サードパーティーの開発者に愛されるSaaSプラットフォームを構築するには

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Scott Brinker
Scott Brinker

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孤立したSaaSというものは存在しません。

人気の高いSaaSアプリケーションのうち、APIが公開されておらず、他のソフトウェアとも連携されていないものを見つけるのは至難の業でしょう。現在ビジネスに利用されている何十、何百というクラウドサービスは、相互に連携できることが当然とされています。

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1_SCO-6zyGCoAcxPC_WAZXMA現在提供されているマーケティングや営業関連の製品は5,000種類以上に及ぶ

デジタルの世界でクラウドサービスが際限なく増えている現在(マーケティングだけでもニッチなソリューションがどれだけ存在しているか考えてみてください)、1つのビジネスが必要とするソフトウェアを1社がすべて開発することは不可能です。

さらに、オープンアプリケーションの提供から本格的な「プラットフォーム」の提供に移行するには、大きな労力を要します。プラットフォームと呼ばれるためには、他社のソフトウェアと自社のソフトウェアを技術的に連携するだけでは不十分です。複数アプリ間のデータをAPI経由でやりとりできることは、現在では当たり前になっています。

真のプラットフォームとは、多様なソフトウェアとその間を行き来するデータを調整するメインの「ハブ」としての役割を果たします。

プラットフォームを基盤として製品を構築する開発者にとって、プラットフォームは彼ら自身の成長を力強く後押しするエンジンとなります。

そして、愛されるプラットフォームには新しいビジネスやテクノロジーの可能性が開かれており、熱意にあふれる開発者たちが集まります。

では、プラットフォームが愛されるための条件とは何でしょうか? 特に商用利用を目的として、開発した製品の販売を望む開発者から愛されるためには何が必要でしょうなのか? 今回はそのための7つの要素をご紹介します。

スクリーンショット 2019-04-10 18.47.481.  魅力的なビジネスチャンス(未解決の課題を抱えた大規模なユーザーベースなど):大規模な市場開拓の可能性を開いてくれるプラットフォームは、商業的な観点から見て開発者にとって魅力的に映ります。

つまりプラットフォームには、未解決の課題や要望を抱え、その解決のためにコストを惜しまないユーザーを大量に集めなくてはなりません。

純粋にプラットフォームだけを提供している企業は「たまごが先か、ニワトリが先か」の問題に直面することになります。開発者を惹き付けるには多数のユーザーが必要ですが、ユーザーを呼び込むには開発者にさまざまなアプリを提供してもらう必要があるのです。

こうした理由から、有名アプリケーションや複数のアプリケーションを揃えた「スイート(Suite)」は、優れたプラットフォームに移行できる可能性が高くなります。なぜなら既に多数のユーザーが確保され、効果的なオーディエンスとなってくれるため、開発者を市場に招き入れ、ソリューションの拡充、拡大、補完を呼びかけやすいのです。SlackTrelloは、アプリからプラットフォームへと進化を遂げた好例と言えるでしょう。

しかし、アプリケーション企業からプラットフォーム企業へ移行するのは簡単なことではありません。製品設計、ビジネスモデル、企業文化など、さまざまな点の見直しが求められます。そこで、愛されるプラットフォームを実現するにはこれからご紹介する2つ目以降の要素が重要になってきます。

2. 導入支援、開発、展開などの優れた開発者エクスペリエンス:開発者エクスペリエンス(DX)とは、プラットフォームと連携するソフトウェアの開発者が開発の過程でどのような体験をするかを意味しカスタマーエクスペリエンス(CX)と同様に開発者がプラットフォームについて情報を収集しようと思った時点からスタートします。DXの初期段階では次のようなポイントに注意してください。

  • 開発者向けのコンテンツが自社ウェブサイトのわかりやすい場所で公開されているか
  • 開発者向けのコンテンツを通して、プラットフォームのバリュープロポジションが開発者に伝わっているか
  • 開発用の技術資料がわかりやすい場所で提供されているか、内容が充実しているか
  • 開発事例(と関連資料やコード)がわかりやすい場所で提供されているか
  • 最初のプログラムを開発・試用するためのサンドボックスはセットアップしやすくなっているか

