共創ブランディングとは?8つの海外成功例に学ぶ効果的なブランディングの方法

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、少し昔にLip Smackersから発売されたドクターペッパー フレーバーのリップクリームが発売されたことがあります。

共創ブランディングとは?8つの海外成功例に学ぶ効果的なブランディングの方法

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共創ブランディングから生まれたこの商品には、人の心を掴み、記憶に残る要素がありました。楽しくて型破りなだけでなく、ドクターペッパーという老舗ブランドとタッグを組んだことで、時代を超えて愛されるフレーバーが実現したのです。実際、この商品は現在も購入可能で、発売当初の1975年から現在まで続くロングセラーとなっています。

こうした戦略的なパートナーシップは、ビジネスの構築、ブランド認知度の向上、新規市場への参入において非常に効果的です。ポイントは、片方のブランドの成功がもう片方のブランドの成功につながるということ。しかし、このようなパートナーシップが真に効果を発揮するには、双方にとってメリットのあるWin-Winの関係でなければなりません。価値観、ターゲットオーディエンス、価格、プロモーションチャネルも整合している必要があります。

では、成功する共創ブランディングパートナーシップとはどのような関係なのでしょう

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共創ブランディングとは?

共創ブランディングとは、共通の顧客像を持つ企業同士が自社のブランドに対する共感や信頼などの価値を高めていいく組織的なマーケティング活動を共に行うことを指します。

たとえば、単独で行うブランディングの場合、自社に興味を持っている顧客像や見込み客像には認知をしてもらえる可能性がありません。

一方で、同じような価値観を持つ顧客像や見込み客像を持つ企業と共創ブランディングを行うことで、他社の見込み客像や顧客像にも自社のブランドを認知してもらうことに繋がり、相互補完をしながらマーケティング活動の拡大を期待することができます。

素晴らしい成功例は数多くあり、この記事だけではとても紹介しきれないほどです。

そこで今回は、その中でもとりわけ優れた共創ブランディングを8つご紹介します。他にも皆さんの印象に残っている共創ブランディングがあれば、是非コメント欄で共有してください。

優れた共創ブランディングパートナーシップ8例

1)GoPro&レッドブル:「Stratos」

GoProは、ただのポータブル カメラ メーカーではありません。同じようにレッドブルもただのエナジー ドリンク メーカーではありません。どちらも「ライフスタイルブランド」としての地位を確立しており、「恐れを知らず、冒険的で、アクション満載の、時にエクストリームなライフスタイル」を象徴するブランドとして認識されています。

このように互いに共通する価値を持つ両社は、共創ブランディングのパートナーとして最適でした。特にアクションスポーツの分野において協力すれば完璧です。

そこで、GoProは、世界中のアスリートや冒険家にツールや資金を提供して、レース、スタント、アクションスポーツのイベントを、アスリートや冒険家の視点から撮影し、一方のレッドブルは、自社のそれまでの実績と評判を生かして、こうしたイベントのスポンサーを引き受けるというコラボレーションを展開しました。

「GoProのカメラ技術のおかげで、これまで見ることのできなかった新しい視点、すなわちアスリートの視点で、プログラミングを補完することができるようになりました」と話すのは、レッドブルのスポーツ マーケティング ディレクターであるSean Eggert氏です。両社の成長を促進するため、GoProは撮影したコンテンツをレッドブルだけに提供しています。

両社はこれまで数々のイベントやプロジェクトでコラボレーションしてきましたが、最も大きなスタントプロジェクトと言えば、「Stratos」でしょう。Stratos(成層圏)という名のとおり、このプロジェクトでは、Felix Baumgartner氏が地上から24マイル(38キロメートル)以上離れた成層圏からスカイダイビングを行い、その様子を自身の体に装着したGoProで撮影しました。

Baumgartner氏はこの日、3つの世界記録を打ち立てただけでなく、人間の限界に挑戦するという、GoProとレッドブルのコアにある価値を見事に体現したと言えます。

2)Pottery Barn&ベンジャミンムーアペイント:「Experience Colors」

共創ブランディングキャンペーンの最も大きな利点の1つは、自社の製品やサービスを、まったく新しいオーディエンスに露出できる点です。まさしくそれを成功させたのが、インテリアショップのPottery Barnとペイントブランドのベンジャミンムーアです。両社は2000年代初頭にパートナーを組みました。

当時、Pottery Barnは、カタログで使用されている塗料の色に関して数多くの質問が寄せられていることに気付きました。

それにより、自社の顧客が塗料の色に格別な関心を持っていることを知ります。そこで、ベンジャミンムーアのような評判の高いペイントメーカーと協力することで、顧客の望むものを提供しました。

両ブランドは、Pottery Barn限定ペイントシリーズを開発。さらに、Pottery Barnのウェブサイトに新しいセクションを追加し、顧客が家具に合う塗料の色を簡単に選べるようにしたのです。

