マイクロラーニングは5分程度で完結する短い教材を、モバイルデバイスを通じて学習する方法です。スキマ時間を利用して、いつでもどこでも学べるマイクロラーニングが、忙しいビジネスパーソンにフィットした学習スタイルとして注目されています。
また 新しいテクノロジーやトレンドが次々と生み出される中で、顧客ニーズも多様化しています。企業もそれに合わせて組織的に社員の知識・スキルの向上に取り組まなければなりません。まとまった時間が取れない社員でも学習しやすい方法の提供は、より良い顧客体験の提供につながります。
本記事ではマイクロラーニングの基礎知識を紹介し、導入に向けた具体的なアドバイスをお伝えします。
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eラーニングとの比較で理解する、マイクロラーニングの特徴とは?
従来の集合研修に代わる新しい学習方法として、eラーニングとともに注目されているのがマイクロラーニングです。両者の比較を通じて、マイクロラーニングへの理解を深めましょう。
マイクロラーニングとeラーニングの違い
マイクロラーニングとeラーニングはどちらも場所を問わず学習できる方法ですが、主に以下の3点の違いがあります。
- 提供プラットフォーム
- 利用デバイス
- 学習時間
提供プラットフォーム
eラーニングは教材配信と受講生の学習履歴管理のために、プラットフォームとしてラーニングマネジメントシステム(LMS)と呼ばれる学習管理システムを用います。
一方でマイクロラーニングは必ずしもLMSを必要としません。アプリや動画配信チャネルのみで利用できるマイクロラーニングもあります。そのため企業側も手軽に学びの機会を創出できます。
利用デバイス
eラーニングはもともと、デスクトップパソコンやノートパソコンで学ぶシステムとしてスタートしました。
対してマイクロラーニングは、スマホを中心とするモバイルデバイスの利用が基本となっています。
学習時間
eラーニングは学ぶテーマを体系的に分割し、1回30〜90分程度のコンテンツにまとめたものを順番に進めます。
一方、マイクロラーニングは長くても10分以下の独立したコンテンツで構成されています。学習者は電車での移動時間や休憩時間、寝る前などのスキマ時間を利用して学習できるのです。
マイクロラーニングが注目される3つの理由
マイクロラーニングが注目されている背景には、以下3点の理由があります。
- モバイルデバイスの普及
- デジタルネイティブ世代の社会進出
- 働き方の多様化
モバイルデバイスの普及
スマホなどのモバイルデバイスの機能向上により、ビジネスでもモバイルデバイスを活用するビジネスパーソンが増えています。 全社レベルの導入によって、業務上の課題解決や効率化だけでなく、人材育成やノウハウ提供にもモバイルデバイスが活用されるようになりました。情報環境の整備に伴い、いつでもどこでも学べるマイクロラーニングへの関心が高まっています。
デジタルネイティブ世代の社会進出
職場でもデジタルネイティブの世代が増えつつあります。デジタルネイティブにとって、モバイルデバイスを通じて知識・ノウハウを取得することはごく自然な行為です。ポイントシステムやバッジなどのゲーム性を容易に取り入れることができるマイクロラーニングは、デジタルネイティブの学習意欲を高めます。
働き方の多様化
リモートワークや時短勤務など働き方の多様化とともに、学び方にも多様性が求められています。
日常のスキマ時間に学習できるマイクロラーニングは、多様な働き方に対応可能です。1回完結型の短いコンテンツであるため、まとまった学習時間が確保しにくい現場勤務の社員でも、営業前に必要な情報だけを再確認したい社員でも、ニーズに合わせた活用ができます。
マイクロラーニングのメリット・デメリット
マイクロラーニングのメリットとデメリットを以下にまとめました。
【マイクロラーニングのメリット・デメリット】
メリット |
デメリット |
|
学習者 |
・気軽に短時間で手軽に学習できるため、生活に取り入れやすい ・1度のインプット量が少なく反復学習も容易なため、記憶に定着しやすい |
・長時間の学習を要する体系的な学習には向かない ・ディスカッション・実技・動作を伴う学習には向かない |
管理者 |
・コンテンツをアップデートしやすい ・各コンテンツのテーマが明確なため、教材を作成しやすい |
・上記に該当する学習を提供する場合、他の学習法と組み合わせる必要がある |
ただし、デメリットと考えられる点も最適化が可能です。
