ボート競技において、舵手はとても重要な存在です。最後尾に座って舵を取り、漕手にリズムを指示します。舵手がいなければ、いくら選りすぐりのアスリートたちでも、本来の力を発揮して、速く、力強く、効率的にボートを前進させることはできないでしょう。営業チームにとっての舵手の役目を果たすのが、「セールスオペレーション」です。

→ダウンロード: 営業計画の無料テンプレート

HubSpotのセールスストラテジー&オペレーション担当バイスプレジデントを務めるChanning Ferrerは、セールスオペレーションについて「計画を立て、体制を見直し、改善を図ることで、営業組織の生産性を最大化しようと力を尽くす」役割だと述べています。

本記事では、セールスオペレーションの概要、営業という難しいパズルの重要なピースと言われる理由、独自のセールス オペレーション チームを編成する(または既存のチームをさらに強化する)方法を説明します。

→ダウンロード:無料のコンタクト転換率&取引成約率計算用ツール

セールスオペレーションの日常業務の例をいくつか挙げてみましょう。

  • 営業プロセスのボトルネックに関する意思決定を行うために、データやレポートを参照する
  • リードやプロスペクト(営業段階の見込み客)の新規開拓に関して営業チームをサポートする
  • 営業に役立つテクノロジーやベストプラクティスを実装する

セールスオペレーションとセールスイネーブルメントの違いは?

「セールスオペレーション」と「セールスイネーブルメント」は響きがよく似ています。セールスイネーブルメントも同じく、営業チームの生産性と収益を向上させるための取り組みです。では社内に両方の役割を採用する必要はあるのでしょうか。

簡潔にお答えするなら「Yes」です。

Channing Ferrerはこう述べています。「私はセールスイネーブルメントを、セールスオペレーションの1つの要素だと考えます。セールスオペレーションはデータを分析して意思決定を行い、セールスイネーブルメントはその決定を実行に移すのです」

Ferrerの説明によると、例えばセールスオペレーションチームが、営業プロセスの「課題把握」ステージにおける営業チームの対応があまりに拙速で、成約率が損なわれていると判断したときには、セールスイネーブルメントチームはその判断を受けて、活動を改善するための営業トレーニングを用意します。

もう1つ付け加えると、セールスイネーブルメントはカスタマージャーニーの早い段階に関わる機会が多く、営業チームへのトレーニングやプロスペクトへの情報提供に注力します。一方、セールスオペレーションは、担当領域や営業報酬の設定などの上層部による決定事項に加え、交渉と取引成立のステージに密接に関わります。

セールスオペレーションチームとセールスイネーブルメントチームは、成果を競い合うのではなく、明確に業務を分担することをお勧めしますこの2つのチームは、目標も、成果も、重視する測定指標も異なるはずです(セールス オペレーションチームの体制については後述します)。

双方のチームが定期的に互いの進行中のプロジェクトについて話し合う場を設け、重複している作業がないか確認するようにしましょう。

セールスオペレーションを導入する広義の目的は、営業チームの効率、生産性、業績を高めることです。これを実現するために、セールス オペレーション チームには数々の役割を担い、その責任を全うすることが求められます。ではどのような役割を担うべきなのか、代表的なものを挙げていきましょう。

1. 部門間の連携

セールスオペレーションは、各部門が連携していることを経営陣が確認するビジネス管理プロセスであるセールス&オペレーションプランニング(S&OP)において中心的な役割を担うことで、営業チームの味方になります。

2. 営業データの管理

営業に関するデータを測定および評価し、製品、営業プロセス、キャンペーンの有効性を判断します。そうすることでセールスオペレーションは、製品やサービスについて望ましい成果が挙がっているかどうか確認し、思わしくない結果がデータに表れている場合には新たな営業計画やプロセスの実装を選択できます。

また、営業戦略を立案して販売目標の達成を目指すには、社内の業績データに加え、外部の市場調査や競合他社の動向データを活用することも必要です。

3. 売上予測

過去のデータとパフォーマンスの傾向を調査し、把握することにより、セールスオペレーションは今後の売上を予測し、将来の目標とニーズについて報告することができます。売上予測を立てておけば、営業チームはまだ回避や修正できる時間があるうちに、潜在的な課題を洗い出せるため、重要な取り組みです。

