経験価値マーケティングを始めるうえで重要な7つのヒント

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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優れたストーリーの条件は何だと思いますか? 結末を見たあと幸せな気分に浸れること? 何かを学んだと思えること? あるいはお腹を抱えて笑ったり、予想外の展開にわくわくしたりできることでしょうか? シェアしたくなるほど魅力的なストーリーで重要なのは、そこで語られる経験です。つまり、「いつどこで誰が何をどのようにしたか」というできごとを語るのがストーリーです。

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マーケターは上質なストーリーが大好きです。私たちはメッセージやコンテンツでオーディエンスに伝えるストーリーの質にこだわります。ですが、私たちは良いストーリーを伝えることは得意でも、作ることに関してはまだまだだと思います。上質なストーリーを作る。それこそが経験価値マーケティングに重要な要素です。

経験価値マーケティングは、これをテーマとしたサミットやプログラムが開催されていることからもわかるように、もはや新しい手法ではありません。ある調査によると、経験価値マーケティングを使用するマーケターの多くが、非常に高い効果が得られると答えています。ですが、経験価値マーケティングの実例をいくつも目にしたであろうマーケターでさえ、自分が実践するとなると、その方法がわからないことも多いようです。

そこで私たちは素晴らしい経験価値マーケティングの実例を集め、それらに共通する点について詳しく調べました。この記事ではそこで私たちが理解したことについて説明します。また、皆さんが経験価値マーケティングを使用する際に思い出していただきたいヒントについても、合わせてご紹介したいと思います。

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経験価値マーケティングとは

CMOというサイトのある記事で、経験価値マーケティングとは、「オーセンティックにブランディングされたエンゲージメントにおいて、カスタマーとブランドの双方に価値のある対話を行うこと」と説明されています。

この「オーセンティック」とは「正真正銘の」の意です。確かに、企業がオーディエンスにインターネット、あるいはその他の方法で一方的にメッセージを送るのではなく、ブランドとライブで対話する機会を作るという点で、オーセンティックであると言えます。「双方に価値のある対話」という点について言えば、消費者にはブランドを具体的なかたちで体験できるメリットがあり、企業にはコンテンツをシェアしてもらえるというメリットがあります。

調査によると、ブランドによるイベントの参加者のうち49%が、イベントのようすを動画で撮影し、その大半の人がソーシャルメディアで動画をシェアするそうです。そこではイベントの素晴らしい体験や、そのイベントを企画したブランドについて、投稿者たちによる会話が交わされます。

このように言うと、イベントを開催することが経験価値マーケティングのように聞こえるかもしれません。確かに、イベントに頼ることも多いようですが、それでも経験価値マーケティングについて多く議論されるのは、イベントの開催方法ではありません。人々がそのブランドとどのように対話を交わすかが重要なのです。

では、経験価値マーケティングとは具体的にどのようなもので、どうすれば(とりわけ少ない予算でも)実践できるのでしょうか?次からは私たちが発見したベストプラクティスについてご説明します。

経験価値マーケティングの7つのコツ

1)VRを利用する

VR(バーチャルリアリティ)や360度動画などが、マーケティングツールとして着実に勢いを増しています。過半数以上の消費者が、VR体験を提供するブランドからは製品を購入する可能性が高くなる、と回答した調査結果もあるほどです。また、360度の動画を最後まで観る人は、それ以外の動画と比べて2倍以上も多かったそうです。

私は以前、360度動画作成用プラットフォームのメーカーであるOmniVirtのMichael Rucker氏にインタビューをしたのですが、そのときの彼の言葉を忘れることができません。彼は、「360度動画が本当に素晴らしいのは、自分がその動画の主体であるという感覚を、ユーザーに与えることができる点です。

だからこそユーザーは没頭してしまうわけですが、それでもコントロールしているのは自分なのです」と言いました。そして彼は、重要なのは360度動画でユーザーに何を体験してもらうかであり、ブランドが最も苦労するのはそこだ、とも教えてくれました。

