「紙・印鑑文化」という文化的なハードルから、他の先進国よりも遅れている日本の「ペーパーレス化」。グローバルビジネスにおいてDX(デジタルトランスフォーメーション)はもはや当たり前になりつつあり、少子高齢化を背景に人材不足と生産性低下が進む日本は、ペーパーレス化に代表される業務の効率化が急務となっています。

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しかしその一方で、ペーパーレス化をイメージはできても、顧客とのこれまでの関係性や社内のIT人材不足によって本格的に取り組めている企業は少ないのではないでしょうか。そこで本稿では、最新の企業事例をご紹介しながら、今押さえておくべきペーパーレス関連情報を解説していきます。

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DX推進に活用!デジタル トランスフォーメーションのチェックリスト & 工程計画表

〜DXを推進する秘訣とは?〜

ペーパーレス化とは?

ペーパーレス化とは?

ペーパーレス化とは、オフィス内にあるさまざまな紙媒体(契約書、資料、帳票など)の電子化を進め、PCやタブレットといった電子機器で閲覧、管理、処理ができるようにすることで、業務効率を改善する取り組みを指します。

「紙の原本を機械でスキャンして、PDF(電子媒体)にして整理、保存することがペーパーレス化」というイメージを持たれる方も多いと思いますが、そうではありません。そもそも最初の段階、つまり帳票や資料を制作する段階からデジタル化し、オンライン上ですべての処理を完結できる状態にすることが本当の意味での「ペーパーレス化」なのです。

ペーパーレス化が進む背景

近年、あらゆる業界で急速にペーパーレス化が進んでいます。なぜ今、これほど浸透しつつあるのか、背景にある事情を確認しましょう。

背景1:国も本腰を入れて法整備し、ペーパーレス化を推進

ペーパーレス化は企業だけでなく、国も取り組むべき課題であると認識しています。2004年に制定された「e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)」では、これまで紙で保存する必要があったものを、スキャンした電子データとして保存できるようになりました。特に、国税関係書類や医療情報(カルテ、同意書など)、建築図面がその対象となっています。

また、2015、2016年にはデータによる領収書の金額基準が撤廃され、スキャナーだけでなく、スマートフォンやカメラで撮影されたデータの利用も許可されました。これにより、企業の経費精算は飛躍的に簡潔になったのです。

もう少し具体的に解説します。これまで、社員一人ひとりが伝票を紙で印刷し、紙の領収書をそこに貼り付けて提出、それを経理担当が目視でチェック、集計していました。しかし今では、その領収書を手元のデバイスで撮影し、社内のツールに送ることで自動で経費精算ができるようになったのです。

直近の2019年には「デジタル手続法」が制定され、マイナンバーカードや公的個人認証のオンラインでの各種手続が可能となり、場所を選ばずに手続きが一箇所で済むことで利便性は大きく向上しました。

背景2:SDGsを筆頭に、世界的に「持続可能なビジネス」が求められるように

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年の国連サミットで採択された2030年までに達成すべき17の開発目標と169のターゲットのことです。貧困や健康、経済成長など多岐にわたる目標が提示されている中でも、以下の2つの目標がペーパーレス化につながってきます。

  • 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標15:陸の森の豊かさも守ろう

特に目標15では、ペーパーレス化によって紙の使用量を減らすことで、森林の保護につながります。日本の紙生産量は中国、アメリカに次ぐ世界第三位であり、国民一人当たり年間で201kgも消費している計算になります。

ペーパーレス化のメリットとは?

ペーパーレス化のメリットとは?