次に、開発者がプラットフォーム向けのアプリケーションの開発をスタートさせると、次の要因がDXに影響を与えるようになります。

  • APIの対応範囲:API経由でアクセスできるのはプラットフォームのどの範囲までか
  • APIの一貫性:APIのパラメーターやフォーマットはどれくらい標準化されているか
  • APIの優先度:新製品や新機能のリリースからAPIの提供までどれくらいの期間があるか
  • 開発者サポート:技術的な質問に対する回答をすばやく簡単に入手できるか
  • デプロイ作業:アプリケーションや連携機能をすばやく簡単にデプロイできるか
  • 認証:アプリや連携機能の認証をすばやく簡単、かつ公正に受けられるか
  • モニタリング:顧客によるアプリの利用状況や連携状況を簡単に追跡できるか

バイヤージャーニーと同じように「開発者ジャーニー」も描くことができます。私が特に支持しているのは、ハブスポットCTOであるDharmesh Shahが提唱する開発者ジャーニーです。次のような枠組みの中で4つのマイルストーンが設けられています。

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これらの各マイルストーンに到達するまでの時間と、各マイルストーン間で離脱する開発者の割合を見れば、プラットフォームのDXが開発者にどう評価されているのかを見極めることができます。

あまり優れたDXとは言えなくても、魅力的なビジネスチャンスが潜んでいれば、開発者たちは嫌々ながらもプラットフォームを利用するでしょう。しかし、愛してくれることはありません。そのため、アプリ連携の市場投入期間に悪影響が及ぶと共に、開発者がプラットフォームへの情熱を持てないという、数字では測れないけれど決して無視できないコストが発生します。

一方、優れたDXは、開発者に「このプラットフォームでなければ作業したくない」と思わせ、興味と想像をかき立てる力を持っているため、開発者の手によってさまざまなアプリケーションが作り出されます。また、開発者の間で口コミが広がり、プラットフォームの繁栄と普及が促進されます。

デジタルの世界において開発者は心強い味方であり、インフルエンサーとなってくれます。

3. プラットフォーム上の製品を利用するユーザーのための優れたカスタマーエクスペリエンス:プラットフォームの市場には2つの側面があります。ソフトウェアプラットフォームでは、開発者とそのアプリケーションが供給側、顧客とそのビジネスが需要側を担います。

愛されるプラットフォームは、開発者と、「開発者にとっての顧客」、そのどちらも等しく幸せにします。

たとえば、iPhoneにはアプリを簡単にインストールできます。これはサードパーティー製アプリをスムーズに、そして楽しく検索、インストール、使用できるカスタマーエクスペリエンス(CX)をAppleが構築したからです。iPhoneのCMに使用されていた「There’s an app for that (そのためのアプリがある)」というキャッチコピーは、それを象徴していると言えるでしょう。

開発者に愛されるプラットフォームを作るには、サードパーティーの開発者の製品を顧客が導入する際のCXを優れたものにする必要があります。そうすることで、顧客が開発者からたくさんのアプリを購入し、購入したアプリに満足し、長く愛用するようになります。顧客が同僚にアプリを勧め口コミによる宣伝に火が着けば、最終的にはプラットフォームに参加する開発者の成功として還元されます。

プラットフォームのCXは、後から挽回することはできません。したがって、プラットフォームでどのようなことができるのかを顧客が調べ始める最初の段階から、次に挙げるような質の高いCXを提供することが不可欠です。

