マーケティングテクノロジーの進化を背景に、マーケティングはより広い領域で影響力を持つようになりました。データ分析に基づいた顧客心理やニーズの理解は、広告宣伝ばかりでなく、営業や製品の開発・製造、流通など、ビジネスのあらゆる面で活用されています。

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一方、マーケティングがカバーする領域が広がるにつれ、業務プロセスは複雑になってきています。そこで、マーケティング業務全体を俯瞰し、マネジメントや施策設計を担うマーケティングオペレーションの需要が高まってきています。

日本では未だ耳慣れない言葉ですが、アメリカでは大手IT企業やB2B企業を中心に導入が進んでいます。本記事ではマーケティングオペレーションを理解する第一歩として、基本的な役割を中心に説明します。

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マーケティングオペレーション (Marketing Ops)とは?

マーケティングオペレーションについて理解する前に、「オペレーション」の意味を整理しておきましょう。

「オペレーション」という言葉は、本来「働き」や「操作」「工程」などを意味します。ビジネスにおいては、「業務目標を達成するために運営・推進する手順や体制を定めること」という意味で用いられています。

具体的には、実際に施策を実行したりツールを使って作業を行ったりする通常業務とは異なり、より俯瞰的な立場から施策を立案・管理して手順を定め、リソースの最適化を行う一連の業務がオペレーション業務です。

実務におけるマーケティングオペレーションとは、マーケティング関連のオペレーション業務を担う部署や組織を指し、マーケティングオペレーションの業務そのものや業務を担う人、マーケティングオペレーションを実行するデジタルツールなどを指す場合もあります。

以上をまとめると、「マーケティングオペレーションとは、企業の全体的なマーケティング戦略を推進し、成功の可能性を高めるための人材やプロセス、テクノロジーを総称したもの」と整理できます。
 

なぜマーケティングオペレーションが必要なのか?

なぜマーケティングオペレーションが必要なのか?1

マーケティングオペレーションが求められる背景には、主に2つの要因があります。

  • マーケティングに求められる領域の拡大と他部門との連携
  • マーケティングテクノロジーの進化
     

マーケティングに求められる領域の拡大と他部門との連携

第1の要因として、マーケティングが扱う領域の拡大が挙げられます。

かつてのマーケティングは「販売を補助するもの」という位置づけで、新製品のプロモーションや、Webサイトの制作、広告運用などが主な業務でした。

しかし、インターネットの登場によって、マーケティングの役割は大きく変わりました。

今日のマーケティングは、以下の図に見られるような「ユーザーを惹きつける」ところから「関係を築く」を経て「満足させる」までの一連のプロセスを担っています。
 

なぜマーケティングオペレーションが必要なのか?2

マーケティングの業務の幅が広がるにつれ、個々のマーケティング施策の実行に当たるチームとは別個に、各施策の質やリソースの割当て、運用のされ方などを俯瞰的に評価し、管理する部署が求められるようになりました。

また、マーケティングの領域が拡大した結果、他部門との連携が不可避的になってきています。例えば、マーケティング部門の施策によって見込み客の購買意欲が高まった後は、営業との連携が必要となります。逆に、営業からの要請によって、マーケティング部門が見込み客の購買を促すコンテンツを用意する場合もあります。ビジネスによっては、マーケティングと製造や流通など他部門との協働が求められる場合も生じます。

以上のように、マーケティング部門と他部門との連携が必要となった結果、全体の生産性を向上させるための施策やリソースの最適化を行うマーケティングオペレーションの需要が高まっています。
 

マーケティングテクノロジーの進化

マーケティングオペレーションが求められる第2の要因として、マーケティングテクノロジーの進化があります。

マーケティング部門が活用する代表的なツールには、以下のものがあります。

  • 顧客との長期的な関係構築のために顧客情報を一元管理する顧客関係管理(CRM)
  • 顧客1人ひとりとのコミュニケーションを実現するマーケティングオートメーション(MA)
  • Webサイトのコンテンツ管理システム(CMS)
  • Web広告管理ツール
  • Webサイトの閲覧履歴などを把握するための解析ツール

SaaSの浸透によってデジタルツールのコストが下がり、導入のハードルも下がりました。しかし、実際の導入に当たっては、しっかりとした運用計画がなければ業務に役立ちません。

自社に必要なデジタルツールの検討、導入計画の立案、メンバーに対するオンボーディングプログラムの実施などを専門的かつ全般的に担うマーケティングオペレーションが要請されるようになったのです。
 

組織成長におけるマーケティングオペレーションの役割

組織成長におけるマーケティングオペレーションの役割

マーケティングオペレーションは、企業の全体的なマーケティング戦略を推進し、成功の可能性を高めるために求められます。ここでは、企業内においてマーケティングオペレーションがどのような役割を果たすのかを見ておきましょう。
 

組織間の連携を促す

企業はマーケティングや営業、カスタマーサービスなど、さまざまなタッチポイントで、顧客に対して一貫したコミュニケーションを通して、良好な顧客体験を提供します。

しかし、現実には部門ごとに異なるツールを使用していたり、収集しているデータを連携できないケースがあります。

このような状況下において、マーケティングオペレーションは各組織と連携し、より良い顧客体験を提供するための横断的な施策を実施します。ここでのマーケティングオペレーションの役割は、見るべき数字を整理して部門横断的にデータの受け渡しができるようにプロセスを構築することなのです。
 

成長戦略を効率的にサポートする

マーケティングオペレーションでは企業の成長戦略をサポートする役割も担います。例えば、他部門に先駆けてデジタルツールを導入し、分析・施策化に役立てることで、他部門への導入の道を開きます。マーケティングオペレーションの主導で企業全体のデジタルトランスフォーメーションを推進します。

