興奮の心理学:読者のエンゲージメントを高める効果的な方法

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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マーケターとして成功するためには、心理学を理解することが非常に重要です。コンテンツマーケティングを大きく前進させるのは、トリックでもテクニックでも要領でもなく、科学に基づく心理学だと私は確信しています(参照記事はこちら:The Complete Guide to Understanding Consumer Psychology)。

興奮の心理学:読者のエンゲージメントを高める効果的な方法

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心理学で扱われる非常に有意義で興味深い分野に「興奮」があります。これをコンテンツマーケティングに関連付けて考えてみたことはありますか?オーディエンスの感情的なエンゲージメントを高め、それをコンテンツへのエンゲージメントにつなげるにはどうすればよいでしょう。興奮によってコメント、シェア、いいねの数を増やしたり、コンテンツマーケティングのKPIを高めたりすることはできるのでしょうか。

はい、できます。この記事では興奮の心理学に基づき、その方法を明らかにします。

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興奮のしくみ

興奮がマーケティングにもたらす効果について理解するために、まずは人が興奮するしくみについて説明します。興奮には以下の重要な特徴があります。

興奮は精神的なものだが、体全体に影響を与える

興奮は、他のあらゆる感情がそうであるように、脳内で始まります。ただし、感情によって人は生理的に強く反応します。

「ストレスで胃が痛い」という経験をする人は少なくありません。恐怖や興奮によって、身震いがしたり、力が入らなくなったり、手のひらに汗をかいたりする人もいます。これらは、精神状態に体が複雑に反応することによって起こります。

興奮とは生理学的に覚醒している状態を言い、覚醒について、ChangingMinds.orgでは次のように説明されています

「覚醒は通常、感情を刺激する、皮質機能を低下させて意識的制御を困難にする、身体を興奮させ活動力を高める、などの作用を持つ化学物質が体内から脳に放出されることによって起こる。内分泌系がさまざまな腺、とりわけアドレナリン腺を刺激し、酸素やグルコースの供給量が増えて、瞳孔が開いたり(物がよく見えるようになる)、緊急性の低い消化や免疫などのシステムの働きが抑制されたりする。覚醒は交感神経系まで広がり、心拍数や呼吸数を増加させて、身体の活動を活発にしたり、発汗させて体を冷やしたりする。」

興奮は一時的なもの

人体は恒常性、つまり安定した状態を常に求めています。しかし、気温や気圧の変動など、人の心や体を取り巻く条件は常に変化します。人体はそのような変化にダイナミックに適応し、恒常性を保つことができます。

興奮は人体の恒常性を一時的に乱します。人体は常に元の状態に戻ろうとするため、真に(生物学的な意味で)興奮した状態は、それほど長くは続きません(参照記事はこちら:The Nature of Excitement)。

継続時間は興奮の程度にもよりますが、Wall Street Journalの記事によれば、興奮のパワーは20分ほどで消えるそうです。

興奮は行動を促す

体が興奮すると、マーケターにとって都合のよい条件が完璧に揃います。興奮すると覚醒の状態に入ります(参照記事はこちら:Why Your Palms Get Sweaty When Your're Excited, Scared, Or Nervous)。

覚醒すると心拍数が増加し、交感神経系が活動を活発化し、脳がシグナルを送ってホルモンの分泌を促します。人は興奮すると感情が高ぶり、物事を判断する能力が変化する場合があります。興奮した人は衝動的になりがちで、とにかく(悪いものでも)判断を下そうとする傾向があります。

Paloma Vasquezは『The Psychology of Social Shopping』の中で次のように指摘しています。

「人は興奮あるいは覚醒した状態では、まったく違う方法で考えたり行動したりします。感情が合理的思考に勝るからです。興奮した消費者は、セールスにとって都合が良いものです。」

確かにそうかもしれません。マーケターはいつも、人々に考え過ぎる前に行動を起こして欲しいと考えています。消費者にマーケティングファネル内をスムーズに移動させるには、素早い判断を促すことが重要です。

興奮させるコンテンツの条件

興奮のしくみについて簡単に説明しましたので、ここからは人々を興奮させるコンテンツの作り方について考えてみたいと思います。興奮を引き起こすコンテンツには、大きく分けて以下のものがあります。

感情を強く揺さぶること

人々は感情を揺さぶるコンテンツに興奮します。これに反論する人はほとんどいないと思います。コンテンツを読んで感情が揺さぶられると、人々は情熱的に、激しく、そして自動的に惹き込まれます(参照記事はこちら:How Branded Content Can Make An Emotional Connection)。

このことについて、Relevanceに次のように書かれています

「人間は感情的な生き物です。私たちはかなりの部分、感情で物事を判断したり行動(購買を含む)を起こしたりします。ですから、合理的なアプローチのみに頼ってコンテンツを作成していると、オーディエンスにまったくリーチできなくなる可能性がかなり高くなります。」

人々は自分の感情に働きかけてくるコンテンツに反応します。そして、意思決定や行動には必ず感情が伴います。ソーシャル共有などは、感情に左右される行動の典型的なパターンの一つということです(参照記事はこちら:The Power of Emotion in Content Marketing - What makes it Shareable?)。

ペンシルバニア大学の研究者たちが行った調査では、「オンラインコンテンツをバイラルにするには?」という質問に非常にわかりやすく答えています。

「バイラリティは、部分的には生理学的覚醒によって引き起こされます。人々を激しく覚醒させるような、ポジティブな感情(畏敬)あるいはネガティブな感情(怒りや不安)を誘発するコンテンツはバイラルになりやすく、覚醒の要素が低く感情(悲しみ)を抑えたコンテンツはバイラルになりにくいと言えます。」

