マーケティングに心理学を取り入れてコンバージョンを増やす5つの方法

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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私は先週、六本木にあるピアノバーへ行きました。そのバーのピアノ演奏は実に素晴らしいものでしたが、私はそれよりも、演奏者たちがあまりに商売上手であることに驚きを隠せませんでした。

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そのショーの演奏は、男性と女性によるデュエットだったのですが、その二人がショーのあいだに男女間で競争のようなものを始めたのです。まず、女性の演奏者がマイクに向かって「女性の皆さん、今夜はテイラースイフトを弾きたい気分だけどリクエストいただけるかしら?」と叫びました。1人の女性客がテイラースイフトの曲をリクエストしました。すると今度は男性演奏者がこう言いました。「少し女子高生か女子大生っぽくありませんか?男性の皆さん、マルーン5の曲なんてどうです?」

このショーで私が最もすごいと感じたのは、この二人が心理ゲームによってお金をいとも簡単に集めたことです。男女のあいだでライバル心を燃やすきっかけを作り、自分たちが意図したアクションを観客に見事に取らせています。

もちろん、男性と女性とで優劣を争おうなどとは誰も考えていません。多少お酒が入っているとはいえ、みな立派な大人ですから、本気でライバル心を燃やす人はいなかったはずです。ただ、この「戦いごっこ」が楽しそうだったので参加してみたかったのでしょう。客席を盛り上げるために、このようなやり方もアリだと思います。

心理学はマーケティングストラテジーのあらゆる要素に応用が可能ですが、その正しい方法については、まだ十分な説明がなされていません。この記事では、心理学をコンバージョンの要素に取り入れ、ランディングページをどのように変えて最適化すればコンバージョン率が向上し、オーディエンスに喜んでもらえるかについて詳しく説明したいと思います。

過去の体験の法則

潜在見込み客による製品やサービスへの反応は、その企業を潜在見込み客が個人としてどのように見ているかを、企業が適切に理解し行動しているかどうかで大きく変わります。ある企業について考えるとき、多くの人はまず自分が過去にその企業とどう関わったかを思い出すことから始めます。

つまり、その企業に関する過去の体験が、(それがビジネス上のものであろうとなかろうと)その人の現在の行動に大きく影響します。これを「過去の体験の法則」と言います。

このように説明すると、見込み客を喜ばせるために、過去の体験とは異なる新しい何かを提供する必要があると考える方も多いかもしれませんが、そうとも限りません。Fab.comが自社のウェブサイトで「買い物かごに入れる」ボタンに関してテストを行ったケースを例に挙げて説明します。

もともとFab.comでは、「買い物かごに入れる」のボタンにテキストを入れず、買い物かごのイラストにプラス(+)のマークを付けたデザインを使用していした。そこに、「買い物かごに入れる」のテキストが入った一般的なボタン(テスト1)と、「買い物かご」とだけテキストが入ったボタン(テスト2)の2つのバージョンを追加してテストを行いました。その結果、テスト2のクリックスルー率(CTR)が15%だけ向上したのに対し、テスト1のCTAは49%も上昇しました。このことから、買い物かごのイラストを使用した最初のボタンは、デザインは良いけれども、クリックを促すためにはあまり機能していなかったことがわかります。

その理由は、消費者が「買い物かごに入れる」と書かれているボタンに慣れており、デザインを変えると混乱するためと考えられます。消費者の予想を裏切ると、(それがポジティブな効果を狙ったものであっても)CTRやコンバージョン率にマイナスの影響を与える可能性があるのです。このように、デザインを重視して決断したことが、消費者の心理によって予期しない行動を招くケースは多々あります。

このような消費者心理を理解し、それをマーケティングストラテジーに活かすことは決して簡単ではありません。消費者の反応も人それぞれですが、ここでご紹介したようなテストを行うことで、ターゲットとする消費者の特性を徐々に理解し、何をどのように変えればパフォーマンスが向上するかがわかってくると思います。

喜びと苦しみの心理学

マーケティングにおいて非常に重要なのは、カスタマーについて理解することです。企業が顧客中心に物事を考えていることを簡単にアピールするために、ウェブサイトでカスタマーの側のメリットを、にこやかな顔写真と一緒に表示するという方法があります。

そうすることで、オーディエンスは自分たちが何に喜び、どのようなものを選択し、それをどのように感じるかを、企業が正しく理解していると思って安らいだ気持ちになります。

笑顔の写真だけではありません。愛らしい動物、明るい色、顧客からの称賛など、潜在見込み客を喜ばせるための要素はほかにもたくさんあります。ですが、実はこういった喜ばしいものよりも、見る側に悩みを突き付ける方が、効果が高くなることもあります。

