モバイル利用者、とりわけモバイルアプリの爆発的な増加により、市場での競争は激しさを極めています。140万というとてつもない数のアプリが、App StoreとGoogle Playの両方で販売されているような状況では、マーケターはユーザーの注目を得るために、何百、いや何千という競合企業と直接戦わなくてはなりません(参照記事はこちら:2 Billion Consumers Worldwide to Get Smart(phones)by 2016)。
eMarketerのレポートには、「アプリ市場の競争激化により、有料のインストールキャンペーンが必須になった」と説明されています。実際、今日のアプリ業界では、有料広告がマーケティングツールでかなりの割合を占め、多くの企業がユーザー獲得キャンペーンに多大なコストを費やすようになりました。
BI Intelligenceによると、米国におけるアプリのインストール広告の収益は、単独で2015年に46億ドルを超え、2019年の終わりまでに68億ドルまで増加すると見られています(参照記事はこちら:Social networks are falling over themselves to join the billion-dollar rush in mobile-app advertising)。
この記事では、これからアプリインストールの広告キャンペーンを実施し、分析、最適化するマーケターの皆さんのために、キャンペーンを始めて開始する前に知っておくべき重要なポイントをいくつかご紹介します。
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1)アプリインストールキャンペーンがオーガニックな成長を加速させる
アプリ市場のように、食うか食われるかの厳しい世界で製品を知ってもらうためには、実際のところ、オーガニック検索と有料広告の両方を利用してインストールの数を増やすほかありません。
オーガニックなインストールは主に、App Storeの画面やオーガニック検索で製品を見つけてもらうことによって得られます。つまり、関連のあるキーワードかブランド名で検索する、カテゴリ別の人気アプリのランキングを見る、App Storeにお勧めとして表示されているのを見る、などの必要があります。
一方、非オーガニック(有料広告)なインストールの獲得には、広告キャンペーンなどの積極的な宣伝活動が必要になります。特に効果が高いのが、アプリをダウンロードしてインストールすると、バーチャル通貨やその他のおまけがもらえるという、インセンティブを利用したネットワーキング手法です。
アプリストア最適化(ASO)、すなわちストアでの検索結果でアプリを上位に表示させるためのマーケティング手法では、インストールの総数が需要な要素となります。したがって、非オーガニックのインストール獲得に費用をかけることで、アプリのランキングを上げることが可能になると同時に、最終的には、オーガニックのインストールの数も増やすことができます。
実際、私たちが行った調査により、有料広告で得た1つのインストールが、平均して3つのオーガニックのインストールをもたらすことがわかっています。
要するに、オーガニックのランキングを向上させるのであれば、有料広告を製品のプロモーション計画に取り入れる必要があるのです。
2)アプリインストールキャンペーンの効果測定に落とし穴
モバイルが一大旋風を巻き起こす前は、デジタルマーケティングキャンペーンの結果をトラッキングし、調査することは難しくありませんでした。Cookieを使うだけでよかったからです(関連記事はこちら:What Are Tracking Cookies? [FAQs])。
マーケターはCookieを使用して、オンラインでユーザーを匿名で正確にトラッキングし、キャンペーンの影響を測定して、広告にどれくらいの費用を使うかをスマートに判断できました。
しかし、その後モバイル革命により事態は一変します。CookieはアプリやAppleのSafariブラウザでは(少なくともデフォルトでは)サポートされません。つまり、Cookieを使ってトラッキングできないことの方が多くなってしまったのです。
Cookieが使えないと、モバイルの世界はバラバラに分断されてしまいます。OSの違い(iOSとAndroid)もあれば、環境の違い(アプリ内とモバイルウェブ)もあるからです。しかも、これらはまったく標準化されていません。
