有効求人倍率は年々上昇傾向にあり、企業にとっては人材確保が急務となっています。売り手市場の今、自社の求人広告が埋もれてしまわないためにも、認知度アップや差別化への取り組みが、より一層求められるようになるでしょう。
そうしたなか、注目されているのが「採用動画」の活用です。採用動画の制作においては、内容の検討はもちろんのこと、応募につなげるCTAやフォーム設置といった誘導の仕組みが欠かせません。
今回は、採用動画を導入するメリットともに、制作における5つのポイントや制作後の動画運用について解説します。
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採用動画を作成するメリット
優秀な人材を獲得するために、多くの企業がさまざまな方法でアピールを行っています。その手段の一つとして採用動画を取り入れている企業も多く、求職者側も判断材料として捉えるようになっています。
ここでは、改めて採用活動に動画を導入するメリットを確認してみましょう。
記憶に残りやすい
動画の一番のメリットは、文字のみのコンテンツと異なり、視覚と聴覚によって多くの情報を届けられるため、記憶に残りやすくなる点です。短時間でもストーリーを伝えやすいメディアといえるでしょう。
文字情報は、読み手側が積極的に読む姿勢が必要です。一方動画は受動的な性質が強く、流れてくる音や移り変わる画面を感覚的に受け止めやすいのもメリットでしょう。
また、スマートフォンの普及によって動画の拡散も容易になり、SNSなどを通して注目を集める可能性も秘めています。
採用活動におけるコスト削減に
採用動画は、コスト削減に役立つ可能性も持っています。例えば、遠方に住む求職者に対して動画を使うことによって、ダイレクトに情報を届ける仕組みを作ることができます。地方で説明会を開催しようとすると、移動コストが高くついてしまいますが、動画なら場所や時間を問わずに情報提供が可能なため、コスト削減が可能です。幅広い地域に自社の採用情報を届けられれば、全国規模での母集団形成が期待できるでしょう。
また、画像や文字だけでは表面的な印象になりやすい社内の雰囲気も、動画ならリアルなイメージを伝えやすく、社内文化を視覚的・聴覚的にアピールできるようになります。求職者にとっては働くイメージが明確になるため、内定後のギャップやミスマッチの軽減に役立ちます。結果的に、早期離職等による採用コストの増加も回避できる可能性が高まるでしょう。
求職者のモチベーション向上に寄与
レバレジーズ株式会社と株式会社プルークスが行った調査(2020年)によると、対象となった就活生の84%は採用動画の視聴によって「志望度が上がった」と回答しておりうち、27%は志望度が「大きく上がった」と回答しています。
さらに注目したいのが、採用動画の有用性です。志望度の変化に関わらず、全体の90%は「採用動画があった方が良い」と回答しており、採用動画がこれからの就職市場で大きなカギを握ることは間違いないでしょう。
同調査では「採用動画を見たことがある」と答えた学生のうち、半数以上が「会社説明会」や「会社ホームページ」と回答していますが、「YouTube」での視聴が前年度の2倍の46%に上っており、急速に増えていることがわかります。
動画視聴が可能なプラットフォームは多いものの、就活時によく使用されるSNSは圧倒的にTwitterが多く、次いでLINEという結果になっています。
ただし、就活生の多くはスマホを中心に使用しているため、タイミングによっては速度制限などの影響で動画を視聴できる環境が限られるケースがあります。採用動画を導入する際は、効果的な配信方法やタイミングを検討する必要があるでしょう。
採用動画の制作における5つのポイント
多くの求職者が採用動画を求めている中で、よりターゲットに響く動画を作るためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか。制作時に押さえておきたい5つのポイントをまとめました。
その1:ターゲット設定
採用活動のベースともいえるのが、ターゲットの設定です。人物像を明確にすることは、ターゲットマッチする動画を構成するための基本となります。また、ターゲットが主に使用するデバイスやメディアをリサーチし、相手に届きやすい仕組みを作ることも大切です。新卒のみを対象とする場合には、年齢層などが絞り込みやすいものの、中途採用となればターゲットが広がります。年齢や嗜好などをしっかり絞り込み、プラットフォームを選定してみましょう。
その2:目的の明確化
採用動画を活用できるシーンはさまざまあります。説明会のような限定されたシーンで使用するのか、求人広告として発信するのか、目的によって動画の方向性は異なります。活用シーンが幅広い採用動画だからこそ、目的をしっかり定めながら求職者に響くプランを考えましょう。
