写真やイラスト、音楽、動画といったコンテンツには、通常、自動的に著作権が付与されます。他社の著作物を自社Webサイトなどに利用する場合は、コンテンツの著者の許可が必要です。しかし、著作権のないコンテンツも存在することをご存じでしょうか。
著作権がなく、誰でも自由に利用できるものとして、「パブリックドメイン」があります。無料で使えて加工・改変もできる便利なものですが、ルールを守って正しく利用することが大切です。
この記事では、パブリックドメインの概要や、Web上のコンテンツを安全に利用するための注意点などを詳しく解説します。
マーケターが知っておくべき著作権
パブリックドメインとは
パブリックドメインとは、画像・音楽・映像・絵画・小説などの知的財産の著作権がなくなり、誰でも自由に使える状態のことをいいます。
通常、絵や音楽、写真などのコンテンツには著作権があり、自社サイトなどに使用する際には著者の許可が必要です。しかし、パブリックドメインは著作権フリーで、個人利用・商用利用に関係なく自由に使えます。
例えば、青空文庫は著作権の消失した小説を集めた電子図書館です。また、青空文庫で公開されている作品は誰でも自由に閲覧やコピーができます。メトロポリタン美術館では、ゴッホやフェルメール、葛飾北斎などの有名絵画もパブリックドメインとして公開されています。
パブリックドメインになる条件
著作物がパブリックドメインになるためには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
著作権の保護期間が過ぎている
著作権法第51条では、著作の保護期間は著作者が作品を生み出してから死後 70 年としています。この期間が過ぎると著作物はパブリックドメインとなります。
70年は著者の死亡した年の翌年から起算されるため、1970年に著者が死亡した場合、1971年1月1日から70年後の2041年1月1日以降であればパブリックドメインとして利用可能です。
著者が権利を放棄する
著者は自身の作品に対する著作権を放棄できます。その場合は誰も著作権を持っていないため、パブリックドメインとなります。
ただし、著者が明確に権利を主張していない作品にも、著作権は存在する点に注意が必要です。作品を利用する際は「著者が権利放棄を明言しているか」を確認しましょう。
相続人が不在である
著作権は財産権の性質を持つため、相続の対象です。しかし、著者の死亡後に誰もその権利を相続しなかった場合、著作権は消滅します。
また、企業や組織など団体が倒産し、著作権の相続手続きをしなかった場合にもパブリックドメインとなります。
参考:著作権法第六十二条「相続人の不存在の場合等における著作権の消滅」
パブリックドメインと混同しやすい言葉
ここでは、パブリックドメインと似た言葉として、次の3点を紹介します。
- フリー素材
- ロイヤリティフリー
- クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
これらの意味をパブリックドメインと混同して利用してしまうと、著作権侵害や規約違反となる可能性もあります。それぞれの利用方法とあわせて、意味を理解しておきましょう。
フリー素材
フリー素材とは、文字通り無料で利用できるイラストや画像、音楽などの素材のことです。インターネット上で配布されているフリー素材は、「利用規約で許可している範囲であれば無料で利用できる」という意味合いの場合がほとんどです。
個人利用のみ許可、加工は不可、利用する場合はクレジット表記が必要など、サイトにより利用規約は異なります。定められた範囲を超えた改変・利用などは著作権侵害となる可能性があるため、注意が必要です。
また、フリー素材サイトからダウンロードした素材が著作権を侵害していた場合、著作権侵害の責任を問われるのはダウンロードした側です。著作権に対するスタンスはサイトによって異なるため、利用規約を確認してから使用しましょう。
ロイヤリティフリー
ロイヤリティフリーとは、使用料金(ロイヤリティ)を払えば、使用許諾の範囲で何度でも使用できる素材のことです。一度使用料を払えば都度の支払いは不要のため、ロイヤリティフリーと呼ばれます。
一定の範囲内で使用を許可されたものに過ぎず、著作権は著者にあります。そのため、パブリックドメインだと思って使わないようにしましょう。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)とは、著者が「この条件を守れば自分の作品を自由に使って構わない」という意思表示をするための著作権ルールです。CCライセンスの作品は、ライセンス条件の範囲内での改変や利用ができます。
CCライセンスには次の4つの条件を組み合わせ、合計6種類の条件での意思表示が可能です。
【CCライセンスの種類】
- 表示:作品のクレジットを表示すること
