今朝は、子供たちが起きてくる前に1週間分の食料を注文し、ずっと購読したいと思っていたニュースサイトの会員登録を済ませ、オンラインのワークアウトクラスに申し込みました(参加しないかもしれませんが…)。いずれもスマートフォンから数回のクリックで完了です。
各サービスの購入プロセスは簡単で、自分1人であっという間に完結するものでした。ふと気づけば、最近こうした手軽さをどのサービスプロバイダーにも期待するようになっている自分がいます。
2020年を迎えた今、企業が成功を収めるには卓越した顧客体験を提供することが不可欠です。ここ数年は、最上級の顧客体験を提供する企業に消費者が集中しています。
そうした「顧客体験の創造的破壊者」の登場により顧客はこれまで以上のものを企業に期待するようになり、結果としてあらゆる業界において企業が提供する顧客体験の水準が引き上げられました。
しかし、消費者である私たちの目にも顧客体験の重要性は明らかであるにも関わらず、なぜB2B企業の購買体験は今でもこんなにずさんなのでしょうか。
CEBが実施したアンケートで、B2Bの意思決定者に購買体験について連想する言葉を聞いてみたところ「つらい、ひどい、苦痛、地雷源」などの回答が集まりました。
今日では当然とも言えるB2Cのシームレスな顧客体験と比べると、B2Bのプロセスは何年も後れを取っています。さらに、大口のB2B取引になると営業サイクルが長期化し意思決定者が増え、競争が激化するため、その購買体験は数十年昔のレベルにまで後退します。
なぜこのような状況になってしまうのでしょう。B2Bのマーケティング担当者が顧客体験の重要性を認識していないから? それとも、営業担当者が購買体験の向上に役立つソフトウェアツールを自由に利用できないから?
そもそも、ABM(アカウント ベースド マーケティング)がこうした問題を解決できるはずではなかったのでしょうか?
確かにそう言われていました。しかし、マーケティング担当者や営業担当者にとってエンタープライズ向けソフトウェアが期待外れなのは、今に始まったことではありません。
ABMを正しく理解する
ABMは長年、コンテキストに基づいた購買体験のパーソナライゼーションを実現するための企業向けソリューションと謳われてきましたが、マーケティング担当者や営業担当者の多くは未だそのメリットを享受できていません。
ABMに対する間違った認識が市場に根付き、3つの誤解が広まってしまったことで、今日まで企業は効果的な戦略を導入できずにいます。
HubSpotは、そうした誤解を正したいと考えています。
誤解その1:ABMはマーケティング担当者だけのもの
おそらく最も多いのは、「ABMはマーケティング担当者だけで実行する戦略である」という誤解です。
多くの企業は、ABMソリューションを購入しても、実際にはマーケティング担当者がターゲティングをわずかに改善できるようになるのが関の山です。
その結果、重要なターゲットアカウントのブランド認知度を高めることができたとしても、営業サイクルの下流のステージで卓越した購買体験を提供する責任を負っている営業担当者にとっては大して意味がありません。
カスタマージャーニー全体にわたって
本当にシームレスなB2Bの購買体験を提供するためには、
マーケティング担当者と営業担当者が
最初からABM戦略に等しく取り組み、
一元管理型の記録システムを利用する必要があります。
私自身、HubSpotのSales Hub担当ゼネラルマネージャーとして、この重要性を肌で感じてきました。マーケティング担当者のみでABM戦略を始動させると、営業担当者はすぐに後手に回ってしまい、マーケティングチームから引き継がれる新しい種類のリードに慌てて対応することになりかねません。
同様に、営業担当者が最初にターゲットアカウントの新しい担当者に連絡を取ることになれば、マーケティング担当者が受け身に回り、ナーチャリングプロセスを支えるコンテンツやメッセージングの作成を急ぐことになります。
ABM戦略の成功は、マーケティングチームと営業チームの間で透明性と信頼を高められるかどうかにかかっています。営業チームの知らないツールでマーケティングキャンペーンを作成したり、営業担当者しか利用していないスプレッドシートで業務を進めたりするべきではありません。両方のチームが常に同じデータを見ている必要があります。