企業のバックオフィス業務のペーパーレス化におけるメリットは以下の通りです。

情報の可視化、マニュアル化を実現し脱属人化へ

職人気質な働き方をよしとする文化が根強いためか、多くの企業で業務の多くが属人的に紙で管理されており、個人の能力によって業務の質が左右することも珍しくありません。

その場しのぎ的には効率的ではありますが、長期的な視点で業務を俯瞰した際、同じ業務であれば新人ベテラン問わず誰が行っても同じ品質で処理できる状態のほうが望ましいと言えます。そのため、引き継ぎのマニュアルも紙で印刷されたものでなく、その都度アップデートをすることができるオンラインマニュアルの方がよいでしょう。

定量的な業務管理を実施できる

フロントオフィス(営業やマーケティング)や製造、物流部門では、例えば売り上げや粗利率、1日の生産数や納品数といった各業務ごとの定量的な管理は当たり前に行われています。会社全体の利益に直接的に関わるためです。

しかし、バックオフィス業務の効率化は、会社の利益に間接的にしか関わらなかったため、優先度はどうしても下がりがちでした。しかし、SaaSやクラウド技術の浸透によって業務を効率化できる範囲が以前よりも飛躍的に広くなり、ペーパーレス化を始めとした会社全体の業務効率化は企業競争力の向上に直結するようになったのです。

場所やデバイスに縛られず、簡単に検索できる

クラウド上に保存されたデータであれば、手持ちのスマートフォンやリモートワーク中の自宅からでも必要なタイミングでアクセスすることができます。

セキュリティの強化、情報漏えいのリスク軽減

紙媒体の書類は手元に現物が残るため管理が容易のように思えますが、一度紛失してしまうとその経路を辿ることは困難です。オンラインであれば、IDとパスワードで管理者や閲覧者権限を制限することができますし、万が一の場合もどこかに履歴は残ります。

破棄する際も、紙媒体は情報漏洩を完全に防ぐためにはシュレッダーや溶解サービスを利用せねばならず、コストも手間もかかります。

ペーパーレス化のデメリットとは?

ペーパーレス化のデメリットとは?

企業でペーパーレス化を進めるためには、最新技術をのツールやシステムをただ導入すればよいというものではありません。その技術を運用し、仕組みまで落とし込んでいくのは機械ではなく、人である社員です。そのため、ペーパーレス化を浸透させるためには意識やマインドを変える必要があります。

また、情報システム部のような1つの部署にその責任を押しつけるのではなく、バックオフィス全体が主体性をもってペーパーレス化や業務効率の改善に取り組むべきでしょう。そのための意識改革に取り組むためのコストやリソースの負担は、ペーパーレス化のデメリットと言えます。

意識改革が浸透した後もIT化された業務プロセスは技能の教育が定期的に必要となります。導入するツールやシステムの使い勝手にもよりますが、ITに不慣れな人材を雇用して教育させるためには一定の期間とコストがかかります。加えて、デジタル技術は日に日にアップデートされているため、それを運用する側にも常に学習が求められるのです。

導入時だけでなく、長期的に一定の教育コストがかかり続けるデメリットも理解しておきましょう。

ペーパーレス化推進に必要なデバイス・ツールは?

ペーパーレス化推進に必要なデバイス・ツールは?ペーパーレス化を実現するためには、データを保存するクラウドやサーバ、管理・運用するためのツールやシステム、そしてそのデータを表示するデバイスが必要になります。ここでは、ペーパーレス化に必要となる具体的なツールやデバイスをご紹介します。

データを保存する場所:クラウドストレージ

データ化した書類をハードディスクドライブに保存してしまうと、データへのアクセスが煩雑になり、その機械が壊れてしまうとデータが紛失してしまうというリスクがあります。クラウドストレージであれば、インターネット上にデータファイルを保存し、社内で共有することが可能になります。情報の透明性が実現できるだけでなく、アクセス履歴もオンライン上に残るため、セキュリティ上の問題もクリアできます。

機械で紙媒体を自動読み取り:OCR、AI OCR

OCR(Optical Character Reader)は、画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する光学文字認識技術のこと。紙媒体をカメラやスキャナーで読み込み、そこに書かれている文字を機械が認識してデータ化することができます。