- 非営利:営利目的での利用をしないこと
- 改変禁止:元の作品を改変しないこと
- 継承:元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること
【CCライセンスの組み合わせ】
- 表示
- 表示・継承
- 表示・改変禁止
- 表示・非営利
- 表示・非営利・継承
- 表示・非営利・改変禁止
参考:クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは|クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
CCライセンスがついた作品を利用する場合は、ライセンスの種類とルールを確認しておきましょう。
パブリックドメインの画像を検索できるサイト3選
インターネット上の素材を利用するためには、パブリックドメインを掲載しているサイトで探すと安心です。ここでは、パブリックドメインの画像を検索できるサイトを3つご紹介します。
1. Pixabay
出典:Pixabay
Pixabayは、2,700万点以上の著作権フリー画像・映像を検索できるサイトです。自由に素材をダウンロードでき、個人利用・商用利用にかかわらず無料で利用できます。
ただし、素材を改変・加工しない状態での再販、特定の人物を攻撃するような描写などは禁止されています。利用する前には利用規約を確認するようにしてください。
2. パブリックドメインQ
出典:パブリックドメインQ
パブリックドメインQは、カラフルな写真・イラスト・絵画などのパブリックドメインを扱う素材サイトです。このサイトで紹介している素材は、全て著作権保護期間が終了、または著作権放棄が表明された作品のため、安心して利用できます。
それぞれの素材ページには3択クイズがあり、正解するとダウンロードできる仕様です。
3. パブリックドメインR
出典:パブリックドメインR
パブリックドメインRは、モノクロの写真やイラスト、絵画を取り扱う画像掲載サイトで、運営元はパブリックドメインQと同様です。
各素材のページには、作品の公開時期や著作権が消滅した時期などの情報が記載されています。パブリックドメインになった時期が明記されているため、著作権侵害の心配をせずに利用できる点がメリットです。
パブリックドメインを扱う際の注意点
著作権フリーで自由に利用でき、便利なパブリックドメインですが、扱う際には次の4点に注意しましょう。
1. 二次的著作は新たな著作権が発生する
二次的著作とは、パブリックドメインを利用して新たに作られた作品のことです。二次的著作には新たな著者が存在するため、著作権があります。
このような作品は二次的著作の著者の死後70年まで保護されるため、パブリックドメインにはなりません。利用する際には事前に十分な確認が必要です。
2. 著作者人格権は消滅しない
著作者人格権とは、著者の人格的な利益を守るための権利のことで、著作者の意に反していたり、人格を侵害していたりする表現や加工、改変を禁止するものです。これは著者の死後70年を経過していても消滅しません。
そのため、パブリックドメインの作品でも、著者への中傷にあたる悪質な改変などは、人格権の侵害になる可能性があります。
3. 著作権が切れたばかりのパブリックドメインは相続状況を確認する
著作権の消滅からあまり時間が経っていないパブリックドメインの場合、著作権を相続した人物がいる可能性があります。そのため、パブリックドメインだと思い込み利用すると著作権侵害となるかもしれません。
こうした作品を利用する際は、サイト運営者や事務局などに問い合わせ、「本当にパブリックドメインなのか」を確認することが重要です。判断が難しい場合は、あえて使わないことも検討しましょう。気づかず著作権違反にならないよう注意してください。
4. 海外著作物は保護期間の特例を確認する
海外の著作物を日本国内で使う場合、著作権保護期間は日本の仕組みが適用されますが、特例の対象となるケースもあります。
例えば、メキシコの著作権保護期間は著者の死後100年です。しかし、メキシコ人作家の作品を日本国内で利用する際は、日本の「死後70年」が適用されます。
ただし、国によっては保護期間の戦時加算が適用される場合もあり、通常の保護期間に戦争期間の実日数が加算されます。例えば、アメリカ人作家の作品の場合、戦時加算として3,794日追加されます。したがって、著作権の保護期間は「死後70日+約10年5か月」です。
戦時加算の日数は国により異なるため、海外の作品を利用する場合は確認しておきましょう。
パブリックドメインを正しく理解したうえで活用しよう
パブリックドメインは著作権に制限されず、誰でも自由に商用利用ができる便利なものです。しかし、フリー素材やロイヤリティフリーなど混同されがちな言葉も多いので注意が必要です。それぞれの違いを理解して適切な方法で利用しましょう。