業務の効率化や顧客接点の増加を目的として、企業におけるチャットボットの導入が盛んとなってきましたね。
導入したけれど、思うような効果が生まれずお蔵入りしてしまった・・・などの経験はありませんか?
本稿ではチャットボットの基本となる仕組みをしっかりと押さえながら、国内外の事例をおさらいし、チャットボットの作り方・活用方法ならびにチャットボットの導入を成功させる上で欠かせない視点について解説を進めていきます。
チャットボットとは?
チャットボットとは「chat(対話)」と「bot(ロボット)」の2つの単語を組み合わせた言葉で、ロボットがテキストや音声を通じた自動応答を行うプログラムを指します。
一般的には、iPhoneに搭載されている「Siri」が馴染み深いところかもしれません。
AI技術の発展とともに、チャットボットの精度が飛躍的に向上したため、顧客サポートや問い合わせ対応、予約受付などをチャットボットで行う企業が増えてきました。
チャットボットとAIの違いは?
まず大前提として、必ずしも「チャットボット=AIの活用」ではないことを知っておくと良いでしょう。
チャットボットは大きく以下の2種類に分かれます。
- 機械学習型…AIを搭載して機械学習の結果を対話に応用するシステム
- シナリオ型(AI非搭載)…定められたシナリオ通りに対話を行うシステム
利用の目的に応じて、機械学習型とシナリオ型のどちらを選択するか検討していきましょう。
【国内BtoC】チャットボット活用の成功事例
流通業を展開する「ヤマト運輸」では、LINEを使って荷物問い合わせができるチャットボットを展開しています。具体的なサービス利用の流れは以下の通りです。
- LINEで配達予定日時と配達担当店、送り状番号の下4桁を送信
- LINEの登録電話番号と送り状の電場番号が一致した場合、利用者に自動で配達予定時間を配信
- 利用者は受け取り場所や日時の変更を行うことも可能
また、チャットボットの特性を利用して「配達予定を知りたいにゃ?」といった猫語と言われる表現を用いることで好感度を上げています。
ヤマト運輸では、米Googleの会話型AIエンジン「グーグルアシスタント」と連携し、「OK Google、ヤマト運輸につないで」と呼びかけるだけで当日届く予定の荷物の個数や配達時間を音声で知らせるサービスも展開しています。
配達日時を変更したい場合も、Google Homeとの会話で変更が可能です。
テキストと音声の両面でチャットボットを活用している先進の事例と言えるでしょう。
【海外BtoC】チャットボット活用の成功事例
世界60カ国で宅配ピザチェーンを展開するドミノピザでは、2015年にTwitterでの注文受付をスタートしました。その後、Apple TVやGoogle Home、Amazon Echo、Facebook Messengerなど、さまざまなプラットフォームを活用したチャットボットの展開に力を入れています。
「いかに手軽にピザを注文できる環境を構築するか」という視点でチャットボットの活用が進められており「ピザの絵文字送信だけで、ピザを注文することができる」など、とにかくユーザーフレンドリーな設計が大成功につながったと言われています。
【国内BtoB】チャットボット活用の成功事例
システムインテグレーターのセゾン情報システムズでは、自社プロダクトのサポートサイトのトップページにチャットボットを設置し、サポートサイト利用の活性化を狙った活動を進めています。
とりわけSaaSビジネスの命運を分けると言われるオンボーディングの成否に、サポートサイトの利用率は大きく影響すると言われていますが、そのような背景があってのことでしょうか。非常に興味深いチャットボットの活用例となっています。
【海外BtoB】チャットボット活用の成功事例
イギリスのITProPortal社では、Drift社の提供するチャットボットツールを活用して、以下のような成功を納めたと語っています。
- 新規顧客15%増
- 販売サイクル33%短縮
- 見込客の獲得コスト80%削減
国内BtoB企業では、まだまだ活用が進めきれていないチャットボットですが、BtoBマーケティングにおいても目覚ましい結果を収めていることが感じ取れます。
同上のレポートでは、以下の点にも言及しています。
- BtoBの購買担当者の96%が課題に対する知見が豊富なエキスパートによるアドバイスを求めている状況で、チャットなどの対話型マーケティングに勝る手段はまずありません。
- リードからコンタクトがあった際に、コンタクトに対して5分以内に回答できるとマーケティングの成功率は上がります。5分以上経過してからのコンタクトとなった場合、その見込客とコンタクトできる確率は10分の1にまで低下してしまいます。
チャットボットを活用するための導入手順
BtoC、BtoBを問わずに成功事例が生まれてきたチャットボットの活用ですが、ここまで記事を読んでいただき、その可能性は充分に感じられたことと思います。
