数年前、私は話題を聞きつけて当時まだ新しかったTikTokをダウンロードしました。起動すると、他のユーザーが作成した陽気な動画が、耳慣れない音楽と共にループ再生され、そうした投稿の数々にすっかり面食らってしまいました。印象としては、数年前にTwitterに買収され、その後サービスを終了した、ループ動画の共有プラットフォームVine(英語)を思い起こさせました。
アプリを使い続けていくうちに、完全なカオスだと感じました。ただし「良い意味で」です。延々と流れ込んでくる風変わりな動画には何の脈絡もないものの、見ていると面白く、週末をつぶすほど熱中してしまいました。
リリースから1年近く経ち、あるニュース記事(英語)を目にしました。TikTokのユーザー数の飛躍的な増加により、ブランド各社の関心が高まっているというのです。あの楽しいプラットフォームが企業から注目されていることに、私は衝撃を受けました。
HubSpotブログで取り上げるテーマを話し合うミーティングで、私がTikTok関連の記事をいくつか提案したところ、アプリの存在を知っていた同僚たちも同じように、TikTokマーケティングのトレンドに驚いていました。
一方で、こんな質問をした同僚もいました。「TikTokって何? (米国ポップ歌手の)Ke$haの曲しか思いつかないな」
マーケティングに携わる皆さんなら、TikTokの名前も、最初の1年間でダウンロード回数が10億回に達した(英語)こともおそらくご存じでしょう。その一方で、TikTokに関する記事を読んだり、一見何ということもない動画投稿を見かけたりするにつけ、困惑している方も多いかもしれません。
一体、TikTokの何がユーザーを夢中にさせているのでしょうか? そして、もっと重要な点として、実に風変わりでニッチなこのアプリに、マーケティング担当者は注視すべきなのでしょうか?
この記事では、TikTokの魅力を解明するとともに、今後マーケティング担当者がTikTokを活用するコツを説明します。また、マーケティング活動にこのプラットフォームを使いこなしているブランドの例もご紹介します。
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TikTokとは?
TikTokは、中国のByteDanceというIT企業が開発したSNSアプリです。BGMや効果音、視覚効果を設定した15秒または60秒の短い動画を録画、編集、共有でき、投稿された動画はループ再生されます。
2017年、ByteDanceはMusical.lyという動画共有アプリ事業を買収(英語)し、2018年に新アプリのTikTokと統合しました。
今やアクティブユーザー月間5億人(英語)を超えるこのアプリは、前身であるMusical.lyと、かつて存在したショートビデオアプリのVineを融合させたような仕様となっています。
TikTokに統合される以前のMusical.lyは、ほぼ同じレイアウトをしていました。Musical.lyはリップシンク(口パク)動画を共有できるアプリで、音源に合わせて友人と仮想的にデュエットすることもできました。下図は、Musical.lyが出していた広告です。当時の外観のイメージをつかんでいただけるかと思います。
画像提供:TikTok
一方、VineのレイアウトはInstagramに似ていました。Vineでは6秒の簡単な動画を録画して投稿でき、投稿した動画はループ再生されます。ほとんどがコメディータッチの動画です。VineにはBGMの追加機能が後期になるまで搭載されていませんでしたが、ユーザーの多くは後ろで音楽を流すなど、思い思いに工夫して効果音を付けていました。
TikTokを起動すると(Musical.lyと同様の)動画フィードが表示され、楽曲のモンタージュから、おかしなARフィルターを適用したショートビデオまで、さまざまな投稿スタイルの動画が再生されます。フィードの外観はこちらのスクリーンショットを参照してください。
SnapchatやInstagramといった、ビジュアルコンテンツを中心とする他のアプリと同様に、TikTokは10代から20代前半のユーザー(英語)が創造性を解放させる場となりました。どのようなコンテンツが投稿されているかをイメージしやすいよう、TikTokの公式YouTubeページに投稿されたハイライト動画をご紹介します。
TikTokはリリース後すぐに若年層の間で人気となり、著名人やコメディアンが話題にしたり、実際に使用したりするようになりました。米国のコメディアンで、人気トーク番組「ザ トゥナイト ショー」の司会を務めるジミー・ファロンもその1人です。同番組内で、ファロンが観客にTikTokを紹介している場面をご覧ください。
