アントレプレナーに求められる「起業家精神」とは何か?活躍事例から見えてくるポイント

執筆者 水落 絵理香(みずおち えりか)
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アントレプレナーに求められる「起業家精神」とは?活躍事例から考える成功要素

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近年、日本でも 「アントレプレナーシップが必須である」「アントレプレナー教育にもっと力を入れるべきだ」との議論が盛り上がっています。

(当社HubSpotでも、国内の起業家やスタートアップ企業を盛り上げ、支援するためのプログラム「 HubSpot for Startups 」を設けています。)

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ただ、海外に比べて環境が十分に整っていない日本では、そもそもアントレプレナーの定義が曖昧で、重要性が十分に認知されているとは言えないのではないでしょうか。

本記事では、アントレプレナーが必要とされる背景とその定義を解説したうえで、 「アントレプレナーとはどういった人物なのか?」「アントレプレナーにはどのような起業家精神が求められるのか」「成功の背景にある要素は何か?」を解説します。起業を考え始めたビジネスパーソンにとって、はじめの一歩を踏み出す手掛かりとなれば幸いです。

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    日本でアントレプレナーが求められる理由

    アントレプレナーが求められる背景には、日本における起業数が関係しています。 ここ数年、増加傾向にあるものの依然として低調で、国際的に見ても起業意欲は低くなっています。

    海外との対比でみると、その差は歴然です。アントレプレナーを生む背景となる大学発ベンチャー設立数を日米で比較すると、2017年時点でアメリカは1,080社に対し、日本は184社とわずか6分の1にとどまっています。

    また、創業を支援する投資規模も日本はアメリカに比べて20分の1以下、ユニコーン企業数は65分の1以下と日米のビジネス創出力には歴然の差があります。

    現代の日本でアントレプレナーが求められる理由

    引用:今後のアントレプレナーシップ教育・スタートアップ創出の推進(案) | 文部科学省科学技術・学術政策局 

    名目国内総生産(GDP)で見ると、20年前に比べてアメリカが約2倍に増えたのに対し、日本のGDPは0.1倍とほぼ横ばいで、日本は新しい産業を生み出す力が弱いことが分かります。

    しかし、日本において起業が推奨されていないかというと、決してそんなことはありません。安倍前首相は、2020年に実施された「総合科学技術・イノベーション会議」において下記のように述べています。

    新たなイノベーション、科学技術の力を、しっかりと様々な社会課題の解決へとつなげていく。そのエンジンは、起業家精神です。ベンチャー精神こそ、新しい時代を切り拓(ひら)く原動力です。起業家精神あふれる人材を、次々と生み出していく。そのための新たなエコシステムを、我が国につくり上げていかなければなりません。

    引用:今後のアントレプレナーシップ教育・スタートアップ創出の推進(案)| 文部科学省科学技術・学術政策局 

    世界的にも社会が劇的に変化し、消費者のニーズや価値観が多様化する現代において、アントレプレナーは、イノベーションを起こすキープレイヤーとして欠かせない存在です。このような変化に対応し、国内のみならず海外へ目を向けて事業を展開できるアントレプレナーの登場が求められています。
     

    アントレプレナーの定義とは?

    アントレプレナーという言葉は知っているものの、どういう人を指すのか?は明確に答えられる人は少ないかもしれません。

    アントレプレナーは一般に「起業家」と定義されますが、本来はさらに広い意味を指します。

    文部科学省次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)に参画する東京理科大学の教育理念によると、アントレプレナーとは、下記のような「アントレプレナーシップ(起業家精神)」を持つ人材だと定義しています。

    • 自らの専門性(科学、技術、経営)を活かす
    • 社会問題の解決や、新産業・新サービスを創出する
    • より良い未来に向かう志を持つ

    これらを見るとアントレプレナーとは、新たな事業領域に挑戦し、社会に成長、繁栄をもたらすようなイノベーションを起こす人材だと分かります。

    つまり、この3点の精神を持った人材であれば、大企業、ベンチャー、社内起業家など肩書に関係なく「アントレプレナー」と言えるのです。
     

    アントレプレナーとして成功するのに必要な3つの要素

    アントレプレナーに求められる成功の要素

    アントレプレナーに向いている人とはどういった人でしょうか?成功したアントレプレナーから見る共通項を3つ解説します。
     

    1. ビジョンを持つ

    アントレプレナーは、将来的に社会に向けて何を実現したいのかビジョンを持たねばなりません。

    たとえば、 人事労務ソフト「SmartHR」を開発したアントレプレナーの宮田氏は成功までに転職、難病、事業失敗と何度も壁にぶつかりました。インフルエンサーを活用したビジネスを展開するUUUMの鎌田氏は「起業したいと思ったら100回考え、100回否定する」と語っています。

