Webコンテンツに掲載するフリー画像や音源を探していて、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」や「CC」という表記を目にしたことがある方は多いでしょう。
通常の作品は著作権で保護されており、利用に際しては作者に許諾を取る必要があります。しかし、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品は、作者が自由な利用を認めており、FlickrやWikipedia、YouTubeを始めとしたサービスを通じて提供されています。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品の利用には、条件があります。例えば、非営利利用の可否や、改変禁止などの条件がアイコンによって示されているため、利用者はアイコンの持つ意味を理解しておくことが必要です。
本記事では、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについてわかりやすく説明するとともに、アイコンの見方や利用の仕方をご紹介します。
マーケターが知っておくべき著作権
クリエイティブ・コモンズとは?
クリエイティブ・コモンズとは、著作権を守りつつ、作品の利用を促進することを目的として活動する国際的な非営利団体であり、その団体が行うプロジェクト名を指すこともあります。
クリエイティブ・コモンズは2001年、アメリカの法学者ローレンス・レッシングを中心に、インターネット時代に誰もが自由に作品を共有でき、なおかつ作者の権利も保証することを目的として創設されました。以来、クリエイティブ・コモンズは各国に設置され、それぞれの国の法律にもとづきつつ、作品の自由な流通を後押ししています。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは?
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、自らの作品(写真、動画、音楽など)を大勢の人に利用してほしいと考える作者が、「条件を守れば著作物を自由に使って良い」という意思表示を行うためのツールです。
記事や画像、動画、音楽などの著作物は、著作権法 によって保護されており、他者による無断利用や改変は著作権の侵害となります。
しかし、インターネット時代を迎え、多くの人がコンテンツ作成に関与するようになり、他人の作品を自分のコンテンツに取り入れたいと考える人も増えてきました。また、作者によっては著作権を保持したまま、作品を多くの人とシェアしたいと考える人も増えています。
このような動向をかんがみて考案されたのがクリエイティブ・コモンズ・ライセンスです。著作権者は円滑に利用条件を明示でき、利用者も利用許諾申請などの手続きを踏むことなく、条件の範囲内で自由に作品を共有できるようになりました。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの活用事例
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの代表的な活用事例をご紹介します。
【Wikipedia】
オンライン百科事典のWikipediaは、2009年からクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用しています。また、Wikipediaの姉妹プロジェクトであるWikimediaでは、誰でも自由に利用できる画像や動画、音声など5,800万点がアップロードされています。
【YouTube】
動画共有サービスのYouTubeでは、投稿者は、希望する利用条件に応じたクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを適用し、動画をアップロードできます。一方で、ユーザーはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスが適用されている動画を検索し、条件に応じた再利用や編集を行えます。
【Flickr】
Flickrは米Yahoo!が提供するオンライン写真共有サービスで、プロ・アマ問わず世界中のカメラマンが利用しています。Flickrの特長は、写真公開時にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを設定できることです。
投稿者は希望する利用方法または利用禁止を設定します。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスには著作権がない?
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品には「著作権がない」と誤解されることがあります。しかし、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの設定と著作権の放棄は、イコールではありません。ここでは、著作権とクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの関係を整理しておきましょう。
著作権の保護期間は、原則として著作物の創作の時に始まり、著作者の死後70年を経過するまでの間、存続します(著作権法第51条)。保護期間経過後は誰でも自由に利用できる「パブリック・ドメイン(社会の共有財産)」となります。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは:(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、著作権で保護されている作品と、パブリック・ドメインの中間に位置する権利表示です。作者は希望する利用条件を設定できるため、著作権法よりも自由な条件で、自分の作品を公開できるようになっています。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは各国の著作権法にもとづいて運用されており、著作権を維持しながらも、より柔軟に著作物が利用されることを目指しています。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの種類と見方
ここからは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの条件を示す4種類のアイコンと、その意味をご紹介します。
【クリエイティブ・コモンズの4種類のアイコン】
6種類のクリエイティブ・コモンズ・ライセンス
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは6種類あり、先述した4種類のアイコンを組み合わせて示されます。
「CC0」ライセンス
上記のライセンスのほかに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにはCC0と呼ばれる、「いかなる権利も保有しない」というライセンスがあります。
CC0は、作者が作品に対するあらゆる権利を放棄し、パブリック・ドメインにすることを可能にするライセンスです。CC0が設定された作品は、作品のクレジットを表示しなくても、改変、再利用が可能で、営利目的の利用もできます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの画像や音源、動画の探し方
ここからは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが設定された画像や音源、動画の探し方をご紹介します。
Openverseで探す
Openverse(旧 CC Search)には、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが設定された作品が集められています。検索窓のドロップメニューから「All Content(すべてのコンテンツ)」「Images(画像)」「Audio(音楽)」を選んで検索します。
右サイドバーの[商用利用/非商用利用]やクリエイティブ・コモンズ・ライセンスでフィルターをかけて、絞り込むことができます。例えば、商用でクレジットなしで利用できるものを探したい場合は、[use commercially][public domain][CC0]にチェックを入れて探します。
YouTubeで探す
動画を探したい場合はYouTubeを利用します。
検索ボックスにキーワードに続いて「,creative commons」を入力し検索すると、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが設定された動画が表示されます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス作品の使い方
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが設定された作品は、一定の条件のもと無料で自由に利用できる一方で、作品に設定されたライセンスの遵守が求められます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを確認する
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを設定した作品には、作者が希望する利用条件が設定されています。アイコンを確認し、ライセンスに従って利用しましょう。
「表示」~クレジットの書き方
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが設定された作品では、CC0を除き、作者のクレジットの表示が求められています。
クレジットには以下の点を記載します。
- 元の作品に著作権表示がある場合は、著作権表示(© 作者名 公表年)
- 元の作品に著作権表示がない場合は、作者名、タイトル(あれば)、ライセンス情報に関するページのURL
クレジットには特に決まった書き方はありませんが、次のように表記するのが一般的です。
- 「作品の表題」(作品の掲載ページへのリンク)
- by「作者名」(作者のページへのリンク)
- クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスのページへのリンク)
【クレジット表記の例】
"Lauterbrunnen Valley" by Kosala Bandara is licensed under CC BY 2.0.
「NC」(非営利)ライセンスはビジネス利用できない?
「NC」(非営利)ライセンスは、非営利目的でしか利用できないという意味ではなく、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品として、営利目的では利用できない」という意味です。そのため、NCの作品を商用利用する場合は、作者に連絡して利用許諾を申請しましょう。ただし、作者から利用料を求められる可能性があります。
クリエイティブ・コモンズについて正しく理解しよう
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは著作権を保持しながら他人に自由な利用を許可するためのルールです。画像や動画、音源にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを設定することで用途の幅が広がり、より高い価値を持ったコンテンツの提供が可能になります。同時に、良質な画像や動画、音源の流通を促進することにもなるのです。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの付いた著作物は、各ライセンスの範囲内で自由に利用できます。ライセンスが定めるアイコンの意味と組み合わせを正しく理解し、積極的に活用していきましょう。