スモールステップは、最終的な目標を小さなステップに分割し、簡単な内容から少しずつ達成していく方法・考え方を意味します。言葉自体は聞いたことがあるものの、実際にどのように利用すれば良いのかわからないという方も多いでしょう。
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本記事では、スモールステップを活用するメリットや、目標設定から達成までの流れ、ビジネスシーンでの具体例を解説します。スモールステップで取り組めば、大きなプロジェクトであっても着実に前に進められ、チームとしての目標を達成できるようになります。
マーケティングや営業の担当者は、ぜひ参考にしてください。
スモールステップの原理とは
スモールステップとは、目標を細分化して段階的にクリアしていくことです。アメリカの心理学者である、バラス・スキナー氏が提唱した「プログラム学習」における、5つの原理のうちのひとつです。
当初は教育現場で用いられていた育成手法で、学習はステップを細分化して小さな成功体験をしたほうが良い、という考え方でした。現在では教育現場のみならず、ビジネスの現場で用いられることも多くなっています。
例えば、目標までの道のりが遠すぎると、途中で仕事へのモチベーションが下がったり、何をして良いのかわからなくなったりすることがあります。
スモールステップを利用すれば、計画的かつ段階的に目標達成に向けた進行が可能です。目標達成にいたる過程での挫折を防ぐ効果も期待できます。
スモールステップで取り組むメリット
スモールステップを活用するメリットは、主に次の4つです。
- 行動のハードルが下がる
- モチベーションが上がる
- 課題が見つかる
- 指導がしやすくなる
順番に見ていきましょう。
行動のハードルが下がる
小さな目標を設定することで、大きな目標に対する圧倒感も軽減され、行動のハードルを大きく下げられるというメリットがあります。
例えば、「1年で新規顧客を10件増やす」のような目標を立てた場合、目標に向けた具体的な行動がイメージしづらく、次のアクションが不明瞭になります。まずは「ペルソナを作成し、課題やニーズを明確化する」「過去の見込み客をリスト化する」のようにスモールステップを設定すれば、ハードルが下がり、次の行動に結びつきやすくなるでしょう。
モチベーションが上がる
目標を設定したり、達成感を得られたりすることで、意欲が高まります。これは、モチベーションに関わる脳内物質である、ドーパミンが分泌されることによる効果のひとつです。小さな目標を立て、ひとつずつ達成することで成功体験が得られるため、自信もつきます。
一歩一歩確実に前に進めるので、目標達成に近づいているという感覚もあり、さらなる行動の原動力につながります。
課題が見つかる
スモールステップで目標を細分化すると、課題やタスクが明確になります。
大きな目標を達成するには、道のりが遠すぎて、どうすれば良いのかわからなくなりがちですが、目標を細かく分けていくと課題や問題点が明らかになり、すべきことがわかるようになります。
課題が明確になれば、具体的な行動に移しやすくなるので、結果として最終的な目標達成に近づけるでしょう。
指導がしやすくなる
スモールステップは、部下を育成する上司にとってのメリットもあります。
まず、目標が細分化されているため、ポイントに絞った指導が可能です。大きな目標までの中間チェックポイントが多くなることで、こまめにフィードバックでき、サポートがしやすくなります。
また、課題を発見しやすく、個人の「できること」と「できないこと」が明確になるので、具体的かつ効果的な指導にもつながります。
スモールステップによる目標設定から達成までの流れ
スモールステップで取り組む際には、大きく以下の3つの手順に沿って行います。
- 最終目標を設定する
- 逆算して目標を細分化する
- 目標達成の報酬を与える
今回は、上司が部下の目標に対してスモールステップを設定する、というケースを想定して解説します。
1. 最終目標を設定する
まず、最終的な目標を決めましょう。目標は「売上〇〇万円達成」のみではなく、「いつまでに」「誰が」「どのように」達成するのかといった、具体的な見通しを立てておきます。
最終目標によって、このあとに設定する小さな目標も変わってくるためです。漠然としていた目標を言語化することにより、目指すべきゴールが明確になります。
2. 逆算して目標を細分化する
最終目標から逆算して、すべきことを細かく分けていく段階です。このとき、個人のレベルに合わせた設定を心がけるのがポイントです。難しすぎず、簡単すぎない程度の目標を決めましょう。