そこにAIを搭載したものが「AI OCR」です。領収書や納付書といった帳票に記載された項目を自動抽出し、機械学習によって文字認識率の向上やフォーマット設定の手間を省くことができます。手作業で行われていた入力作業を効率化することができ、生産性を飛躍的に高めるツールとして注目されています。

オンライン上で契約を完結:電子契約

「電子契約」は、企業間や個人との契約締結をオンラインで行うことができるサービスです。「はんこ文化」が根強く残る日本の商習慣では、書面で契約書を作成し、そこに当事者が代表者印を押印することで契約が成立します。しかしその方法だと、遠隔で契約書をやり取りするには契約書を往復で郵送させる必要があったり、紛失のリスクもあります。電子契約に関する法整備が進み、複数の企業がSaaS型の電子契約サービスを提供しています。また、類似のSaaSとして、請求書、領収書管理のサービスもあります。

紙のように持ち運び、書き込める:ダブレット端末

PCやスマートフォンからでもデータ化された書類は閲覧することができます。しかし、タブレット端末のほうが実際の紙のように持ち運びができ、ペンでそのまま書き込めるため、ペーパーレスと相性がよいのです。タブレットのタッチ感度や耐久性の向上から、今や工場や工事の現場、スーパーの在庫管理でもタブレットの普及が進んでいます。

ペーパーレス化に成功した国内の事例

新潟県長岡市役所のペーパーレス化:DX Suite(AI-OCR)

株式会社AI insideが手掛ける「DX Suite」は、AIで認識するOCRサービスの1つです。長岡市役所では毎日繰り返し発生する業務の効率化を目指して、地方公共団体向けサービスの「NaNaTsuTM AI-OCR with DX Suite」を導入。RPAと組み合わせて一気通貫での自動化に成功し、年間で約2,000時間の業務時間短縮に成功しています。市役所の職員は確認作業だけ行うことになり、手が空いた分を政策立案や市民対応の充実など、人にしかできない業務により時間を使えるようになりました。

長岡市役所 | DX Suite | 最高のAI-OCRを。

株式会社技研製作所のペーパーレス化:クラウドサイン(電子契約)

弁護士ドットコム株式会社が開発、運営を行う電子契約サービスの「クラウドサイン」。アップロードした契約書や発注書などの書類を相手方にメールで送信し、双方の同意後、数分で電子契約ができるサービスです。

他の業界と比べてもIT化が遅れているという建設業界で電子契約を導入したところ、契約書を郵送する手間がなくなり、部門をまたいだ契約の確認も可能になりました。

電子契約で建設請負工事をコストカット
 

ペーパーレス化は、企業、従業員、顧客全ての関係者に恩恵をもたらす

ペーパーレス化は、企業、従業員、顧客全ての関係者に恩恵をもたらす

形だけのペーパーレス化には意味がありません。業務の効率化や働き方の改善、その先の企業の競争力強化という目的からぶれることなく、企業全体で取り組むべきでしょう。よくある失敗のケースとして、ツールやデバイスに予算を投下したものの、それで満足してしまい、運用ができずにコストだけがかかってしまうというもの。業務を改革するのはツールやデバイスではなく人間であり、まずは従事する人々の意識を改革するという姿勢が重要になります。ペーパーレス化を実現し、利用方法も浸透すれば、間違いなく業務効率は大幅に改善され、EX(Employee Experience=従業員体験)も向上するでしょう。

また、無駄な作業から解放されて生まれた時間は、顧客体験の向上に充てることができます。ペーパーレス化というと単なる業務効率化のイメージが強いかもしれません。ただ、顧客価値向上という本質的な業務に集中できる環境を構築するという意味では、顧客への影響も少なからずあるのです。

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デジタル トランスフォーメーション チェックリストと工程計画表

 DX推進に活用!デジタル トランスフォーメーションのチェックリスト & 工程計画表

元記事発行日: 2020年8月17日、最終更新日: 2020年11月09日

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デジタルトランスフォーメーション