    単純に「お金儲けのため」だけでは、売れ行きが傾いただけで失敗となってしまいます。そうした困難に立ち向かうために、 「何のためにやるのか?」「社会にとって本当に必要なことか?」と、何度問われても揺らぎないビジョンが求められます。
     

    2. 得意を究める

    優れたアントレプレナーほど、自分のやる事業に誰よりも詳しくなるまで情報収集をします。

    たとえば、ビズリーチの南氏は当時、日本にはまだなかった「ダイレクトリクルーティング」の情報を求め、海外まで含めて徹底的にリサーチしました。先述したSmartHRの宮田氏は自分が得意とする分野で「歴史に残るプロダクトを作りたい」との強烈な思いから起業を決心しました。

    先例がない起業に挑戦するなら、自分が好きなこと、得意なことを究めることがピンチを乗り切る切り札となります。
     

    3. 仮説検証を繰り返す

    明確なビジョンを持って、得意な分野で戦う。最後に必要となるのは諦めない心です。

    先述したUUUMの鎌田氏は起業当初考えていたビジネスモデルを3カ月で大きく転換しています。SmartHRの宮田氏は、過去における事業失敗の原因を「世の中のニーズを見ていなかった」と分析し、徹底したヒアリング検証を通して人事労務ソフト「SmartHR」を生みました。

    「諦めない心」とは、自分の価値観やスタイルを頑固に守ることではなく、社会や顧客が求めているニーズに答えるべく、プロダクトやサービスをブラッシュアップさせる仮説検証のプロセスを繰り返すことなのです。
     

    日本で成功したアントレプレナーたちの起業ストーリー

    日本で成功したアントレプレナーたちの起業ストーリー

    実際に活躍しているアントレプレナーたちはどのように考え、行動したのか、世界的なアントレプレナー表彰式典「EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー ジャパン」受賞者の中から、インターネットサービス事業を中心に創業者の想いと成功ストーリーを紹介します。
     

    アントレプレナー①日本初「ダイレクトリクルーティング」サービスの立ち上げ ビズリーチ 南壮一郎氏

    ・起業のきっかけ

    南氏は外資系投資銀行を経た後、スポーツビジネスの夢を求めて楽天イーグルスに参画するも、インターネットによるイノベーションが起こせないか転職を考えるようになりました。しかし、転職活動中に当時の転職サービスに矛盾を感じ、人材紹介市場に風穴をあけるビジネス課題の着想を得ます。

    ・起業のための行動

    南氏は新事業を自分の頭だけで考えるのではなく、世界中の成功事例を収集して研究しながら課題解決法を構築することから始めました。

    そして、当時まだ日本では知られていなかったダイレクトリクルーティングサイト「The Ladders.com」を見出し、創業者をアメリカまで押しかけて直接ヒアリングするという徹底的な行動力を発揮しました。

    ・成功に至る転機

    南氏は、ヒアリングした情報に正解不正解があるわけではなく、色々なアングルから捉えて自分なりに課題を設定することが重要であると説いています。

    「そもそもこの課題の本質は何で、どういう切り口、付加価値で解決できるのか。さらにこれを日本というコンテクストに置いたときに、どの要素は海外と同じで、どの要素は違うのか。これらをきっちりと理解しながら、モデルに落としていくのが、私の事業の立ち上げ方です」

    引用:START UP優れた起業家は何を考え、どう行動したか | ニューズピックス

    新事業を作るうえで世の中にどのような課題があるか、常にアンテナを張る姿勢がアントレプレナーにとって重要 であることが伺えるでしょう。
     

    アントレプレナー② 転職、難病、事業失敗…逆境をバネに Smart HR 宮田昇始氏

    人事労務に関する様々な手続きのペーパーレス化を可能にしたクラウドソフト「SmartHR」は、2015年の発表から2020年という5年間で登録社数は30,000社以上、サービス利用継続率は99.5%と、瞬く間に人事労務ソフトにおけるシェアNo.1の座を獲得しました(デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2020年度」による)。

    ・起業のきっかけ

    この人気ソフトを開発するまで、宮田氏は何度も挫折を味わっています。2007年に大学卒業後、リーマンショックの影響で2回の転職を経験し、さらに「ハント症候群」という難病を発症しました。

    「業界の最先端で活躍しているキラキラした人たちを斜に見ていたんです。でも、実は誰よりも強く“自分も何か大きなことがしたい”という願望を抱いていて、それを成就させられなくて、くすぶっていました」