大切なのは、細分化しすぎないことです。大目標までの道のりが長すぎると、今何のために何をしているのかが、わからなくなってしまうことがあります。そのため、具体的で、すぐ行動に移せるところまで目標が分割できたら完了です。
3. 目標達成の報酬を与える
細分化した目標や最終目標の達成に対して、具体的な報酬を定めることで、モチベーションを高められます。人は、報酬があると意欲が高まる性質があるため、報酬設定は効果的です。
報酬の内容は金銭的なものだけでなく、社内での評価や成果物の公表など、さまざまな形式が考えられます。ただし、報酬が適切でない場合や達成が容易すぎる場合には、逆にモチベーションを低下させる恐れがあるため、バランスを考慮しなければなりません。
スモールステップのデメリット・注意点
スモールステップは、目標達成のために非常に有効な手段ですが、次の点には注意が必要です。
- 最終目標を見失いやすい
- 達成までに時間がかかる
それぞれ、気をつけるべきポイントを確認しましょう。
最終目標を見失いやすい
スモールステップは目標を段階的に分割しますが、あまり細かくしすぎると、途中で最終目標を見失いやすくなります。目の前の目標に集中しすぎるあまり、全体のビジョンや長期的な目標を忘れがちになってしまいます。
最終目標を意識することなく、漫然とタスクをこなしていくと、本来の目的から逸れることがあるので、定期的に大目標を振り返り、進捗状況と最終的な目標の整合性を確認しましょう。スモールステップの達成度合いを常に全体のビジョンと比較して、ずれそうであれば軌道修正を行う必要があります。
達成までに時間がかかる
スモールステップは、ひとつずつの小さな目標を確実に達成していく方法のため、どうしても時間を要してしまいます。したがって、目標達成までの期限が短い場合には適していません。
スモールステップの利用は、十分に時間をかけられる目標を対象にしましょう。
スモールステップの具体例
ここでは、「部下の育成」と「売上目標の達成」を最終目標とした場合の、スモールステップの具体例を紹介します。
部下の育成
プレゼンテーションの上達を目指す部下を育成するケースです。
- 20代社員:資料作成は得意だが、肝心のプレゼンは緊張して、話すスピードが速くなる
- 課題:プレゼン本番で早口になってしまうため、相手に内容が十分伝わらない
このように「プレゼンが上手くなりたい」という目標があっても、具体的に何からすれば良いのかわからないことがあります。
そこで上司は、「なぜ上手くできないのか」「緊張する原因は何か」を分析して、スモールステップを設定します。
緊張する原因を分析すると、「聴いている人の反応がわからない」ことが最大の要因でした。聞き手の表情などから、自分の話が伝わっているかどうかが読み取れず不安になり、余計に緊張を募らせていたことが判明したわけです。
そこで、最初のステップとして「プレゼン中に意識して、特定の相手に目を合わせる」ことを課しました。
聞き手の1人に集中した結果、自然と相手の反応が伺えるようになり、緊張が和らぎます。聴衆の反応がつかめるようになったことで、話すスピードも調整できるようになりました。
「プレゼンが上手くなりたい」という目標に対し、「特定の相手に目を合わせる」というスモールステップを設定し、プレゼン中の早口を改善した例です。
売上目標の達成
ここでは、年間の売上目標を1億円と設定した場合を考えましょう。このケースでは、従業員にとっては「目標1億円」が他人事に感じられ、具体的に個人が起こすべき行動の検討がつきにくい、という課題があります。
まずは、年間の売上目標から月ごとに達成したい売上目標に細分化します。そのうえで、月ごとの売上目標に向けた行動をリストアップしましょう。
マーケティング部門であれば、以下のようなステップが挙げられます。
- 顧客のリピート率を高める
- 客単価を上げる
- 新規顧客の開拓 など
例えば「顧客のリピート率を高める」であれば、「リピート率を上げるために何をすべきか」を考えられるでしょう。
このように、最終目標達成のために目標を細分化していけば、具体的な行動が見えてきます。
スモールステップを活用して目標を達成しよう
スモールステップは、大きな目標を小さなステップに分割し、段階的に取り組む方法です。このアプローチは、高い目標であっても、達成可能な複数の目標に分解することで、目的に向かって着実に前進できる効果的な手段です。
ただし、達成までに時間がかかるため、時間的な制約が少ない目標の活用に向いています。また、細分化した目標ばかりに目がいき、最終目標を見失わないよう注意が必要です。
スモールステップを適切に活用することで、従業員のモチベーション向上や、課題・タスクの明確化などのメリットが得られます。本記事で紹介した活用の手順や注意点を意識したうえで、最終的な目標を達成しましょう。