「苦しみの心理学」は、すべての苦しみを取り除くことができるときに、喜びの大きさは最高潮に達する、という考えに基づいています。もちろん、ランディングページに悲惨な画像を表示して潜在見込み客を怖がらせるというのではありません。その解決策をオーディエンスに提示しなくては効果が出ません。

たとえば、多くの人が直面する悩みをランディングページで紹介し、同時にそれを和らげる方法を説明すると、相手の悩みを理解していることや、力になりたいという気持ちを示すことができ、それによって企業は解決方法を探している潜在見込み客の信頼を得ることができます。

「痛いところを突く」というのとは少し違うかもしれませんが、誰かの人生を変えるほど効果的なソリューションを実際に提供できるのであれば、オーディエンスにこのようなやり方で希望を与えることは、道徳的にも間違った方法ではないと思います。ランディングページを作成するヒントについて詳しく知りたい方は、HubSpotブログの記事、「Don't Let These 8 Landing Page Design Mistakes Haunt Your Business」をご覧ください。

損得の勘定の心理学

損得の勘定とは、苦労してまでそれを手に入れる価値があるかどうか、品定めするプロセスを指します。つまり、eBookやウェビナーなどのオファーが、Eメールの送信やアンケートの回答といった手間をかけてまで手に入れる価値があるかを考えることです。

Wealthfrontで製品開発担当副社長を務めるElliot Shmukler氏は、顧客の負担を軽減することの重要性を説いています。企業のウェブサイトを訪問した人に対しては、できる限り簡単に次のアクションに進めるよう、CTAボタンのサイズを大きくしたり、フォームのフィールドの数を減らしたり、フィールドに既知の情報をあらかじめ入力しておいたり、チェックアウトに必要なページ数を減らしたりするなどを考える必要があると説明しています。

そうすることで、購入の妨げとなる精神的負担を軽減することができます。たとえば、Expediaは2010年に、支払い情報を入力するページで2パターンのフォームを用意してテストを行いました。

そのテストで、「会社名」のフィールドを削除したところ、収益が1,200万ドルも増加したそうです。信じられますか? フィールドを1つ減らしただけで、これほど大きな違いが出たのです。

仲間意識を持たせる

巨大企業のなかには、顧客が「共通の敵」と思う何かを作り上げることで、自社への忠誠心を煽るのが上手な企業があります。たとえば非営利団体や、人権保護のキャンペーンに参加する人たちの情熱を考えれば、集団で何かと戦うことの力強さを理解できると思います。

B2CやB2Bの企業でも、これと似た仲間意識を育てているケースがあります。たとえばアップルとマイクロソフトはその最も顕著な例と言えます。この2社のライバル関係には相当に長い歴史があり、両社が人材を採用する際、応募者にどちらを支持するか質問しないのが不思議なくらいです。

冒頭で紹介したピアノの演奏者の話と同じように、アップルとマイクロソフトも支持者間のユーモラスな争いを巧妙に煽っています。そうすることで消費者のロイヤリティを長期的に高め、アップセルを促しているのです。

期待を持たせる

最後に、簡単そうに思えて意外に難しいことについて説明します。オーディエンスが賛同して首を縦に振らずにはいられないようなコンテンツを書くと効果が高くなります。オーディエンスに何らかの期待を持たせるには、オーディエンスへの共感を示すこと、そして楽観的なコンテンツを書くことが必要です。

たとえば、仮に運転免許センターが「順番待ちの長い列に並ぶのは大変なので、改善のための方法を検討します」と発表したとすると、運転免許センターは列に並ぶ人たちの不満に理解を示し、問題を解決すると断言したことになります。すると、利用者は期待が現実へと変わることに喜びを感じます。

潜在見込み客の期待を徐々に高めることができれば、彼らの意思を購入へと少しずつ近づけることができます。潜在見込み客の注意を惹き、共感を示し、悩みを解決できると断言すれば、潜在見込み客をセールスファネルの下の方へ着実に移動させることができ、セールストークなしで顧客化することさえできます。

マーケティングストラテジーの各要素に心理学的な仕掛けを用意することで、ランディングページでのオーディエンスの反応を改善することができます。潜在的見込み客が、ランディングページで目にするものに対しどのように感じるかを理解することは、コンバージョン率を上げたり、顧客に長期的なソリューションを提供したりするうえで非常に重要です。

この記事では、コンバージョン率を最適化し、カスタマーを喜ばせるためにどうすればよいかを説明しました。インバウントマーケティングのトレンドについて、今年のまとめと来年の展望をご覧になりたい方は、下の画像をクリックしてHubSpotによる無料のeBookをダウンロードしてください。

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編集メモ:この記事は、2014年12月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Jeremy Ellensによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

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