    引用:「歴史に残るプロダクトをつくりたい」 ユーザーヒアリングが代表作を生んだ──アントレプレナーたちの熱源 #11 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

    発病した頃、インターネットサービスが次々と生まれていた時期と重なって非常に悔しい想いを味わったと言います。

    さらに、配偶者の産休や育休取得における書類申請にヒントを得て、人事労務におけるサービス提供をに着目し、それが後のSmart HRへと成長していきます。

    ・成功に至る転機

    宮田氏は、当初法人向けのIT比較サービスを立ち上げたもののプロダクトは不発に終わり、このまま経営を続けていくことすら厳しい状況が続きました。2度の失敗を経験して宮田氏は「世の中のニーズを見ていなかった」と原因を分析します。そこで、10あまりのアイデアを徹底的にヒアリング検証し、社会において何が課題となっているのかを分析した結果生まれたのが、宮田氏にとって3作目となる「SmartHR」でした。

    成功した今も「歴史に残るプロダクトを作りたい」と語る宮田氏の言葉は、 自分の持てる技術を起点に、世の中に何かの形で発信していきたいという強い思いの表れです。
     

    アントレプレナー③ 業態にこだわらずスピーディに変化し続ける UUUM 鎌田和樹氏

    YouTuberをはじめとしたインフルエンサーたちをサポートするマネジメント事業と、彼らを活用したプロモーションプランの提供を手掛けるUUUMは、売上高224億円、従業員数502人(2020年5月期 4Q)と急成長を遂げました。

    ・起業のきっかけ

    もともとは通信関連会社の代表者として携帯販売ショップの運営を任されていた鎌田氏でしたが、自らの将来を見据えたときにベンチャー企業設立への思いを抱くようになります。起業を考える中、2013年にYouTuberとして活躍するHIKAKIN氏と出会い、クリエイターの配信を利用した商品販売サービスを目的とする会社、ON SALEを創設しました。

    ・成功に至る転機

    インターネットビジネスの世界はスピーディに成長し続けているため、関連サービスの提供にも変化が求められています。

    先述のON SALEのサービス提供をスタートしたものの、個人クリエイターと接するうちに、「企業との交渉ができない」「契約時に法人であることが求められる」などのニーズの本質に気が付きます。そこで、ON SALEからUUUM株式会社へと商号変更し、クリエイターのマネジメント業務をメインに据えたサービス提供へと転向しました。

    「事業のどこがユーザーに受け入れられ、どこが受け入れられなかったのか。そこを見極めたうえで、受け入れられた部分にフォーカスして、最短の方法で新たなビジネスを構築していく。それが成功の秘訣だと思います。」

    引用:ほとんどのビジネスは最終的に成功する | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

    鎌田氏は、起業したいと思ったら「なぜ自分は起業しなければならないか100回考える。そして今度は100回否定してみる。それでもニーズがあると判断できるならやるべき」と説きます。 自分のアイデアありきで一方的に押し付けるのではなく、市場と対話しながら仮説検証するプロセスが新事業形成には欠かせません。
     

    成功しても失敗しても培われる、アントレプレナーの「与える力」

    成功しても失敗しても培われる、アントレプレナーの「与える力」

    アントレプレナーの多くは、 誰かのニーズに応えたい、喜んでもらえるような価値を提供したいという想いを持って起業しています。 また、彼らはプロダクトやサービスが「違う」と思ったら、すぐにその原因を分析して、積極的に変化していきます。

    これまでの価値観は「いかに優れた技術を開発するか」「圧倒的に優れた商品を作るか」といった「技術ありき・プロダクトありき」の発想でした。

    しかし、技術革新が飽和化している現在、こうした独りよがりな価値を押し付けるよりも、誰かが喜ぶ価値を一生懸命に与えることが、相手との良好な人間関係につながるのではないでしょうか

    私たちHubSpotも、「まずはこちらから価値を提供し、相手の関心を引いて、そこから良好な関係を構築していく」という「インバウンド」の思想を創業当初から提唱し続けており、同じような価値観を持つ起業家を支援したいという考えが根底にあります。冒頭でもお伝えしたとおり、起業家の成長に少しでも貢献できるよう、支援プログラム「 HubSpot for Startups」を設けています。

    前例がない起業にはリスクが伴いますが、名だたるエンジェル投資家たちは今後、「起業経験が活きる時代になる」と語ります。起業経験によって得られるこうした「価値を与える」発想力 は、後に企業に入ったとしても他の社員とは比べ物にならない力となるでしょう。失敗しても成功しても培われるアントレナーシップはキャリアを考えるうえで最大の財産とする価値があります。

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    トピック: アントレプレナー

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