EdTechとは?注目される背景&国内外の活用事例まとめ

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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世界中でEdTech(エドテック)による教育イノベーションの流れが広まっています。

EdTechとは?注目される背景と特徴、国内外の活用事例をご紹介

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EdTechとは、Education(教育)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語であり、テクノロジーの力で教育に変革をもたらすサービスや技法のことです。

EdTech関連サービスの多くは、インターネットが利用できる場所であれば誰もが良質な教材へアクセスできます。また、AIとビッグデータの力により、教科横断・文理融合学習や学習プログラムのパーソナライズ化を実現し、世の中を変革する”チェンジ・メイカー”の資質である創造的な課題発見力と解決力を育みます。

本記事では、EdTechの特徴や注目される背景、国内外の活用事例を解説します。

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    EdTech(エドテック)の定義と市場規模

    EdTech(エドテック)の定義と市場規模1

    EdTechとは、EducationとTechnologyをかけ合わせた造語です。EdTechには、教育分野にイノベーションを起こすビジネスや企業まで含む解釈がある中、経済産業省は「テクノロジーを活用して教育に変革をもたらすサービス・技法、またサービス・技法を構成する要素テクノロジーそのもの」と定義しています。
     

    EdTechの市場規模

    EdTech(エドテック)の定義と市場規模2

    独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2025年までにEdTechの世界市場規模は38兆円に到達すると推測されています。一方、国内の市場規模は少子化の影響で横ばいです。しかし、経済産業省による「『未来の教室』とEdTech研究会」の設立や「GIGAスクール構想」の一環として小中学校でパソコンやタブレット端末を1人1台配布するなど、EdTechに関連する取り組みが進められています。
     

    EdTechで解決が期待される課題

    EdTechは社会や企業における様々な課題を解決します。ここでは、EdTechで解決が期待される3つの課題を紹介します。
     

    1.教育格差の解消

    「教育格差」(ちくま新書)を著した教育社会学者の早稲田大学・松岡亮二准教授は、教育格差を「子ども本人が変更できない初期条件である出身家庭の社会経済的地位、出身地域、性別などによって最終学歴などの教育成果に差があること」と定義します。

    たとえば、親に十分な収入がない家庭の子どもは、塾や習い事を利用する機会が減るでしょう。もしくは、山間部に住む子どもは都心部に住む子どもと比べ、レベルの高い教育を受けられない可能性があります。

    日本では20代前半で決まる最終学歴で、その後の人生のキャリアなどが決まります。つまり、教育格差が様々な格差の根底となっているのです。

    EdTechは、インターネットを通して良質な教育コンテンツを安価で提供します。そのため、居住地や家庭環境などに影響されない平等な教育の実現が期待されます。
     

    2.グローバル人材の育成

    総務省実施の「 グローバル人材の確保状況等に関する企業の意識調査 」によると、対象となった海外進出企業の7割が、海外事業に必要な人材が「不足」または「どちらかといえば不足している」と回答しています。

    グローバル人材の定義は人によって異なりますが、内閣官房長官や外部大臣などがメンバーのグローバル人材育成推進会議は、下記要素を持つ人物をグローバル人材と定義しています。

    • 語学力とコミュニケーションスキル
    • 主体性やチャレンジ精神、使命感
    • 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

    EdTechは、質の高い外国語講座やプロジェクトを通した文理横断学習などを提供し、グローバル人材の育成を支援します。
     

    3.学習効率の改善

    EdTechは学習効率を大幅に高めることが期待されています。2018年度実証事業「自立学習RED(eフォレスタ)の公教育導入実証において、AIを活用した個別最適化学習プログラム「eフォレスタ」搭載のタブレット端末の活用により、各教科のインプット時間が大幅に短縮できるとシミュレーションされています。

    このような実証研究は、今後もさらに進み、EdTechの効果が明らかになるでしょう。
     

    EdTechが持つ「4つの特徴」が社会を大きく変える

    EdTechが持つ「4つの特徴」が社会を大きく変える

    先に紹介した課題を解決しうるEdTechですが、実際にどのようなことが実現できるのでしょうか。EdTechが持つ4つの特徴を踏まえながら考えてみましょう。
     

    1.「STEAM教育」の実現

    STEAM教育とは、「Science・Technology・ Engineering・Art・Mathematics」の頭文字をとった造語であり、教科横断的な学習を意味します。創造的な課題発見や解決力を磨ける教育法として注目を集め、アメリカではオバマ政権時代より国家戦略として位置づけられています。

    STEAM教育の実施には、多種多様な教材コンテンツおよび学習者が自由にコンテンツにアクセスできる環境が必要です。EdTechの登場により、教師や企業などの様々なステークホルダーによる動画コンテンツをプラットフォームに集約できるようになり、学習者は住む場所に関わらずSTEAM学習が受けられます
     

    2.学習プログラムのパーソナライズ化

    EdTechは、ビッグデータの蓄積とAI分析により、学習プログラムのパーソナライズ化を実現します。学習者は効率よく必要な知識やスキルを身につけられるため、人材の早期育成につながります。
     

