「成長」というごくありふれた言葉が、ここ数週間で口に出すこともはばかられるようになってしまいました。

これまで、ビジネスの世界では起業家やベンチャーキャピタリスト、ジャーナリスト、経済学者といった人たちが、ことあるごとに「成長」という言葉を口にしてきています。それは、進歩や創意工夫、成功を象徴する言葉として使われてきました。

そんな中、突如世界は一変しました。

私たちを取り巻くコミュニティーや経済は不安定になり、これまで経験したことのない厳しい現実に直面しています。このような状況では、「成長」について話題にしづらくなるのも無理はありません。

消費者行動が劇的に変化したことを受けて、大きく成長している企業もないわけではありませんが、ほとんどの企業は深刻な状況に陥っています。今、世界で口にされるのは、「成長」ではなく「生き残り」という言葉です。

多くの企業は今、生き残り戦略へと早急に切り替えることを迫られています。予算を切り詰め、広告の掲載を休止し、予測を見直す必要があります。そのため、つい目先のことにとらわれてしまいがちです。しかし、こうした非常時に下した決断が、いざ成長戦略へと舵を切ろうとしたときに良くも悪くも影響を及ぼしかねないということを忘れてはいけません。

先の見えない中で、多くの企業はこの不安定な状況を乗り切ろうとして、本来目指すべき方向性を見失い、顧客のことを後回しにしてしまっています。

先が見えない今、取り組むべきこと

危機的状況に瀕してリスクが高まり、顧客は企業とのやり取りの際に平常時よりも敏感になっています。頻繁に連絡をしてきた企業や連絡が滞っていた企業、親身な対応をしてくれた企業やそうでなかった企業などを、よく覚えています。そして、本当に助けを必要としているときに助けてもらった場合には、いっそう記憶に残っているものです。

危機的状況において、顧客の問題を解決できた企業は

長きにわたって強いロイヤルティーを育むことができ、

状況が好転したときに素早く成長に向けて動き出せます。

実際、2007年から2009年までの景気後退時に優れた顧客体験の提供に注力した企業は、そうでない企業と比べて株主総利回りが3倍にもなりました。

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画像1:優れた顧客体験の提供に注力した企業とそうでない企業の株主総利回りの比較、出典:Forrester Customer Experience Performance Index(Forresterの顧客体験パフォーマンス指標)2007~2009年、McKinsey & Companyの資料より

だからこそ、特に営業、マーケティング、カスタマーサービスの各チームはその場しのぎや目先の解決策にとらわれず、先行きが不透明な中でもしっかりと顧客に向き合うことが重要になります。これは企業の行為として適切であるだけでなく、好況か不況かを問わず、長期的に持続可能なやり方でビジネスの水準を維持するために最も効果的です。

営業チームは焦らず、見込み客の課題解決に集中する

成長が停滞する時期、営業チーム総出で見込み客に働きかけ、新規顧客の獲得に乗り出したくなるものです。しかし、このやり方は逆効果です。経済の先行きが不透明だと、見込み客は予算を削減し、購入の意思決定に慎重になっていることが多いため、定型のEメールや飛び込みの電話営業に好意的に反応する可能性は低くなります。

HubSpotの調査によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生に伴い、営業チームはEメールによるアプローチを23%増やしているものの、そうしたEメールに対する平均応答率は27%低下しています。

営業チームは、アプローチを増やすのではなく、見込み客が目下抱えているニーズに集中して対応する必要があります。一緒に解決策を模索し、長きにわたる信頼関係の構築に向けて努力することが大切です。

可能であれば、自動送信のEメールを親しみやすい文面に変更し、COVID-19で最も大きな打撃を受けているセグメントや業界を考慮してターゲット市場を見直しましょう。また、困難な経済情勢を反映して売上予測を修正してください。そうすれば、営業担当者が焦って短期的な成果を追い求めずに済みます。

このアプローチにより、短期的には営業チームが成約件数を増やせる可能性が高まります。しかし、もっと重要なのは見込み客への強い共感や理解を示すことで新しい取引関係を構築し、長期的な成功へと導いていけるということです。

今こそ、マーケティングチームの真価を発揮する

マーケティングチームも課題を抱えています。企業が成長している時期に計画したキャンペーンやクリエイティブなコンセプト、コミュニケーションプランの多くは、経済的に困難な状況に陥ると、意味をなさなくなったり、まったく見当違いなものになったりします。

