トラッキングとは、Webサイト閲覧やアプリ利用状況などのユーザー行動を追跡・分析する技術です。
トラッキングを活用することで、レコメンドやターゲティング広告の最適化、パーソナライズ化した顧客体験の提供などが可能です。また顧客にとっても、自身と関連性の高い情報が得られるため、より価値のある購買体験を得られるメリットがあります。
しかし、近年はプライバシーや個人情報保護の観点から、トラッキングに関する規制が広がっています。デジタルマーケティングなどの調査や分析を行っているEconsultancy社の調査によると、Cookieレスが与える影響について理解しているマーケティング担当者は2020年時点で36%にとどまっているそうです。
トラッキングを取り巻く環境が変化しているからこそ、改めてトラッキングについてより深い理解が必要です。本記事では、トラッキングの仕組みや規制強化の流れ、Cookie以外のトラッキング技術について解説します。
脱Cookie時代のトラッキングとマーケティング戦略
Cookie規制と対策・代替方法を徹底解説
- Cookieの概要
- Cookie規制の背景
- Cookie規制によるデジタルマーケティングへの影響
- 検討すべき3つのCookie代替手法
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トラッキングとは?
トラッキングとは、Webサイト上のユーザーの行動を追跡・分析することです。例えば、Webサイトに訪れたユーザーがどのページを閲覧し、どのくらい滞在したのか、どこから流入したのかなどが確認できます。
Webマーケティングや広告業界では、ユーザーの興味関心のある広告を効率よく配信するために、トラッキング技術が活用されています。
トラッキングによって得られる2つの効果
トラッキングを活用することで、WebサイトとWeb広告のパフォーマンスを効率よく改善できます。以下では、トラッキングの2つの効果を解説します。
1.Webサイトのアクセス解析から改善
トラッキングでは、自社サイトに訪れたユーザーの行動が分析できます。例えば、WebサイトにGoogleアナリティクスのトラッキングコードを貼ることで、ユーザーの流入元やページの滞在時間、回遊先などがわかるのです。トラッキングから得たデータを分析すると、注力すべきチャネルの特定や課題の発見・改善などが行えます。
2.Web広告の効果検証
トラッキングを使えば、Web広告におけるユーザーの流入経路やコンバージョン数、離脱個所などが判明し、広告効果の改善および広告費の最適化に繋げられます。複数広告を運用している場合、パフォーマンスの高い広告とそうでない広告を可視化できるため、広告戦略をより洗練させることも可能です。
特にB2B企業は顧客の購買プロセスが長いため、トラッキングで確度の高い見込み客を把握し、個別にインサイドセールスやメール配信などの施策を進めることが重要になります。
Cookieを使用したトラッキングの仕組み
Cookieとは、サイトに訪れた日時やログイン情報などのWebサイト上におけるユーザーの行動を一時的に記録する仕組みです。
Cookieを活用してトラッキングをすることで、例えばCRMツールに関するページを見たユーザーに、CRMの無料トライアルの広告を表示できます。Cookieを使用すると、製品レコメンドや広告ターゲティングの最適化、パーソナライズ化した顧客体験の提供などが可能になるのです。
「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」の違いを押さえよう
Cookieには、「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」の2種類があります。昨今トラッキングを取り巻く環境が変化している中で、それぞれのCookieの特徴を把握することが欠かせません。以下では、2種類のCookieについて解説します。
ファーストパーティCookie
ファーストパーティCookieとは、ユーザーが閲覧しているWebサイトのドメインが発行するCookieです。ファーストパーティCookieにより、Webサイトの運営者はデータ収集や最適な顧客体験の提供などが行えます。
ファーストパーティCookieの例として、EC(eコマース:電子商取引)サイトが挙げられます。Webブラウザがユーザーのログイン情報を保管することで、ユーザーはパスワードを再入力しなくともログインでき、運営者はユーザー情報の判別ができるのです。
一方、ファーストパーティCookieを無効にしている場合は、ユーザーがサインインのたびにログイン情報を入力しなければなりません。
ファーストパーティCookieは、ユーザーからブロックされることが少ないため、より精度の高いトラッキングができます。
サードパーティCookie
サードパーティCookieとは、ユーザーが閲覧しているWebサイト以外のドメインが発行するCookieです。サイトを横断したトラッキングができるため、Web広告で主に用いられます。
例えば、あるユーザーが複数のセキュリティ対策に関するページを閲覧したのち、ニュースサイトに訪問したとします。その際、バナー広告欄にセキュリティ対策ソフトが表示される理由は、サードパーティCookieが用いられているからです。
このようにサードパーティCookieを使えば、複数サイトでユーザーの行動を追跡し、ターゲティング広告を実施できます。
