リモートワーク(テレワーク)による物理的・業務的な分断が加速していく中で、これまで縦割りで管理していたリソースや情報を統合して全体最適を目指す「レベニューオペレーション(RevOps)」に取り組む企業が、米国を中心に増加しています。

→ダウンロード: レベニューオペレーション最新動向無料レポート

レベニューオペレーションは、収益に関連する部門の運営機能を調整し、よりよい顧客体験を届けることです。結果、企業は継続率や収益率の向上が期待できます。ボストン・コンサルティング・グループは、レベニューオペレーションを導入した米国のB2Bハイテク企業において、営業の生産性が10~20%向上したという調査結果を発表しました。

レベニューオペレーションの導入によって、部門間の連携を促進するだけでなく、顧客体験の向上も期待できるため、B2Bの営業活動を分業体制で行ってきた組織の場合、顧客中心の組織へ変化するきっかけとなるでしょう。

本記事では、レベニューオペレーション導入のポイント、企業の成功事例を紹介します。海外の先進的な取り組みを知り、事業収益拡大のヒントにしてみてください。

無料テンプレート

レベニューオペレーション最新動向レポート

レベニューオペレーション (RevOps) とは?

レベニューオペレーション (RevOps) とは?

まずはレベニューオペレーションがどのような取り組みかを理解していきましょう。
 

顧客体験向上と収益拡大を目指すためのレベニューオペレーション戦略

レベニューオペレーション(RevOps)とは、顧客に一貫性のある良質な体験を提供することで、収益拡大を目指す取り組みです。

レベニューオペレーションは、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスといった収益向上に影響を与える部門の連携によって実現します。各部門のデータを統合管理し、収益部門の目的を共通化するプロセスを通して、顧客体験や収益の向上を目指します。

導入する際には、考え方や方針を浸透させるだけではなく、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスの連携をバックアップするレベニューオペレーション専門チームを構築しましょう。チームの設置により、各部門は情報やデータを共有し、部門ごとに分かれていたオペレーションやツールの統合が実現します。

綿密なレベニューオペレーション戦略が構築できれば、顧客満足を高め、収益の向上が期待できます。
 

レベニューオペレーション (RevOps)を構成する3つのオペレーション

レベニューオペレーションは、主に以下3つのオペレーションによって構成されるケースがほとんどです。レベニューオペレーション専任チームを設置する際は、部門ごとに別れていた機能を統合する必要があります。
 

セールスオペレーション(SalesOps)

営業チームが持続的な成長基盤を築くために、営業データ分析や売上予測、リード(見込み顧客情報)の創出、契約書作成などあらゆるサポート業務を担うのがセールスオペレーションの役割です。
 

マーケティングオペレーション(Marketing Ops)

マーケティングオペレーション部門は、企業の全体的なマーケティング戦略を推進し、その成功可能性を高める役割を果たします。
 

カスタマーサクセス・サポートオペレーション

カスタマーサクセス・サポートオペレーション部門は、社内の顧客データを活用することをミッションに、顧客データ分析や関連システムの管理・運用を行うチームです。
 

「営業とマーケティング」だけを連携させることが目的ではない

レベニューオペレーションは、顧客のライフサイクル全体を最適化して収益性を高めることに重きを置いています。営業とマーケティングだけの連携が目的ではありません。

レベニューオペレーションの肝になるのが、シームレスで一貫性のある高品質な顧客体験を創出することです。

マーケティングと営業だけを連携させた場合、見込み顧客のスムーズな購買体験を創出できる一方で、その後の問い合わせや新たなニーズに対して十分に応えられず、購買後の顧客体験が損なわれてしまいます。

顧客の購買体験を向上させるには、マーケティングと営業に加えて、継続率アップを目標に購買後の顧客フォローを行うカスタマーサクセスの連携が必要です。
 

レベニューオペレーション (RevOps) 構築に必要な要素

レベニューオペレーション (RevOps) 構築に必要な要素

レベニューオペレーションの構築のためには、大きく分けて5つの要素が必要です。
 

部門間連携

レベニューオペレーションの構築には前提として、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどの部門間連携や情報統合が必要です。部門間でSLA(サービスレベルアグリーメント:サービスレベル合意書)を締結し、使用する言葉の定義、共通の目的、役割分担などを明確に言語化しておくと良いでしょう。
 