ただ、ありがたいことに、IDを利用して点と点を正確につなぐための方法には、IDマッチング(AppleのIDFAやGoogle Advertising ID)、Google Playのリファラ―、フィンガープリンティングなど、さまざまなものが利用できます。
下の図は、IDマッチングの仕組みを表したものです。
3)二重、三重の請求に注意
現在のモバイル市場では、主に「最後のクリック」を重視するアトリビューションモデルに基づいて計測が行われます。つまり、広告主からの支払いは、インストール前の最後のクリックを得たネットワークにのみ(通常は7日間ごとにまとめて)発生します。
アトリビューション企業はこれを可能にするために、数百ものネットワークと連携することで全体図を明らかにし、コンバージョンに至る経路を正確に特定する必要があります。
そうしなければ、広告主もネットワークも、どれが最後のクリックだったのかを知る術がありません。そのため、クリックを得たネットワークは、それが最後のクリックかどうかに関わらず、すべて広告主に請求します。結果、1つのインストールに対して複数のネットワークが費用を請求し、広告主が本来の2倍または3倍も支払わなくてはならないといったことが起こります。
これを避けるには、最後のクリックを(ポストバックと呼ばれる手法によって)ネットワークにリアルタイムで知らせるための仕組みを適切にセットアップする必要があります。そうすれば、間違って請求することはなくなり、また、何らかの理由で間違って請求された場合でも、広告主は請求書とアトリビューションデータを見て、間違いにすぐに気付くことができます(そして訂正できます)。
4)どのネットワークがベストなインストールをもたらすかを調べる
アプリインストールキャンペーンによくあるのが、ネットワークからユーザーが大量に運ばれてくるものの、それらの質が低いという問題です。マーケターのユーザーベースは拡大するかもしれませんが、ユーザーの多くがアプリをまったく使っていない、あるいはアプリ内アクションを何も行っていないことがあります。
ほとんどのアプリが無料でインストールされ、アプリ内課金がなければ商業的に成功しないという形態では、これは大きな痛手です。
ビジネスを成長させるには、マーケターはどの広告ネットワークがインストールをもたらしたかだけでなく、より重要なこと、すなわち、どのネットワークから「ベストなインストール」(「ベスト」は収益が高い、エンゲージメントやリテンション率が高いなど、マーケターの目標に応じて判断します)を獲得したかを知る必要があります。
それには、ユーザーによるインストール後のアクティビティやアプリ内イベントをトラッキングし、ネットワークごとに記録していきます。その統計を出すことで、各ネットワークがもたらす価値を簡単に識別することができます。
下は、10のネットワークをARPU(ユーザーごとの平均利益)の高い順に示した例です。ネットワーク1が飛び抜けて高いことがわかります。ARPUを目標にしているマーケターは、ネットワーク1に対する予算の増加を検討する必要があるでしょう。
5)コホート分析の重要性を理解する
新しく獲得するユーザーの質を向上させたいのであれば、ユーザーの行動を理解し、どのユーザーグループをターゲットとするかを判断する必要があります。そのための最も効果的なツールが、コホート分析です。
コホート分析では、ユーザーを何らかの特徴に基づいてグループ分けし、それぞれのグループのKPI(重要業績評価指標)を時間枠ごとに測定します。リテンション分析とは対照的に、コホート分析には結果を比較するのに大きな効果を発揮するという特徴があります。
たとえば、米国(あるいは他の地域)で行われたFacebookキャンペーンで、獲得したユーザーに注目し、1日、7日間、または30日間の平均収益を調べたとします。そして、そのコホートを別の流入元からのコホートグループと比較すれば、どの流入元が最も質の高いユーザーをもたらしたかを、時間枠別に知ることができます。
また、コホート分析を使用すると、さまざまなユーザーセグメントのエンゲージメント(セッション数、訪問頻度など)やマネタイゼーション(アプリ内課金、ARPU、ARPPU、LTVなど)を比較することもできます。この情報は、今後の広告予算やターゲティングについて考える上で、計り知れないほど貴重なものです。
次のグラフは、3月にアプリをインストールした米国ユーザーのコホート分析の結果を、ネットワークごとにグループ分けして示したものです。調査した指標は、ユーザーごとのアプリ内購入数の平均です。ネットワークAとネットワークBでは、アプリ内購入の数が順調に増え、特に14日目からは急激に増加していることがわかります。