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画像クレジット:Dezinable

「私たちは、お客さまがスムーズに色を選べるように、常に新しいツールを開発しています」と語るのは、ベンジャミンムーアのコミュニケーションディレクターであるEileen McComb氏。

「このコラボレーションで素晴らしかったのは、当社のカラーパレットから、Pottery Barnのデザインに最適な色を絞り込むことができた点です。それにより、Pottery Barnの顧客にも価値を提供できました。」

このパートナーシップは長年にわたり成功を収めましたが、Pottery Barnは2013年より、ペイントブランドのSherwin-Williamsと新たなコラボレーションを展開しています。

3)グローバルファンド&GAP:「PRODUCT (RED)」

INSPI(RED)、ADMI(RED)、EMPOWE(RED)の各フレーズを覚えている方も多いのではないでしょうか。PRODUCT (RED)キャンペーンは、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(略称グローバルファンド)が、アフリカのエイズ撲滅のために2006年から行っているキャンペーンです。開始以来1億3,000万ドル(約146億円)を超える資金を集めており、おそらく世界史上最も大規模なコラボレーションでしょう。

このキャンペーンに参加したのは、GAPだけではありませんが(アメリカンエクスプレス、Apple、コンバース、スターバックスなどが参加)、企業が何かテーマを決めて商品を開発することの素晴らしい一例です。このプロジェクトの場合は「世界を変えること」がテーマでした。

初期のPRODUCT (RED)キャンペーンでは、クリス・ロックやアン・ハサウェイなどのセレブが、1人あるいは友人や家族と一緒に、(PRODUCT) REDの商品を、自分らしく着こなしている姿が撮影されました。

そしてこれらの写真はヴォーグなどの雑誌に掲載されたのですが、写真のキャプションでは「あなたが着ているシャツは世界を変えられるか」や「次世代は世界を変えられるか」など、示唆に富む質問が投げかけられてしました。

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画像クレジット:The Inspiration Room

また当然ながら、このパートナーシップは、企業が自らを「社会的責任を果たしている存在」としてマーケティングしている好例でもあります。通常、こうしたマーケティングは売上の増加につながります。その見返りとして、グロ-バルファンドは、(RED)商品の純利益の50%を受け取ります。(RED)側も企業側も、企業や商品の売上額や貢献額を開示することはありません。

一部では、慈善活動よりも企業側の利益が大きいとして、こうした社会的キャンペーンの誠実性に疑問を呈する声もあります。

ただ、企業の社会的責任だけで世界の問題を解決することは難しいとしても、企業にとって新しいオーディエンスに露出できる良い機会であることには変わりありません。

4)Bonne Belle&ドクターペッパー:フレーバー付きリップクリーム

ドクターペッパー フレーバーのリップクリーム。発想の転換とはまさにこのことです。

Bonne Belleの前身はLip Smacker。1973年に世界初のフレーバー付きリップクリームを発売しました。最初はストロベリー、レモン、グリーンアップルなどの一般的なフレーバーでしたが、わずか2年後の1975年、時代を超えて愛されている老舗ブランドのドクターペッパーと組み、初のコラボ フレーバーを発売します。その結果はご存知のとおり。何十年にもわたり十代の少女たちに支持される人気フレーバーとなりました。

リップクリームとドクターペッパーではどうも共通点に欠けると思われる方には、このコラボの初期の広告コピーをご紹介しましょう。「It’s the super shiny lip gloss with lip-smacking flavor… just like the world’s most original soft drink(おいしくて思わず唇をなめたくなっちゃうリップクリーム...そうまるで世界一独創的なあのソフトドリンクみたいにね)」 また、後年にはこのようなコピーもありました。「From Bonne Belle of course: the cosmetics company that understands your taste(テイスト(味/美的感覚)のあるコスメ、Bonne Belleより発売)」

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画像クレジット:Click Americana

5)BMW&ルイ・ヴィトン:旅の美学

自動車メーカーのBMWとデザイナーブランドのルイ・ヴィトン。少し意外な組み合わせに思えるかも知れませんが、よく考えてみると、実は非常に重要な要素が共通しています。ルイ・ヴィトンの代表的なプロダクトラインである旅行鞄を思い浮かべていただければ分かりますが、両社はどちらも「移動/旅」に関わる事業なのです。またハイエンドのプロダクトを扱っている点も共通しています。さらにどちらも、高品質の職人技で名高い伝統的なブランドです。

このように共通する価値があるからこそ、共創ブランディングが相乗効果を発揮します。このパートナーシップでは、BMWは「BMW i8」という名前のスポーツカーを開発しました。一方のルイ・ヴィトンは4種類のスーツケースとバッグで構成されるBMW i8専用の旅行鞄を制作。このセットは、BMW i8の後部荷室にぴったりフィットする形状になっています。

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画像クレジット:Louis Vuitton

この4点セットは、実に2万ドル(約223万円)もしますが、この価格はターゲット層にマッチしています。なぜならBMW i8の価格は、一番安いもので13万5,700ドル(約1510万円)だからです。これだけの価格を払う顧客層にとって、鞄セットの価格はたいしたことではありません。

