私は、「顧客」に強い関心を持っています。私の顧客企業から、その先に存在するあらゆる顧客に、電話による問い合わせからマーケティングEメールやウェブサイトの閲覧といった1つひとつのコミュニケーションにおいて、快適な顧客体験が届けられることを願っています。
そしてこれは、私の日々のモチベーションとなっています。だからこそ2019年に、HubSpotとして初めて、顧客の声(VoC)に対応する専任チームを立ち上げる機会に恵まれたときは本当に嬉しく思いました。
このチームでは顧客体験の向上に全力で取り組んでいる従業員に集結してもらい、週次のミーティングでは顧客に関する議論やフィードバックの分析を実施し、摩擦となる要因を探るため問題を深く掘り下げていきました。
その結果、私たちはある事実を突き止めました。企業が直面する多くの課題に対する答えは、部門間ミーティングの機会や従業員数を増やすことでも、サポートスタッフの勤務時間を伸ばすことでもなく、事業運営のオペレーションにあったのです。
オペレーションの担当者は、あらゆる業務が円滑に遂行できるようサポートしています。マーケティング担当者がコンタクトリストをセグメントに分類できない場合や、営業の自動送信Eメールが動作しない場合には、オペレーションの担当者に支援の要請があります。カスタマーサービス担当者が顧客との会話履歴を参照できない場合などにも、オペレーションの担当者がサポートを行います。
顧客と接するすべての部門の成功を支えている存在で、一体感のある顧客体験を先導する立場にあると言えます。しかし残念ながら大半の企業では、発生した問題に事後対応を行う業務と捉えられています。
今、私たちの業界を挙げてオペレーションのあり方を刷新し、事後対応から、業務の摩擦を未然に防ぐ先見性を備えた存在へとオペレーションチームを進化させる時期が訪れています。そのカギとなるのがレベニューオペレーション(Revenue Operation)です。
オペレーションチームが潜在能力を発揮するためには、1つのRevOps戦略の下に一丸となって、戦略の実践に最適なツールを活用することが不可欠になる、と私は確信しています。
この新しい概念にいち早く対応するために、HubSpotは「Operations Hub」をリリースいたします。この新製品は、一貫した顧客満足度の向上をオペレーションチームが中核的な立場で支援できることを目的として開発されました。
組織の規模拡大に伴う何らかの摩擦は避けられず、また、その影響が及ぶ最初の領域が顧客体験であることは決して少なくないからです。
企業の成長と共に優れた顧客体験の提供が難しくなる3つの理由
体験談のツイートや友人への紹介、またはレビューサイトへの投稿を行いたくなるほどの体験を提供してくれる企業は、私にとってそう多くありません。今日、私のような顧客があらゆる企業に期待していることは、迅速かつ状況に即した的確な対応です。
企業が拡大して急成長を遂げると、顧客の期待に応えることも急激に難しくなります。その理由は主に3つあります。
1. サポートする顧客数の増加
通常、企業の立ち上げから間もないうちは、顧客基盤が拡大しても、人材への投資を増やすことで対応できます。また、顧客基盤が一層拡大して、高水準の顧客体験を提供することが難しくなっても、資金を調達して従業員を追加採用すれば、膨らみ続ける需要への対応は可能です。この方法は、一定の期間までは機能します。
しかし、企業の成長スピードが投資のペースを上回り始めたら、単なる増員以外の方法で、顧客体験の質を保ちながら顧客基盤の拡大にも対応しなければなりません。つまり、顧客満足度を高く維持するための手法を再検討する必要があり、仮にこの取り組みを怠れば、ユーザーの信頼や市場シェアを失うことにもなりかねません。
2. 管理対象となるツール数の増加
企業の成長は新たな課題との直面と見なすこともできますが、現在は8,000種類以上のマーケティングテクノロジーが提供されているため、迅速な問題解決のための支援ツールが不足することはありません。部門に固有の課題を解決するために、部門単位でツールを導入することも今では珍しくありません。
ただし、この方法では次第にツールの数が膨大になり、管理に要する時間と労力も増大し、肝心の顧客対応が後回しになってしまいます。しかも、社内のシステム構成が必要以上に複雑化すると、顧客対応に欠かせない信頼性の高いデータの利用が難しくなるため、状況に即した体験を提供して顧客の期待に応えることは実質不可能になります。
3. 管理するタッチポイントの増加
創業から間もない時期は、特に効果的な少数のコミュニケーションチャネルに特化することも可能です。創業期のSNSマーケティング戦略はFacebookとTwitterに限定し、問い合わせ窓口は電話のみ、などの形態です。
しかし、企業が成長段階に入ると、マーケティングのチャネルや顧客とのコミュニケーション手段も増えていきます。程なくしてFacebook、Twitter、および電話以外に、Instagram、LinkedIn、YouTube、24時間無休のウェブチャットなどでのやり取りも始まります。
このようにタッチポイントが増加していくことを前提として、企業はチャネル数が限られていた頃と変わらない水準で顧客体験を提供できるように戦略を刷新する必要があります。
当然、これら3つの問題は成長の結果でもあり、企業にとって喜ばしい側面もありますが、課題は解決しなければいけませんは。とはいえ、対応できている企業はごく一部です。主な理由として、効果があった既存の手法に固執してしまう点が挙げられます。
とにかく増員を続ける企業が大半ですが、社内の各種ツールを連携させるためのインフラを構築しないまま新しいツールを矢継ぎ早に導入する企業や、特定のタッチポイントを放置して顧客の失望を招いている企業もあります。