VRが経験価値マーケティングで重宝されるのは、ユーザーが360度動画で通常では(つまり、企業から購入する製品やサービスでは)絶対に経験できない何かに夢中になることができるからです。たとえばShell(昭和シェル石油)はこのテクノロジーを利用し、ユーザーにV-powerという燃料になってエンジンの中を進んでもらうという仮想体験を提供しました。VRでなければ人間にそのようなことが可能であるはずもなく、誰が考えても非常にエキサイティングな体験です。

ですからRucker氏が言ったように、ブランドにとって本当に難しいのは、VRを利用してどのような体験を作り出すかを考えることです。この課題に対して満足できる答えが見つかったら、それをVRで作成してください。こちらのCinematicVRによる記事には、VR動画を限られた予算で作成し、ユーザーに公開する方法がわかりやすく解説されています。

ですが、そのアイデアはどこから、そしてどのようにして生まれるのでしょうか。次からはその方法について解説します。

2)ターゲットがいる場所を考える

インバウンドマーケティングの基本とも言える考え方のひとつに、オーディエンスの邪魔になることはしない、というものがあります。競合企業たちによる無数の広告を掻き分け、何とか注目を集めようともがくのではなく、インバウンドマーケティングでは多くの人々を自社の方に惹きつけることによって、顧客を増やす努力をします。

経験価値マーケティングも例外ではありません。ですから、オーディエンスが多くいると思われる場所を探し、そこに対してエンゲージするというアプローチが、経験価値マーケティングでは非常に有効に働きます。

これには実にさまざまなパターンがあると思いますが、ここではGoogleが「Impact Challenge」で行った例(下の動画を参照)を挙げて説明しましょう。検索エンジンの巨大企業であるGoogleは、サンフランシスコのベイエリアの住民たちを巻き込んで、数百万ドルを寄付する対象を決定するために、大きくてインタラクティブなポスターを、バスの待合所やフードトラック、レストランなど、人々が何かを待っている場所、すなわち、自分たちが住むエリアを変えるために必要な何かについて、考える時間を持ってもらえそうな場所に設置しました。

このようなアプローチによって、企業は地方のパートナー企業と一緒に素晴らしい体験を作り出すチャンスを手に入れることができます。他のブランドとパートナーシップを結ぶことについては、後ほどまた詳しくお話ししますが、このように他社と協力してイニシアチブを実施すれば、オーディエンスは素晴らしい体験を得ることができ、企業はオーディエンスへのリーチを拡大できるなど、双方でメリットを享受できます。

3)スペースを変身させる

テキサス州オースティンでは毎年、映画祭、音楽祭、インタラクティブフェスティバルを組み合わせたSXSWと呼ばれる大規模なイベントが行われています。そして、これらの業界にいる数々の企業が、プロモーション用にさまざまな経験を作り出しています。

たとえばワーナーブラザーズは、オースティンのタトゥーショップを、同社の映画の有名なキャラクターにちなんで「Suicide Squad」という名前のブランドショップに変身させました。そのようすを下の動画でご覧ください。

出典:Suggest

ワーナーブラザーズほどの有名なハリウッドスタジオでなければ、多額の予算を注ぎ込んでこのような体験を作り出せるはずもない、と思うかもしれません。確かにそうでしょうが、だからと言って何も方法がないわけではありません。先ほど説明したように、オーディエンスが存在するスペースを探して考えれば、必ず何か方法が見つかるはずです。

たとえばネットフリックスは米国のテレビドラマ、「ギルモア・ガールズ」の再放送を記念して、全米にある200のカフェや軽食レストランを、ドラマの登場人物が足繁く通う有名なダイナーに1日だけ変えました。

必ずしも全国レベルで展開させるべきとは思いませんが、このように地方のビジネスと連携してブランディングした体験を、それぞれの製品やサービスに応じて作り出すことは、素晴らしいアイデアだと思います。