要するに、多くの人がシェアするバイラルなコンテンツが必要なら、人々の感情に働きかけるコンテンツを作ればよいということです。

進歩を実感できる

進歩こそが、人間が満足し幸せを感じるために最も重要だということを、心理学者たちはかなり前から理解していました。Harvard Business Reviewにも以下のように説明されています。

「知識人たちが書いた日記を徹底的に分析した結果、私たちは進歩について本質的に次のように理解しました。日々の労働において気分や意欲、認知力を高めるために最も重要なのは、進歩を感じることです。科学の偉大なる神秘を解き明かそうと努力している人にも、あるいは質の高い製品やサービスを作り出そうとしている人にも、日々わずかでも進歩を実感することができれば、その人の気分やパフォーマンスに非常に良い影響があります。」

この本質を、マーケティングコンテンツの分野に当てはめて考えてみましょう。JeremySaid.comには次のように書かれています。

「進歩したという感覚をユーザーに与えることは、ユーザーの行動を動機付けるために非常に効果的です。レベルが変わるごとに何かプレゼントを贈るようにすれば、ユーザーは喜んで挑戦しようと思うでしょう。」

この本質を取り入れて人々を興奮させたのが、Starbucksによる次のロイヤリティプログラムです。

starbucks

Image Source

コンテンツを読むときでも、ユーザーは自分の進歩を確認し実感することを望みます。Slateは記事を読むために必要な時間をサイドバーに表示していますが、(下の画像)これはおそらくエンゲージメントを促す狙いがあると思われます。

slate

デザインの印象が強烈であること

消費心理学者たちは、環境には人々をショッピングに駆り立てるという重要な役割があることを理解しています。同じことがウェブサイトのデザインにも言えます。色彩などの要素が、人々のウェブサイトに対するエンゲージメントに、強烈なインパクトを与えることがあります。実際、色彩を使うことで、いとも簡単に興奮を高めることができます(参照記事はこちら:The Complete Guide to Understanding Consumer Psychology

これを示す良い例として、コカ・コーラによる次のブログをご覧ください。Tumblrのデザインに印象の強い赤色を使用することによって、興奮を促すとともに、コンテンツに対するエンゲージメントとインタラクションを高めています。

cocacola

価格

衝動買いという行為のベースには興奮が存在します。Wall Street Journalによれば、人々を買いたいという衝動に駆り立てるのは、製品の価格だそうです(参照記事はこちら:The Psychology Behing Impulse Shopping)。

価格を低くするか、あるいは価格のアンカー効果を利用して安価だと思わせることによって、消費者を興奮させることができます(参照記事はこちら:3 Research Studies That Reveal Smarter Pricing Tactics)。

カスタマーは価格が下がっているのを見つけると、かなりの割合で他の人にそれを知らせようとします。その理由について、Robert Schindlerは『Advances in Consumer Research』の中で「周りに自慢したいから」と説明しています。お得な情報を見ると自己主張欲が一気に高まり、その値引きに対して責任のようなものを感じるのだそうです。

興奮するという人々の反応を利用し、コンバージョンのためのページの適切な場所に共有アイコンを置くと良いかもしれません。たとえば、Amazonはカスタマーにソーシャルメディアで自分が購入した商品の情報をシェアするよう促しています。カスタマーが何かを購入して興奮状態にあることを上手く利用した手法だと思います。

amazonjustbought

限定商品

製品そのものによって興奮が促されることもあります。Mark MacdonaldはShopifyに書いた記事で、商品そのものが、特に「期間限定」や「限定商品」などの場合に、人々を興奮させ、買いたいという強い要求を起こさせることがあると説明しています。

たとえば、私の友人は毎年3月になるとMcDonaldsで緑色のシャムロックシェイクを買い、あらゆるソーシャルメディアで嬉しそうに自慢しています。

同様に、Starbucksのパンプキンスパイスラテを飲んだという凄まじい投稿も、ソーシャルメディアで見ることができます(関連記事はこちら:Behind the Pumpkin Obsession : Data on Which Treats Americans Love & Hate [Infographic])。

下はStarbucksのPSL(Pumpkin Spice Latte)ページの画像です。

didyouknow

正直なところ、これを実践するには企業全体で計画を立てることが必要になるため、ほとんどの企業では不可能かもしれません。しかし、この2つの例で誘発される感情が、マーケティングに有利に働くことは間違いありません。コンテンツを作成する際、製品のユニークな、あるいは興奮を引き起こす側面にフォーカスすることができれば、より多くのカスタマーがそれを読み、共有してくれるはずです。

まとめ

コンテンツに対するエンゲージメントを高めるには、ただ情報を並べて読者の反応を期待していたのでは不十分で、読者の感情に働きかけるような戦略を考える必要があります。コンテンツ作成に必要な知的な基礎が完成した後に、読者の共感を呼び、感情を揺さぶることができるようになります。

まずは、ウェブサイトでコンテンツを読むとき、自分が何に興奮するかに注意するところから始めましょう。そうすれば、あなたの読者を興奮させるものについても理解できるでしょう。人々を興奮させるコンテンツこそが、エンゲージメントを高めるための近道です。

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編集メモ:この記事は、 2015年3月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Neil Patelによる元の記事はこちらからご覧いただけます。

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