  • エコシステム全体の概要(そのプラットフォームで何ができるのか)を簡単に把握できる
  • プラットフォーム上で提供されているアプリがどのようにビジネスの成果につながるかを簡単に理解できる
  • 探しているアプリや追加機能をすぐに見つけられる
  • 新しいアイデアにつながるアプリをすぐに見つけられる(ユーザーの状況に即したものなら理想的)
  • 個別のアプリの使用要件を簡単に把握できる
  • 気に入ったアプリや試したいアプリを簡単に購入・インストールできる
  • プラットフォーム全体のワークフローやUIの中で、アプリを簡単に使用できる
  • 各種アプリのモニタリングと管理をコンソールから簡単に行える
  • アプリについて質問したいときに、適切なサポートを簡単に受けられる
  • 不要なアプリを簡単に削除・アンインストールできる

エコシステム内のサードパーティーアプリケーションの提供数を強調したがるプラットフォームは少なくありませんが、私の経験から言うと、量よりも質を重視した方がうまくいくようです。

プラットフォームと連携するアプリの数を充実させれば、顧客に提示できる選択肢が増え、機能の幅も広がるため、ついそのことばかりに気を取られがちです。しかしそれよりも、優れたCXを提供するために品質管理の水準を一定に保つことを重視する必要があります。

4. 安定した技術環境とビジネス環境(信頼性、拡張性、確実性):開発者がプラットフォームに求めるものは、変動性ではなく安定性です。プラットフォームを中心とした製品開発とビジネス開拓に投資している開発者には、不要なサプライズは歓迎されないでしょう。

安定性を達成するには、次のような技術的側面に注意します。

  • APIの高可用性:予期しない障害や停止を避ける必要があります。
  • APIの高速性:APIのパフォーマンスは、その開発者のアプリのパフォーマンス(ひいては顧客からの評価)に直結します。
  • プラットフォーム変更後のAPIの下位互換性:少なくとも、開発者が新しいバージョンに無理なく移行するまでの間は、下位互換性を維持する必要があります。
  • APIの拡張性: プラットフォームや、プラットフォームに接続されているアプリや連携の規模が拡大しても、顧客側のパフォーマンスを低下させすることなくシームレスに負荷を処理する必要があります。

しかし、開発者が特定のプラットフォームに対応したアプリケーション開発に踏み切るためには、技術面が安定しているだけでは不十分です。プラットフォーム企業との関係にもビジネス面の安定性が求められることになります。つまり、プラットフォームとその市場に、透明性が高く、公正で確固たるルールが敷かれていなければなりません。

プラットフォームが開発者から愛されるには、プラットフォーム企業が開発者の信頼を獲得するべく、次のように心がけることが必要です。

  • 特定の開発者を特別扱いせず、市場内で能力主義を維持する。
  • これまで承認していたアプリを市場から突然締め出すなど、アプリ開発者に対するルールの恣意的な変更を行わない。
  • プラットフォームを利用する開発者を不当に敵視しない。自社のエンジニアが利用できるデータとAPIをサードパーティーの開発者にも同じように提供する。競合するアプリを貶めたり、無視したりしない(ネットワーク中立性を保つ)。競合する要素があることを理由に、アプリマーケティングの恩恵を制限しない。

これは、ハブスポットCSOのBradford Coffeyが2017年に発表した、インテグレーションパートナー様に対するハブスポットの約束と同じ考えに基づいています。この中でハブスポットは、インテグレーションパートナー様に対する透明性を確保し、自分たちが期待するのと同様の敬意を持ってパートナー様と接するよう、そしてハブスポットのプラットフォームを利用するすべての皆様が公平に競争できる場所を維持するよう努めることを宣言しています。

皆さんのプラットフォームエコシステムについても、同じようなことを約束できるでしょうか?

