インターネット上には日々、多くの情報がアップロードされています。しかし、無料で公開されている情報だからといって、自社のメディアで勝手に利用できるわけではありません。
インターネット上の情報にも、紙媒体の情報と同じように著作権が存在します。他者のコンテンツを無断利用したことでトラブルになるケースもあるため、自社メディアに他者のコンテンツを掲載する際は十分に注意しましょう。ルールを守ったメディア運営は、企業の信頼性を守ることにもつながります。
この記事では、メディア運営で守るべき引用ルールについて、詳しく解説しています。
マーケターが知っておくべき著作権
引用ルールとは?
引用とは著作権法上の規約のひとつであり、一定の例外的な場合であれば著作者の許諾なしに著作物を利用できる権利のことです。「一定の例外的な場合」について、文化庁は次のように定義しています。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
出典:著作物が自由に使える場合
この条件に該当しない場合は、引用が行えず、著作権侵害に当たる可能性があります。引用を行う際は、引用する必然性を吟味して、ルールに則った方法での掲載が必要です。
引用元と引用先の文章が主従関係となることが必要であり、あくまで主張を裏付けるための根拠として使うことが大切です。
引用ルールを守るべき2つの理由
ここでは、引用ルールを守るべき理由を2つ紹介します。
法律やコンプライアンス上の理由
引用ルールを守らないと、法律やコンプライアンス違反になる可能性があります。例えば、民事上では、著作権に違反すると権利者から次のような請求を受けることがあります。
著作権侵害には民事だけでなく刑事罰もあり、警察や検察を通して刑事告訴されることもありえます。著作権の侵害は、 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金となるケースもあるため、守ることが必要です。
参考: 著作物を無断で使うと?|公益社団法人著作権情報センター
SEO上の理由
引用ルールが正しく守られていないと、Googleから重複コンテンツとみなされてしまうこともあります。重複コンテンツは、SEO上のペナルティを受けることもあり、サイト全体の評価の低下につながります。
Googleはコンテンツの独自性を重要視しているため、SEOの観点でも引用ルールを守ることは大切です。
著作権を守るための引用ルールのポイント
著作権を守ったメディア運営を行うためには、引用ルールのポイントを押さえて運営チーム全体で共有することが大切です。ここでは、著作権を守るための引用ルールのポイントを紹介します。
引用であることを明記する
著作物を引用する際は、読者に一目で引用であるとわかるように明記が必要です。一般的には、引用箇所をダブルクォーテーションや鍵括弧でくくり、直後に著作物のタイトルや発行年などを記載します。
出典:著作物タイトルや発行年
引用する文章に修正を加えない
他者の著作物を引用する際は、文章に修正を加えてはいけません。これは著作者の同一性保持権を保つためにも重要です。同一性保持権とは、自分の著作物の内容を自分の意に反して改変されない権利を指します。
参考: 著作者にはどんな権利がある?|公益社団法人著作権情報センター
引用する際は、文章の改変はもちろんのこと、句読点の変更や削除も厳禁です。原文のまま引用しましょう。
一次情報を引用元にする
他者の著作物を引用する際は、一次情報を引用しましょう。一次情報をもとにしてまとめられた記事が、必ずしも引用ルールを守っているとは限らないからです。万が一、引用した内容が法律違反を犯していた場合、連鎖的に引用した自社サイトも違法となってしまうケースもあります。
媒体ごとの引用ルール・出典元の書き方
引用ルールは、利用する媒体や出典元によって書き方が変わります。ここでは、媒体や出典ごとの引用ルールを紹介します。
Webサイトのコンテンツを引用する場合
Webサイトには、文章や画像、動画など、さまざまなコンテンツがあります。各コンテンツの種類別に引用ルールを紹介するので、参考にしてください。
文章の引用ルール
Web上の文章を引用する際には、引用タグを利用して検索エンジンにコピーコンテンツではないことを認識させます。引用タグは、該当箇所をblockquoteタグで囲って使用します。具体的には、次のように設定すると良いでしょう。
<blockquote>ここに引用文を記載</blockquote>
引用元のサイト名やURL、必要に応じて基準にした日付も明記して、読者も一目で引用箇所がわかるように記載することが大切です。
画像・動画の引用ルール
画像や動画に関しても一般的な引用ルールに則った引用が必要です。街中で撮影した写真や動画は、肖像権に気を付けましょう。
図の引用ルール
他者の記事などで紹介されている図についても、引用元の記載が必要です。文章と同様、図の一部改変なども行わないようにしましょう。ただし、図の作成に用いられたデータについては、著作物には該当しません。
したがって、公開されているデータをもとに、自社で新たに図やグラフを作成する分には、引用元の掲載は不要といえます。しかし、作成した図やグラフの信憑性を持たせるためにも、データ元の記載がおすすめです。
SNSの投稿を引用する場合
自社メディアにSNSのつぶやきを掲載することは問題ありません。これは、SNSの規約で他のWebページでの投稿が認められているからです。例えば、Twitterの利用規約では、つぶやきの著作権について、次のように定められています。
ユーザーが本サービスを介して送信、投稿、送信またはそれ以外で閲覧可能としたコンテンツに関して、Twitter、またはその他の企業、組織もしくは個人は、ユーザーに報酬を支払うことなく(ユーザーは、ユーザーによる本サービスの利用がコンテンツおよびコンテンツに関する権利の許諾に対する十分な対価であることに同意するものとします)、当該コンテンツを上記のように追加的に使用します。
出典:サービス利用規約
ただし、ユーザーがプロフィールやつぶやきの中で「転載禁止」としている場合は、気持ちに配慮して転載しないほうが良いでしょう。ルール違反をしていないとはいえ、ユーザーが気持ちをないがしろにされたと感じ、トラブルに発展するケースも考えられます。
また、著作権を侵害しているユーザーのつぶやきを引用した場合は、連鎖的に著作権の侵害に当たるため注意が必要です。
書籍や論文を引用する場合
書籍や論文を引用する場合は、タイトルや著者名、発行年やページ数を記載するようにしましょう。引用部分がページをまたぐような場合には、 p10-p11のようにして該当箇所をわかりやすく記載します。
また、著作者が複数いるケースでは、2人の場合は両名とも記載し、3人以上の際には〇〇他と記載するのが一般的です。
引用ルールを守って著作権を侵害しないメディア運営を
引用ルールを守ることは、民事上や刑事上のペナルティを受けないためだけでなく、企業の社会的信用を保つためにも大切です。引用ルールはインターネットの情報や画像など、種類によっても変わるので注意しましょう。
社内で引用に関するマニュアルを作成するなどして、会社全体で著作権を侵害しない運営を心がけることが大切です。