トラッキングにおける規制強化の流れ
近年、サードパーティCookie廃止の流れが強まっています。サードパーティCookieは、ユーザーのWebサイトの行動履歴を細かに追跡します。その結果 、ユーザーの意思とは無関係に、企業が個人の趣味や家族構成、年収などのプライバシーに関する情報まで推測できるようになってしまったのです。
ユーザーのプライバシー保護を行う観点から、Appleはすでに「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」という形で、サードパーティCookieを廃止しています。Googleは2023年末までにかけて、Googleの公式ブラウザであるChromeのサードパーティCookieを段階的に廃止すると発表しています。
また、2021年時点でアメリカとイギリスではWebトラフィックの50%以上がCookieレスになりました。Cookieレスへの移行には時間がかかるため、特にデジタルマーケティングの担当者は今からCookieレス時代に備える必要があるでしょう。
Cookie以外で使用されるトラッキング技術
Cookieレスの時代が迫っているからこそ、マーケティング担当者は他のトラッキング技術にも目を向けなければいけません。以下では、Cookie以外のトラッキング技術を紹介します。
ブラウザーフィンガープリント
ブラウザーフィンガープリントとは、ユーザーがWebページに訪問した時に取得する利用者のコンピューターとWebブラウザに関する情報です。Cookieを使用することなく、個人を特定できるトラッキング技術として注目を集めています。
しかし、あくまでもブラウザ情報を得る技術のため、ユーザーがブラウザや端末を変更すると、同一ユーザーとの特定が難しいです。また、ブラウザーフィンガープリントに関する規制も強まっています。
広告識別子
広告識別子は、スマートフォンやタブレット端末のアプリ広告で使用されるIDです。端末一台に対して一つのIDが発行されます。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末は、一人で使用することが多いため、個人の興味関心に関するデータが収集できます。
広告識別子で収集したデータを活用すると、アプリ上でユーザーの興味関心に適した広告表示が可能です。また、広告IDはユーザーが自由に削除設定できることから、Cookieの代替法として注目を集めています。
スマートフォンアプリ
スマートフォンアプリをダウンロードする際に、位置情報や他のアプリへのアクセスを求められた経験はないでしょうか。これはスマートフォンアプリを通して、トラッキングの許可を求められているのです。
企業はユーザーの許可を得ることで、ユーザーの位置情報や行動履歴などを把握できます。ユーザーは情報提供の拒否もできるため、プライバシーを尊重したトラッキングの一つと言えます。
SensorID
SensorIDとは、スマートフォンに搭載されている「加速度センサー」や「ジャイロセンサー」などを利用するトラッキング技術です。比較的最新のトラッキング技術で、ケンブリッジ大学が発表しました。SensorIDにより、ユーザーの行動データを細かに分析できるようになります。
Cookieレス時代に欠かせない「ゼロパーティデータ」と「ファーストパーティデータ」
トラッキング規制強化が進みますが、現代のマーケティング活動にデータは欠かせません。Cookieレス時代を迎えつつある今、重要なのが「ゼロパーティデータ」と「ファーストパーティデータ」を収集できる環境を整えることです。
ゼロパーティデータとは、顧客が自発的に企業と共有するデータです。アメリカ合衆国のドラッグストアチェーン店ウォルグリーンは、顧客が血圧や血糖値などを測定するたびに、ポイントを付与するプログラムを提供しています。
顧客は自発的に身体や行動データを提供することで、ポイントやパーソナライズ化された健康アドバイスなどを得られるのです。
ウォルグリーンの事例からも分かるように、顧客から自発的にデータを提供してもらうためには、「顧客中心主義」を徹底する必要があります。顧客の課題や興味関心を把握し、課題を解決できる自社独自の価値を提供し続けることで、顧客の信頼を醸成でき、自発的にデータを提供してもらえるようになるのです。
そして、それを実践する上で有用なツールになりうるのが「CRM」です。例えば、HubSpotのCRM(顧客管理システム)ツールを使えば、顧客情報を一元管理でき、部署間で円滑に共有できる環境を構築できます。「顧客情報の収集と共有により深まる顧客理解→顧客に最適な体験の提供→ゼロパーティー・ファーストパーティーデータの蓄積」という好循環が生まれるので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
データの利活用には、顧客のプライバシーの尊重と保護が欠かせない
トラッキングによって得られるデータは、顧客に最適な体験を提供するために大いに役立ちます。しかし、Cookieなどのトラッキング規制強化が進んでいるため、今後は顧客が自発的にデータを渡してもいいと思える関係構築が必要です。そのためには、企業利益だけではない、プライバシーを尊重した顧客中心主義の施策が欠かせません。
同時に、顧客の信頼を裏切らないためにも、適切なセキュリティ対策を実施して、顧客のデータを守りましょう。