募集段階、応募・選考時、内定者フォローと、フェーズによっても定める目標が変わるはずです。目的を明確にしてメインとなる活用先を決めましょう。
その3:発信するチャネルの選択
ターゲットと目的が明確になったら、適切なチャネルを選択しましょう。オンライン説明会や求人サイトで配信するのか、動画サイトやSNSを利用するのかによって、誘導方法やアプローチ法が異なります。
動画が活用できるプラットフォームは多く、自社サイトをはじめ、メール動画やソーシャル広告など、選択肢は幅広いものです。ターゲットに合わせたチャネルを選択するだけでなく、場合によってはマルチチャネルでの運用を考えるとよいでしょう。
ただし、それぞれのメディアの特性を考慮し、動画の構成や長さなどに注意する必要があります。
その4:ストーリーを作る
いよいよ具体的な動画の内容を検討します。まずは、ターゲットが求める情報を盛り込んだコンテンツにすることが基本です。一方的に企業側の利点だけを盛り込むのではなく、しっかりと求職者の視点に立ち、インバウンドを意識した訴求を考えてみましょう。
例えば、新卒就活生が企業を選ぶポイントに着目し、相手が知りたがっている情報を細かくまとめてみるのも一案です。また、ストーリー性を持たせることで、ターゲットに響きやすい動画となります。差別化につながるオリジナルストーリーを意識しながら、ターゲットの共感、関心につながるポイントを押さえましょう。
その5:視聴後の導線設計にも配慮する
採用活動に動画を取り入れるのは、応募数アップやターゲットからのアプローチを求めるのが大きな目的のはずです。そのため、採用動画としての成果を考えるうえでは、応募サイトやフォームなどへの誘導を明確に行う必要があります。CTAを検討するだけでなく、わかりやすい導線を作るといったプランも事前に考えることが大切です。
また、動画のイメージと誘導先のイメージが異なってしまうと、離脱につながる可能性もあります。サイトやフォームの質にも注意し、一貫したプランを検討してみましょう。
採用動画の代表的な5つの手法
採用動画には多くの手法があり、それぞれ目的に合ったシナリオを検討することになります。手法を選ぶ際の参考として、ここでは採用動画の代表的な手法を5つご紹介します。
1. インタビュー動画
社員や役員へのインタビューによって構成されるのが、インタビュー動画です。実際に働く人のリアルな声や働く様子を届けることで、企業文化や働くイメージを伝えやすく、ミスマッチや早期離職を予防するのに役立ちます。インタビュー動画は自社制作が行いやすく、柔軟に構成しやすいため、オリジナルのストーリーを作りやすい点もメリットです。類似する手法として座談会形式もあります。
2. 業務内容やオフィス環境の紹介動画
業務中の様子や、オフィス環境を紹介する採用動画もよく見られるものです。特に、福利厚生に関する情報は求職者からのニーズも高く、社内イベントやランチ風景、社食の様子などを紹介するのも、効果的なアプローチ法といえます。
ただし、オフィスや周辺環境を撮影する際には、著作権や所有権のあるものを撮影しないように注意する必要があります。もしくは、事前に許可申請を取るといった対策で、不安要素を残さないことが大切です。
3. プレゼン形式
資料を使って、募集要項などをしっかり伝えるプレゼン形式は、伝えたい情報をコンパクトにまとめられるという利点があります。ただし、淡々とした解説になりがちなため、広告としてのインパクトが薄くなってしまうのが難点です。説明会で活用されることが多く、時間短縮化やコスト軽減などに有効な手法といえるでしょう。
4. ブランドイメージ動画
「かっこいい」、「おもしろい」、「ユニーク」といったイメージを醸成できるブランドイメージ動画は、ブランディング効果も期待できる手法です。ブランドイメージを前面に出すことで、ニーズのあるターゲット層に訴求します。
興味・関心が集まりやすく拡散力が強い一方で、詳しい募集要項などが伝わりづらいという点に注意する必要があります。
5. インタラクティブ動画
近年注目されているのが、見るだけではなく、何かしらのアクションを促せるインタラクティブ動画です。再生中の動画に外部サイトへのリンクを貼って誘導したり、ストーリーを選択させたりするものもあり、ターゲットをより惹きつける効果を期待できます。CTAにおいても効果的なプランを考えやすいのも魅力でしょう。
ただし、インタラクティブ動画は容量が大きくなりやすいため、スマホユーザーには通信の負担が大きくなりがちです。速度制限が気になる求職者にとっては、完了率が悪くなってしまいかねないというデメリットがあることも覚えておきましょう。
採用動画活用における課題と対策
上述したとおり、採用動画を活用するメリットは多く、さまざまな手法によってターゲットを惹きつける仕組みが作りやすいツールといえます。その一方で、動画活用には課題も残ります。ここでは、考えられる課題と、その対策をまとめました。
