN」で購入したりできるサービスです。2020年にはさらに選んだアイテムと似ている商品が検索できる機能が追加されました。
 

AIを導入する際のポイント

AIを導入する際のポイント1

AIは現在、社会の隅々まで導入が進むなかで、さまざまなビジネスや生活を支え、今後は多くの業界で不可欠な存在となるでしょう。そこで自社への導入を検討する際には、以下の2点から始めることがポイントです。

  • ステップ1:大枠の目標を設定する
  • ステップ2:AI人材を育成する
     

ステップ1:大枠の目標を設定する

AIは今後以下の3点を中心に、さらなる実用化が進んでいくことが予測されます。

  • AIへの実装化
  • 自然言語処理技術の発展に伴うオフィス業務の効率化
  • AI画像認識を活用した働き方/生活様式への活用

AIの導入を検討する企業は、まずはこの3点をヒントに、AIを使って現在の自社の顧客提供価値をどのように向上できるのかを検討します。

「顧客体験の向上/購入時の利便性を高める」「人手不足の解消/現場の負荷を軽減し、顧客に行き届いたサービスを提供する」など、企業独自の課題を設定し、どのような形で解決したいのか目標を設定します。すると、導入すべきAIの仕様や要件が見えてくるでしょう。
 

ステップ2:AI人材を育成する

AIを導入する際のポイント2

財務省| 財務局調査による「先端技術(IOT、AI等)の活用状況」について

これからAI導入の取り組みを行う企業が考えなければならないのが「人材」の問題です。社内でのAI人材の育成は時間がかかるため、人材育成の仕組み化が必要です。

多くの場合、AI開発に必要な知識は外部ベンダーに依頼するため、求められるのはAIの専門知識よりも、会社の業務と顧客提供価値に関する知識です。ベンダーに丸投げすることのないよう、社内人材の育成を進めましょう。
 

AIを通じて顧客価値を向上する方法を考える

AI導入に向けた準備では、本来の目的を忘れてAI導入自体を目標としないことが何よりも重要です。

AIは加速度的な進化を遂げています。AIの進化によって、仕事は確実に変化していくことが予測されます。AIによって淘汰される業界や業務がある一方で、AIが普及することで新たな成長が見込まれる業界や需要が増す業務もたくさんあるでしょう。

先行して導入している同業他社や、異業種でも自社と規模や環境の近い他社動向を参考にすることで、AIを通じて自社の顧客価値を向上する方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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