5. (新しい)顧客にアプローチするための効率的かつ公正なマーケティングおよび営業の仕組み:商用開発者がプラットフォーム上で製品を開発するのは、自社のソフトウェアをより多く販売するためであり、未解決の問題を抱えた大規模なユーザーベースに出会いたいと考えています。

ただ、プラットフォームの顧客がニーズを抱えていて、開発者がそれに対応する理想的なソリューションを生み出したとしても、まだマッチングの問題が残されています。顧客が開発者のソリューションを見つけ、開発者が顧客にアプローチするにはどうすればよいのでしょうか。一般的に「良いものを作れば、顧客は集まってくる」というだけでは、市場投入戦略として不十分です。

愛されるプラットフォームは、このマッチングの問題を効率的に解決しています。顧客と開発者の両者がつながり、ビジネス関係を築けるように、マーケティングと営業の仕組みが整備されています。

スクリーンショット 2019-04-10 18.51.30AppleのApp Storeでは、アプリの見つけにくさの問題を解決できるように、「New Apps We Love(おすすめの新着App)」などのカテゴリーを設定している

製品ディレクトリーは、顧客が製品を直接購入できる場合には「アプリストア」とも呼ばれ、最も一般的なマッチングの仕組みです。

代表例としてApple iOSのApp Storeが挙げられます。優れたディレクトリーがあれば、顧客は開発者が提供するあらゆるソリューションを簡単に閲覧、検索できます。

また、顧客がソリューションを比較検討し、選択肢を絞り込んで、最適な製品にたどり着くのもスムーズになります。

さらに検索しにくさの問題も解消されているため、顧客が自分の探しているアプリをわかっていれば、適切なアプリを見つけられます。しかし、自分がどのようなアプリを探しているのかわかっていない顧客は、おそらく自身の課題にどのようなソリューションが適しているのか定義できていなかったり、そもそも何ができるのか把握していなかったりしているものと思われます。これがアプリの見つけにくさの問題です。

優秀なプラットフォームは、エコシステムに眠るアプリに顧客が気付けるように、次のような仕組みを備えています。

  • 製品のカテゴリーを説明したり、ビジネス上の具体的な課題を解決する製品の組み合わせ実例を紹介したりするコンテンツマーケティング(ブログ記事、ニュースレター、ウェビナーなど)
  • プラットフォームエコシステム内のさまざまな製品やソリューションを活用して成果を達成するための方法を顧客に詳しく解説するトレーニングや講座
  • 営業とカスタマーサポートの担当者(およびチャネルパートナー)がプラットフォームを利用して具体的な課題を解決する方法を顧客にアドバイスするセールスイネーブルメント(およびチャネルイネーブルメント)
  • 顧客に役立つ製品を、そのままスムーズに利用できる形式で提示する、アプリ内の推奨機能
  • お勧め製品のパーソナライゼーション(「あなたと似ているユーザーはこちらを利用しています」など)
  • エコシステムに追加された新製品の紹介(新しくエコシステムに参加した開発者が、既に人気のあるソリューションに取って代わる製品をアピールできるチャンスになる)

このように開発者と顧客をつなぐためのマーケティングや営業の仕組みには「公平性」が不可欠です。お勧め製品は、客観的な基準をクリアした製品の中から選ばれるべきであり、その基準も開発者に対して明確に説明できるものでなくてはなりません。プラットフォーム企業による特別扱いは禁物です。

顧客が自らの意思で製品を購入し、プラットフォーム企業がその購買行動を踏まえて製品を紹介することで、両者のメリットが守られます。

決定権を握るのは顧客であり、プラットフォーム企業ではありません。

ただし、やや矛盾しますが、エコシステムが強者の論理に支配されないための方策も必要です。最も人気のあるソリューションの紹介に力を入れすぎると、そのソリューションが常に人気の最上位をキープし、他の開発者の製品がどれだけ優れていても、その牙城を崩すことはほぼ不可能になります。多くのプラットフォームのディレクトリーが「注目の最新アプリ」といったセクションや「今月の人気急上昇アプリ」などのランキングを設定しているのはそのためです。

スクリーンショット 2019-04-10 18.52.59Shopifyアプリストアの「New and Noteworthy(注目の最新アプリ)」セクション

プラットフォーム企業は、パートナー各社がソリューション独自のメリットをアピールして互いに競い合い、その中から顧客が最適なソリューションを選べるような「マーケットプレイス」を構築する必要があります。顧客が変われば当然、選ぶものも変わります。顧客に豊富な選択肢を提示できることが、優れたプラットフォームの証なのです。