綿密に練り上げたマーケティングプランを保留にしたり白紙に戻したりするのは勇気の要ることですが、予定どおり進めてしまうとオーディエンスの反感を買い、何年もかけて築き上げてきた顧客との信頼関係が一瞬にして崩れ去るおそれがあります。

先の見えない状況において、

マーケティング上の意志決定に必要な指針はただ1つ、

「どうすれば今すぐ役に立てるか」ということです。

送信するEメールやコンテンツの量を減らすのが効果的である場合もあります。

あるいは、講座やオンラインのイベントプログラムなど、まったく新しいリソースを生み出して、自社ならではの価値を提供し、オーディエンスの喫緊のニーズに対応することもできるでしょう。また、営業担当者と同じように、マーケティング担当者も、顧客とのあらゆる接点で行き届いた対応ができるよう、メッセージのトーンを工夫する必要があります。

根本的にマーケティングで大切なのは、オーディエンスに価値を提供することです。危機的状況でも、その状況に合わせて戦略をうまく調整し、付加価値を提供できれば、「私たちはどのような状況であっても全力で顧客を支援する」という意思表示になり、顧客を安心させることができます。その意思表示は、信頼をさらに深めることにつながり、危機を乗り越えた後に再び成長するための鍵となります。

非常時でも円滑に対応できるカスタマーサービスを

先の見えない状況になると、多くの企業では不安を覚えた顧客からの問い合わせが急増し、それがカスタマー サービス チームにとって大きな負担となりかねません。これまで以上に手間と時間をかけて問い合わせに対応しようとすれば、従業員は疲弊し、サービスの質は低下し、顧客対応に予想以上の時間がかかるでしょう。顧客の問題を解決するためには、もっと持続可能な方法をとる必要があります。

たとえば、チャットボットの導入を検討してみてください。よくある質問に対して顧客が自力で簡単に答えを得られるようになり、その分従業員の手が空いて、込み入った問い合わせに集中して対応できるようになります。カスタマー サービス チームとマーケティングチームが協力して、問題解決に役立つ学習用コンテンツを作成し、予想される顧客の問題に先回りで対処するのもよいでしょう。

危機に際して新しい持続可能なカスタマーサービス戦略に成功した企業は、情勢が不安定でも十分な態勢で顧客をサポートできます。さらには、将来再び成長段階に入ったときにも、拡張可能な新しいプロセスが確立できているため、成長を実現しやすくなります。

顧客中心主義を貫けば、どんな苦難も乗り越えられる

危機に際して成長が止まってしまうことは珍しくありません。しかし、ほとんどの企業で実証されるように、常に右肩上がりで成長していくことはありえません。個人も企業も経済も、長い道のりの中で、挫折したり、当てが外れたり、出だしでつまずいたりします。不測の事態が次から次へと襲いかかってくるからです。

画像出典

世界中の企業が直面している前代未聞の状況に対して、必勝法は存在しません。また、成長路線へとすばやく戻れる近道もありません。新しいモデルへと切り替え、新たに長期的な成功を目指す企業もあれば、既存戦略を強化し、耐え忍んで今後数か月を切り抜ける企業もあるでしょう。生き残るために苦渋の決断を強いられることもあるかもしれません。

このような状況では悲観的な考えに陥りがちですが、

どうなるかわからない現実を受け入れざるを得ない今、

私はむしろ楽観的に考えています。

顧客中心主義によって企業がここまで成長してきたのだから、

その主義を貫くことで、

いずれはこの苦難を乗り越えられると信じているからです。

顧客に寄り添い、常に顧客を中心に考え、営業、マーケティング、カスタマーサービスの意志決定を行うことで、未知の事態をも乗り越えられる可能性が高まります。さらには、経済が安定し新たなチャンスが生まれたときに、もう一度成長するための態勢を整えられます。

HubSpotでは以前からずっと、これこそが成長するための一番の方法であると考えており、「help millions of organizations grow better(企業や組織のスマートな成長のパートナーになる)」というミッションを掲げてきました。目先の利益を優先して顧客体験を犠牲にすることなく、困難なときでも正しい行いを心がけるよう企業に求め、避けられない嵐から身を守るための手段なのです。

この数週間、「成長」という言葉を口にしづらくなりましたが、今回お話しした「スマートな成長」について考えを巡らせると、活力が湧いてくるのではないでしょうか。まさに、今のような状況のための理念と言えるでしょう。

 

元記事発行日: 2020年5月31日、最終更新日: 2020年6月04日

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