「体系的な学習には向かない」点は、コンテンツを多数用意し、タグ付けによって目的のコンテンツを検索できるようにすれば解消できます。
「ディスカッション・実技・動作を伴う学習には向かない」点も、接客や商品管理などでは、研修などを組み合わせれば対応できます。
このようにマイクロラーニングは、工夫次第で自社に最適化された教育カリキュラムに組み込むことができるのです。
マイクロラーニングの導入が有効な場面
マイクロラーニングはさまざまな場面で効果が期待できます。代表的な4つの場面を、活用方法と合わせて紹介します。
- 新入社員の教育
- 管理職の研修
- 業務スキルの向上支援
- 学習の習慣づけ
1,新入社員の教育
新入社員をはじめ、人材を成長させるうえで大切なのは、「学習成果の評価」と「次のステップの可視化」です。そして、これを実現するには、マイクロラーニングと集団研修の組み合わせが効果的です。
例えば、反転学習でマイクロラーニングと集合研修と組み合わせる方法があります。反転学習とは、1人でマイクロラーニングで学習した内容を、集合研修でアウトプットする学習方式です。
研修に先だって、基本となる業務内容をマイクロラーニングで学習することで、研修は実践やディスカッションに当てることができるなど、より効率的な学習が可能になります。独習ではモチベーション維持が難しくても、反転学習によって学習意欲向上が期待できます。
参考:Pro Seeds「マイクロラーニングとは?法人研修におすすめの理由と導入事例」
2,管理職の研修
忙しい管理職にとって、集合研修のための時間確保は困難です。基礎的な知識をマイクロラーニングで習得すれば、集合研修やディスカッションは最小限に抑えられます。
3,業務スキルの向上支援
属人化しやすいスキルやノウハウを動画コンテンツにし、マイクロラーニングの教材にします。5分以内の短い動画は重要なポイントを押さえやすく、反復学習も容易です。
4,学習の習慣づけ
マイクロラーニングは短時間学習であるため、負担なく習慣化できます。
『小さな習慣』を著したスティーブン・ガイズによると、ものごとを習慣化する最良の方法とは、小さな目標を立てることにあるそうです。モチベーションの低い日であっても「これぐらいならできる」という小さな行動を目標にすることで、毎日続けられるというのです。5分程度で完結するマイクロラーニングはこの「小さな習慣」の目標になります。
参考:スティーブン・ガイズ『小さな習慣』
マイクロラーニング導入の注意点
マイクロラーニングの効果的な運用のためには、以下3点に留意してください。
- 1回完結型のコンテンツを用意する
- マイクロラーニングと他の学習方法を組み合わせる
- 学習者がアクセスしやすい配信システムを選択する
1回完結型のコンテンツを用意する
マイクロラーニングには、1回の学習が5分程度で完結するコンテンツを用意します。操作方法や取り扱い説明など10分以上かかるものでも、序盤・中盤・終盤などに分けてコンテンツ化します。
作成後、次のコンテンツへのリンク設置やトピックごとのタグ付けを行い、受講者が関連コンテンツを見つけやすくします。
マイクロラーニングと他の教育方法を組み合わせる
マイクロラーニングは集合研修やOJTと組み合わせることで効果が上がります。また、より体系的な学習のために、eラーニングと組み合わせるのも効果的です。
マイクロラーニングやeラーニングと従来型の集合学習を組み合わせたものをブレンデッドラーニングと呼びます。
学習者がアクセスしやすい配信システムを選択する
マイクロラーニングの配信システムを大別すると、2種類に分けられます。マイクロラーニング配信を目的として作られたツールと、eラーニングシステムであるLMSです。
LMSでは、マイクロラーニングをeラーニングツールと組み合わせて配信できます。そのため長時間の体系的なコンテンツはeラーニングとして配信し、短い動画やテスト形式のコンテンツをマイクロラーニングとして配信するような研修を構成する場合に向いています。
一方、マイクロラーニング配信を目的として作られたツールは、スマホで撮った動画をそのまま配信するなど、手軽に利用することができます。反面、eラーニングのように長時間のコンテンツは利用できないため、マイクロラーニングのみで研修を構成する場合に向いています。
参考:Air Course「マイクロラーニング・ツールの種類と選択のポイント」
マイクロラーニングの活用事例
マイクロラーニングの導入が進んでいるアメリカの2社と、先進的な取り組みで成果を上げている日本の1社を紹介します。
事例1 Walmart Inc.