チーム間の連携は、どんなに順調な時期でも決して簡単なことではありません。しかし、ターゲットアカウントとの最新のやり取りを確認するという至ってシンプルな作業のためにも、営業チームとマーケティングチームが使用している2種類の異なるシステムを行ったり来たりしながら確かめなければならない状態であるなら、チームの連携はまず不可能でしょう。
営業チームとマーケティングチームの連携の基盤となるのは、記録システムです。記録システムの共有により、マーケティング担当者と営業担当者が協力してABM戦略を成功に導くうえで重要なターゲットアカウント、成功指標、各チームの責任について、共通の理解を築くことができます。
誤解その2:ABMは大企業だけのもの
ABMに関する2つ目の誤解は、1つ目の誤解から派生したものです。近年のテクノロジーソリューションの急増に伴い、この分野のプロバイダーはかつてないほど増えている一方で、今でもABMといえば広告に多額の費用が必要と考える企業は多く、チームの規模が大きく多額の予算を確保している大企業だけのアプローチだと思われている場合があります。
しかし、実際にはABMの導入に企業の規模は問われません。
市場には、セットアップが簡単で使いやすい手頃な価格の新しいツールが出回っています。たとえば、HubSpotを活用すれば、無料でABMを導入できます。また、エンタープライズ向けソフトウェアのプロバイダーに対しては、製品の利便性や操作性を改善するよう求める声が高まっています。
長年にわたり、高度なキャンペーンを実施するために必要なツールは非常に使いにくく、成長中の企業はそのメリットを実感できずにいましたが、この状況はようやく打開されつつあります。チームの規模や予算にかかわらず、マーケティング担当者や営業担当者は自信を持ってABMに取り組めるようになりました。
ただ、もちろん全ての企業にABMがフィットするとは限りません。ABM導入を検討する際、以下の2点を判断基準に入れてみてください。
- 自社の商品にはアップセル・クロスセルの余地があるか
- 買い手側の組織構造が複雑かどうか(複数部署にまたがっているか)
アップセルやクロスセルの余地がなく、買い手側の組織構造がシンプルな場合、例えば、個人経営の魚屋に対して清掃用具を販売する業者の場合、あえてABMを導入する必要はないでしょう。
誤解その3:ABMは「インバウンド」の思想と共存できない
もう1つ、多数の企業がABMの導入をためらってきた理由として、ABMはインバウンドマーケティングと両立できないと誤解されていることが挙げられます。しかし根本的な部分で「インバウンド」の思想とABMは非常によく似ています。
両者はいずれもプロスペクトが希望する購入方法に合わせて営業戦略やマーケティング戦略を策定することを目的としており、両方のアプローチで同じチャネルや、場合によっては同じコンテンツを使用できるケースも多々あります。
インバウンドの思想に基づいて行うマーケティングと営業の目的は、役立つコンテンツを提供して関心を持っている消費者を幅広く惹きつけることです。一方、ABMの目的はターゲットを明確に定義して、価値提供のアプローチをパーソナライズすることです。この2つのアプローチを併用すれば、それぞれを単体で取り入れたとき以上の効果が発揮されます。
インバウンドの思想に基づいて行うマーケティングと営業戦略を適切に実行することで、幅広いオーディエンスに価値を提供できると共に、ABM戦略に適した価値の高いターゲットアカウントを有機的に特定できます。そのうえで、マーケティング担当者と営業担当者はこれらのアカウントをターゲットに設定し、アセットを活用しながら高度なパーソナライゼーションを実現することができます。
「ABMはマーケティング担当者だけのもの」「多額の予算を確保している企業だけが利用できるもの」「インバウンドの戦略と両立できないもの」といった誤解により、多くの企業は長い間ABMのメリットを享受できずにいました。
そして、大口のB2B取引がますます複雑になるにつれ、ABMの利点を最大限引き出すことの重要性がいっそう高まっています。
B2Bの購買プロセスに関与する意思決定者の数は平均6.8人で、ここ数年で25%も増加しました。意思決定者ごとに好みや関心度、購買プロセスの過程で注力するプロジェクトが異なるため、コンテキストに基づいて一貫性と訴求性の高い購買体験を提供することがこれまで以上に難しくなっています。