一方、ネットワークCも初期の時点で数が多少は増加していますが、14日目以降はまったく増えていません。このような場合は、ネットワークAとBの予算を拡大するとともに、ネットワークCでは14日目にリターゲティングキャンペーンを開始して、購入数が再び増加するよう促す必要があると判断することができます(関連記事はこちら:見込み客を集めるためのリターゲティング広告【入門編】)。
6)貢献度が高いのは「ラストタッチ」だけではない
消費者は製品の購入に至る過程で、複数のタッチポイントの影響を受けます。それらのタッチポイントは、検討あるいは実際に購入を決意する段階で、消費者に製品やブランドを紹介したり、購入したいと思わせるために、それぞれ重要な役割を果たしています。
たとえば、消費者があるアプリの広告をソーシャルネットワークで見かけ、その後トレーラー(アプリの宣伝のために制作された短いビデオ)を観たりモバイルゲームで遊んだりしたとします。その時点では、アプリをダウンロードしていなかったかもしれませんが、そのゲームを知り、購入したいと思ったのも、それらのタッチポイントがあったからです。
その消費者は後になって、別のネットワークでアプリのインストール広告を見つけて、そこで購入を決断するかもしれません。広告をクリックし、アプリストアに移動して、アプリをインストールした場合、最後のネットワークにだけ広告料支払うのは公平ではありません。
ラストクリックアトリビューションには、このような欠陥があるものの、現時点で標準的に使用されています。マルチタッチアトリビューションはまだ標準化されておらず、実用的でないため、支払いのための手段として考えれば、現状はラストクリックアトリビューションで満足するしかありません。
だからと言って、マルチタッチアトリビューションの価値を見過ごすべきではありません。ユーザーがアプリのインストールに至るまでの最も一般的な経路を明らかにできれば、真に貢献度の高いネットワークを識別して投資を継続することができます。
ユーザーをファネルの下の方へと促し、購入へと導いたネットワークを特定することは重要です。彼らがいなければ、購入に至らなかったユーザーが少なからずいるかもしれないからです。
下の図のシナリオでは、ネットワークCを除くとインストール数が激減しています。よって、ネットワークCの重要度が高いことがわかります。
このように、アプリ広告で何かを判断する際には、ファネルの一部ではなく全体を見て考える必要があります。たとえば、あるネットワークに対する予算をすべてカットするのであれば、それ以外のネットワークによる成果にどのような変化が現れるかを確認しなければなりません。
7)ディープリンキングを広告キャンペーンに使用する
ディープリンキングとは、URLを使用してユーザーをウェブサイトの特定のページに移動させるように、ユーザーをアプリの特定の部分に移動させるためのテクノロジーです。
ディープリンキングを使用すると、アプリのホーム画面ではなく、アプリ内で特に宣伝したい画面にユーザーを送るように、広告クリエイティブやCall-To-Action(CTA)を作成できます。そのため、ユーザーが感じる煩わしさを排除し、エンゲージメントを高めることができます。
たとえば、ホテルの予約アプリのキャンペーンで、ユーザーが現在いる場所に応じてターゲットの異なる画面を表示したいとします。サンフランシスコにいるユーザーに、近くのホテルの部屋を50%割引で提供すると広告する場合、ディープリンキングを使用して、ユーザーをアプリ内でサンフランシスコの全ホテルが表示されたセクションに移動させることができます。
他にも、eコマースのアプリで特定のシリーズの衣服を宣伝したい場合や、映画のストリーミングアプリで特定の映画を宣伝したい場合にも、この手法が使えます。
ディープリンキングを利用すれば、高度にパーソナライズされ、ターゲット化されたキャンペーンを展開できるため、コンバージョン数が増加したり、ユーザーに質の高いエクスペリエンスを提供したりできます。また、ディープリンキングにカスタムURLを使用できるため、トラッキングによる調査も可能になります。
編集メモ:この記事は、 2015年8月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Shani Rosenfelderによる元の記事はこちらからご覧いただけます。