例として、営業チームがセールスサイクル期間に基づく予測モデルを使用している場合を考えてみましょう。平均的なセールスサイクルが4か月で、あるアカウントに対して営業担当者が既に1か月を費やしているとしたら、セールスオペレーションはこの営業担当者がその商談を成立させられる可能性を25%と予測します。

4. リードジェネレーション

リードジェネレーション(見込み客の獲得)、リードやコンタクトとのミーティング予約などの管理業務に対応します。その結果、営業担当者は営業活動そのものに集中できます。

セールスオペレーションでこうした業務に対応する上では、営業とマーケティングの連携についてのSLA(Service Level Agreement、サービス水準の合意)を確立しておくと効果的です。SLAは、営業チームがバイヤーペルソナに従う方法、MQL(マーケティング活動で獲得した見込み客)を受け取る営業担当者、セールスイネーブルメントのコンテンツの格納場所などを改めて確認し、コミュニケーションを明確にするのに役立ちます。

5. 業績管理

営業担当者の報酬計画とインセンティブを管理します。特に優れた業績に対する報酬制度を設けると共に、業績の停滞を認識して解決するためのプロセスも確立します。

さらに、定期的に営業の業績評価を実施したり、適切な評価の実施方法について営業マネージャーに指導したりする場合もあります。営業チームがビジネス成長のために尽力している間、セールス オペレーション チームもビジネス運営を改善するべく取り組んでいるのです。

6. 営業担当者のサポート

セールスオペレーションのミッションは、営業担当者の効率と成果を高めることです。その一環として、リードの提供、取引の管理、契約書の作成、時間管理スキルのトレーニングなどを行います。

場合によっては、HubSpotの営業支援CRMであるSales Hubなど、営業チームの負担軽減に役立つツールの購入もセールスオペレーションの役割になります。

7. 営業戦略

多くの場合、データ分析と予測を通じて、営業戦略を立案し、今後の販売目標を設定します。コンバージョンの改善、セールスサイクルの短縮、売上額の最大化を達成するための営業プロセスを構築する責任も負っています。

8. 営業チームとのコミュニケーション

営業活動やキャンペーンの成果を報告したり、契約成立などのニュースを知らせたりして、常に営業チームとの連携を図ります。

そのためには、Slackや社内Wikiなどのコミュニケーションチャネルを活用するのも有効です。また、CRM(顧客関係管理)ソフトウェアを導入すると、営業組織全体でデータや情報をスムーズに共有できるようになります。

9. 営業チームの編成

営業チームの体制づくりと編成に関与することで、営業チームの効率、成果、パフォーマンスを最大化します。

例えば、ある営業担当者が小規模企業の顧客の対応に強みを持っていて、他の担当者は大規模企業との顧客への対応を好んでいることが分かったとしましょう。その場合、セールスオペレーションは、営業担当者全員が得意な案件に対応できるよう、営業チームの再編成を検討する必要があります。

10. テクノロジーの管理

セールスオペレーションは、営業担当者の効率を高めるために、多くの場合ITチームと協力しながら、テクニカルツールやプラットフォームの実装と利用をマネージメントします。

11. 担当領域の定義

さまざまな営業の担当領域の定義と営業担当者への割り当てを担当します。担当領域によって、営業担当者のプロスペクト候補や、取得可能な報酬、勤務時間が左右されるので、これは重要な役割になります。

セールスオペレーションは営業戦略と報酬計画の立案にも関わるため、担当領域の定義も担当するのがよいでしょう。

12. トレーニング

優れた営業チームを編成するために、セールスオペレーションは新入社員と既存社員へのトレーニングを実施する責任も負います。また、強固なチームを維持し、仲間意識を醸成するために営業向けのメンタリングプログラムを作成する場合もあります。

ここに挙げた役割と責任は、セールス オペレーション チームに効果的な体制が築けていなければ、果たすことができません。次はこのチーム体制について見ていきましょう。

どのような組織を構築すればいいのか?

