HubSpotが初めてWebsite Graderをリリースしたのは12年前でした。当初の目標はいたってシンプル。Webサイトに有望なオーディエンスや潜在顧客を惹きつけられているかどうかを、運営している企業や組織が手軽に評価できるようにすることでした。
2006年に設立されたHubSpotは、2008年にはWebsite Graderをリリースしました。当時から見込み客や顧客と長期にわたって有意義な関係を築くインバウンドの手法が、ビジネスの成長にとって効果的なだけでなく正しいことだと考えていたからです。つまり、Webサイトに訪問者を惹きつけ、顧客とのつながりを生み出すことの大切さを十分認識していたのです。
2020年を迎えた今、企業サイトは単に訪問者を惹きつけるための場ではなくなっています。営業担当者に代わって見込み客に製品の機能や料金を案内し、関心のある見込み客とのミーティングを取りつけてくれます。ナレッジベースやチャットボットを活用すれば、カスタマーサービス担当者に代わって製品やサービスに関する問い合わせに答えることも可能になります。人事部門に代わって企業文化や採用に関する情報を発信する役割さえ担っています。こうした好例は枚挙にいとまがありません。
一言で言えば、Webサイトはビジネスに欠かせない存在になったということです。現在では、消費者の86%がオンラインで企業を検索しています(Small Business Trends)。Webサイトは企業の第一印象を決め、重要な情報を発信し、休むことなくインバウンドでの営業活動を推進してくれる非常に重要な事業資産の1つです。
そのため、企業によるWebサイトへの投資額が大きく伸びていることは何も不思議ではないのです。最近HubSpot Researchが実施した調査結果によると、マーケティング担当者の63%が2020年中にWebサイトの強化を予定していると回答しています。
強化対象としては次のような領域が考えられます。
- パフォーマンス:ページの表示速度、読み込み時間、ページリクエスト数、ページサイズなど
- SEO(検索エンジン最適化):ページのインデックス、メタディスクリプション、コンテンツプラグイン、説明的なリンクテキスト
- デザイン:レスポンシブデザイン、読みやすいフォントサイズ、タップターゲット
- セキュリティー:HTTPSおよび安全なJavaScriptライブラリー
2008年以来、HubSpotでは上記の4つの観点で100万以上(ユニーク数)のWebサイトを評価してきました。では、Webサイトへの投資は相応の効果につながっているのでしょうか? 企業が注力している強化方法は適切で、例えば訪問者のためにセキュリティーを強化できているのでしょうか? スムーズなアクセスのために読み込み速度を改善したり、モバイル対応やSEOのベストプラクティスを考慮したりすることは?
ここでは、2015年と今年の平均パフォーマンスを比較してみましょう。
Webサイトのパフォーマンスデータ(2015年と2020年の比較)
出典:HubSpot Research(2015年は100万以上、2020年は新しい25万以上のWebサイトのデータを評価。いずれもユニーク数)
このデータを見ると、5年の間にテクノロジーは進歩したはずなのに、Webサイトのパフォーマンスには相応の改善が見られなかった点に驚かされます。総合スコアの平均は5年間で13.6%の改善にとどまり、パフォーマンスにいたっては17%低下しています。2020年のWebサイトの平均評価はD+(100点満点中67点)です。もし私が学校でこのような評価を取ったら母はがっかりしていたはずです。
また、総合スコアが90以上のWebサイトは全体のわずか3.8%しかないこともわかりました。90以上のスコアを獲得できた場合は自信を持って良いでしょう。上記のデータにおける総合スコアとパーセンタイルの関係は以下のとおりです。
- 総合スコア80:82パーセンタイル
- 総合スコア85:91パーセンタイル
- 総合スコア90:96パーセンタイル
以下に、個々のベンチマークスコアに関する私の見解をご紹介します。
Webサイトのパフォーマンスは5年間で低下
Webサイトの読み込み速度は2015年よりも2020年の方が速くなって当然のようにも思えますが、結果は正反対でした。この5年間で低下した唯一のベンチマーク測定指標がパフォーマンスでした。パフォーマンスは、ページサイズ、ページリクエスト数、ページの表示速度、その他5つの項目をテストして総合的に評価されます。現在のWebサイトの読み込み速度は2015年よりも低下しています。
読み込み速度の低下はビジネスにとってリスクになります。訪問者の40%は、読み込みに3秒以上かかるとそのページを離脱してしまいます(Think With Google)。
つまり、読み込み時間が1秒長くなるだけでWebサイトからの離脱が増えることになります。Webサイトを改善する際には、パフォーマンスの向上に優先的に取り組むことをお勧めします。自社のWebサイトのパフォーマンスを一度確認しておくとよいでしょう。
SEOは大きく向上
2020年の調査によると、マーケティング担当者の64%がSEOに積極的に投資し、オーガニック検索におけるプレゼンスを拡大しています(HubSpot Research)。
マーケティング担当者がSEOを重視した結果、SEOのベンチマークは2015年から大幅に向上しました(+52%)。SEOは検索順位の向上に不可欠です。多くのWebサイトがSEOのベストプラクティスを実践して、自社の表示順位を高めているのは良い傾向です。自社サイトがどの程度のSEOスコアを獲得できるか、調べてみませんか?