このコンセプトをどう活用するか、発想を膨らませてみてください。季節ごとの行事や風物詩などを取り入れてもよいでしょう。たとえば、バレンタインデーにちなんで、日常的に利用する駅などのスペースを、ロマンチックなナイトスポットに突然変えて見せるなどのアイデアも面白いと思います。

これは何もB2Cに限ったことではありません。B2B企業でも、地方のレストランやコーヒーショップなどの店舗と連携し、それらのスペースでお互いに知らない企業どうしをマッチングさせて、製品やサービスについて説明し合うなどのイベントを企画すれば、楽しく、インタラクティブで、魅力的な体験になると思います。下の動画はProgressive Insuranceが、「突如として現れるモーターサイクルショップ」という体験を作成した例です。

4)連携できるブランドを探す

スペースを変化させて体験を作り出す場合、突然現れて何かをしただけでは、当然ですが上手くいきません。実施のための許可が必要なだけでなく、スペースを提供する側にインセンティブを提示し、パートナーシップを結ぶことによるメリットを理解してもらう必要があります。

共同ブランディングでは、そのパートナーシップから双方がメリットを得られることが、基本的な前提条件となります。そのためには作成する体験を一緒に、しかも戦略的に考えなくてはなりません。両社が一緒になることで、まったく予想もつかないような何かを生み出してください。

そして、そのアイデアが少しずつ掴めてきたら、両社が同じ作業をただ積み上げていくのではなく、お互いがそれぞれに異なる不可欠な役割を果たして、素晴らしい体験を作り上げるような連携のしかたを考えましょう。

ターゲットとするオーディエンスについても、同じことが言えると思います。似たようなオーディエンスを持つ相手とパートナーを組んでも、あまりメリットがないかもしれません。自社に興味を持ってもらえそうだけれども、自分たちだけではリーチが難しいターゲットにアプローチすることを目的として、パートナーシップを組むからです。

当然ですが、パートナーの側にとっても、より多くのオーディエンスに存在を知ってもらえるというメリットがなくてはなりません。

GoogleはかつてZapposと組んで、非常にクリエイティブなイベントを企画しました(下の動画を参照)。表向きはZapposがふざけてGoogleのカップケーキを奪い、人々をゲリラ的に驚かせて楽しんでいるようにも見えますが、実際には2社が協力して双方にマーケティング効果を得ることを狙ったものと思われます。

GoogleとZapposはこの動画にあるような方法で、それぞれのブランドの製品やサービスを交換する体験を作成しました。これにより、両社はオーディエンスへの認知度を高め、より多く対話を行うことに成功したのです。

パートナー企業と連携して共同ブランディングを行う際には、オーディエンスが双方にエンゲージできるような体験を、オーディエンスがいると思われる場所を選んで提供するようにしてください。

5)人々に何かを学んでもらう

自社のブランドについて、仮に人々に知られないようにしたいなら、誰にも理解されないものを作りさえすればよいでしょう。このことは、顧客体験に詳しいエキスパートのうち58%が、製品やプロセスをわかりやすく作ることは、企業にとって最も優先順位の高い課題だと答えたことからも納得がいくと思います。

オーディエンスに製品やサービスについて知ってもらうために、価値の高い教育的なコンテンツを作成するだけでなく、体験を作成するという手段もまた有効だと思います。FacebookはこれをIQ Liveというイベントで実践し、企業によるFacebookのビジネス利用を、その莫大なデータに基づいて実社会で再現するという体験を作りました。

たとえばIQ Martでは、オンラインで買い物をする人たちがソーシャルメディアを利用しながら購入を決定するまでのコンバージョンパスを、店舗に似せて作ったブースで表現しました。そのようすを下の動画でご覧いただくことができます。