TikTok投稿の例
TikTokの個人での使用またはビジネス活用に関心があるなら、実際の投稿を見てみると、参考になるだけでなく、非常に楽しめると思います。ここからは、TikTokの一般的な投稿スタイルをいくつかご紹介します。
音源を利用した動画
TikTokには日々、音源を合成した短い音楽動画が多数投稿されています。単なるリップシンク動画を投稿しているだけのユーザーもいれば、工夫を凝らしたコンテンツを投稿しているユーザーもいます。面白い例として、次の動画ではビデオゲームのストーリー展開と歌詞付きの楽曲を組み合わせ、メインキャラクターの動きと歌詞をうまく連動させています。
コメディータッチの動画
TikTokに投稿された動画は笑いを誘うものがほとんどです。短くシンプルで笑える動画がたくさんある中、ショートストーリーのような作り込まれた投稿も見られます。次の動画では、バカンスに出かけようとする猫をうまく表現しています。
特殊効果を施した動画
続いて、AR技術が取り入れられた、TikTokの顔フィルターを活用した面白い動画を見てみましょう。
デュエット動画
デュエット機能を使用すると、投稿済みの音楽動画に呼応する形で、自分も同じ曲に乗せて動画を撮影できます。作成した動画は、元の動画と左右に並べて表示されます。これは元々Musical.lyの機能で、リップシンク動画に使われるだけでなく、違う映像を織り交ぜて面白いコンテンツになるよう工夫しているものもあります。
チャレンジ動画
もう1つ、TikTokでよく見かける投稿のタイプに「ハッシュタグチャレンジ」があります。このタイプの動画では、何か変わったことにチャレンジする様子を撮影して投稿するように呼びかけるのが一般的です。メキシコ料理レストランチェーンのChipotleのチャレンジに対し、参加者が投稿した動画を見てみましょう。これは#ChipotleLidFlipChallengeというハッシュタグチャレンジに対するもので、Chipotleのテイクアウト容器のお皿の部分だけを使用して、ふた(Lid)を裏返す(Flip)というチャレンジです。
TikTokのマーケティング活用事例
TikTokにはカジュアルな投稿ばかりが集まっていると思われるかもしれません。しかし、TikTokの人気と動画重視のレイアウトに着目したブランド各社が、ユニークで多岐にわたるマーケティング活動やブランド認知向上のキャンペーンを展開しています。実際に、Chipotle(英語)やワシントンポスト紙は、新たなオーディエンスを惹きつけるツールとしてTikTokを活用し始めています。
ただし、TikTokの動画にリンクを設定し、視聴者をウェブサイトに誘導することはできません。また、広告サービスは提供が開始されてまだ年月が経っていないので、リード(見込み客)の創出やトラフィックの拡大よりも、ブランド認知度の向上のために使用されているのが現状です。
TikTokでのマーケティング活動で成果を挙げるには、独創性の高さが求められます。エンターテイメントやマスコミ関連の企業であれば、既存のコンテンツを比較的簡単にTikTok動画に転用できるかもしれませんが、ブランドによっては企画段階からしっかりと取り組む必要があるでしょう。
TikTokの特性を生かしつつ、クリエイティブな方法で製品を拡散しているのが、ファッションブランドのGuessです。その一例として、同ブランドが実施したハッシュタグチャレンジ、#inMyDenimChallenge(英語)が挙げられます。このチャレンジではTikTokユーザーに対し、Guessの新製品のデニムを着用して(英語)音楽に乗せた動画を撮影するように呼びかけました。
この他にユニークなアプローチを採用している注目すべき組織として、ワシントンポスト紙(英語)と国連の国際農業開発基金(IFAD)の例をご紹介します。
ワシントンポストのTikTokアカウントでは、驚くほどカジュアルでコメディータッチのアプローチを採用しています。同社の投稿がこちらです。
ワシントンポストがさまざまなニュース編集室の笑える動画(英語)を投稿しているのに対して、IFADはダンスチャレンジを展開(英語)することで、地球温暖化や世界的な飢餓といった、深刻なトピックの認知度の向上に役立てています。以下は、国連の#danceforchangeというハッシュタグチャレンジに参加し、投稿された動画の例です。
