【HubSpot導入事例】限られたリソースでもパイプラインの設計次第で収益性は上げられる。ツールを「武装」して顧客との信頼関係構築に取り組むDGX-japan

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土井 早春 (どい さはる)
土井 早春 (どい さはる)

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「LEDビジョン」をご存知でしょうか?LED(発光ダイオード)を利用した大型カラーディスプレイで、屋外広告などに使われるため実は誰もが街中で目にしているものです。今回取材したDGX-japanはLEDビジョンの販売や施工を行う企業ですが、代表兼World Marketing Managerの柏木大さんは同社唯一の従業員でありながら、約7億円の売上と高い利益率を実現しています。今回はご自身を「LEDビジョンの職人」と呼ぶ柏木さんが日々のマーケティング・営業活動の中で意識されていることや、そのためにHubSpotをどのように利用されているかをお伺いしました。

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DGX-japan_YouTube【LEDビジョンの例(DGX-japan、新宿東口LUSHへの施工事例動画より)】

 

自社商材を深く理解している「職人」がツールで武装する、マーケティングと営業の第3世代

ー 柏木さんはどのような経緯でDGX-japanを立ち上げるに至ったのでしょうか?

僕は元々広告代理店の営業マンでした。DGX-japanは中国にあるDGX社の日本代理店という位置づけなのですが、DGX-japanを始める前から株式会社アマテラスイノベーションという別法人を立ち上げており、今起業3年目です。

起業1年目、2年目のときにビジネスプランコンテストで優勝してそのビジネスを不動産会社と組んで行ったのですが、全く売上が上がらなくて。キャッシュが本当になくなってきたなというタイミングでDGXから声がかかり、日本での営業を手伝い始めたのが始まりです。

展示会で顧客リストを集めてLEDビジョンの営業をしてくれと言われ、顧客管理のために導入したのがHubSpotの無料版でした。そもそもHubSpotを知ったきっかけはベンチャーキャピタルの500 Startups Japan (現Coral Capital)のブログです。

投資家目線から見ると、HubSpotのようなCRMで事業の顧客を管理しているとイグジットしやすいという内容の記事でした。リードの獲得数や案件数の推移が記録に残っていくので、なるほどなと思ったのを覚えています。

元々広告屋だったので、HubSpotのようなツールを使って「広告でお客さんを集め、営業担当者が自分でお客さんの管理をして毎週メルマガを配信し、営業していく」という仕組みを作れば収益が上がるのではないかと仮定し、営業プロセスを組み立てて実行したらDGX-japanの事業に結構はまった感じだったんです。

 

ー 最近だと、マーケティング担当部門と営業担当部門をきちんと分業して、各々がリードの創出と営業活動に集中しようという流れがあるように思うのですが、柏木さんはそれらをお1人で行われているのですね。

昔は営業マンがいて自分でリスト作りと営業活動を行っていましたよね。これが第1世代です。次に第2世代として、最近はマーケティング活動と営業活動を分けましょうという流れがあると思います。でもこのマーケティング活動というのも「単にリストを集める」、「フォロワーを集める」という活動に関しては今後ツールに代替されていくと思うんです。

本当に重要なのは、自分たちのお客さんはだれなのか、そしてお客さんが求めているものを理解し、自社が提供できる価値を明確に伝えることです。なので次に来る第3世代では、自社商材を深く理解しているデザイナーや職人自身がHubSpotのようなツールを武装してお客さんに対してしっかりと価値を伝え、仮にマーケティングや営業のプロが社内にいなかったとしても売上を作っていける時代になるのではないかと思います。

マーケターを否定するわけではなく、マーケティングは単純なリスト集め・フォロワー集めの活動ではなく、売上を創出して事業を支えるための活動という広い見方をしなければいけないと思っているということです。今の私自身のことは、マーケターでも営業マンでもなく、LEDビジョンの職人だと思っています。

 

「貧乏の極み」から始まった事業。必然的に「本当にお客様が欲しているもの」の提供に集中することになった

― マーケティングや営業の意義を突き詰めていくと「売上を創出し事業を支える」という役割に行き着くということなのですね。とは言え、お1人ですべてを回していくとなると毎日かなりの時間働いているのではないですか?