アメリカの大手スーパーのWalmart Inc.は、安全文化を構築するためにマイクロラーニングを導入しました。150以上の流通センターにマイクロラーニングが実装され、利用した従業員は75,000人に上ります。マイクロラーニングにゲーム性を取り入れたことで、自発的な参加率は平均91%となり、積極的な学びが効果を上げました。一例として、配送センターでの事故件数は54%減少しています。
参考:E LEARNING INSIDE ” CORPORATE MICROLEARNING EXAMPLES: REAL-WORLD CASE STUDIES ”(英語)
事例2 Shell plc
Shell plcは世界70か国以上で平均83,000人の従業員を擁する国際的な企業です。企業が求める基準を世界レベルで共有するため、Shell plcでは3つの層を対象に以下の目的でマイクロラーニングを提供しています。
- 新規従業員:オンボーディングプログラムとしてマイクロラーニングでShell plc社のメソッドの理解を深める
- マーケター:マイクロラーニングと対面型ワークショップを通じてマーケティングスキルを獲得する
- マーケター以外の社員:マイクロラーニングを通じてマーケティングの戦略的役割を理解し、他部署への貢献意識を養う
参考:EdApp & Shell “ A case study with the world’s leading integrated energy company ”(英語)
事例3 株式会社バイク王&カンパニー
全国に店舗を持つ株式会社バイク王&カンパニーは、店舗間の教育水準格差に直面していました。マニュアルはあっても各店舗のトレーナーのスキルや解釈にばらつきがあり、品質管理の統制が難しい状態でした。そこで同社は「バイク王カレッジ」を設立。事業に関わる法律や法令、バイクの車両などに関する知識をマイクロラーニングで配信しました。バイク車両に関連する知識だけでなく、安全や法律など事業に関連する幅広いコンテンツを提供することにより、多くの従業員が主体的に取り組み、成果を上げています。
参考:WARK「WARK導入事例」
マイクロラーニング導入時に活用したいおすすめツール
マイクロラーニングのプラットフォームとして、マイクロラーニング・ツールがあります。導入を検討する企業のために、おすすめのツールを紹介します。
ツール1 「Spotty(スポッティ) 」
クラウドで利用できる、LMSを使用しないマイクロラーニング配信サービスです。スマホでコンテンツを作成し、そのまま受講者に配信できる利便性が魅力の1つ。確認テストの作成や結果表示、学習管理などの機能も搭載されています。
【価格】※2022年6月時点
従量課金制:月額4,800円~(税別)
月額定額制:月額9,800円~(税別)
ツール2 「UMU(ユーム)」
スムーズなコンテンツ制作だけでなく、双方向的な学習や、AIによるフィードバックも可能です。eラーニングにも対応しているため、組み合わせて利用もできます。
【価格】※2022年6月時点
組織向けプロダクト ビジネス版(10アカウント以上、月間払い)
月額1人当たり6,750円(税込)
ツール3 「NTTLS 動画でマイクロラーニングシリーズ」
どんなコンテンツを用意したらいいかわからない場合、汎用性が高い既存コンテンツも有用です。仕事基礎力向けコース、リーダー・マネージャー向けコースなど多数のコンテンツがあり、内容もウェブサイトで公開されています。
【価格】※2022年6月時点
仕事基礎力向けコース 1人当たり月額5,000円×3か月~
リーダー・マネージャー向けコース 1人当たり月額6,500円×3か月〜
マイクロラーニングを活用して主体的に取り組める学習機会を提供しよう
スキマ時間を活かしたマイクロラーニングは、社員が気軽に、かつ主体的に取り組みやすい学習法です。短いコンテンツで得た知識やスキルはアウトプットしやすく、また、アウトプットによって達成感も得やすくなっています。
また社員教育や研修を企画する企業担当者にとっても、マイクロラーニングはコンテンツの作成やアップデートがしやすいメリットがあります。マイクロラーニングだけでなく、集合研修やeラーニングと組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
ビジネスパーソンが身に付けた知識やスキルは、顧客への価値提供として実を結びます。より良い顧客体験の提供に向けて、マイクロラーニングの導入を検討してはいかがでしょうか。