どのようなサービスであれ、解約者が出てくることは避けられません。今すぐに解約しようという決心のもと、解約ボタンを探しながらウェブサイトを見ているお客様は必ずいます。
もちろん、サービスを運営する側としては、お客様に思いとどまってほしいと考えるのが当然です。ましてや、解約者が続出する状況は避けたいものです。
そのためには、現実を直視して、自らに厳しく問いかけてみる必要があります。解約を決めたお客様は、どのような経緯でその決断に至ったのでしょうか。そして、その段階まで来たお客様を思いとどまらせる方法はあるのでしょうか。
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解約ボタンを探し辛くすることがダメな理由
私は最近、あるサービスを解約するにあたって、同じ問いかけを利用者の立場から考えてみることができました。私が解約を決めたのは、CSA(地域支援型農業)の宅配サービスです。地元の畑で取れた新鮮な野菜や果物を、月2回自宅に届けてくれるというものなのですが、価格の面でも品質の面でも、近所のスーパーで買った方がよさそうに思えたのです。
そこで、このサービスのウェブサイトを開き、解約方法の説明を探してみました。でも、20分頑張っても、何の情報も見つかりません。
業を煮やした私は、メールで直接尋ねてみることにしました。「こんにちは。解約するにはどうすればいいか教えてください」
運営元からの返信は次のようなものでした。
お問い合わせありがとうございます。解約手続きは随時受け付けております。お電話かメールでご連絡ください。その際、アカウントを停止する意向を明示のうえ、その理由も併せてお知らせください。ご連絡を受け次第、当方で手続きに入らせていただきます。
アカウントを停止した後も、いつでもサービスを再開していただくことができます。ウェブサイトにログインして、再開申し込みのリンクをクリックするか、アカウント再開ご希望の旨をお電話でお知らせください。
明らかに自動返信だとわかる文面もさることながら、その内容からは、利用者をつなぎ止めるためにこの運営元が取っている戦術が丸わかりでした。つまり、解約の前に面倒臭いやり取りを強いることで、解約のハードルを上げるという手法です。
解約ボタンを隠しても、お客様の解約を食い止める効果はまったくありません。手続きを少し先延ばしできるだけで、結果は同じです。一度離れた気持ちが元に戻ることはありません。面倒なやり取りを加えてハードルを上げたからといって、お客様は残ってはくれません。
この運営元は、もっとうまく対処する方法があったはずです。やり方次第では、私も解約まで至らずに済んだかもしれません。ここからは、何をどうすればよかったかを説明していきます。
解約手続きの正しい設置方法
解約するお客様が出てきたときでも、その1人の損失を、長い目で見たプラスにつなげる方法がいくつかあります。
1)解約ボタンをわかりやすい場所に置いておく
2)お客様が解約ボタンを押したときに、自動でアンケートを表示して、次の点を確認する
a)お客様がこのサービスで期待していたこと
b)お客様がこのサービスで実際に得られた(あるいは得られなかった)と思うもの
c)こうなっていれば解約しなかったかもしれないと思うこと
3)回答のパターンを探り出す
お客様がサービスを解約するのは、期待していたものと、実際に得られるものとにミスマッチがあったときです。
それがわかったら、回答のパターンを探って、サービスの価値をきちんと伝えられているかどうかや、適切なお客様をターゲットにしているかどうかを確認しましょう。それを踏まえて、お客様への価値提供に向けたポリシーや手順を改善できます。
(ヒント:「料金が高すぎる」という声があったとしても、値下げが必要という意味ではありません。サービスの価値をきちんと伝えられていなかったというふうに考えましょう)。
4)アンケートの次に表示するページで、押し付けがましくない簡潔なメッセージを表示し、そもそもこのサービスのメリットは何であったかや、解約で何が得られなくなるのかを思い返してもらう。
私が解約した宅配サービスも、この部分の対応がうまくありませんでした。サービス再開はいつでも歓迎だという話はありましたが、それだけでした。
たとえば、ロイヤルティプログラムやポイント制度があって、通算で10箱購入すると11箱目が無料になるといった仕組みになっていれば、解約した時点でそれまでのポイントが消えるというデメリットを伝えられたはずです。あるいは、クラウドサービスであれば、解約した時点で、それまでの保存データや設定がすべて消えてしまうというデメリットが考えられます。
解約という決断と、お客様にとって悩みどころとなるデメリットとを比較対照する形で提示しましょう。それでも、解約ボタンは隠さずに表示しておかなくてはなりません。
解約で失われる特典を意識させる以外にも、たとえば、入会中から次のような策を講じておけばよかったはずです。
- 私がそもそも入会した理由、つまり、地元の農業を支え、近隣から新鮮な農産物を手に入れられるという点を再確認させる。
- メールキャンペーンを通じた情報提供で、地元の農家との親近感を高めたり、旬を迎えた野菜や果物を知らせたり、手作りジャムを紹介してアップセルを図ったりする。
- FacebookやMeetupのグループを通じて積極的な活動を展開し、地元農産物の産地直送を支えている一員だという思いを強めてもらう。
つまり、この宅配サービスの本質は価格ではなく、地元農産物のコミュニティの一員でいられることなのだということを、私に認識させてくれればよかったのです。
お客様が一度決心したら、それを覆すのは、正直かなり難しいことです。このサービスは価格に見合った価値がない、という結論が本人の中で固まっているからです。
でも、たもとを分かつというのは、お客様にとっても本当はつらいことなのだということは、わかってあげてください。大事なのは、解約の方法をわかりにくくすることではなく、入会時と解約時にアンケートをとって、新しいお客様の獲得や既存のお客様の満足度維持に生かすことです。
編集メモ:この記事は、 2015年11月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Nichole Elizabeth DeMeréによる元の記事はこちらからご覧いただけます。