データの一元管理

レベニューオペレーションを推進するうえでは、各部門に分散したデータを集約し、統合して管理できる環境が必須となります。顧客関係管理のソリューションであるSalesforceやZoho、当社が提供するHubSpotなどのCRMプラットフォームツールを活用し、各チームの分析に必要なデータを統合管理できる環境を構築しましょう。
 

データ分析

最も重要なのが、取得したデータをもとにした意思決定です。

社内のデータ連携を強化し、企業戦略に基づいた部門すべてのKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を記録・共有する必要があります。例えば、共通のKGIである収益目標の達成に向けて、1か月のリード数、商談数、カスタマーサービスのスコア、顧客満足度のスコア、顧客生涯価値(LTV)などの各部門で立てたKPIを全体共有し、それらをもとに各部門が意思決定をしていく方法が考えられるでしょう。

また運用に際しては、全ての基礎となる「取得対象とするデータの選定」と「評価指標の選定」を行った上で、データを統合管理していくことが重要です。上記のようなKPIに紐づくデータのほか、会計、内部情報など可能な限り多くのデータが集約されている状態が望ましいでしょう。
 

収益戦略

レベニューオペレーションで蓄積されたデータは、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの施策実行や企画立案に役立ちます。

さらに企業戦略や年間計画の策定に活用できるほか、サービスやキャンペーン、売上や収益の戦略、人員計画、社内評価、売上目標、給与の決定など、様々な場面で使用できます。

蓄積されたデータに基づいて、企業として達成可能な収益目標と、目標を達成するために必要なステップを導き出せるでしょう。
 

レベニューオペレーションの導入状況

レベニューオペレーションは米国を中心に急速に広まっており、現在では新しい職種として認識されています。

LeanDataの調査によると、2018~2019年の1年間でレベニューオペレーション部門のある企業の割合が35%から58%に急増しています。また、2018年のForresterの調査では、「レベニューオペレーション担当ディレクター」が「チーフセールスオフィサー」など営業系の職種よりも多くなっていることが明らかになりました。
 

レベニューオペレーションの取り組み事例

レベニューオペレーションの取り組み事例

海外ではレベニューオペレーションを活用し、顧客体験向上と収益拡大につなげた企業も生まれています。
 

顧客分析でユーザー113%増加「ItsMyCargo」

ItsMyCargoは、デンマーク・コペンハーゲンに本社を持つロジスティクス企業です。

同社が自社の顧客分析を行った結果、サイト離脱者の多くが輸送料金確認目的の訪問者であることがわかりました。そこで、少ないステップで見積金額を算出できるようWebサイトをリニューアルしたところ、ユニークユーザー数をリニューアル前から72.73%増加させることができました。

さらに顧客分析を行う中で、一定数のユーザーが見積作成ツールとしてWebサイトを利用していることを発見しました。この分析をもとに、見積作成ツールを提供して利用前に顧客登録を促し、それをベースに作成された見込み客リストに対して営業チームがフォローした結果、顧客のサービス利用数が前年比で113%増加しました。
 

レベニューオペレーションで顧客体験をより良くしよう

レベニューオペレーションとは、各部門が一つの収益目標を共有し、協力しあうことで、顧客のサービス継続率や収益率の向上を目指す取り組みです。

近年はサブスクリプション型のビジネスが増え、単に新規契約数を伸ばすだけではなく、顧客との関係性強化が求められるようになってきました。

レベニューオペレーションを導入すれば、収益に関係する部門の運営機能は統合され、顧客にとって最適な顧客体験が提供できるようになるため、収益拡大のみならず、顧客中心の組織へと変革することにもつながるでしょう。

本記事ではレベニューオペレーションの意味や企業の取り組みについて紹介してきました。

まだ国内では事例も少なく参考になる情報がまだ少ないものの、HubSpotが2021年にリリースしたOperations Hubをはじめ、RevOps関連のサービスが登場しはじめています。興味がある方は、本記事などを参考にまず情報を整理してみることをおすすめします。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

レベニューオペレーション最新動向レポート

 レベニューオペレーション最新動向レポート

元記事発行日: 2021年3月26日、最終更新日: 2023年1月19日