DGX-japan_HubSpotいえ、そんなことはないですよ。タイムスケジュール的には、朝起きて子供と遊んで、その間に英会話の勉強をして、だいたい10時くらいからオンライン広告を打ち始めます。昔は朝から晩まで広告を打っていたんですけど、結局当社の場合広告への反応がいいのは10時から14時の間だと分かったんです。

その時間帯にお客さんや代理店さんから問い合わせが来るのですが、まずは「ご希望の平米数で設置するといくらです」という見積もりだけ先に送ります。その見積もりに反応があるまでは会いに行きません。大体2割くらいのお客さんから反応をいただけるのですが、その時点で初めて見込み客になり商談が始まるという考え方をしています。だから1人で対応できるんです。

 

ーそのスタイルはDGX-japanさんを立ち上げた後、試行錯誤しながら確立してこられたのでしょうか?

いえ、正直なところ最初は訪問に行けるだけのお金がなかったんです(笑)貧乏の極みから事業が始まって、結果それがたまたま今お話したスタイルだったんですね。いわゆる「インサイドセールス」というやり方になるわけですが、結局お客さんも営業担当に会いたいというより、まずは金額だけ知りたいという方がとても多いんです。その要望にちゃんとお応えして、先方で予算が通ってからお会いする方がお互い無駄がなくて良いんです。商材の単価が300〜5,000万円と高額なので、最後のクロージング段階では訪問をします。

1日のうちに外に出て行って商談をするのは多い日で3件ほどです。一月に送る見積もりが100件以上、そこから20件ほどが商談に転換し、さらにその中の2~3件が受注につながるというイメージです。毎日大体18時には家に帰って家族と過ごしています。

 

自社の「本当の顧客層」を、既存の顧客から逆引いて見極める

ー 先ほどオンライン広告を配信する時間帯を10時から14時に絞っているというお話がありました。どのような仮説検証を経て時間帯の絞り込みを行ったのでしょうか?

LEDビジョンはクラブで使われることが多いので、当初は「クラブのオーナーさんが広告を見るのは夜だろうな」と仮定して、夜の時間帯に多めに出稿していました。しかし、本当にそうなのかなといろんなパターンをテストしていくと、実はLEDビジョンを検討するのは昼間に活動する店舗デザイナーや建築家だったんです。

この層にターゲットを絞った配信時間やクリエイティブで20パターンほど広告を出しABテストを繰り返していったところ、7ヶ月でCPA(リード獲得単価)が当初の10分の1になりました

ペルソナなどいろんな難しい言葉がありますけど、結局大事なのは事業の売上に繋がる「本当の顧客は誰なのか」を洗い出すことだと思うんです。私は講演のとき、「今まで自社の商材を買ってくださったお客様を全部リストアップしてみてください」と話しています。

 

ー 自分たちが「売れると思う人」というよりは、実際に「実績として買ってくださった人」から逆算して考えるということなんですね。

そうです。もちろん最初に売れるまでは試行錯誤が必要ですが、買ってくださった人から逆算してマーケティングしていくというのが正しい戦略ではないかと思います。最近ではパフォーマンスが出る広告のパターンは見えてきたので、ABテストよりも動画を使ったディスプレイ広告でブランドの認知度を上げることに注力しています。一般にディスプレイ広告はリード獲得に繋がりづらいと言われますが、話してみると「広告見たよ」と言われるお客さんはすごく多いです。

 

HubSpotなどのツールの「武装」。具体的には?

ー DGX-japanではHubSpot Marketing Hubをご利用いただいています。インタビューの最初にツールの「武装」というお話が出ましたが、柏木さんは実際にどのような装備をされているのでしょうか?

DGX-japan_HubSpot全体像で言うと、当社は事業全体の管理をHubSpot、ウェブサイトの管理をWixで行っており、それぞれのツールをスマホとアップルウォッチに連携して通知が来るようにしています

オンライン広告からリードが入ってきた場合は一旦目視でどんな方なのかを確認して、そこからHubSpotのモバイルアプリを使って手動でHubSpot CRMに見込み客として登録しています。日々大量のリードが流れ込んでくる商材でもありませんので、今この瞬間に連絡すべきお客さんを見落としてしまわないように、あえて1件1件確認しています。

またWixはウェブサイトに訪問があった際にリアルタイムで通知を飛ばすことができるので、「今札幌からアクセスがあったな、最近メールを送ったお客様かな?」という推測ができます。アップルウォッチを着けていると現在進んでいる案件の状況がなんとなく分かるという環境を作っています

 

ー リードとして連絡先をいただいた方とはどのようにコミュニケーションをされるのですか?