オペレーションの担当者なら、独自の観点からこうした課題の解決を支援することが可能です。業界を見渡しても、これまではオペレーションチームの潜在能力を十分に認識することなく、組織のサイロ化を招き、問題の事後対応を依頼することに終始してきた企業が大半で、問題解決に有効なツールの提供やチーム編成の見直しが行われることもないのが実情でした。
部門主体から顧客視点へ
創業間もない企業がオペレーションの担当者を採用することは、まずありません。システム間の歪みが明らかになり、部門間の摩擦がいよいよ深刻になったときに、ようやく採用されるという流れが一般的です。しかし、マーケティング部門がリード スコアリング システムの改善担当として、または営業部門がレポートの作成担当として、部門に専属のオペレーション担当者を採用することはあります。
結果としてオペレーション担当者がさまざまな部門に点在するサイロ状態を招き、利用しているシステムも部門ごとに異なるという話は珍しくありません。このような組織構造では、それぞれのオペレーション担当者が部門内の摩擦を解消できたとしても、部門間の摩擦は解消されないまま残ることになります。
例えば、営業部門がマーケティング部門のデータをスムーズに参照できない場合、プロスペクトとの直近のやり取りに基づいて適切なアプローチを行うことは難しくなります。
こうした部門間の重要なタッチポイントの管理が欠如すると、プロスペクトに無味乾燥なEメールが送信されたり、マーケティング部門に営業部門からの苦言が寄せられたり、営業部門がプロスペクトの獲得に苦闘したりする状況が続くことになります。
こうした観点を私は「部門主体」と呼んでいますが、この場合は顧客と接する各部門が、自分たちが関与する部分の顧客体験に焦点を当てているため、オペレーション担当者は単に各部門から依頼された業務をこなす存在でしかありません。
しかし、企業に必要なのは「顧客の視点」です。すべての部門が協力し、顧客の全体像を把握して、一貫性のある顧客体験を提供することが求められます。オペレーションの担当者は、このような視点の転換において重要な役割を果たします。しかし、そのためにはまず、社内の意思統一が不可欠です。
優れた顧客体験の徹底にレベニューオペレーションが果たす役割
優れた顧客体験を幅広く提供する際に特に有効な施策として、各部門のオペレーション担当者の間で1つのレベニューオペレーション戦略を共有し、共通認識を醸成する方法があります。
オペレーションの担当者が一丸となることで、部門単位の目標ではなく、優れた顧客体験の提供に取り組めるようになります。共通のデータに基づいて業務を推進すれば、顧客に関する全体像を一元的に共有できます。
オペレーションチームが複数の部門に関わる業務を橋渡しすれば、摩擦が生じがちな部門間でも連携が促進されます。何よりも、チームが協力してさまざまな課題を早期に見つけ出すことで、顧客体験の質の低下を未然に防ぐことが可能になります。
オペレーションの人材がまだ限られている企業でも、今すぐに顧客の視点を取り入れることは可能です。オペレーション担当者が1人も在籍していない場合は、ぜひ早急に採用に着手し、顧客と接する部門全体の連携方法について方向性を打ち出してください。
また、現在の運用モデルと照らし合わせながら部門ごとに業務の改善方法を特定したり、サイロ化の要因となっているシステムの有無を確認したり、顧客の視点を社内に根付かせたりすることも大切です。
「レベニューオペレーション」とは、単なるチームの名称ではなく、企業経営の考え方です。その真価を発揮させるためには、最適なツールをオペレーションチームに提供することが欠かせません。
Operations Hubのリリースについて
本日リリースされるOperations Hubには、企業の成長に伴って生じる顧客体験の課題を解決する際に、オペレーションチームが中核的な立場で活躍するための各種ツールがそろっています。
Operations Hubを使用すると、複数のビジネスアプリ間でデータを双方向にリアルタイムで同期できるため、複雑なシステムを構築している場合でも簡単に管理できます。
ワークフローを作成することで、データベースを最新かつ整理された状態に維持できるため、管理するタッチポイントが増加しても、顧客データの信頼性を担保することができます。さらに自動化のアクションを高度にカスタマイズすれば、顧客基盤が拡大しても、1人ひとりの顧客にきめ細かくパーソナライズされた体験を提供できます。
このようなツールをオペレーションチームが活用することで、卓越した顧客体験の提供という目標に向けて、実験的な取り組みや斬新なアイデアを試して、画期的な新戦略を策定することができます。これまでオペレーション担当者が能力を発揮できる機会は限られていましたが、もう過去の話です。
2019年、私は顧客の声に対応する専任チームの立ち上げを通して、企業が一貫した顧客体験を幅広く提供する際にはオペレーションチームが重要な役割を果たさなければならないという点に気付かされました。
また、2021年には新たなチームの始動にも関わることとなりました。それがレベニューオペレーション(RevOps)チームです。HubSpotだけでなく、業界全体におけるオペレーションチームの存在意義を高めるという使命の下、チームメンバーが一丸となってOperations Hubを駆使して業務に取り組んでいます。
私自身も含めたオペレーション業務の関係者にとって、心躍る話ではないでしょうか。今後は、事後対応ではなく先見性を発揮すると共に、サイロ化された業務環境を解消して他のオペレーション担当者と連携することが可能になります。そしてこれからは、顧客と接する部門の後方支援にとどまらず、全社一体となる顧客体験戦略の策定を先導する立場を担うことになります。
Operations Hubのオートメーション機能詳細については、以下のブログで解説しています。ぜひご覧ください。
【ブログ】Operations Hubの注目機能:オートメーション、ワークフロー機能など
レベニューオペレーションの最新動向について知りたい方は、こちらの資料もご覧ください。