    3.好きな時に学習できる

    EdTechは、インターネットを通して学習コンテンツを配信します。 学習者はスマートフォンやパソコンを通し、いつでもどこでも、自分に適した方法で学べます。また、従来の授業や研修とは異なり、理解できるまで何度も学習コンテンツを利用できるのも特徴です。
     

    4.学習管理の効率化

    EdTechの学習管理システムLMS(Learning Management System)を活用すれば、学習者の理解度や活用度をリアルタイムで確認し、個別指導の最適化や興味関心に合った教材の提供が行えます。また、学習履歴を見れば、学習者の興味関心がある分野の確認ができるため、社員のキャリアプランの把握やモチベーションを高めながらの人材育成も可能です。

    LMSについては下記記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらも参考にしてください。
     

    EdTech先進国・アメリカの事例

    EdTech先進国・アメリカの事例

    ここからは、EdTech先進国アメリカの事例を紹介します。
     

    EdTechでパーソナライズ学習を実践する『Alt School』

    Alt SchoolはGoogleの元社員が2013年に創立した学校で、Meta社のマーク・ザッカーバーグ氏も出資しています。 EdTechをフル活用し、徹底したパーソナライズ学習を行うため、Alt Schoolには学年の概念がありません。また日々の学習をEdTech上で行うことで、AIが膨大な学習データを分析し、高精度の個別学習プログラムの提供が可能です。

    クラスは異年齢の25人の生徒で構成され、生徒はレベルや興味関心に適した学習をします。たとえば、小学校4年生でも6年生レベルの英語や3年生レベルの算数を学ぶこともあります。
     

    データと対価に無償の教育を提供する『Learning Economy』

    Learning Economyは、ブロックチェーンとデータサイエンスの力で、教育格差の解消を目指す非営利組織です。 Learning Economyのプラットフォームでは、ユーザーは学習の記録とキャリアの情報を対価に、無償で教育の機会を得られます。政府や企業は、ユーザーの貴重なデータを取得できるのです。

    AIはユーザーの学習データを分析し、キャリアや取得すべきスキルに関する個別アドバイスを提供します。
     

    世界の名門大学や企業による教育コンテンツを配信『Cousera』

    Couseraは、イエール大学やGoogleなど世界の名門大学・トップ企業による動画コンテンツを配信する教育プラットフォームです。

    企業向けのオンライン学習プランに加入すると、ユーザーは5,000以上のコースや400の専門講座などに無制限でアクセスできます。また、管理者向けのスキル開発ダッシュボードでは、ユーザーの学習進捗状況やスキルの習熟度などの確認と分析が行えます。

    コンテンツのパーソナライズ化やユーザーへのメッセージ送信機能などもあり、効率よく従業員のスキル開発ができます。
     

    EdTechを活用した日本のサービス・事例

    EdTechを活用した日本のサービス・事例

    最後に、EdTechを活用した国内事例を紹介します。
     

    「Udemy Business」で専門学校が自主学習の活性化に成功

    YIC情報ビジネス専門学校は、ITやビジネスなどの学びを提供する専門学校です。同校は2010年ころよりeラーニングシステムを導入していますが、下記課題を抱えていました。

    • コンテンツが点在しているため、必要な動画をすぐに見つけられない
    • 教員は学生の進捗状況を確認できない

    これらの課題を解決するため、同校はあらゆる動画教材を1つのプラットフォームに集約した「Udemy Business」を導入しました。Udemy Businessは、多種多様なジャンルの動画を集約した動画配信プラットフォームであり、定額料金内で好きなだけコンテンツを視聴できます。

    同校は、Udemy Businessを反転学習・長期休暇時の課題・自主学習で活用しています。特に役立っている機能が、複数コンテンツを1つのリストとしてまとめられる「ラーニング・パス」です。

    たとえば、教員が「eコマース」や「ビジネス実践」などのテーマでコースを作成すると、学生は必要な動画をすぐに発見できます。ラーニング・パスの活用により、学生は学ぶべきスキルを明確にでき、自主学習の活性化につながりました。
     

    プログラミング必修化が抱える課題を解決する『ライフイズテック』

    ライフイズテック株式会社は、「日本国内だけで20万人の中高生がITでものづくりをする世界をつくる!」をビジョンに掲げ、プログラミングやデータサイエンスなどの教育を提供しています。

    同社の「ライフイズテック レッスン」は、中学・高校向けのクラウド型プログラミング学習教材です。画面上のキャラクターがプログラミングを丁寧に教えるため、プログラミングに精通していない教師でも授業を行えます。また、教師は管理画面から生徒の進捗状況を確認し、個別に最適なサポートができるのも特徴です。

    学校教育でのプログラミングが必修化されたものの、プログラミングを教えられる教員が少ないという課題を解決し、1,650校・32万人以上の中高生に利用されています。
     

    EdTechは社会変革の鍵になり得る

    EdTechは、従来の学び方を変える教育イノベーションです。学習者は、パソコンやスマートフォンを通し、いつでもどこでも良質な教材にアクセスできます。AIやビッグデータの力で、文理融合・教科横断学習や個別最適化された学習プログラムの提供を実現し、これによりビジネスや社会の複雑な課題の発見と解決ができる人材の育成が可能となります。EdTechによる社会変革は、まさにこれから始まるでしょう。今後の発展に期待です。

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