セキュリティーの伸び率は2番目に高いが、平均点は低水準
Website Graderのセキュリティーのベンチマークによると、Webサイトのセキュリティーは5年間で46.2%向上しました。著しい成果とはいえ、平均スコアに目を向けると2020年も10点中3.8点という低水準であり、今後も大きな改善の余地が残されています。
セキュリティーの強化は顧客データを保護するために不可欠です。セキュリティーが確保されていなければ、訪問者からの信頼を失いかねません。これは、オンラインショッピングの利用者にとっては特に重要なポイントで、85%のユーザーは安全でないサイトにはアクセスしないと回答しています(HubSpot Research)。
さらに、セキュリティーの強化は検索での表示順位の向上にもつながります。2019年からGoogleの検索結果にはHTTPSを採用しているWebサイトが優先的に表示されるようになりました(The Next Web、2015年)。Website Graderで調べることで、HTTPSおよび安全なJavaScriptライブラリーが使用されているかどうかをチェックできます。
この2つのセキュリティー要素は訪問者に安全な体験を提供する上で欠かせません。Webサイトのセキュリティースコアはぜひ確認しておきましょう。
モバイルへの最適化はわずかに向上
2015年ごろには、レスポンシブデザイン(デバイスによって表示形式が自動で最適化されるもので、モバイルデバイスへの表示に対応しやすい)が広く普及しました。
それもそのはず、どこを見回してもスマートフォンの画面を覗き込み、Facebookの最新の投稿をチェックし、話題のYouTube動画を観ている人々であふれていたからです。そして、この状況は今でもほとんど変わっていません。変わった点と言えば、InstagramやTikTokを見る人が増えたことくらいです。
レスポンシブデザインは一過性のトレンドではありません。今や全世界のWebサイトトラフィック全体の約半分をモバイルデバイス(タブレットを除く)由来のアクセスが占めています(StatCounter、2020年)。Webサイトは小さな画面にどの程度対応できているのでしょうか?
モバイルに対応したデザインのベンチマークの平均は、5年間で8%向上しました。現在のWebサイトのモバイル対応デザインの平均スコアは30点満点中21.6点です。確かに改善傾向にありますが、さらに向上できるチャンスはあります。
Googleの調査によると、オンラインショッピングを行う顧客の59%が、購入するブランドや店舗を決める判断材料としてモバイルデバイスでのショッピングが可能であることを挙げています(Think with Google、2019年)。
つまり、多くの顧客がWebサイトをモバイルデバイスで閲覧し、購入するかどうかを決めているということです。さらにモバイルデザインは、Webサイト上での利便性のみならず、SNSの投稿や検索結果の表示順位にも影響します。
Website Graderで自社のWebサイトがモバイルデバイスに対応できているかをご確認ください。
今後の方向性
Website Graderの当初の目標は、開発者、マーケティング担当者、起業家などの皆様がWebサイトのパフォーマンスを簡単に評価できるようにすることでした。このツールは非常に好評でしたが、HubSpotは常にさらなる成長と進化を追求しています。
Website Graderの機能強化についても、そのあるべき姿を再検討しました。
そして、ご利用いただいた方からのさまざまなご意見の中に1つの共通点を見いだしました。それは、Webサイトを評価して問題点を把握することはできても、具体的な改善方法が示されていないという声でした。
- 「Webサイトの問題を解決する方法を詳しく知りたい」
- 「パフォーマンスとSEO対策を改善してスコアを上げる手順を教えてほしい」
- 「初心者向けの説明やガイドを掲載してほしい」
新しくなった日本語版Website Grader
こうしたご要望にお応えして、HubSpotはWebsite Graderに改良を加えました。Website Graderの評価システムとテクノロジー基盤を刷新することでスコアの精度が向上したほか、スコア向上のヒントが得られる最適化のガイドもご用意しました。すべて無料でご利用いただけます。
Webサイトの最適化ガイドはWebsite Grader上でアクセスできます。
最後に:HubSpot.comのスコアは?
HubSpotの過去のスコアはそれほど高くなく、Website Graderでの評価は平均して70~80でした。マーケティング部門による長年の更新作業によって動作が遅くなっていたのです。しかしこの5年間、HubSpotはサイトをご利用いただく皆様にご満足いただけるよう、Webサイトのデザインとパフォーマンスの改善に真摯に取り組んできました。
今回CMS Hubを導入した結果、当社のWebサイトはWebsite Graderで100点満点のスコアを獲得できました。この結果を非常に誇らしく思います。
ぜひWebsite GraderをWebサイトの評価にご活用いただき、ご感想をお聞かせください。