ディレクトリーをアプリストアに発展させるにあたって、もう1つ注意していただきたい点があります。それは、アプリストアの目的は収益ではないということです。確かに、サードパーティーの製品がアプリストアを経由して販売されると手数料が発生するため、プラットフォーム企業にとっては大きな収益源になります。実際にSalesforceは同社のアプリストアであるAppExchangeで、AppleはApp Storeでそれぞれ莫大な収益を上げています。それでも、アプリストアの本当の価値は、開発者と顧客の間にある障壁を取り除くことにあります。優れたアプリストアでは、ニーズにぴったりな機能を必要なときにプラットフォームから手軽に購入し、インストールできます。その結果、顧客はより多くの製品を購入し、プラットフォームへの投資額を増やしていきます(顧客維持率の向上)。するとこれがモチベーションとなって、多くの開発者がそのプラットフォーム向けに製品を作るようになります。そしてさらに顧客が集まり、顧客が集まれば開発者も集まる、というようなネットワーク効果が生まれます。

こうしたネットワーク効果が企業にもたらす価値は、取引手数料による利益をはるかに凌駕します。

6. 愛にあふれるプラットフォーム企業の文化:ここまでの5つは、プラットフォーム環境の完成度を高めるために必要な要素でしたが、開発者から真に愛されるプラットフォームを築くには、また別の要素が必要になります。それは、プラットフォーム企業と開発者コミュニティーの精神的な結びつきです。

優秀な企業は共通して、自社の顧客を心から愛しています。顧客への愛情が言動の端々からあふれ出し、企業文化にも深く根ざしています。そして、顧客もその愛情を感じ取り、しっかりと受け止めています。

愛されるプラットフォームを作るには、これと同じような愛情を開発者エコシステムに対して抱くこと、そして製品、マーケティング、営業、サポートなどあらゆる形を通じてその愛情を伝えることが必要です。次に挙げるような取り組みを行って、開発者への愛情をわかりやすく伝えましょう。

  • 開発者とのオープンで有意義なコミュニケーションを定期的に行う
  • 開発者の疑問や懸念をスピーディーに解決する
  • プラットフォームを活用して成果を挙げる方法を開発者にアドバイスする
  • 開発者が計画を立てやすいように、製品計画に関する最新情報を提供する
  • 開発者の利便性を高めるためにフィードバックを集め、反映する
  • 開発者を直接訪問する機会や、開発者を招待する機会を設ける
  • 開発者コミュニティーが一堂に会するイベントを開催する
  • 貢献してくれる開発者に対して感謝を伝える手段を整備する

さらに、次のような方法でエコシステムに関する情報を世間に発信して、開発者への愛情を示すこともできます。

  • マーケティング活動や営業活動を通じて、エコシステムが顧客にもたらすメリットをアピールする
  • インタビューや講演の中で経営陣に開発者コミュニティーへの賛辞を述べてもらう
  • ソーシャルメディアやコンテンツチャネルで、新製品のリリース、顧客事例の公開、成長に関するマイルストーンの到達など、プラットフォームにおける開発者の成果達成を称賛する
  • プラットフォームと直接関連しなくても、開発者に関する嬉しいニュース(資金調達の発表、業界における各種受賞、創立記念日など)を拡散する
  • エコシステムの成長は、開発者と顧客の成功あってこそのものだと定義する(たとえば「数多くのユニークな開発者を集めていることが当社の強みです」ではなく「開発者が顧客と協力することで次々にすばらしい業績を収めています」と表現しましょう)

開発者コミュニティーへの愛情にあふれたプラットフォーム企業は、ビジネスのどのような場面においても、常に開発者の利益を考慮しています。

皆さんが意思決定を下すときにいつも顧客の声を意識しているのと同じように、愛されるプラットフォーム企業は会議や意思決定の場面で開発者の立場から考えることを欠かしません。