また、マーケティングオペレーションはさまざまな顧客データを収集し分析することで「顧客ファースト」なビジネス戦略を立案します。そのため、「製品ファースト」になりがちな製造や「企業ファースト」になりがちな経営に「顧客ファースト」の視点を持ち込み、顧客中心のビジネス展開を促します。
 

説明責任を確立させる

マーケティング施策は収益に至るまでの期間が長く、成果はかならずしも当初から明確ではありません。しかし、マーケティングオペレーションがマーケティングチームの活動状況を把握していれば、必要なデータを収集・分析し、可視化し、経営陣や他部門に対する説明責任を果たせます。
 

マーケティングオペレーションに必要なスキルセット

マーケティングオペレーションの業務は、データと切り離せません。マーケティングオペレーションを担うメンバーには次の3点を中心とするスキルセットが必要となります。

  • マーケティングツールの知識
  • データ分析
  • オペレーション管理
     

マーケティングツールの知識

先述のように、マーケティング業務ではCRMを始めとした幅広いツールを利用するため、それぞれのツールの役割や特徴を理解し、使いこなせる能力が求められます。また、他部門の導入支援も行う場合には相手の知識レベルに応じて指導する能力も必要です。
 

データ分析

データ分析や仮説の洗い出しだけでなく、大量のデータからプロセス全体のボトルネックや改善インパクトを発見する能力が求められます。また、数字に表れた定量的なデータだけでなく、数字に表れない定性的な要素、例えば目的や狙い、原因、関係性などに目を向ける能力も求められます。
 

オペレーション管理

マーケティング活動から売上までの全体プロセスを設計します。施策化に際しては、他部門との連携を主導します。
 

マーケティングオペレーション導入に向けた3つのステップ

マーケティングオペレーション導入に向けた3つのステップ

マーケティングオペレーションを導入するためのステップを説明します。

  1. 目標と目的を明確化する
  2. 障壁と対処法を検討する
  3. マーケティングオペレーション構築までのロードマップを策定する
     

1. 目的と目標を明確化する

自社は何のためにマーケティングオペレーションを導入するのかを明確化します。最初の段階では自社にマーケティングオペレーションを導入したところで何ができるのかはっきりしない場合も多く、目的や目標の決定は簡単ではないかもしれません。

そのような場合は、マーケティングオペレーションの導入事例を集めて研究をしてください導入によって何ができるのか、マーケティング部門だけでなく、企業全体にどのような影響を及ぼすのか、導入によって、何がどのように改善されたのかを、他社の事例を通じて精査し自社との共通点や相違点を探ります。

事例研究が終われば、改めて自社にどのような課題があるのか、マーケティングオペレーションによって何が解決できるのかを検討しましょう。

その上で、目的と目標を設定します。目的とは「マーケティングオペレーションを通して何を達成したいか」であり、目標とは「どうしたらその目的を達成できるのか」という中間的な目印です。マーケティングオペレーションを導入する目的や目標を明確化し、自社にどのような利点があるかを検討してください。
 

2. 障壁と対処法を検討する

マーケティングオペレーションの導入に当たって障壁となるものは何かを考えます。障壁となるのは多くの場合、社内の反対、予算、プロセス、人材、テクノロジーなどです。

社内からの反対意見には、マーケティングオペレーションがなぜ必要なのか、どのようなメリットをもたらすのかを説明します。特に経営陣からの反対意見が出た場合には粘り強く説得し、承認を得てください。

プロセスの障壁となるのは、「これまでこの方法でやってきた」という担当者の抵抗です。なぜマーケティングオペレーションを導入した方がいいのかを説明し、理解を求めます。

社内にスキルを持つ人材が少ない場合は、オンボーディングプログラムを準備し、運用しながらスキルを身につけてもらいます。

社内に導入済みのテクノロジーも困難な課題です。使用しているツールが古い場合や主要テクノロジー間で統合できないような場合は、ベンダーに相談しましょう。

専門的なマーケティングオペレーションを構築するまでには時間も労力もかかります。粘り強く進めていきましょう。
 

マーケティングオペレーション構築までのロードマップを策定する

現状のリソース、テクノロジーを洗い出し、誰が何を使用して、どのような効果を上げているのかを明らかにします。これが現在地です。次に、目指すべきマーケティングオペレーションが備えているリソースやスキルセット、テクノロジーを挙げます。

両者のギャップを分析し、そこに到達するまでの役割を明確にし、専門的なマーケティングオペレーションが構築できるまでのロードマップを策定します。それぞれのポイントでは、測定可能な成果指標も合わせて設定してください。
 

組織成長を戦略的に支えるマーケティングオペレーションの導入を検討しよう

マーケティングテクノロジーの進化に伴い、マーケティング業務の領域は拡大し、他部門に及ぶ多種多様な業務を担うようになりました。その結果、同じマーケティング部門であっても業務のサイロ化が進みつつあり、マーケティングを効率化、最適化するために統括する役割が求められています。

さらに、デジタルツールの導入が進むにつれ、マーケティングが扱うデータはマーケティング部門を超え、営業や製造、流通など他部門の施策を含めた企業活動全体にも影響を持つようになっています。

今後、マーケティングオペレーションのニーズは、さらに高まることが予想されます。これからマーケティングオペレーションを導入する企業は他部署との連携を取りつつ、人材の育成を進めてください。マーケティングオペレーションの構築は、良質な顧客体験を生み出し、さらなる企業価値を生み出していくでしょう。

マーケティングオペレーションとも関連の深いレベニューオペレーションについては以下の記事でも詳しく説明しています。興味のある方はぜひ参考にしてください。

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レベニューオペレーション最新動向レポート

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元記事発行日: 2022年2月01日、最終更新日: 2023年8月23日