セールスオペレーションは複雑かつ重要性の高い職責を数多く背負っているため、適切なチームを編成できるかどうかが成功の分かれ道となります。

セールスオペレーションの組織構成例一般的に、セールスオペレーションチームには以下の2種類の能力が求められます。

  1. 戦術とサポート
  2. 戦略と設計

例えば、セールスオペレーションのプロジェクトとして自社CRMの設定と管理を行う場合、技術的な専門知識が求められるため、オペレーションに対する確固としたマインドセットを持ち、品質管理に真摯に取り組む人材を見つけることが重要です。

しかし、セールス オペレーション チームには、営業プロセスの各ステージを最適化するというミッションも課せられています。そのため、データからパターンを読み解き、すぐに使えるソリューションを考え出すスキルを持った人材も欠かせません。

強力なセールスオペレーション部門を構築したいと考えるなら、ミッションステートメントに則った上で、上記の両方の能力を持つ人材、または少なくともどちらか一方を備えた人材を複数採用する必要があります。

セールスオペレーションの業務の種類

セールス オペレーション チームを効果的に編成するには、いくつかの異なるポジションを設け、それぞれに非常に重要な役割を任せることが重要になります。

セールスオペレーション担当者

エントリーレベルのセールスオペレーション業務に従事します。0〜2年の業務経験、細部への注意力、技術的適性、コミュニケーション能力、マーケティングと営業の自動化に関する知識(または学習意欲)が求められます。

セールス オペレーション アナリスト

このポジションには、セールスオペレーション担当者よりも経験を積んでいることが求められ、通常は少なくとも3年のセールスオペレーションの実務経験が必要です。セールス オペレーション アナリストは、製品、マーケティング、分析、エンジニアリングなど、さまざまな職務に対応できる必要があります。

データモデリング、データマイニング、データ品質管理の経験だけでなく、問題解決スキルを有し、職務に対して積極的であることも重要です。Excelやビジネス インテリジェンス ツールに高度に習熟していることも非常に有益なスキルとなります。

シニア セールス オペレーション アナリスト

このポジションを務めるには、4年以上の経験が必要です。CRM、ビジネス インテリジェンス プラットフォーム、データモデリング、およびExcelに精通していると共に、卓越した対人スキルとリーダーシップスキル、そして営業部門の幹部層と協働できる資質が求められます。

セールス オペレーション マネージャー

セールス オペレーション マネージャーのポジションでは、一般的にセールス オペレーション スペシャリスト チームの監督を任されるため、リーダーシップ経験とセールスオペレーション部門の業務知識が重要視されます。5年以上の実務経験者がマネージャー候補として理想的です。また、営業の手法、売上の促進要因、営業プロセスの仕組みを理解し、データモデリングと分析にも習熟している必要があります。

セールスオペレーション担当バイスプレジデント(またはシニア セールス オペレーション ディレクター)

セールスオペレーション担当バイスプレジデントのポジションでは、チームを管理し、上級管理職層と緊密に協働します。少なくとも10年のセールスイネーブルメントの経験と、いくつかの実績を伴ったリーダーシップ経験が求められ、通常はMBAまたは技術分野の修士号の学歴が必須となります。

CRMとセールス オートメーション ツールの使用方法を理解し、スプレッドシートとデータベースソフトウェアを使用して複雑な財務モデルおよびオペレーションモデルを作成するスキルも備えていることも必要です。また、プレゼンテーションとコミュニケーションのスキルも欠かせません。

セールス オペレーション チームを編成、拡大、強化するときは、長期的な価値と成果につながるように、ここから取り上げるベストプラクティスを採用することをお勧めします。

1. ミッションステートメントを定義する

セールス オペレーション チームと営業チームの全員が連携することが不可欠です。ミッションステートメントを作成し、方針と目的を明確にして全社的に共有します。

ミッションステートメントはときに曖昧さを残してしまいがちです。その対策として、チームがそのミッションを達成するために企図している取り組みの概要を記しておきましょう。HubSpotではこれを「How」と称して明記するようにしています。

例えば以下のような項目が考えられます。

  • 「オペレーションタスクを自動化し、新しいワークロードによってケースキューに対処する」
  • 「質の高いアウトプットを生み出し、プロジェクトを完了して有効性を確保する」
  • 「(長期的および短期的に見て)ビジネス成果の大きい活動に優先的に時間を費やす」