続いて、チャットボット導入に必要となる手順を整理していきましょう。
チャットボット活用戦略の設計と社内周知
「目的なく、あるいは目的が曖昧な状態」でチャットボットを導入しても望む効果は得られないでしょう。この点は、チャットボットも他のツール類と全く同様です。
「何を目的に、どのようなKPIを期待してチャットボットを活用するのか?」を数値ベース(見込みで構わないので)で社内共有できないことには話が始まりません。しっかりと導入の目的と目的達成に向けた戦略を描いた上で、具体的な導入に踏み出していきましょう。
「機械学習型」or「シナリオ型」の選択
冒頭でも触れた通り、チャットボットには「機械学習型」「シナリオ型」と、大きく2種類のタイプがあります。
当然、機械学習型を選択した方が、より充実したコミュニケーションを期待できるわけですが、機械学習型を選択した場合の難しい点は学習データ不足にあります。
大規模な学習データが集まらないとコミュニケーションの精度が上がらないため、チャットボットに膨大なトラフィックが集まることが必要となります。
そのため、特にBtoB領域では機械学習型の導入が難しいと言われている部分もあります。一方でMAデータとチャットボットデータを組み合わせることで、マーケティングの精度が飛躍的に向上すると期待されていることもあり、機械学習型のチャットボット導入事例も決して少なくはありません。
プラットフォームの選択
LINE@やFacebook Messengerの活用が増えてきていますが、プラットフォームは他にもいろいろと存在します。その大元となるのは以下の3つです。
- SNS
- Webサイト
- アプリ
どのプラットフォームが自社のビジネスに適しているかを見極めることが必要となりますので、それぞれのプラットフォームが持つメリットを解説します。
プラットフォーム | メリット |
---|---|
SNS | ・ユーザーが使い慣れたSNS画面で利用できること ・ユーザーがWebサイトを離れていてもアプローチできること |
Webサイト | ・ユーザー側はインストールや登録不要で手軽に利用できる ・企業側は購買見込みの高い訪問者にアプローチできる |
アプリ | ・音声対応など独自の仕掛けが可能で、チャットボットのエンターテイメント性を高めることできる |
チャットボットシステムの「スクラッチ開発」or「チャットボット構築サービスの活用」の選択
自社オリジナルの仕掛けにこだわるのならばスクラッチ開発が求められますが、スピーディかつ低コストでチャットボット活用をスタートするならばチャットボット構築サービスを利用するべきでしょう。
昨今では、非常に高機能なチャットボット構築サービスが多数展開されています。
無料で使えるチャットボット構築サービス
無料で利用できるチャットボット構築サービスをご紹介します。
Hubspot
【特徴】
- 無料で利用可能なチャットボット構築サービスを提供
- 「有望なリードの見極め」「ミーティングの予約」「問い合わせへの回答」「多数の顧客との1対1コミュニケーション」を可能
- Hubspotを利用することで、さまざまなマーケティングタスクの自動化が可能
Repl-AI(レプルAI)
【特徴】
- プログラミング不要で誰でもチャットボットを構築可能
- 高度な受け答えが可能
- FacebookやLINEメッセンジャーなど、様々なプラットフォームに対応可能
有料のチャットボット構築サービス
無料にはない多くの機能が備わっている有料チャットボット構築サービスをご紹介します。
hachidori
【特徴】
- すでに7,000を超えるチャットボットが運用中
- 「業務負荷30%軽減」「問い合わせ対応時間を20%軽減」「サービスの不成約を80%削減」など、業種業界の枠を超えた豊富な実績
Zeals(ジールス)
【特徴】
- エンタープライズの導入社数が200社超え
- コンバージョン獲得に特化したチャットボット
まとめ
ここまでご覧いただいて、チャットボットが持つ高いポテンシャルを感じ取っていただけたのではないでしょうか?
米国ITアドバイザリー企業のガートナー社は「2018年に提供が開始されたチャットボットの40%は、2020年までに廃止されるだろう」というネガティブかつ大胆な予測を打ち出しています。
ガートナー社は、その理由を「チャットボットが過度に期待されていること」であるとしています。すなわち、チャットボットを導入すると「24時間365日顧客対応ができる」「顧客の問い合わせに対して、スピーディに回答できる」など、多くの導入メリットが期待できますが、一方でデメリットがしっかりと検討されていないという話なのです。
そして、デメリットとして捉えるべきポイントは「顧客中心主義の阻害」につながる事項であるとも語っています。例として「何度聞いても、”質問が理解できません”と返されること」などの事象が挙げられるでしょう。