TikTokの活用にいち早く乗り出したブランドとして、大規模かつ知名度の高い企業が目立つのは事実ですが、小規模企業にとっても、このプラットフォーム上での他社やインフルエンサーの活動を把握しておくだけの価値はあります。
大規模企業がブランディングに基づいて作成した動画も、クリエイティブなマーケティング戦略や、新しいプラットフォームでの試験的取り組みに関して、大いに参考になるでしょう。まだTikTokを利用する予定がなくても、他のブランドが投稿した動画をチェックしておくと、Instagramなどの他のビジュアルコンテンツのプラットフォームに投稿する際のアイデアが得られます。
ここまで紹介した動画を面白いと感じ、自社でも始めてみたいと思った方に向けて、初めての動画を作成する際の基本ポイントを説明します。TikTokには数多くの機能が搭載されているため、アプリの使い方についての詳細なガイドも公開する予定です。どうぞご期待ください。
TikTokへの投稿方法
- アプリを起動し、カメラタブ(画面下の[+]ボタン)をタップする
- 画面の周囲に表示されるラベルの付いたアイコンを使用し、音源やフィルターを選んで追加する
- 画面下の時間設定をタップし、動画の長さを選ぶ
- 動画の全部または一部を録画する
- 撮影が終了したら、フィルターやテキスト、BGM、ステッカーを追加する
- [次へ]をタップし、投稿の設定画面を開く
- 動画の説明の下にある設定項目をタップし、プライバシーとコメントに関する設定を調整する
- 公開する
1. アプリを起動し、カメラタブ(画面下の[+]ボタン)をタップする
2. 画面の周囲に表示されるラベルの付いたアイコンを使用し、音源やフィルターを選んで追加する
画面上部の中央に表示される[楽曲を選ぶ]を押すと、音源を選べます。また、カメラ画面の左下にある[エフェクト]ボタンでは、高度なARフィルターや特殊効果を付け加えられます。
3. 画面下の時間設定をタップし、動画の長さを選ぶ
動画の長さは、15秒または60秒を選択できます。また、ここから「フォトモーション」モードを起動することも可能です。このモードでは写真をアップロードし、テンプレートを使用してスライドショー形式の動画を作成できます。
4. 動画の全部または一部を録画する
撮影ボタンを長押しして録画します。指を離すと一時停止します。
5. 撮影が終了したら、フィルターやテキスト、BGM、ステッカーを追加する
6. [次へ]をタップし、投稿の設定画面を開く
検索にヒットしやすいよう、動画の説明や関連するハッシュタグを入力します。[下書き]をタップすると、動画を保存して後から投稿できます。
7. 動画の説明の下にある設定項目をタップし、プライバシーとコメントに関する設定を調整する
さらに、自身の動画に呼応した動画を投稿することを他のユーザーに許可しない場合には、デュエット機能をオフにすることもできます。
8. 公開する
TikTokの今後
TikTokの人気は当面続いていくでしょう。Facebookなどの企業が類似アプリの開発(英語)に乗り出していますが、全くと言ってよいほど成功していません。
TikTokの成長は著しく、まだ競合状況も激しくないため、今は効果的な活用方法の見当がつかなくても、動向を常に注視しておくことを強くお勧めします。
自社のマーケティング戦略にTikTokを取り入れるメリットがあると感じたら、アプリをダウンロードして試験的に投稿してみましょう。その結果、競争他社よりはるか先に、エンゲージメントを得られるコンテンツとそうでないコンテンツについての情報を集めることができます。言うまでもありませんが、TikTokは比較的新しいアプリなので、投稿可能なコンテンツとそうでないコンテンツのルールや基準はそこまで定まっていません。
現時点でTikTokに関してマーケティング担当者の皆さまにお伝えできるのは、既成概念にとらわれず、新しいプラットフォームで試験的取り組みを実施すれば、新たなオーディエンスへのリーチとブランド認知の向上に役立つということだけです。
TikTokへの初めての投稿内容についてアイデアを練るときには、次に挙げる点を意識することで、クリエイティブな発想が湧きやすくなります。
- フィルターや音源をうまく活用する
- 面白いアイデアを思い切って試す
- ハッシュタグチャレンジを実施して参加者に返信し、ユーザーのエンゲージメントを高める
- 自社のブランドや製品、サービス、企業のジングルなどをクリエイティブな方法で印象付ける
- ファンに自社の舞台裏を届けるような動画の投稿を検討する
その他の新たに登場した注目のソーシャルプラットフォーム(英語)についても、ぜひチェックしてみてください。