イベントの参加者はこの体験によって、教室で講義を受けることなく、マーケティングについて非常に深い何かを学ぶことができました。実際、この体験からFacebookをビジネスに活用する方法について価値の高い洞察が得られたと、93%の参加者が回答しています。

これはB2B企業にとって非常に参考になる素晴らしい例だと思います。この方法で、製品やサービスについて価値がよくわからない人、単純に使い方を理解していない人、あるいは必要性を感じていない人に体験をしてもらうことができます。

何らかのデータを現実の世界で再現し、オーディエンスに対話してもらうことによって、そのブランドの価値を人々の印象に強く残る方法で示すことができます。ライブイベントは製品の理解に役立つと回答した人は、65%に上るそうです。下の動画はAllstateが保険について、ゲーム形式で人々に理解してもらうために行ったイベントを紹介しています。

6)人々に何かを一緒に作ってもらう

人は自分が思っているよりも創造力豊かです。70%の人は、創造力を価値の高い資質だと考えていますが、一方で自分の創造力を完全に活かせていると思っている人は44%しかいないそうです。

それなら、オーディエンスに自分の創造力を発揮してもらえるような体験を作ってはどうでしょうか。それを上手く作れるかどうかも、またマーケターの創造力次第でしょうが、もし実現すれば、その体験は見る価値も、そして参加する価値も非常に高い、素晴らしいものになるはずです。

実はそれをすでに実践した例があります。American Greetingsは先ほども紹介したSXSWで、通りすがりの人たちを呼び止めて、(デジタルを駆使した周囲のイベントとは対照的に)ずっと昔に学校の図画工作でやったような作業を多くの人に体験してもらいました。その体験の名前はずばり、「アナログ」です。

また、参加者はそれぞれに何かを手作りするだけでなく、壁いっぱいに大きく書かれた図形に皆で色を塗るよう呼びかけられました。全員で少しずつ手を入れて、1つの大きな壁画を完成させたのです。INBOUND 2016に参加した方なら、それに似たようすを覚えてくださっているでしょうか(下の写真をご覧ください)。

7)デジタルの要素を加える

American Greetingsはこの体験をさらに多くの人に楽しんでもらいたいと、周りにシェアするための場を用意しました。イベントの名前をそのまま使用した#analogというハッシュタグを使用して、Twitterやその他のソーシャルメディアに写真などを投稿できるようにしたのです。

この記事でお話ししたように、人々はイベントの体験をソーシャルメディアでシェアするのが大好きですので、ブランドのアピールに参加者たちが大きく、そしてクリエイティブに貢献したことと思います。

そしてAmerican Greetingsはさらに、そのイベントの写真を投稿してもらうための場所を、Instagramに「Analog by American Greetings」という非常にわかりやすい名前で作成しました。下はそこに投稿された写真の例です。

可能性は無限大

この記事では経験価値マーケティングを始めるうえで必要となる重要なヒントについて説明しました。ですが、皆さんにはこれらにとらわれることなく、創造力をフルに発揮させて新しい体験を自由に作成していただきたいと思います。もちろん、予算に応じて決めなければならない部分もあるでしょうが、ここでご覧いただいたように、巨額の費用を必要とするものばかりではありません。工夫次第でいくらでも面白い体験が作れると思います。

まさに、「可能性は無限大」です。製品やサービス、ブランドをアピールするのにふさわしい体験を、予算に合わせて作成してください。そうすれば、オーディエンスはただ体験するだけでなく、その体験にのめり込んで周囲にシェアしてくれることもあるはずです。これはB2BでもB2Cでも、あるいはどの業種でも同じことです。的が外れてさえいなければ何でもOKですので、予想すらできないような体験を提供して、オーディエンスを大いに喜ばせてください。

経験価値マーケティングのテクニックを何かご存知ですか? 下のコメント欄でお聞かせください。

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編集メモ:この記事は、2017年2月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Amanda Zantal-Wienerによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

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