費用対効果を高めるためにも、戦略的なプランを練り、しっかり対策を行いましょう。
コストパフォーマンスを考慮する
動画活用において、特に気になるのがコスト面でしょう。制作時だけでなく、その後の運用にもコストがかかります。広く拡散するためにはソーシャル広告が有効ですが、多くのメディアを使用したければ、その分、余裕を持った予算が必要です。
予算を抑えたい場合、まず思いつくのが自社制作です。若い層には、InstagramやTiKTokで配信されるような、スマートフォンで撮影したカジュアルな動画も人気があることから、撮影機材等にかかる制作費を抑えることも可能でしょう。そのほか、市販されている既存の素材を使用することで、コスト削減に取り組む方法もあります。また、社内インタビューを中心に構成するのも一つの手です。
動画制作は、予算をかければよいというものではありません。セールスポイントや訴求メッセージ、ストーリー性が重視されます。エンターテインメントとして価値を高めたとしても、応募数の増加につながらなければ良い投資とはいえません。
CTAをしっかり考えながら、コストパフォーマンスの良い手法を選択することが大切です。
採用活動としての一貫性が必要
動画としてのクオリティが高く、注目を集められるコンテンツになったとしても、採用を目的とするかぎり、応募が増えるなどの成果が挙がらなければ意味がありません。また、採用動画でうたったコンセプトと、実際の面接時に感じた雰囲気が異なっていると、内定後の辞退が増える可能性もあるでしょう。動画単体で戦略を考えるのではなく、採用活動を通して一貫性のあるコンセプト、一貫性のある対応になるように取り組む必要があります。
応募先への誘導は明確に
インタラクティブ動画のように、ダイレクトに応募サイトやフォームにつなげる方法もありますが、まだまだ一般的な手法とは言えません。どのような方法でCTAを取り、応募先へ誘導するのかまで考えていなければ、成果を上げるのは難しいでしょう。また、動画はSNS等でシェアされる可能性が高いメディアです。動画の概要欄にしか応募フォームへのリンクがないといった状況の場合、動画単体で拡散された際にCTAを取るのも難しくなります。拡散されることを前提に、どのような形で応募先を明記するかも事前に考慮しておきましょう。
そのほか、自社サイトに採用動画を掲載する場合には、訪問者にとってわかりやすい配置を心がけ、フォームへの連携を考えたレイアウトを検討することも大切です。
アクセス・コンバージョン数を高める工夫が必要
動画を制作・配信したとしても、ターゲット層に届き、視聴してもらい、興味をもってもらわなければ、応募にはつながりません。採用動画へのアクセス、視聴回数を増やし、コンバージョンを上げる工夫を取り入れましょう。
例えば、動画時間は短くし、コンパクトにして飽きさせない作りにするのも一案です。動画サイズを工夫するのもよいでしょう。InstagramやTiKTokなどの影響で、縦長の動画を見慣れている若者層も増えています。動画といえば横長が一般的ですが、あえてサイズを変えることで興味を引く方法もあります。
さらに、動画公開のタイミングや配信期間にも考慮し、その他の広告と連携させることも検討しましょう。ただし、複数のプラットフォームやアプリによるマルチチャネルで運用する場合には、管理体制を整える必要があることも覚えておきましょう。
PDCAサイクルを回すための効果測定は欠かさずに
採用動画は、その年のトレンドや目的に合わせて、一年ごと、フェーズごとに制作されるケースが多いかもしれません。しかし、今後の採用ノウハウを蓄積するためには、PDCAサイクルをしっかり回しておきたいところです。そのためには、指標となる効果測定が欠かせません。KPIを設定しながら、再生率とともに、応募につながるコンバージョンの測定を行いましょう。単独でのキャンペーンにこだわらず、コンバージョン計測を目的とする動画を別枠で設定し、分析するのも一つの方法です。
動画を活用し、採用市場での優位性を高めよう
採用動画にはさまざまなメリットがありますが、成果につなげるには戦略的なプランが必要です。採用動画は、募集要項だけを伝えるものではありません。とはいえ、かっこよさやおもしろさといった話題性の高い内容にとらわれてしまうと、誘導先がわかりづらく、アクションにつながらない可能性もあるでしょう。
採用動画の費用対効果を考え、投資としてのコストパフォーマンスを考えるなら、動画の内容はもちろんのこと、配信するタイミングやチャネル、効果的なプラットフォームを選択し、適切なCTAやフォームの設置といった仕組み作りを行うことが欠かせません。また、配信後は、PDCAを回すための指標づくりも大切です。
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