「今回の意思決定によって、開発者のコミュニティーにどんな影響があるだろう? 今回決定したことを実現するうえで、開発者にメリットを提供するにはどうすればよいだろう?」と常に考えているのです。

あらゆる企業にとって究極的な目標とは顧客の課題を解決することですが、そのための方策と、開発者の課題解決という目標が必ずしも対立するとは限りません。多くの(もしかしたらほとんどの)場合、この2つの目標は、意思決定とそれを実践するプロセスにおいて開発者の意見を取り入れるだけで両立できます。

つまるところ、活発なプラットフォームエコシステムを育て上げることが、顧客の課題を幅広く解決する有効な手段なのです。顧客が成長や変化を遂げ、顧客のビジネスを取り巻くテクノロジーが急速に進化し続けていても、活発なエコシステムを構築していれば、目的を達成するための選択肢をプラットフォーム上で豊富に提供することを保証できます。

7. 共に変革を担う仲間として分かち合う目的意識:最後にもう1つ、世界有数のプラットフォームに共通している特別な要素をご紹介しましょう。

世界有数のプラットフォーム企業とその開発者コミュニティーは、意義のある方法で世界を変革するという共通のミッションによって結びついています。

プラットフォームは変革のきっかけと道筋を作ります。しかし、いったん大きく動き出すと、プラットフォーム企業が制御しきれない勢いで広がっていきます。

スクリーンショット 2019-04-10 18.55.22開発者が変革の流れに加わるのは、その先にあるものを確信しているからです。情熱と想像力をかき立てられた開発者は、磁石に引き寄せられるかのように、変革の担い手となります。

開発者が革命に引き寄せられるのは、いわゆる「次のビッグウェーブ」に乗って新たなビジネスを立ち上げようという、合理的な起業家精神の現れでもあるでしょう。しかし実際は頭で考えた計算よりも、「次のビッグウェーブ」を乗りこなすことに対して本能的にスリルを感じ、より良い未来を作るという信念に触発されている面のほうが大きいのです。

開発者は、自分たちが信じるに値する将来のビジョンを示し、その実現に向けた変革の旗手を任せてくれるプラットフォームに愛着を抱きます。

ただし、いくら変革の行き先を示しても、開発者から愛されるプラットフォームを構築するには、次の条件を達成できるかどうかが鍵となります。

  • 「世界を巻き込んだ大きな変化」が生まれつつあり、その変化によって「勝者と敗者」が分かれることを明確に伝える(参考として、さまざまなスタートアップ企業の戦略コンサルタントを務めるAndy Raskin氏の記事「私が今まで見た中で一番素晴らしかった営業ピッチ資料」をご覧ください)
  • この大きな変化をさまざまな面に活かせる「約束の地」への入り口としてプラットフォームを位置付ける
  • 開発者がソリューションの重要な部分に貢献できる機会を設ける(開発者なくして変革は生まれません。開発者はプラットフォームにとって欠かせないばかりか、世界の変革を成功させるためにも欠かせない存在です)
  • プラットフォーム企業が、変革に対する開発者の貢献ぶりを熱心に紹介し、あらゆる機会を通じて開発者の意見を広く伝える

変革の担い手となる機会を開発者に提供し、変革に取り組む「一級市民」として開発者を守り立てましょう。大切なのは、共闘によって達成できる変革であることを印象付け、開発者と手を取り合い、明日に向けて共に歩んでいくことです。

補足:今回の記事でご紹介したのは、ハブスポットがプラットフォーム構築に取り組む中で、ハブスポットの開発者コミュニティーをもっと強力にサポートできるように検討している手法の一部です。基本的な原則はハブスポット以外の企業にも適用していただける内容だと思います。皆さんがご自身のプラットフォーム戦略を考えるうえで、今回の記事がお役に立てば幸いです。

アプリプラットフォームのパートナーシップへの参加にご興味をお持ちでしたら、プログラムの詳細をご確認ください。皆様と共にさらなる成長を遂げられることを心から願っています。

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