皆さんはABM(アカウントベースドマーケティング)という言葉を耳にしたことがありますか?
企業単位でターゲティングしアプローチする、マーケティングとセールスの連携が必要であるというようなイメージをお持ちの方が多いと思います。
では、インバウンドマーケティング手法とは何が違うのでしょうか?実は両者は切ってもきれない関係にあるのです。
本記事ではABMとは何か、ABMとインバウンドマーケティングがなぜ密接に関係しているのかについて解説します。
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結局ABMとインバウンドマーケティングは何が違うのか
ABMとは比較的新しい概念です。そのため、インバウンドマーケティングとの違いがわかりづらいと思われるかもしれません。ABMとインバウンドマーケティングについてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
インバウンドマーケティングとは?
インバウンドマーケティングとは、「潜在顧客を惹きつけ、信頼関係を築き、満足させることで、多くの価値を提供し、信頼される企業へと成長を遂げるためのマーケティング手法」です。
インバウンドマーケティングでは、カスタマージャーニーに基づいて付加価値の高いコンテンツで潜在顧客を惹きつけ見込み客を獲得します。そして、Eメールなどで継続的なコミュニケーションをとり、リードの購買意欲を高めると同時に営業がアプローチすべき見込み客を絞り込んでいきます。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?
ABMもインバウンドマーケティングと同じくマーケティング手法の1つです。リード個々人に対してアプローチするインバウンドマーケティングに対して、所属企業を1つの単位としてアプローチしていきます。実際に顧客と対面する営業組織と連携し、企業属性でのターゲティングを進めていきます。
多くの場合、ABMはエンタープライズレベルの法人営業組織によってB2B企業をターゲットとして行われるのが一般的です。
ABMが注目されるようになった背景とは?
なぜ今、ABMが注目されているのでしょうか?
それは、B2Bビジネスでは多くの場合、意思決定者が複数人にわたるからです。HubSpotの調査によるとB2Bの購買プロセスにはおよそ7〜20の人が関わってくると言われています。
インバウンドマーケティングではアプローチの対象を「会社」ではなく「人」単位で見ています。そのため、例えば同じ会社の複数人から資料のダウンロードがあったとしても、人単位でスコアをカウントしてしまい、会社単位での確度の高いシグナルを見落としてしまいます。
B2Bビジネスでは個人で意思決定をできるケースというのはとても限られているため、人単位ではなく企業単位で意思決定者へのアプローチが求められているのです。
ABMを導入するメリットとは?
B2Bビジネスでは通常、意思決定者が複数人存在することから、ABMというアプローチが注目されていると説明しました。では、ABMを導入することでどのようなメリットがもたらされるのでしょうか?
マーケティング施策の無駄を削減できる
これまでのインバウンドマーケティングでは、どうしても獲得したリードの中には対象外のリードが集まってしまっていました。そのため、創り出したリードの質の担保には一定の限界値がありました。実際に、Terminusの調査(英語)によると獲得したリードの0.75%しか収益をもたらさないともいわれています。
一方、ABMでは獲得したいターゲットをあらかじめ設定した上で、獲得したリードの中にターゲットアカウントが含まれるか否かを判定していきます。そのため、マーケティング部と営業部の間で「リードの質が良くない」という議論の中に定量的な指標を持つことができるため、結果的にマーケティング施策の無駄撃ちを軽減する可能性があると期待されています。
目標の追跡と測定がやりやすい
前述の通り、ABMではあらかじめ対象顧客のターゲットを絞ってマーケティングを行っています。そのため、効果測定の際に測定対象のデータが煩雑になるといったことを避けられます。データ分析がしやすいため、マーケティング施策のPDCAサイクルを容易に回していくことができるようになります。
インバウンドマーケティングの効果を最大化するためのABM
これまでABMが注目される背景、ABMを導入するメリットをご紹介しました。
しかし、これらはABMに限ったことではありません。インバウンドマーケティングでROIを上げるためには、適切なターゲットに向けたコンテンツの発信、セールスとの連携、情報共有が不可欠であるということは簡単に想像できると思います。
インバウンドマーケティングで成果を上げるためには、適切な顧客ターゲットのニーズに答えるような魅力的なコンテンツを用意することが重要になってきます。また、そのような魅力的なコンテンツとは何であるかという答えは顧客しか知りません。そのため、実際に顧客と対面する営業チームからマーケティングチームへのフィードバックが欠かせないのです。
つまり、本来はインバウンドマーケティングを行う際にもABMのような思想、アプローチが重要であるのです。