4つの鞄はサイズがぴったりなだけでなく、BMWの「優雅で、力強く、高品質」というブランドイメージにもしっかり合致しています。さらに、素材にも共通点があり、鞄と車内パーツの両方に、軽量で耐久性の高いカーボンファイバーが使用されています。

「BMWとのコラボレーションは、私たち2社が共有する、創造性、技術的革新、スタイルという価値のまさに縮図と言えます」と、ルイ・ヴィトンの特別注文責任者であるPatrick-Louis Vuitton氏は語ります。

「高い技術と細心の注意で、真のオーダーメード鞄を完璧に作りあげること。この非常に特別なプロジェクトを、我が社の職人たちは楽しんでやりとげました。この鞄セットには、旅の美学が凝縮されています。」

6)Genius&Spotify:「Behind the Lyrics」

音楽のストリーミング配信サービスであるSpotifyと、クラウドソーシングで歌詞と音楽情報を提供するGeniusなら、まるで誂えたようにしっくりいくはずと誰もが思うことでしょう。両社の共創ブランディングは、その期待どおりでした。

2016年、両社は「Behind the Lyrics(歌詞の裏側)」という新しいコラボレーションプレイリストの作成に取り組み始めました。これらのプレイリストでは、各曲の再生中に歌詞が表示され、さらに歌詞の説明やその背景なども表示されます。

2016年1月にリリースされた、最初のプレイリスト「Behind the Lyrics: Hip Hop(歌詞の裏側/ヒップホップ)」には、Drake、2 Chainz、Rihannaなどのアーティストが含まれており、ユーザーは楽曲の歌詞について深く知ることができるようになっています。

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歌詞に関する情報自体は、クラウドソーシングで収集され、Genius.comで提供されている内容ですが、両社は協力してストリーミング機能を強化し、楽曲の再生中に適切なタイミングで情報が表示されるようにしました。このパートナーシップは、同じ業界(この場合は音楽業界)のビジネス同士で、楽しく興味深いコラボレーションを行うことができるということを実証してくれています。

ご注意:現在、この機能はSpotifyのiPhoneアプリでのみ利用可能です。パソコンでSpotifyのご利用の方は、Geniusのウェブサイトをご覧ください。その際、デスクトップアプリがインストールされている必要があります。)

Spotifyは他にも、Uberと組んで実施した「ドライブ用サウンドトラック」の作成など、さまざまな共創ブランディングで成功を収めています。

7)BuzzFeed&Fur Baby Rescue

共創ブランディングにはシンプルなものもあれば複雑なものもあります。BuzzFeedとFur Baby Rescueのコラボレーションは最もシンプルなものの1つと言えるでしょう。共創ブランディングには、必ずしも何か月ものプランニングや多大な投資が必要とは限らないということを教えてくれます。

動物保護センターのFur Baby Rescueは、200万を超えるBuzzFeedの読者に目を付けました。そして、読者にリーチするため、BuzzFeedと手を組み、「We Gave Drunk Girls a Bunch of Puppies and There Were Lots of Tears(酔っぱらった女子たちに次々と子犬を与えてみた)」という記事をBuzzFeedで公開しました。

その記事はこちらでお読みいただけます(英語)。記事の内容は題名のとおり、お酒を数杯飲んでいい気分になった女性たちに、サプライズでとても愛くるしい子犬たちを手渡すというもの。そして、この子犬たちはFur Baby Rescueで里親を探している子犬たちなのです。

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画像クレジット:BuzzFeed

記事ではそこかしこで、Fur Baby Rescueのウェブサイトへのリンクが張られているうえに、下のようなGIF画像や「どの子犬も里親待ちです」というキャプションにより、里親を探していることがしっかり伝わっています。

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画像クレジット:BuzzFeed

8)Alexander Wang&H&M

ファッションに関心のある方なら、Alexander WangとH&Mは、品質面で同じ層に属していないことはご存知のはずです。Alexander Wangの靴は1足約350ドル(39,000円)、一方のH&Mの靴は1足約35ドル(3,900円)が相場だと言えばお分かりいただけるでしょう。

しかし、この価格の差こそ、2つのブランドがパートナーシップを組んだ理由です。「トレンディーでファッショナブル」というブランドの立ち位置を強化すべく、H&Mは以前からハイエンドのファッションブランドとコラボレーションしており、そのブランドの名前を冠した商品を期間限定で販売しています。

その見返りとして、Alexander Wangのようなハイエンドブランド側は、「将来的に顧客になる可能性がある新しい世代の消費者」に露出し、「Alexander Wangのハイエンドコレクションへの購入欲を高める」ことができると、Michelle Greenwald氏はForbesで語っています。

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画像クレジット:Snobette

皆さんのお気に入りの共創ブランディングはどれですか? コメント欄でぜひお知らせください。

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