しかし、機能が豊富で使いやすいABMツールを一元管理型の記録システム全体で共有しインバウンドマーケティング戦略と併用すれば、マーケティング担当者と営業担当者は協力してこの複雑な状況を打破し、失注を成約に転じさせるようなB2Bの購買体験を提供できます。
HubSpotのABM機能について
HubSpotはABMが不必要に入り組んで使いにくくなり、企業が最初の一歩を踏み出すことさえできなくなっていると感じています。あるアナリストも「ABMプログラムの迅速な導入かつ継続的な活用のためには、テクノロジー、メディア、データ、従業員への多大な投資が必要になる」と述べている状況です。
しかし、これは本来あるべき姿ではありません。
ABMとは一部の企業だけが実践できる特別な手法ではなく、
多くの企業が活用できるものなのです。
そして、満足度の高いB2Bの購買体験を提供したいと願うすべての企業が利用できるようにする必要があります。
そこで、HubSpotは新たにABM実践機能をリリースしました。HubSpotのABM実践機能には、マーケティングチームと営業チームが連携してABM戦略を簡単に策定し実施するための機能がそろっています。
複数のチームをまとめて可能性を引き出す
HubSpotの新しいABMソフトウェアにはAIを活用したターゲットアカウントの提案、企業別の高度なスコアリング、使いやすいキャンペーンテンプレートなどABMを迅速に導入するための実践機能が搭載されています。
セットアップが完了したら、営業チームとマーケティングチームは、ターゲットアカウント、リアルタイムレポート、企業の各担当者との最近のやり取りといった情報を共有し、重要な一元管理型の記録システムとして利用できます。これらは今日の市場におけるHubSpotのABM実践機能独自のメリットであり、営業チームとマーケティングチームの連携を促進して満足度の高い購買体験を提供することを可能にします。
HubSpot製品のパッケージ内容とABM実践機能の関係(2020年5月)
HubSpot製品に搭載しないと決めた機能もありますが、それらも搭載されている機能と同じくらい重要です。こうした機能については、HubSpotのアプリパートナーや戦略パートナーが提供する充実したエコシステムがサポートしてくれています。
HubSpotのアプリマーケットプレイスから、高度な広告ターゲティングを行うLinkedIn、企業のインテントデータからインサイトを引き出すBombora、マルチチャネルのABMを自動化するEngagio、詳細なABMレポートを作成するSupermetricsやDemand Sageといったツールとの連携が可能です。また、新たに改良されたSlackとの連携機能を使用すると、重要なターゲットアカウントへの対応に関するチーム間の協力体制を強化できます。
Slackとの連携機能が更新されたことで、特定の取引やアカウントの名前を付けたSlackチャンネルを作成したり、重要なKPIを簡単に共有したり、Slackから取引および企業レコードに(逆も可能)コメントを追加したりできるようになりました。これらの更新により、マーケティング担当者と営業担当者はABMの機能を最大限活用し、協力しながら迅速に活動を進めることができます。
B2B領域でも、B2Cのような卓越した顧客体験を
B2Cの世界では今やシームレスな顧客体験がスタンダードとなり実際に消費者に提供されている一方で、B2Bの購買担当者もB2Cに匹敵する購買体験を求めるようになりました。
顧客が希望する購入方法に合わせて営業戦略を策定すれば、企業はスマートな成長を遂げることができるとHubSpotは常に信じてきました。この原則は、冒頭でお伝えしたような個人向けオンデマンドの食料品配達サービスにも、グローバルな大企業をターゲットとする高価値サービスにも、どちらにも当てはまります。
Sales HubとMarketing Hubに加えて、両製品で共通して利用できる新しいABM実践機能を活用すれば、ABM戦略を簡単に策定し一元管理型の記録システムによって営業チームとマーケティングチームの連携不足という課題を解決して、最も価値の高いターゲットアカウントにシームレスなB2Bの購買体験を提供できます。
これまでなかなか叶わなかったB2Bの購買体験を改善するというABM本来のメリットを、ついに享受できるときが来たのです。