基本的にはHubSpotから配信する毎週のメルマガですが、私のメルマガにはひとつだけポイントがあります。それは「内容をすごく短くする」ということです。プロダクトの紹介をすることが多いのですが、LEDビジョンの事例が分かる動画を載せるだけで、長たらしい説明を加えないようにしています。なぜかというと、当社の場合お客様が見たいものって、「DGX-japanはどんな実績があるんだろう、どういうふうに施工しているんだろう」ということだけなんです


動画に関連して言うと、当社の売上が伸びている要因としてYouTubeにアップしている施工動画というのがあります。LEDビジョンの施工プロセスを全部動画にして、HubSpot上に登録したお客さんに送っています。するとそれを見た方から受注が入りやすくなる。プロセスをお見せすることで、信頼が上がっていくのだと思います。

スクリーンショット 2019-10-25 13.11.32【施工動画の例。DGX-japan - XIV - LEDvision(YouTube)より】

メールは同時に案件の進捗を全体的に確認するためのツールでもあります。たとえばあるお客さんに送ったメールが「開封されたけれどメール内のどのリンクもクリックしてくれていないな」という場合、先方で案件が止まっていることが推測できるので、一旦追いかけないことにします。

 

パイプラインの設計が、限られた人的リソースで事業の収益性を上げる鍵になる

ー ここまでお話をお伺いして、柏木さんが実践していらっしゃることは「時間さえあればどの企業でもできる」ことではないように感じました。事業の収益性を上げていくためのマーケティングと営業のポイントというのはあるのでしょうか?

最初に当社を知っていただいてから受注するまでのパイプライン設計の仕方が最も重要だと思います。これに関しては「時間の最適な使い方」と「信頼を得る」という2つの観点があると思っています。前者は、マーケティングや営業担当者が最適な時間の使い方ができるパイプラインを設計し、HubSpotでパイプライン管理の仕組みを作って守っていくというものです。当社の場合は「見積もりに反応があるまでは会わない」という部分がパイプライン設計の肝になっています。

後者の「信頼を得る」とは、「パイプラインのこの段階でお客様はこういうマインドセットでいるはず。なのでその時点ではこのレベルの信頼を築いておく」という考えの元にコミュニケーションを設計していくということです。先ほど触れた施工動画などは、「この段階のお客様に実績を伝えて信頼度を上げよう」という目的でタイミングを考えていたりします

ここまですごく効率化みたいな話し方をしていますが、最後にお客さんがものを買ってくださるときって、営業マンのオーラや人間性も絶対に関わってくると思うのです。「この人信頼できるな」とか、電話の早さとか。だから、無駄な工数をお互い押さえた上で見積もりの依頼などは素早く対応する…という意識でやっています。

 

DGX-japanの今後について

ー DGX-japanのLEDビジョン事業は、日本国内では 順調に軌道に乗ってきているという印象を受けました。今後柏木さんはどのようなことにチャレンジしていくのでしょうか?

いま目標としているのは、インドネシアやインドのLEDビジョン市場に参入し成功することです。これはXIV(エクシブ)という新しい会社で行おうとしています。元々DGX(中国)の代理店業務として上海や香港、韓国、ドバイなどの見込み客をオンライン広告で獲得し、DGXに提供するということも行っていました。

現在私は映像クリエーターや施工部隊など10名ほどの社外パートナーとチームで動いているのですが、今後は仕入れからマーケティング、営業、施工までを海外の新しい市場でこのチームと一緒にやっていきたいと思っています。

LEDビジョンの産業としての成熟度を見たとき、日本国内だと飽和状態になりつつあるのが正直なところです。日本のマーケティング・営業が世界の市場に出ていって勝負する。これも、ツールを武装したからこそ見えてきた目標です。

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