一方で、ABMを行うためにもインバウンドでのリードリストや魅力的なコンテンツが必要不可欠です。企業単位でセグメント分けをしたターゲットに対してアプローチしようとしても、対象企業のリードがいなければ従来のアウトバウンド手法と同じ状態に陥ってしまいます。また、ターゲット企業をナーチャリングしていく際も、企業のライフサイクルステージや企業の中の担当者の興味に沿ったコンテンツが必要となってきます。
ABMとは不完全なインバウンドマーケティングを補ってくれる存在であり、 つまりABMとインバウンドマーケティングは全く異なった2つの概念ではなく、相互補完的に関係し合っているのです。
ABMを運用するための4つの基本ステップ
ABMのマーケティング戦略を立てることで、以下3点の実現に近づきます。
- 案件単価が大きくなる
- マーケティングと営業の絆が強くなる
- 大きな案件の獲得速度が速くなる
ABMの運用には、以下の4つの基本ステップで進行することが重要です。
- 「Team(組織をつくる)」
- 「Define(定義する)」
- 「Identify(識別する)」
- 「Engage(施策の実施)」
以下で詳しく解説します。
「Team(組織をつくる)」
必ず営業・マーケティングのチームメンバーをそれぞれ選出し、ターゲットアカウントにアプローチする営業人員を確保することが重要です。また、少なくとも営業とマーケティングの専任の担当者を1名以上アサインしましょう。
営業・マーケティングの担当者に必要なスキルは以下です。
- 営業:多くの決済者・複雑な組織をまとめて商談を進められる能力
- マーケティング:データ分析、MAツールの運用経験に加え、インバウンドだけでなくアウトバウンド施策の知見
「Define(定義する)」
HubSpotはABMにおいて以下の2点を重視しています。
- ゴール(KPI)の設定、顧客データの分析を行い、「Ideal Customer Profile(以下:ICP)」を見つけ出す
- ICPのペルソナを作成する
マーケティングのゴール(KPI)はリード数ではなく、ターゲットアカウントからのアカウント数に設定します。また、インサイドセールスは商談獲得数ではなくターゲット企業からの商談獲得数、フィールドセールスは受注数がゴール(KPI)になります。
ICPは、プロパティデータやスコアリングデータに年間取引額、従業員数、最近の取引額などのフィルタをかけて見つけ出します。そして、営業・マーケティング双方がフォーカスすべきリストを設定します。データが不十分な場合には、ICPの定義付けから始めます。
ICPは、個々のバイヤーペルソナではなく理想のアカウント像です。ICPが顧客になった場合の理想の状態は、多くの取引額、高い満足度、商材のマッチ、顧客として長く継続することが挙げられます。
ICPとペルソナの例は以下です。
- ICP
- 業種
- 従業員数
- 年間売上高
- 直近の取引額
- 所在地
- 顧客サイズ
- 特定の部署の従業員数
- 広告出稿費
- 求人を行っているか
- どんなツールを導入しているか
- ペルソナ
- 職種
- 購入役割
- ペルソナのゴール
- ペルソナのモチベーション
- ペルソナのチャレンジ
「Identify(識別する)」
ICTの会社基準を定義することで、ターゲットアカウントをリスト化します。そして、HubSpotのリードスコアリングツールを使用し、ターゲットアカウントに優先順位をつけます。そうして連絡先の数とスコアを可視化し、各企業の関与レベルを把握できるようになります。
「Engage(施策の実施)」
ターゲットアカウントへの広告・オートメーション・パーソナライズ施策を実施します。主に以下の手法を活用することを推奨しています。
- ソーシャルモニタリング HubSpotのソーシャル監視ツールを活用すれば、ターゲットアカウントを追跡し、パーソナライズ化したメッセージをターゲットアカウントに送れます。
- 有料広告 HubSpotの広告ツールを活用すれば、リターゲティング広告を実行し、ICPに合った新しいターゲットアカウントと交流できるようになります。
- スマートコンテンツ/スマートCTA Webサイトまたはランディングページ(LP)にスマートコンテンツを追加し、さまざまなコンテンツオファーを促進します。また、スマートCTAは閲覧者に応じて最適なページにリダイレクトします。
- Ebookやビデオ
ABM成功のためにはインバウンドマーケティングに注力を
ABMを実践するための6つのステップでも紹介しましたが、ABMを行うためにはデータ分析やアカウント精査が必要であり、インバウンドマーケティングで顧客との接点を作っていかなくてはなりません。
しかし、まだまだ日本ではインバウンドマーケティングを実施している企業は少ないのが現状です。
ABMは確かに流行りの手法ではありますが、まだインバウンドマーケティングに取り組んでいないのであれば、まずインバウンドマーケティングの環境を整備してみるのはいかがでしょうか。
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