セールス オペレーション チームが成功を収めるには、ミッションを定義し、ブレずにやり抜く必要があります。採用を行うときや、セールスイネーブルメントなどのチームと協働するときには特にこれが重要です。

2. 他のチームと積極的に連携する

セールスイネーブルメント、マーケティング、営業の各チームと、適切に業務に取り組んでいるか、重要な課題にきちんと対処しているか、既に処理済みの作業が重複していないかどうかを継続的に確認します。また、定期的なミーティングを持つことも必要です。そうすることで、セールス オペレーション チームは営業チームの味方としての役目を果たせます。

Ferrerは、マーケティングオペレーション、デマンドジェネレーション、セールスオペレーション、セールスイネーブルメントの責任者で毎週ミーティングを行うことを推奨しています。「セールスオペレーションとマーケティングオペレーションでは、週単位または日単位で、方策を変更する必要が生じる場合もあります。連携を維持するためには、絶え間ないコミュニケーションが必要です」

3. 強固なリーダーシップ体制を確立する

セールスオペレーションは必ず、バイスプレジデント、ディレクター、マネージャーなど、社長、CEO、COO、または上級のセールスリーダーの直属に当たる役職が指揮する必要があります。セールスオペレーションが経営陣と直接に近いつながりを持っていることが重要です。

Ferrerは以下のように、セールスオペレーションをマーケティング部門ではなく、セールス部門に置くことを推奨しています。

「セールス オペレーション チームとマーケティングチームは緊密に連携しますが、セールス オペレーション チームは全社的な営業戦略を深く理解しなくてはなりません。そのため、営業チームと同一部門に設置する必要があります」

4. 営業チームのシャドーイングを実施する

四半期に1回の頻度でセールス オペレーション チームに営業担当者のシャドーイングを行うことを義務付けます。これにより、営業活動の一般的な課題を直接目にする機会が得られるだけでなく、セールスオペレーションの取り組みがもたらす成果を確認することもできます。さらに、両チーム間の関係強化にもつながります。

5. テクノロジーを賢く活用する

テクノロジーを活用して、営業担当者のために可能な限り業務を自動化します。面倒な手作業が多いと、営業活動に時間が割けなくなるだけでなく、士気も低下し、高コストのミスを誘発します。たとえば、CRMソフトウェア、Eメール オートメーション ソフトウェア、リード優先順位付けエンジン、営業支援ソフトウェアなどの導入を検討しましょう。

ここで重要なのは、必要なツールに絞り、それ以上のものを導入しないことです。テクノロジーは営業チームの業務効率を劇的に向上させますが、20を超えるツールを行ったり来たりして使用する状態では、かえって効率が低下してしまいます。新しいツールを導入するときには、営業プロセスでどのように役立つかを正確に把握し、実装が簡単かつ迅速で、利用が容易であることを必ず事前に確認しましょう。営業担当者の手間が増えるような、過度に複雑なツールキットの利用を強制しても、営業担当者の利用拒否を招くことになります。

6. イノベーションをためらわない

セールスオペレーションには、継続的なイノベーションが必要です。プロスペクトや顧客について最新の情報を入手したり、市場が変化したり、製品が進化したりするのに伴って、営業プロセスを常に変化させ続けなくてはなりません。

もちろん、営業担当者が疲弊してしまうほど頻繁に変更するのは望ましくありませんが、可能な限り最良の成果が得られるように、絶えず調整と更新を加える必要があります。

セールスオペレーションを始めてみよう

この50年近く、世界中のセールスオペレーション部門が営業チームの効率と成果を向上させてきました。かつては補助的役割を務めるチームと見なされていましたが、今では営業という難しいパズルの重要なピースになりました。

セールスオペレーションの役割として何よりも重要なのは、売上を獲得するための仕組みを作り出すことです。データ、インサイト、テクノロジーを活用することで、戦略を強化し、業績を高め、持続可能な成長を後押しします。

今回ご紹介したヒントを参考に、営業チームを成功に導きましょう。

編集メモ:この記事は、2017年8月に投稿した内容を包括性の観点から加筆・訂正したものです。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

営業計画の無料テンプレート

 営業計画の無料テンプレート

元記事発行日: 2021年5月20日、最終更新日: 2021年5月20日